「九条の会・わかやま」 221号を発行(2013年6月9日付)

 221号が6月9日付で発行されました。1面は、「96条の会」発足 改憲論者も加わる、自民・古賀氏も96条改正反対、産経新聞世論調査 96条改定反対52%・賛成32%、紛争拡大で喜ぶのはアメリカだ(孫崎享氏②)、九条噺、2面は、「田辺9条の会」が第9回総会開催、DVD紹介『憲法ってなぁに? 憲法改正ってどういうこと?』伊藤真弁護士語りおろしDVD   です。

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[本文から]

「96条の会」発足
改憲論者も加わる

 5月23日の朝日新聞は、「96条の会」発足を次のように報じています。
 安倍政権が憲法96条を改め、国会の改憲発議要件を3分の2から過半数に緩めようとしているのは、立憲主義の破壊だとして、著名な憲法学者や政治学者らが23日、「96条の会」を結成した。参院選に向け、96条改正反対を呼びかける。
 代表は憲法学界の長老、樋口陽一東大・東北大名誉教授。衆院議員会館での記者会見で「国会は3分の2の合意形成まで熟慮と討議を重ね、国民が慎重な決断をするための材料を集め、提供するのが職責のはず。過半数で発議し、あとは国民に丸投げというのは、法論理的に無理がある」などと訴えた。発起人の一人で、これまで改憲論者として知られた小林節慶応大教授は、安倍晋三首相が96条改正で「憲法を国民の手に取り戻す」と述べたことを批判。「憲法に縛られるべき権力者たちが国民を利用し、憲法をとりあげようとしている」と断じた。
 発起人には、ほかに上野千鶴子氏(社会学者)、奥平康弘氏(憲法学者)、姜尚中氏(政治学者)、坂本義和氏(国際政治学者)、高橋哲哉氏(哲学者)、長谷部恭男氏(憲法学者)、山口二郎氏(政治学者)らが名を連ねた。
 なお、発起人には「九条の会」事務局の小森陽一氏、渡辺治氏も参加しています。

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自民・古賀氏も96条改正反対

 5月29日の毎日新聞は「自民党の古賀誠元幹事長が共産党機関紙『しんぶん赤旗』のインタビューに応じ、憲法改正の発議要件を緩和する96条改正について『絶対にやるべきではない』と強く反対したことが分かった。自民党の元幹部が赤旗に登場するのは異例」と報じています。
 古賀氏は「しんぶん赤旗日曜版」紙上で、「現行憲法の平和主義、主権在民、基本的人権という崇高な精神は尊重しなければならない。なかでも平和主義は『世界遺産』に匹敵する」「いま、96条を変えて憲法改正手続きのハードルを下げるということが出ていますが、私は認めることはできません。絶対にやるべきではない」「憲法はわが国の最高法親です。他の法規を扱う基準と違うのは当然でしょう。憲法改正発議が『各議院の総議員の3分の2以上の賛成』という現在の規定は当然です」「憲法の議論は、現行憲法に流れる平和主義・主権在民・基本的人権の尊重という三つの崇高な精神を軸にしなければならない。とくに9条は平和憲法の根幹です」と述べています。

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産経新聞世論調査
96条改定反対52%、賛成32%


 5月27日の産経新聞は世論調査結果を発表し、憲法96条を改正し、衆参両院で改憲発議に必要な条件を「3分の2以上」から「過半数」に緩めることへの「反対」は52.0%(前回比7.3ポイント増)で、「賛成」の32.3%(同9.8ポイント減)を上回ったと報じています。

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紛争拡大で喜ぶのはアメリカだ

 5月11日、「5・11県民のつどい」がプラザホープ(和歌山市)開催され、孫崎享氏が「領土問題と憲法9条~国際紛争の平和的解決のために~」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

孫崎享氏②

 鳩山由紀夫首相は普天間問題で脱線が続いたが、辺野古移設に最後まで抵抗したのは鳩山氏だった。原発再稼働、消費税増税、TPPへの参加、尖閣諸島問題も鳩山氏なら起っていなかった。多分どの政策をとってみても、みんなが望ましいという方向に鳩山氏はいる。
 今、尖閣問題は大変な問題になっている。いろんな論点がある。中国側は棚上げにしようと、1972年の日中国交正常化の時に周恩来は田中角栄に「小異を残し大同につく」と言った。78年の日中平和友好条約の時には鄧小平が出てきて、「解決が難しいから次世代に残す」と言った。これに対して日本側が合意したかどうかだが、今日本政府は合意したことはないという見解だ。今何故棚上げという選択を取らないのか。各々が領有を主張しているからこそ棚上げだ。棚上げとは紛争にしないためなのだ。この知恵は69年の中ソ国境紛争の時、周恩来とコスイギンが話し合って棚上げにした。この知恵が尖閣に来た。尖閣諸島は日本にとって絶対に有利なのだ。中国は領有を言いながら、日本の管轄を認めている。そして武力を使って変更しない。そして管轄が長く続けば続くほど自分のものになる。何故日本からこれを捨てるのか。何故棚上げは意味がないと日本から言い始めるのか。最終的な決着をやろうとしてやった時ゼロになることもあるが、その用意は出来ているのか。どちらの国も出来ていない。どちらの国も相手のものだとは言わない。そうしたら紛争を避けることしかない。何故この知恵を日本は捨てるのか。田中角栄時代の外務省・条約課長は「正常化に際し日中間において尖閣問題を棚上げにするとの暗黙の了解が首脳レベルで成立したと理解している。それは平和友好条約締結時も再確認されたと考えるべきだ。そして当事者によって守られている限り棚上げは紛争の悪化を防止し、さらには沈静化させるための有効な手段になり得る」と言っている。何故これを捨てるのか、これはTPPと同じだ。
 尖閣問題がおかしくなった経緯は2つある。1つは船の衝突事件、もう1つは石原都知事。彼が東京都で買い国有化すると言った。これはアメリカのヘリテージ財団での演説で言ったのだが、そのヘリテージ財団で11月にクリングナーという人物が論文を書き、「アメリカは日本の政治的変化を利用し、同盟を深化させるべきだろう。東京はより大きい国際的役務を受け入れるべきだ。集団的自衛権も進めるべきだ。同盟国の安全保障上の必要に見合うように防衛費の増大をすべきだ。辺野古移転をすべきだ。そして、それは安倍首相の保守的な外交政策についての考え方と中国に対する日本の民衆の増大しつつある懸念はワシントンがやらせろと思っていることを実行する絶好の機会である」「尖閣諸島でおかしくなれば、集団的自衛権をやらせることが出来る。防衛費を増大させることが出来る」と言っている。だから、今緊張が出てきている動きは、憲法の改正、集団的自衛権などみんな関係している。(つづく)

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【九条噺】

 陽射しはずいぶん厳しくなったが、それでも木陰で浴びる薫風は心地よく、たまの読書も悪くない。竹本源治の「戦死せる教え児よ」という反戦詩は、山原健二郎さん(1920~2004)が代議士時代、議員会館でお会いした時にご紹介頂いたという格別の思い出がある▼逝いて還えらぬ教え児よ/私の手は血まみれだ/君を縊ったその綱の/端を私も持っていた/しかも人の子の師の名において/嗚呼!/「お互いにだまされていた」の言訳がなんでできよう/慙愧 悔恨 懺悔を重ねても/それがなんの償いになろう/逝った君はもう還らない/今ぞ私は汚濁の手をすすぎ/涙をはらって君の墓標に誓う/「繰り返さぬぞ絶対に!」▼戦後の教職員組合の原点を謳いあげるような素晴らしい詩だと思う。この詩は1952年の高知県教組機関紙「るねさんす」に発表、翌年第1回世界教員大会(ウィーン)でも朗読され大きな感動を呼んだ。その後65年に結成された高知県管理職職員組合が25周年記念として「反戦詩『戦死せる教え児よ』碑」を通称高知文学碑通りに建てた▼「思い出はおれを故郷へ運ぶ/白頭の嶺を越え、落葉松(からまつ)の林を越え(以下略)」と朝鮮人民との連帯・植民地解放を訴えた槇村浩(投獄・拷問等により26才で病死)の「間島パルチザンの歌」の歌碑もこの通りにある▼坂本竜馬・植木枝盛・幸徳秋水・槇村浩・山原健二郎……土佐はまさに自由民権と革命的伝統が息づくところだ。(佐)

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「田辺9条の会」が第9回総会開催

 6月2日、「田辺9条の会」第9回総会が田辺市民総合センターで、40人の参加で開催されました。最初に金原徹雄弁護士が「今、憲法はどう変えられようとしているのか」と題して講演され、①昨年12月の総選挙の結果、「改憲3派連合」(自民・みんな・維新)が躍進し、憲法と9条にとって危機的な状況が現出した。②自民党改憲案は、平和主義を謳った前文が全面的に書き換えられ、国防軍の創設と集団的自衛権の行使をもくろむとともに、軍法会議の設置や機密保持に関する法律の制定など非常に危険なものになっている。③自民党改憲案は、国民に憲法尊重義務を課しているが、これは「憲法は国家権力の横暴から国民を護るもの」との世界で普遍の原則の対極にあるもので、国民主権の上に元首天皇が君臨し、基本的人権は「公益及び公の秩序」で制限できるという、国民への挑戦的で深刻な内容となっている。④今や「改憲3派連合」は極右派に変貌した。参院選は危険な勢力との対決の場となる、と指摘。憲法の危機的状況、集団的自衛権、自民党改憲案についての学習を進め、改憲阻止の「伝道師」になろう。そのためにツイッターなどいろんな手段を講じて情報を発信しよう。参院選では「改憲3派連合」を1議席でも減らすために力を結集しよう、と訴えられました。
 総会では活動報告と会計報告、活動計画と予算案が提案され、承認されました。その中で、「変えてもいいの? 日本国憲法」の意見広告を5月3日付の紀伊民報に出したこと、9条の会や反原発・環境・人権に関わる団体やサークルによる「第4回紀南ピースフェスタ」の取り組みが進み、地域の中での共同が進んでいることなどが紹介されました。会員からはもっと世話人を増やし体制を強化しようとの積極的な発言と注文も出され、役員は代表世話人・木川田道子・田所顕平他が承認されました。
 最後に参加者から、周囲の住民に「わかりやすく」説明するにはどうすればいいのか、無関心な若者の顔をこちらに向けさせるにはどうするか、「引きこもり」の青年たちの生きる力と結んだ活動のあり方など、大切なテーマに関わる発言が相次ぎ、中身豊かな意見交換の場となりました。(田所顕平さんより)

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DVD紹介『憲法ってなぁに? 憲法改正ってどういうこと?』
伊藤真弁護士語りおろしDVD

憲法改正されたら、どうなっちゃうの?
まさか、うちの子、戦争に行かされるの?
憲法は、国民が国家権力に「守らせる」ものなの?
憲法と法律の違い??? 憲法の役割?
攻めてきたら、どうするの?
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 伊藤真先生(私は「ミスター憲法」と呼ぶ)の講演を聞くとき、いつも思うのは「こんなに分かりやすく明確に憲法のことを語れるのはすばらしい」。そしてなによりも明確なのは、日本の憲法はとてもいい憲法だということです。改正するなら、文字通り、もっといい憲法にしなければならないはず。
 今、憲法改正派が考えている「改正」ではあらゆる面で憲法を悪くして、民主主義・平和を否定してしまうことになります。このDVDを見ればその「改悪」と戦う武器を手に入れることができます。できるだけ多くの人に見てもらいたいです。
 映画監督 ジャン・ユンカーマン(映画『日本国憲法』他)
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Workers For Peace
1枚:500円+送料80円
FAX 03-5382-3220
HP http://workers4peace.org

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(2013年6月13日入力)
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