「九条の会・わかやま」 228号を発行(2013年10月2日付)

 228号が10月2日付で発行されました。1面は、96条問題は憲法の意義を知らせるいいチャンス(小沢隆一氏 @)、憲法9条を日本から世界に発信しよう!9条世界会議・関西2013&9条国際会議、九条噺、2面は、安保法制懇が再開 憲法解釈見直しありき(東京新聞)、書籍紹介『憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?』   です。

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96条問題は憲法の意義を知らせるいいチャンス

 9月8日、「第2回和歌山県『9条の会』交流集会」がプラザホープ(和歌山市)で開催され、小沢隆一氏(東京慈恵会医科大学教授)が「参院選後の憲法 〜情勢と私たちの課題〜」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

小沢隆一氏 @

 今、憲法をめぐる情勢は最大の危機を迎えている。昨年の総選挙では改憲派が勢力を増してしまった。自公の与党は3分の2の多数を取り、維新やみんなの改憲派が議席を増やした。参院選では自公が安定多数を取り、維新やみんなもひと頃の勢いはないが、そこそこの議席を確保し、衆参で改憲派がかなりの数を占めることになってしまった。16年まで衆参の選挙はないので、改憲派は選挙で国民の批判を浴びることなく、じっくり攻められる絶好の3年間を得たことになる。だから、私たちもこの3年間じっくりとしっかりと憲法を守る取り組みをする必要がある。何をするかだが、一番大切ことは学ぶことであり、学んだ上で自分たちで憲法を使ってみる、生かすということが大切だ。大切さが実感されたら守ろう、守らせようという気持ちも湧いてくる。
 参院選では、マスコミは比較的憲法問題を争点として取り上げたが、安倍首相は真正直に争点にしては票を減らすかもしれないという危機感から途中でやり方を変え、表に出さない方向になった。07年の参院選では公約のトップに憲法を掲げていたが、今回は一番最後にまわした。そして、96条改定を公約には盛り込まなかった。国民が96条改憲はおかしいという声を上げ始めたので、96条改憲は持ち出せなかったという参院選の戦いだった。参院選で憲法問題に熱心だったのは維新の会だったが、その勢いを失った。民主党は改憲派との違いを際立たせるために96条改憲反対となり、みんなは改憲問題そのものを公約に盛り込まなかった。国民の憲法守れの声を意識した選挙戦だった。憲法を守る勢力は、社民党は残念だったが、共産党は東京・京都・大阪でも議席を取り勢力を伸ばした。改憲派は「改憲する」とひと頃は威勢が良かったのに、国民の中から反発があって、それを言い出せない状況で選挙戦を迎えた。逆に護憲派はここぞと声を大きくした選挙戦になったと思う。しかし、選挙制度が大政党に有利なので、結果として自公が安定多数を取るという体制が出来てしまった。ただ、この体制の中でも公明は政権の中で改憲・集団的自衛権にブレーキをかける立場を強調している。創価学会婦人部の平和への声も無視できない。維新やみんなの勢いがストップしたことにより、今後の政局は自公中心の政局になるが、憲法に対しては国民の声を意識して、あまり明確な改憲を押し出すことはまずいという声がバランス・パワーとして起ってくる状況が生まれている。しかし、安倍首相、麻生氏、石破氏らはバリバリの改憲派だ。彼らの繰り出す改憲の動きは注意深く見つめる必要がある。問題点は常に機敏に指摘してこれを抑えることが肝心だ。
 96条改憲については、安倍氏は昨年の総選挙後すぐに、まず96条から手をつけたいと言い出した。これならみんなや維新も乗ってくるだろう、これなら改憲派を束ねて改憲への道筋をつけることができる、これを仕上げて次に9条改憲をやろうというシナリオを描いた。ところが、96条に手をつけるということは「禁断の実」に手をつけることだった。96条問題は憲法問題の「イロハ中のイロハ」で、一番大事なことが含まれている。国民の中に憲法の持つ意義を知って貰ういいチャンスを改憲派がくれたようなものだ。一般の人に憲法とは何かを分かって貰うには96条は最もいいテーマだ。ここに憲法とは何かという問題、憲法、私たち、政治家の3者の関係が見事に凝縮されている。自民党はどういう理由で96条改憲を進めようとしているのか、Q&Aには、現憲法は世界的に見ても改正し難い憲法になっているという。日本国憲法よりもっと改正し難い憲法も世界の中にはある。日本より改正が難しいと思われるアメリカでは何度も改正をしている。必要があれば、また国民の合意があれば改正がどんなに難しい憲法でも出来るときは出来る。戦後68年間、何故日本国憲法が変わらなかったのかは、そもそも9条は変えるべきではないという国民の声が圧倒的に強くて、その声の下ではどんな政治家でも改憲出来ないという状況が続いてきたからだ。
 Q&Aでは、憲法改正ができないのは国民の意思が憲法に反映しないことになると言っている。「国会議員の3分の2」は、改憲発議は簡単には許さないということであって、国家権力を担当する人に勝手なことを許さないという憲法の本来の趣旨がそこに込められている。みんなが平等に持つ権利を国家権力を握った人が勝手に制限しないように権利を憲法で保障している。権力は3権分立でばらして、憲法に書かれた通りしか与えられた権限を行使してはいけないとしている。これが憲法を制定する本質的な意味だ。アメリカ第3代大統領ジェファーソンは「信頼は専制の産みの親である。良い政治は猜疑だ」という言葉を残している。国民が権力者を信頼すると専制に繋がる。国民が疑ってかかるとちょうどいいという意味だ。憲法は政治家が変なことをしないための鎖だと言っている。これが憲法の原点だ。ところが自民党改憲案は、自分たちの手足が縛られると国民が困ったことになると、すり替える。立憲主義を全く理解していない議論だ。(つづく)

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憲法9条を日本から世界に発信しよう!
9条世界会議・関西2013

10月14日(月・祝)
10:00〜16:30
大阪市中央体育館
 メイン集会、ワークショップ、子ども向けプログラム、ブース出店

9条国際会議

10月13日(日)
全体会10:00〜12:30
分科会13:30〜16:30
関西大学千里山キャンパス 第1学舎

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【九条噺】

 千田是也(1904〜94)は劇団「俳優座」を代表する演出家兼俳優の1人だ。若い頃、いろんな映画で拝見した。千田是也の、いつも、落ち着いた動きや説得力あふれるセリフまわしが印象に残っている。芝居の好きな友もいて、いつも映画や芝居の話に花が咲き、滝沢修や宇野重吉をはじめとした俳優…それも主として新劇俳優についてあれこれと談義をかわしたものだった。そんなときにも千田是也も共通して好きな俳優の1人として時々話題になることもあった▼千田是也はもちろん芸名である。で、当時、この芸名に直接係る恐ろしい事件を知った時はさすがに驚いた。その芸名は、このコラムでもかつて紹介した関東大震災(1923・9)に直接係っている。震災の最中、亀戸で「朝鮮人が井戸に毒を入れた」とのデマがささやかれてただちに「自警団」が結成された。軍部等の調査で捏造だと判明したにもかかわらず、内務省が全国知事に「鮮人の行動に対して厳密なる取り締まりを」などと打電したのである。そして警察と自警団らが在日と思われる人たちを訪問、発音がおかしいと「鮮だ、こりゃ」と言って殺害してまわったのである▼そのとき、千田是也も間一髪「鮮だ、こりゃ」から逃れられたのだ。しかしそうして殺害された朝鮮人は6千人ともいわれている。千田是也はこの国がやがて一路侵略へと突き進む姿に自らの恐怖の体験を重ね、怒りを込めて芸名を「千田是也(鮮だ、こりゃ)」とした。(佐)

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安保法制懇が再開、憲法解釈見直しありき
(東京新聞9月18日付より)

 9月18日の東京新聞は「憲法解釈で禁じられてきた集団的自衛権の行使容認などを議論するため安倍首相が設置した有識者懇談会が17日、約7カ月ぶりに再開し、憲法解釈を見直す必要性を確認した。年内に報告書を作る方針だが、メンバー全員が行使容認論者。世論や与党・公明党の理解が得られていないにもかかわらず、結論ありきで解釈改憲を目指す首相の主張を代弁する内容となりそうだ」「この懇談会は、第1次安倍政権で首相が設置。第2次内閣でも今年2月、全く同じ13人のメンバーで再スタートした。現在は14人。いずれも講演や論文などで、集団的自衛権の行使を容認する考えを明らかにしている有識者ばかりだ」「柳井座長は8月のテレビ番組で『憲法解釈変更をして、日米の同盟関係をしっかり運用できるようにすることが絶対必要』と強調。北岡伸一座長代理も『日本の安全保障環境が悪化しているのは事実だ。集団的自衛権を部分的に認めることはあり得ない』と全面解禁を主張した」と伝えています。
 歴代政府は自衛隊は「自衛」のための「必要最小限」の実力だといい、「集団的自衛権」の行使は「自衛」の範囲を越えるとして認めてきませんでした。
 安保法制懇は、「メンバー」表を見て分かる通り最初から結論ありき懇談会です。国民の声も59%が行使反対(賛成27%、朝日新聞8月26日)です。安倍首相が安保法制懇の報告をもとに憲法解釈の変更だけで「集団的自衛権」の行使を認めようというのは、立憲主義を踏みにじるものです。

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書籍紹介『憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?』

自民党は昨年4月に「日本国憲法改正草案」を発表しました。党是である「憲法改正」にいよいよ乗り出してきます。本書の特徴は、まず、どの部分を自民党が変えようとしているのかを知るために、自民党のHPで公開されている「日本国憲法改正草案」と現行の「日本国憲法」の条文対照表を掲載。その対照表を見ながら、「前文」から「最高法規」まで各章ごとに最も重要な問題点を解説。今まさに、自民党の改憲草案に目を通し、ツッコミを入れていかなければなりません!(高文研のHPより)
<著者>
清水雅彦(しみずまさひこ)
 1966年兵庫県生まれ。日本体育大学体育学部准教授。専門は 憲法学。
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2013年8月31日−第1刷発行
発行所:株式会社高文研
定 価:本体1,200円+税

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(2013年10月04日入力)
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