「九条の会・わかやま」 224号を発行(2013年7月26日付)

 224号が7月26日付で発行されました。1面は、参院選 改憲勢力は3分の2に達せず 、首相 集団的自衛権行使に突き進む 「国家安全保障基本法案」の提出を狙う、賢明な有権者がこの国と自らを救う(小林 節 氏 B )、九条噺、2面は、石破自民党幹事長が不穏な発言 国防軍で命令に従わなければ「死刑」「無期懲役」「懲役300年」、書籍紹介『自民党憲法改正草案にダメ出し食らわす!』   です。

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[本文から]

参院選 改憲勢力は3分の2に達せず


(時事通信より)

 7月21日の参院選で、憲法96条改定を主張している「自民」「みんな」「維新」は計81議席を獲得しましたが、「改革」を含む非改選の62議席を合わせても143議席で、3分の2の162議席には達しませんでした。
 しかし、「加憲」の立場を取る「公明」が加われば163議席に達します。また、共同通信が選挙前に行っていたアンケートを参院選当選者と非改選議員計196人で再集計すると、「民主」で11人、「公明」で11人が「憲法を変えるべきだ」と回答しているとのことです。この計22人を加えると165人となり、計算上は、改憲発議に必要な参院3分の2の162議席を超えることになります。改憲の動きに引き続き厳重な注意・監視が必要です。

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首相、集団的自衛権行使に突き進む
「国家安全保障基本法案」の提出を狙う


 7月23日の朝日新聞は、「安倍首相は22日、集団的自衛権の行使容認に向けた議論を来月にも再開する考えを表明した。関連法の整備を政府提出で行う意向も示した。歴代内閣は『(集団的自衛権は)国際法上は保有しているが、憲法9条との関係で行使できない』としている。首相は『安全保障環境が大きく変わる中で国民を守るために何が必要かという観点から引き続き議論を進める』と述べ、中断している私的諮問機関『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』(安保法制懇)での議論を加速させる考えを示した」「『(憲法)解釈をただ変えればいいということではない。部隊が対応するには法的な裏付けが必要だ』と指摘。集団的自衛権行使の手続きを定めるため自民党が準備してきた国家安全保障基本法案については『私は閣法(政府提出法案)であるべきだという考えだ』と述べた」と伝えています。
 安倍首相は、集団的自衛権行使反対が国民の多数なのに、参院選の大勝で、明文改憲の前に解釈改憲、立法改憲で行使に突き進もうとしています。

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賢明な有権者がこの国と自らを救う

 6月8日、神戸市で「9条の心ネットワーク」他主催で、改憲派の慶応大学教授・小林節氏の講演会が行われました。要旨を3回に分けてご紹介します。今回は3回目で最終。
小林 節 氏 B

 「憲法を守ろう」ではなく「政治権力者に憲法を守らせろ」が正しい。日本国憲法96条は形式的に世界最強の厳格条文ではない。厳格な方だが、3分の2は世界の相場だ。日本には立憲体系がなさ過ぎたから、憲法を理解して護持するという体質も薄い。96条を先に改正しようというのは、ゲームの始まる前にルールに縛られる当事者がルールを外そうという話から始める。これはどう考えても品がない。世界で憲法改正手続きの改正から入った例は一度もない。それくらい異常なことだ。
 何故こういう異常なことができるか。自民党の改正草案は前提が狂っている。憲法の名宛人は国会議員たちだ。その国会議員が5年前に「汝、国を愛せよ」などと言った。国民に国を愛してほしいなら、いい政治をすればいいだけの話だ。「思っていないけれど、憲法様が命じているから愛します」は思想・良心の自由に反することだ。法と道徳の区別が分っていない。「日本人は道を求める民族で、天皇が父の大ファミリーで慈しみ合う日本人の美徳を」などと言っている。ヨーロッパでは絶対王制が悪魔化した時は市民が革命を起した。これが歴史の必然だ。「武力闘争で国を建て、憲法だ人権だと権力を抑え込んだ体験は日本にはない」とも言っているが、これも嘘だ。明治憲法下で悲惨な戦争がやられてしまったという愚かな憲法体制であった。ということは、分りやすく言えば当時の日本は今の北朝鮮状態であった。絶対王制に対して歯向かうことすらできない程悲惨だった。天皇と国民が愛し合っていたから革命が起きなかったのではなく、それ以前の恐れ多い関係だった。天皇の名を担いだ執権、将軍、元老、軍部、官僚などと国民の間には常に葛藤があった。そういう体制の中で、負け戦を戦後処理の中で見聞きしている旧体制エリートの子どもの世襲議員は、そういう恨みをがっちりと持っている。思い込みが違うというのは気づいた方がいい。
 自民党案は9条改悪を提案している。独立主権国家である以上自衛権があるというのは、私は共有する。9条の前提に「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ので戦争放棄、戦力不保持としているが、「みなさんの人格を信頼して、刑法をなくす、警察いらない、鍵をかけずに生きる」というのは危ない。人間が人間である以上、刑法や民法がなくなる世の中がきたら9条でいいと思う。我々に侵略の意図がなければ侵略しないで済むが、侵略されないとは限らないので、侵略されたら国際法上もっている自衛権を発動して、日本の国力に相応しい軍事力を持つ。日本は国際国家だから、国際貢献も書いておかないとまずい。しかし、アメリカに言われたら、アメリカの二軍のように出て行くのは絶対にまずいと思う。今の自民党案だったら、海外派兵は法律に委ねるというが、政権を持っておれば法律は作れる。だからアメリカの二軍としてどこへでも飛んでいく。自民党の9条改正案は大変危ないものだ。だからこそ、一気に行けないので96条から来る。96条は何が何でも守らなければならない。5月の3週間の96条論争は負けたと自民党の何人もが言いに来た。しかし、維新などのグループは要注意だと思う。
 主権者国民は主権者意識と憲法感覚に目覚めたと思う。気を抜いたら危ないが、警戒を怠らないでほしい。護憲派も改憲派も現実を直視してほしい。私は、護憲派は理想的を超えた「空想的9条愛好家」と思っているし、改憲派は「空想的明治憲法愛好家」だ。「明治憲法は素晴らしい社会を実現していた。あの明治に戻ろう」論だ。選挙こそ悪しき権力者に審判を下す原則に帰ってほしい。賢明な有権者がこの国と自らを救う。(おわり)

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【九条噺】

 ずいぶん長いたたかいである。辺野古への新基地設置に反対する住民の座り込みはこの7月で6000日を超えることになる。たたかいの発端は18年前の米兵による少女暴行事件である。県民の怒りはたいへん激しく、基地撤去を求める声もかつてなく大きくなった。対応を迫られた日米両政府が窮余の策の一つとして決めたのが普天間基地の辺野古への移設である。(両政府の合意の詳細はSACO=沖縄に於ける施設及び区域に関する特別行動委員会=関連文書参照)▼当時、辺野古には海兵隊の基地としてキャンプ・シュワブがあったが、辺野古の地先は一帯が県指定の重要保護区域。コバルトブルーに覆われ、ジュゴンが泳ぎ、ウミガメが産卵する美しい海辺だった。普天間基地の辺野古への移設というのは、とりあえず、この素晴らしい天然の遺産をコンクリートで塗りつぶしてしまうことである。少し小高いところからこの一帯を見渡せば、あまりの美しさに感動してことばも出ない・・・。40年以上も昔のささやかな体験だ▼安倍首相はさかんに「沖縄の負担軽減のため」辺野古への移設をと繰り返す。これこそ実る見込みがない見本のようなものだ。17年間、首相の顔ぶれも随分変わったろうに、「辺野古に移設」だけは誰も変わらない。沖縄県民・辺野古住民に顔を向けた首相もいない。しかし沖縄・辺野古住民はたくましい。座り込みはさらに7000日に向けて元気に続けられているのである。(佐)

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石破自民党幹事長が不穏な発言
国防軍で命令に従わなければ「死刑」「無期懲役」「懲役300年」


 7月16日の東京新聞は、自民党石破幹事長が4月に出演したTV番組「週刊BS・TBS報道部」で、「自民党は憲法9条を変更して自衛隊を『国防軍』にすることを掲げた。それに伴い、国防軍に『審判所』という現行憲法では禁じられている軍法会議の設置を盛り込んでいるが、『審判所』設置に強い意気込みを見せた。『死刑』『懲役300年』など不穏な単語も飛び出した」と、平和憲法に真っ向背反するものとの批判記事を掲げました。問題の石破発言の概要をご紹介します。  改憲案9条の2の5項には、「軍人その他の公務員が職務の実施に伴う罪か国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、国防軍に審判所を置く」とある。続けて石破氏は、現在の自衛隊で隊員が上官の命令に従わない場合は、自衛隊法で最高でも懲役7年が上限であることを説明し、こう語った。

 「『これは国家の独立を守るためだ。出動せよ』と言われたときに、いや行くと死ぬかもしれないし、行きたくないなと思う人がいないという保証はどこにもない。だから(国防軍になったとき)それに従えと。それに従わなければ、その国における最高刑に死刑がある国なら死刑。無期懲役なら無期懲役。懲役300年なら300年。そんな目に遭うくらいなら、出動命令に従おうっていう。人を信じないのかと言われるけれど、やっぱり人間性の本質から目を背けちゃいけない」。こうした重罰を科すために審判所は必要で、石破氏は「公開の法廷ではない」と付け加えた。

 現行憲法は、76条で「特別裁判所」の設置を禁じています。軍法会議はこの特別裁判所にあたるため、通常の行政機関を装った「審判所」という名称にしたのではないかと思われます。
 石破発言は、戦前の軍隊の在り方を否定することから戦後日本は出発し、現行憲法がつくられたのに、平和国家日本のありようを根底から覆するものと言わなければなりません。

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書籍紹介『自民党憲法改正草案にダメ出し食らわす!』

護憲論者の伊藤真と、改憲論者の小林節が、憲法改正に対する意見は違っていても、憲法は国家をしばるものという点において意気投合! 自民党の「憲法改正草案」のどういうところがダメなのか、現代の日本における憲法研究者の第一人者であり、草案作成のプロセスも知る2人が、徹底的に論じ合う。立場を越えて憲法の原点に立ち返る、立憲主義宣言!(合同出版のHPより)

★96条改正草案へダメ出し!
→これでは、実質上、憲法が法律と同じになってしまう。つまり憲法に拘束されるべき権力者たちが憲法から自由になりたい…という提案で、これは、立憲主義の否定、民主主義への反逆で「憲法破壊の試み」である。― 小林 節

★前文改正草案(3段)へダメ出し!
→人権尊重するのは、まず国でしょう。こんなことまで国に言われたくない! しかも抑止力とかいって近隣諸国にケンカ腰の政治家からは特に。― 伊藤 真

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2013年7月15日 第1刷発行
発行所:合同出版 03−3294−3506
定 価:本体1300円+税

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(2013年7月28日入力)
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