1番目の転換は小泉政権による構造改革の進行。それ以前の自民党の利益誘導政治を大きく転換した。利益誘導政治はもはや財界にとっては役に立たない。財界は全世界で活動するのが最も重要な課題だ。社会保障費や法人税に跳ね返るやり方は自分たちの利益にならないから、社会保障や公共事業は縮小し、世界に羽ばたく財界に変貌するよう支援せよということだ。小泉政権は自民党を壊しても構造改革をやるということになった。ところがこれをやると何が起こるか、「介護難民」「医療難民」「ワーキングプア」などが起り、格差・貧困社会が進行する。これで、民主党が変わった。06年に「国民生活第一」というスローガンで、国民の要望をマニフェストに取り入れるという路線転換をやった。07年の参院選でより国民の側に立った民主党が圧勝した。
2番目の転換は民主党への政権交代だ。鳩山政権の誕生で国民は戦後初めて利用できる政権に出くわした。「後期高齢者医療制度廃止」「障害者自立支援法廃止」「生活保護母子加算復活」などを公約し、「農家個別所得補償制度」「最低保障年金」「高校授業料無償化」「子供手当創設」などを掲げた。これを実現させれば国民の暮らしは憲法を生かす形で良くなる。小泉構造改革とはまるで違う大きな転換が進行した。ところが10年、菅政権は消費税10%を掲げ、参院選で民主党も自民党も得票率を落とした。以前は自民+民主で必ず70%の得票率を得ていたが、15ポイントも減らし55%に下がった。2大政党制が大きく崩れた。野田政権で見事に第2の転換は終りを遂げる。この政権交代は無意味なものに終わってしまった。
昨年の総選挙での「消費税増税」「原発再稼働」「TPP参加」は、民主党でありながら自民党と一緒になって小泉構造改革時代、10年以上も前に日本の歴史を引き戻すことを宣言するに等しい。国民から見ると裏切りで、得票できないのは決まりきっている。2大政党は大きく後退するというのが総選挙前夜の状況だった。今も「消費税増税反対」は54%、「脱原発」は75%、「TPP」は国論2分だ。これらを争点にして総選挙では、世論調査からすると2大政党が沈むのは明らかだ。自民党の得票率は前回総選挙と変わらず、得票数は減っている。自民党と民主党を合わせた票はもう一段下がり43%になった。
自民・民主は見放されつつあることは明らかだ。世論は自民党を大きく支持している訳ではない。世論調査通りにみんなが投票すれば、革新政党が伸びるはずだった。ところが、日本人は全く逆の「消費税増税」「原発再稼働」「TPP参加」の政党に投票した。投票で、自分たちがアンケートに答えたことと全く逆の行動を取っている。これは「世界の7不思議」と言えるものだ。ヨーロッパの選挙では世論調査と投票結果は大体同じ。日本では自民・民主から離れた票がいわゆる「第3極」、「橋下維新」と「渡辺みんな」に行った。橋下は、日本の政治家の中では最悪・最低の政治家で、これほど愚劣で野蛮な男に若者層が引っ張られた。渡辺は、改憲であれ、構造改革であれ無茶苦茶で最右翼、だから自民党から出た。九条の会からすれば安倍晋三どころではない。安倍政権の支持率は低いのに、維新とみんなが民主・自民の票を掠め取って脇を固めてしまった。安倍政権はそれほど力がある訳ではない。
憲法問題で一番厄介なのは維新とみんな、それに生き残っている民主の、かつての構造改革推進派(岡田、前原など)だ。維新・中田宏は安倍首相に対して「俺たちだけが憲法改正で安倍政権と同じ立場に立っている。安倍政権と維新とで3分の2をクリアできる。公明党を切って俺たちと組んだ方がよほど憲法改正がやりやすいではないか」と言い、石原慎太郎にいたっては「安倍首相は直ちに現在の憲法を破棄する宣言をせよ」と言っている。維新は安倍政権に「早くTPPに入れ」「消費税は社会保障にまわすな」と言っている。「年金は平均寿命を超えた人にだけ。80歳にならないと年金は支給しない」というのが彼らの案で、途方もないことだ。若者層がこれに引かれると何のことはない、自分たちが年金も医療も教育も犠牲にされるということだ。(つづく)
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【九条噺】
安倍内閣は、サンフランシスコ講和条約(1952年)が発効した「4月28日」を「完全な主権回復の日」として政府主催の記念式典を開くことを決めた。しかし今更「主権回復」などといわれてもしっくりこない。「4・28」といえば何よりもまず「屈辱の沖縄」を、そして「沖縄を返せ」の歌を思い出す。♪固き土を破りて 民族の怒りに燃ゆる島 沖縄よ/我らと我らの祖先が 血と汗をもて 守り育てた沖縄よ/我らは叫ぶ 沖縄よ 我らのものだ 沖縄は/沖縄を返せ 沖縄を返せ(全司法福岡高裁支部作詞・荒木栄作曲)。幾度も幾度も仲間たちと歌い続けてきた歌だから、怒りの思いとともに、あつく燃えた日々も走馬灯のように浮かんでくる▼ところで、サンフランシスコ講和条約は、アメリカをはじめとした西側諸国だけが調印した「片面講和」であり、特に、日本が侵略戦争や植民地支配などを通して最も大きな被害を与えた中国や朝鮮(韓国)などは招へいもしないという〝欠陥品〟だった。しかも、条約第3条では沖縄、奄美、小笠原諸島を日本から切り離して米国の施政権下におき、第6条と、同時発効の旧安保条約により、占領中の沖縄の米軍基地をそのまま米軍に提供する仕組みを確保、事実上米国の従属国となった▼「今の憲法は主権のない時代に占領軍が押し付けたもの」というのが改憲派の専らの主張。安倍首相が主権回復にこだわる理由もここにあるのでは?(佐)
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憲法96条改正に異論あり 9条を変えるための前段
改憲派からも「正道じゃない」
「絶対ダメだよ。邪道。憲法の何たるかをまるで分かっちゃいない」
安倍首相らの動きを一刀両断にするのは憲法学が専門の慶応大教授、小林節さんだ。今も昔も改憲派。戦争放棄と戦力不保持を定めた9条は「空想的だ」と切り捨て、自衛戦争や軍隊の存在を認めるべきだと訴える。改憲派の理論的支柱として古くから自民党の勉強会の指南役を務め、テレビの討論番組でも保守派の論客として紹介されている。その人がなぜ?
「権力者も人間、神様じゃない。堕落し、時のムードに乗っかって勝手なことをやり始める恐れは常にある。その歯止めになるのが憲法。つまり国民が権力者を縛るための道具なんだよ。それが立憲主義、近代国家の原則。だからこそモノの弾みのような多数決で変えられないよう、96条であえてがっちり固めているんだ。それなのに……」。静かな大学研究室で、小林さんの頭から今にも湯気が噴き出る音が聞こえそうだ。
「縛られた当事者が『やりたいことができないから』と改正ルールの緩和を言い出すなんて本末転倒、憲法の本質を無視した暴挙だよ。近代国家の否定だ。9条でも何でも自民党が思い通りに改憲したいなら、国民が納得する改正案を示して選挙に勝ちゃいいんだ。それが正道というものでしょう」
そもそも「日本の改憲要件は他国に比べ厳しすぎる」という改正派の認識は間違っている、と続ける。例えば戦後6回の憲法改正(修正)をしてきた米国。連邦議会の上下両院の3分の2以上の議員が賛成すれば改正が提案され、全米50州のうち4分の3の議会での批准が必要で「日本より厳しいんだ」。
諸外国で改憲要件を変えるための憲法改正がなされた例は「記憶にない」。他国と同等の国にしたいだけと訴える改憲派が、例のない特殊な手法に手を染めようというのだろうか。
なぜそうまでして改憲したいのか。小林さんは、自民党が昨年4月に公表したの憲法改正草案の中に真意がちらついているとみる。「例えば24条は『家族は互いに助け合わねばならない』とある。ほんと余計なお世話だね。憲法が国民の私生活や道徳に介入すべきじゃないんです」
そこにあるのは「なんじら国民に憲法で教えを授ける」という姿勢だ。その傾向は「祖父や父の代からの世襲議員に顕著」と小林さん。かつて自身が指南した自民党がまとめた改正草案だが「『上から目線』が抜けないからこんなものになる」と手厳しい。(毎日新聞4月9日東京夕刊「特集ワイド」より抜粋)
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「お花見&うたう会」は「歌声喫茶」に
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