「九条の会・わかやま」 222号を発行(2013年6月24日付)

 222号が6月24日付で発行されました。1面は、町民過半数署名 残り45筆「9条の会・美浜」 、96条改憲55%反対 9条堅持も過半数 東京新聞世論調査 、集団的自衛権は日本の外で米軍とともに戦争をするもの(孫崎享氏③ )、九条噺、2面は、全県一斉署名行動実施、国民の中に96条改悪反対が根付いた(小林 節 氏 ① )   です。

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[本文から]

町民過半数署名、残り45筆
「9条の会・美浜」

 6月9日、あともう少しで町民の過半数署名が達成される美浜町で憲法署名行動が行われました。
 「9条を守る御坊・日高共同センター」より18人、「9条の会・美浜」より11人、計29人で署名活動を実施。2人1組の班を中心に16班で、3巡目の時に留守で対面できなかったところを重点に訪問しました。留守が多いところや、分らない、しないと拒否されるところもありましたが、合計172筆を集めることができました。過半数3291筆まで残り45筆に迫りました。「9条の会・美浜」は、独自の統一行動を組んで早急に達成する予定です。(大谷眞さんより)

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96条改憲 55%反対 9条堅持も過半数
東京新聞世論調査

 6月4日の東京新聞は世論調査結果を発表し、「『憲法改正』は賛否が拮抗したが、戦争放棄を掲げる9条と改憲ルールを定めた96条の見直しは、いずれも反対が賛成を大きく上回った。『原発の再稼働』には有権者の約6割が反対し、政権の方針と民意の隔たりを明確に示す結果となった」と報じています。
 調査結果では「憲法改正」は、改憲を「した方がよい」が42%、「しない方がよい」が40%となっていますが、9条は「変えない方がよい」が58%、「変える方がよい」が33%です。96条の見直しは「過半数への緩和に反対」が55%、「賛成」が38%となっています。改憲を「した方がよい」と答えた人でも、42%が9条を「変えない方がよい」とし、96条も38%が「緩和に反対」と答えています。

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集団的自衛権は日本の外で米軍とともに戦争をするもの

 5月11日、「5・11県民のつどい」がプラザホープ(和歌山市)開催され、孫崎享氏が「領土問題と憲法9条~国際紛争の平和的解決のために~」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。
孫崎享氏③

 私も日米安保条約はあるべきではないと思っている。これに最初に異議を唱えたのは芦田均で、有事駐留論を主張した。これでGHQ参謀第2部の暗躍で昭電事件が起り、芦田内閣は総辞職に追い込まれた。その時検察官は「政治家をやめたら無罪にしてあげる」と言った。今と似ている。米軍は駐留すべきではない。外国軍に駐留されている国はどれだけあるか。それも首都東京の上空がコントロールされているような国はない。こんな日米安保条約になったのは、ダレスがサンフランシスコ講和条約の時に「我々の望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させることが、我々の目的だ」と言い、それを実現させたのが今日の日米地位協定だ。しかし、それでも今やろうとしている集団的自衛権よりは今の安保条約の方がましと言えなくもない。安保条約は日本の領域に攻撃があった時には憲法の枠内で行動することになっている。集団的自衛権は日本の領域に限っていない。日本の外、イラクとかアフガンとかに適用しようとしている。安保条約は「攻撃があった時、国連憲章に従い」となっている。国連憲章は「主権を尊重。武力攻撃はしない」が基軸になっている。集団的自衛権はこれを全部取り払う。アメリカの今日の戦略は、基本的にアメリカのために国際的安全保障関係の「改善」の軍事行動をすることだ。サダム・フセイン、金正恩を排除することも全てOKだ。しかし、こんなふうに世界は動いてこなかった。1648年、主権を認めるウェストファリア条約が調印され、その精神を引き継いで国連憲章になった。その国連憲章に従ってという枠組みを作ったのが日米安保条約。それを今取り払おうとしている。取り払うために憲法に手をつけようとしている。安倍首相はあたかもナショナリストのような顔をしながら、やることは全くアメリカ追随の政策になってしまった。
 領土問題を考える時に一番重要で基礎に置くべきことは、我々はどのような約束を他国としてきたかということだ。ポツダム宣言には領土問題は、「日本の主権は本州、四国、九州、北海道とする。その他の島々は連合国側が決定するものに極限する。カイロ宣言を順守する」と書かれており、我々はこれを約束した。北方領土はアメリカとソ連の間で千島列島はソ連にあげるという約束が出来ていた。サンフランシスコ講和条約で日本は千島列島を放棄した。調印の前日に吉田首相は国後、択促は千島の一部だと言っている。
 自民党は原発を再稼働させ、TPPを推進し、国家の主権がなくなっていくという大変な時代に今直面している。直面していながら我々はなんとなく騙され続けている。どうしたらいいのか。我々世代はものすごい使命を負っている。TPPも原発も今後20年、30年の日本の運命を決めるものだ。我々はこれらの問題に真剣に取り組むという人たちを見出せず、これをやろうする政党が勢力を持つこと、憲法改正まで行こうとすること、これらを黙って見ているのか。今は本当に深刻なところに来ていると思う。(おわり)

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【九条噺】

 国連拷問禁止委員会はこのほど日本政府に対して「(慰安婦問題等で)日本の政治家や地方の高官が事実を否定し、被害者を傷つけている」と勧告して責任ある対応を求めた▼この委員会は84年に国連で採択された「拷問禁止条約(拷問及び他の残虐な非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約)」に基づいて設置され、批准各国が条約を守っているかどうかを定期的に審査。日本については今年が2回目の審査だった。審査では、委員とNGOの公式ミーティング、日本政府への質問と回答、再質問が行われた。NGOは検察や警察が密室で取り調べを行い自白を強要している問題や職場の人権侵害等も訴えたが、日本政府は「NGOの要望も取り入れ市民社会に生かしている」などと意味不明の回答をしたという▼審査での委員の発言は殆ど慰安婦問題に集中。「日本政府は謝罪したとしているが真正なものではない。アジア女性基金も少なすぎる。国民にどんな教育をしているのか」「大阪市長の発言は、性奴隷は必要だった、強制はなかったというが、受け入れられない。軍の管理で慰安婦は外出もできなかったではないか」「これは放棄された女性への日本政府の責任に係る問題だ。どう対処するのか」と日本政府を追及したが、上田国連大使は「慰安婦問題は条約以前のこと」と開き直り、珍妙な演説までやり、会場は一転異様な雰囲気に包まれたと聞く。(佐)

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全県一斉署名行動実施

 6月9日、全県一斉署名行動(9の日行動)が行われました。伊都地方3カ所、和歌山市3カ所とJR和歌山駅前、海草地方1カ所、日高地方1カ所、西牟婁地方1カ所、東牟婁地方2カ所で署名活動が行われました。那賀地方は6月16日に5カ所で実施されます。
 日高では住民過半数に迫っている美浜町に集中して活動。残り45筆まで到達しました(表面参照)。和歌山市のJR和歌山駅前の署名活動では「和歌山うたごえ9条の会」のメンバーが演奏しながら、署名を訴えました。

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国民の中に96条改悪反対が根付いた

 6月8日、神戸市で「9条の心ネットワーク」他主催で、改憲派の慶応大学教授・小林節氏の講演会が行われました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。
小林 節 氏 ①

 私は改憲論者だ。私は軍事力による決着をしないで済むように、軍事力を並べて見せておくことは意味がある、それは使うことにはならないという外国人の考え方で言っているだけだ。
 自民党の改憲草案は明らかに改悪で、「海外派兵やり放題草案」になっている。海外派兵はすべきでないと思っているから、厳格な条件を憲法に書き、あるけれど使えない状態にしておくのが一番いいと思っている。自民党は海外派兵を法律に委ねると言う。政権を持っている者は必ず国会で過半数を持っており、法律を作れる。法律次第でアメリカ親分に言われるとどこへでも海外派兵できる国にするというような憲法は作ってはいけないと私は思う。
 今年5月3日前後の2、3週間の議論の結果、日本全体の憲法教養が上がった。96条はたかが手続きだと思っていた人たちに、権力を預けている政治家にこの国を勝手にされてはたまらないという意識が根付いてしまったと実感する。世論調査で96条改悪反対が明確に出てきた。人びとの腑に落ちた、納得したのだ。96条をキチンと守らないと、この国を特定の権力者に乗っ取られてしまうことに気付いた。風はピタッと止み、第3極の意見も止まった。憲法改悪を志向する人は選挙で当選させないことだが、運悪く参議院でも3分の2を取らせると、本当に憲法改正をやってくる。その時は国民投票で対抗しなければならない。国民投票法は項目別に分けて投票することになっており、最大半年間店ざらしにしておける。半年間は論争できる。たった3週間で逆転できたのだから、半年あれば完全勝利できる。そうしたら二度と改憲派は改憲提案ができなくなる。
 今日本にいろんな問題が起きるのは「国が緩んでいるからだ。憲法のせいだ。昔の日本は良かった」と言う人がいるが、真っ赤な嘘だ。憲法は個人主義だから家庭を顧みないとか、一番大きな組織は国で、一番小さな組織は家庭だから、国を愛せ、家族仲良くと2つの「道徳」を宣言する。愛は強制されるものではなく、心の奥深くの自然の判断だ。「家族仲良くしなさい」と憲法に書かれると、「不仲家族取締法」が作れてしまう。
 六法がある。私人の間のトラブルを解決するのが民法と民事訴訟法、私人でも会社などは商法。犯罪に対応するのが刑法と刑事訴訟法。これが六法の5つの分野だが、残る憲法は何か。アメリカが独立戦争を戦った時、世界は英・仏・西という3大王国が世界を植民地にして仕切っていた。独立戦争を戦った人は国家である以上、王が必要で、ジョージ・ワシントンを初代アメリカ王にすると考えていた。ワシントンは、我々は王と戦って勝利した。我々が王を作ったら矛盾だから王制はとらない。イギリスに支配されなくなったので、自分たちで統治しなければならなくなり、血筋で選ばず、選挙で選び、任期でやめる大統領制という、民主的手段で王に代わる者を選ぶ工夫をした。選挙で選ばれた権力者であっても個人を超えた能力を持つから、権力が濫用されないように、権力は制限されているという規定をするのが憲法だ。憲法は必然的に濫用する本質を含む国家権力を預かる人、選挙で選ばれた政治家とその下で任命され働いている公務員たちを縛るという目的を持った法だ。(つづく)

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(2013年6月26日入力)
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