「九条の会・わかやま」 223号を発行(2013年7月7日付)

 223号が7月7日付で発行されました。1面は、結成7周年の集い開催 「和歌山障害者・患者九条の会」、9条改悪反対54% 96条も反対55% 朝日新聞世論調査、民主主義には立憲民主主義という少数決もある (小林 節 氏 ② )、九条噺、2面は、第2回和歌山県「9条の会」交流集会 今秋開催、コンビニで『日本国憲法』   です。

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[本文から]

結成7周年の集い開催
「和歌山障害者・患者九条の会」

 6月23日、「障害者・患者九条の会」は和歌山市ふれ愛センターで、総会と7周年の集いを行いました。
 総会に先立ち、「県民の会」の坂本さんは、情勢などを話してくださった後、「私はここに連帯の挨拶に来ました」と言ってくださったのが印象的でした。
 総会の後は「紙芝居九条の会」の神谷さんに広島の原爆の悲惨さを訴えた紙芝居を熱演していただきました。続く記念講演、フリートークと、あっという間の3時間でした。
 記念講演は、堀江佳史弁護士による「橋本車いす訴訟と障害者福祉~私たちの生活と障害者差別禁止法」という講演でした。堀江先生は、橋本車椅子裁判の弁護団長を務めておられます。裁判の経過説明の後、障害者差別解消法について話され、「今始まったばかりでこれからだと思う。皆さんが声を出していくことです」と締め括られました。
 今回は、ふれ愛センターに設置されている磁気ループという機器を使用させていただきました。これは難聴の方の聞えの保障をする機器で、利用された方によると、非常に雑音も少なくよく聞えたそうです。
 新しい福祉機器がどんどん開発され、生活しやすくなってきましたが、障害のある方の権利保障が前進するのは平和だからこそです。この平和を守る活動を根強く行っていかなければと思いました。(野尻誠さんより)

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9条改悪反対54%
96条も反対55% 朝日新聞世論調査


 6月26日、朝日新聞は世論調査結果を発表しました。
 9条を「変える方がよい」は37%で、「変えない方がよい」は54%、96条を変えることは、賛成37%、反対55%でした。
 参院比例区で自民に投票すると答えた層でも9条を「変える方がよい」は45%、「変えない方がよい」は47%。96条改定も賛成、反対ともに46%でした。

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民主主義には立憲民主主義という少数決もある

 6月8日、神戸市で「9条の心ネットワーク」他主催で、改憲派の慶応大学教授・小林節氏の講演会が行われました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は2回目。
小林 節 氏 ②

 憲法がキチンと機能しておれば、国という後ろ盾があるから、民法とか刑法とか諸法は機能する。ところが憲法は国家権力をたかだか「紙切れ」で説得しなければならない。憲法に後ろ盾はない。一番危ないものを言葉だけで縛るのが憲法だ。説得で納得させるために、憲法を最高法だと位置を決めて、有難みを与え、権力者が簡単に振りほどけないよう、世界の憲法は加工しにくい硬性憲法になっている。だから、普通の法律は2分の1で改廃できるが、憲法は重たいものだから3分の2以上ないと提案できないし、国民投票で否決されたらダメだと、がんじがらめの制度になっている。
 六法にはそれぞれ役割分担があって、全部、内なる不完全さを抱えた人間をそれぞれの分野別に監視するための法であり、憲法は権力を握った不完全な人間を監視するための法だ。96条改憲派は、「国民の過半数が改憲を望んでいるのに、衆参どちらかの議員の3分の1の抵抗で、国民の過半数の邪魔をしている。これは少数決で民主主義ではない」と言う。これには2つの嘘がある。
 ひとつは、国民の過半数が改憲を望んでいるという嘘。そんな世論調査結果は改憲論者の私も見たことがない。90年代から世論が変わったのは改憲論議自体はタブーではないという1点だけ。不完全な人間が作った憲法だから、使い間違い、作り間違いはいくらでもある。例えば、予算は内閣が予算案を提出し、国会が議決して予算になるが、憲法には「案」が抜けているし、衆議院には解散があるが、解散権の主宰がどこかは書いていない。憲法は必ずしも完全なものではない。過半数がいいのではないかと言いそうなのは「プライバシー権」くらいだ。
 いまひとつは、「少数決で民主主義ではない」という嘘。民主主義は2つあり、「多数決民主主義」と「立憲民主主義」だ。人間は個性的存在であり、突き詰めると全ての人は意見が違うが、共同生活をしない訳にはいかないから、取り敢えずの指針としてひとつの方針を決めなければいけない。そのために国会があるが、議論をして、議論が尽きた時、決を取り多数派の方が正しかろうという前提で、多数決で決める。だけど、多数が狂うことは幾らでもある。その時は価値の原理で少数が思い止まらせる。立憲民主主義とは少数決があり得るということだ。数の原理と価値の原理の両方が揃っていないと民主主義ではない。何故数が尊いかというと正しいことを目指すだろうという推定があるからだ。多数が正しいことを言わない場合は、俄然第2の少数決が出てくる。
 現憲法がきらいな人はアメリカに押し付けられたと言う。明治憲法下では、日本国民があのバカな戦争を食い止め得ない仕組みだった。国民自らの憲法など持ち得ない状況に置かれていた。だから、現憲法はアメリカから与えられたのは事実だと思うが、日本国民が自ら発想出来なかったとしても、深く納得して受け入れればそれでいいではないか。日本国憲法は国民に根付いている。明治憲法下では我々に人権はなかった。天皇が許す限りの自由しかなかった。こんなものは人権ではない。だから、私は「押し付けてくれてありがとう」という立場だ。あの悲惨な戦争のあとに日本国民があの憲法をしみじみとして受け入れたという事実は誰も否定できないと思う。
 私は、日本国憲法は素晴らしい憲法だと思う。但し、素晴らしくても不完全な人間が作ったものだから、バージョンアップするのはいいのではないかと思う。日本国憲法の精神を崩さず、今様に発展させることを言い続けている。
 96条先行改正論の「96条は世界一憲法改正を困難にした条文である」というのは嘘だ。アメリカは上下両院の3分の2以上+50ある州の4分の3以上の同意が必要、世界の先進国は3分の2+国民投票が次の厳しさ、日本は厳しい方だが、世界一厳しいというのは嘘だ。しかし、歴史的背景があり、日本は運用実体からして、憲法改正がし難くなっているのは事実だと思う。それは憲法への関心が薄いことがあると思う。日本の憲法史を考えると、江戸幕府体制を明治維新が打ち砕き、明治天皇が明治憲法を「汝臣民に下げ渡す」とした訳だから、明治憲法は我々のものではない。日本には、アメリカのように自分たちで憲法を作った経験がない。憲法は我々にありがたいものだが、日本では遠すぎる存在だ。だからこそ、憲法をもっとしみじみと学習してほしい。(つづく)

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【九条噺】

 6月23日は沖縄慰霊の日。68年前の太平洋戦争末期、沖縄は本土防衛を前に戦略上の捨て石とされ地上戦の修羅場と化した。「鉄の暴風」といわれた米軍の砲撃や空襲、日本兵に殺されたり、集団死を強いられたりして、死者約20万人。県民の4人に1人が命を落とした。最近、この戦争を生き抜いてきた高齢者の4割が心にストレス障害を患っている可能性が高いとの研究調査結果がでたと聞く▼糸満市の平和祈念公園でおこなわれた「沖縄全戦没者追悼式」では1人の児童の詩の朗読が注目をあびた。この児童は日本の一番西にある与那国島の小学校の1年生で、ひらがなも最近習い終えたとのこと。詩はその児童が懸命に書き上げ、県の平和祈念資料館が募った「平和の詩」に寄せたもの▼へいわってなにかな。ぼくは、かんがえたよ。おともだちとなかよし。かぞくが、げんき。えがおであそぶ。ねこがわらう。……やぎがのんびりあるいてる。……「ドドーン、ドカーン」。ばくだんがおちてくるこわいおと。……くるしむこども。……ああぼくはへいわなときにうまれてよかったよ。……へいわなかぞく、へいわなよなぐにじま、へいわなおきなわ、へいわなせかい、へいわってすてきだね▼平和について実に大切な視点を子どもの澄んだ目と心で教えてくれているように思う。それだけに、その同じ追悼式で、首相のまるで中身のない挨拶にはどっと疲れた。「沖縄の負担軽減につとめる」やて、もう聞き飽きたわ。(佐)

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第2回和歌山県「9条の会」交流集会 今秋開催

第1回交流集会風景(08/07/05)

 安倍内閣のもとで憲法9条が大きな危機に直面しています。総力を上げて憲法9条を守ることが必要です。また、9条改憲を狙って96条改定先行論も出ています。県下の各「9条の会」は急いで、大いに活動を強化し、ゆるぎない改憲反対の多数派の形成が必要です。各会が取り組みを持ちより、講演を聴いて情勢と課題を明らかにし、お互いの経験に学びあい、励ましあって、「9条の会」の輪をもっともっと大きくするために、08年7月に続き、第2回和歌山県「9条の会」交流集会を、下記の通り開催します。

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2013年9月8日(日)13:30~16:30
プラザホープ 4階ホール
<プログラム>
●講演(仮題)憲法をめぐる情勢と私たちの課題・全国の進んだ活動に学ぶ
 講師  小沢隆一氏(東京慈恵会医科大学教授・憲法学)

  

●経験発表
  各「9条の会」から

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コンビニで『日本国憲法』

(小学館 定価500円+税)
 6月20日、NHKは「憲法の条文をそのまま書いた本が20日から全国のコンビニエンスストアなどで販売されています。『日本国憲法』というタイトルのこの本は、憲法の前文とすべての条文をそのまま書いたもので、漢字にふりがなを付け、日本の自然などカラフルな写真を盛り込んでいます。初版は昭和57年に発売されましたが、今年に入ってから出版社に問い合わせが相次いだため、表紙などをリニューアルして再び出版されました」と伝えています。
 この本は「改憲反対」とか「賛成」とかを主張していません。憲法の全文を、「六法全書」のような小さな活字ではなく、大きな活字で表し、漢字には全てルビが振られています。さらに、憲法の中の様々な語句の注釈も書かれています。日本国憲法は何をどのように謳い、私たちに何を保障しているのかを、改めて見直すには便利かと思います。書店や通販でも入手できます。

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(2013年7月8日入力)
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