「九条の会・わかやま」 234号を発行(2013年12月18日付)

 234号が18日付で発行されました。1面は、「広川憲法9条の会」結成、「九条の会第5回全国交流討論集会」開催、よびかけ人挨拶(要旨)① 大江健三郎さん 憲法を守り抜くことが根本的モラル、九条噺、2面は、解釈改憲・立法改憲はクーデター 「集団的自衛権とは何か」(由良登信氏①)   です。

    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

「広川憲法9条の会」結成

 日本が世界を相手に戦争を開始した12月8日、和歌山県有田郡広川町で30人が集まって「広川憲法9条の会」が結成されました。
 「『戦争する国』はイヤ!~子どもたちに憲法が輝く未来を~」と題して、由良登信弁護士が記念講演。由良弁護士は2日前に強行成立させられた秘密保護法の危険性をまじえ戦後最大の憲法の危機について丁寧に話されました。特に日本国憲法の理念と「自民党憲法改正草案」との対比を分かりやすく解説していただきました。
 参加者からは、「秘密保護法が通ってしまったので、これからどうなっていくんやろ…と思ったけど『自民党の弱さ』も見えてきた。ちょっと元気になった」「今日のお話の中に出てきた自民党の『国家安全保障基本法案』はひどいもんやね。自民党がどんな国をつくりたいのかよくわかるな…」「広川町民がこんなに集まって平和のことを考える集会ができてよかった。9条の会の会員をいっぱい増やしたいですね」「秘密保護法は通ったけど、気を取りなおしてまたがんばらなあかんなぁって思いました」という感想が寄せられています。

 今日の会に参加した全員が布の白い鳩に平和を願うそれぞれの一言を書きました。これは大きな青い布に縫いつけ青空に鳩がいっぱい飛んでいるタペストリーになります。
 役員は会長に山下紀和、事務局長に五島栄次の両氏が選ばれました。
 全国の7000を超える「九条の会」の仲間入りができたことをうれしく思います。山下会長が閉会のあいさつで述べられたように「しんどい情勢の中ですが、楽しい会、楽しい行動」をいっぱいやっていきたいと思います。(五島栄次さんより)

    -----------------------------------------------------

「九条の会第5回全国交流討論集会」開催

 「九条の会第5回全国交流討論集会」が11月16日、日本教育会館(東京)で開かれ、全国から約600人が参加、熱気ある討論と交流を行いました。
 小森陽一事務局長の開会挨拶で始まった全体会議では、よびかけ人の奥平康弘さん、澤地久枝さん、大江健三郎さんの3人が挨拶。続いて広島県9条の会ネットワークが全県規模で取り組んだジャンボチラシ配布活動の報告、宮城の憲法九条を守る首長の会の訴え、東京の落合・中井九条の会の100回を超えた学習会の取り組みの報告、中央大学9条の会の12月10日に開催する「ピース・ナイト9」への協力の呼びかけが行われました。
 午後はシンポジウムが「集団的自衛権行使容認と憲法」をテーマにおこなわれ、明治大学教授の浦田一郎さん、元内閣官房副長官補の柳澤協二さんをパネリストに、九条の会事務局の渡辺治さんが司会をしておこなわれました。異色ともいえる組み合わせの2人のパネリストの発言に会場は聞き入りました。この後参加者は5つの分散会と女性、学生の分科会にわかれて交流・討論をしました。

    -----------------------------------------------------

よびかけ人挨拶(要旨)① 大江健三郎さん
憲法を守り抜くことが根本的モラル

 フランス語に「リーブル・エグザマン(=自由に検討する)」という言葉があります。それは今まで人間が作った法律とか制度とか仕組みが人間らしくないと思ったときには、それを検討して議論して作り替える、それがいちばん人間らしく生きることなんだ、それが人間として生きる根本にある本質なんだというのです。
 福島で大きな事故が起りました。いま日本中の人たちが原発は本当に危険なものだ、それは本質的に人間の根本に反するものなのだから、それをなくさなければならないと感じていると私は思います。新聞社のアンケートでは70%の日本人が原発に反対です。ところが、いまの政権は原発を続けていく、外国に輸出もする。原発というエネルギーを基本にして日本人の生き方を決めようと考えている人が首相です。憲法96条をまず変えていくというのは大きな反発があったので引っ込めましたが、しかし憲法を変えなくても、いまの原発を中心にしたエネルギー政策や、軍事政策を進めていくことを国民に押しつけようとしている。
 これはもう政権の問題、政党の考え方の問題ではないと思う。それは人間の根本的な、人間とはどのようなものか、どのように生きていかなければいけないか、という一番根本的な考え方の問題だと思います。そのことをあるフランス人の小説家が、ある文章のなかで言っています。「私たちがやらなければいけないこと。いま生きている人がやらなければいけないことはただ一つ」「それは今私たちが生きているこの世界、この環境をそのまま次の世代が生きていけるように保って渡すことだ。これが私たちの根本的なモラルだ」と。モラルというのは人間の倫理とか道徳とかを言いますが、もっと具体的に言えば人間が一番大切にしなければならないもの、人間の一番根本にあるもの、それを根本的なモラルと彼は言っているのです。この根本的なモラルをわれわれは守らなければいけないと。それを放射能によって、いま生きている世界を次の世代、次の次の世代が生きていくことのできない世界にしてしまうことは人間としての根本的なモラルに反することだ、と彼は言うのです。
 私が申しあげたいことは、国際情勢の現在の緊張のなかで、憲法によってどのように私たちが未来を守り抜くかということです。私たちの根本的なモラルとして、私たちが守るべきはこの憲法だと。この憲法を守り抜いていくことが、次の世代に生きていくことができる世界、時代を渡すことである。そして原発を全面的に廃止する、それこそ私たちの根本的な態度を決めることだと。それを私たちは確認しようと、ここに集まって話をしているのです。
 それを議論することが、人間の重要な思考であり、自由な行動であり、それがいちばん根本的なモラルだと。そのために私たちは生きているんだ、ということをもう一度強調したいと考えてここにまいりました。

    -----------------------------------------------------

【九条噺】

 師走である。今年もとても大事な問題が相次いで生じたが、手をこまねいてうろうろしているうちに、あの竹内浩三流に言えば、〝ガラガラドンドン〟と通り過ぎてしまったような気がしている。毎年のことだが、今年はなお一層、である。困ったことだ。ふらふらと日々流されるように暮らすのを改めなきゃ。つと、茨木のり子の詩集を取り出して大好きな「みずうみ」を読む▼だいたいおかあさんてものはさ/しいん/としたとこがなくちゃいけないんだ/名台詞(セリフ)を聴くものかな!/ふりかえると/お下げとお河童と/二つのランドセルがゆれてゆく/落葉の道/お母さんだけとはかぎらない/人間は誰でも心の底に/しいんと静かな湖をもつべきなのだ/田沢湖のように深く青い湖を/かくし持っているひとは/話すとわかる 二言 三言で/…/教養や学歴とはなんの関係もないらしい/人間の魅力とは/たぶんその湖のあたりから/発する霧だ(後略)▼この詩を読むたびに、ランドセルを背負った「お下げとお河童」のかわいい姿が浮かびほほえましくなる。ちょっとおませな口ぶりで母親のことを語っているのだが、子どもは誰よりも「ことばの発見者」。「しいんとしたとこ」なんて多分大人では出てこない言葉だと思う。詩人には「みずうみ」ということばを使わせた。表層をなぞるような日々ではなく、それこそ「しいんとしたところ」を見つけ、学べるようになろうと思う。(佐)

    -----------------------------------------------------

解釈改憲・立法改憲はクーデター
集団的自衛権とは何か


12月7日、「くすみ9条の会準備会」の学習会で由良登信弁護士が「集団的自衛権とは何か」と題して講師を務められました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

 今、憲法は制定以来最大の危機だ。安倍氏は明文改憲、解釈改憲、法律による改憲と無茶苦茶で、まるでクーデターだ。憲法違反の法律と分かっていながら作って、押し通そうとしている。政府・自民党は60年間「集団的自衛権行使は違憲だ」と言い続けてきた。それを解釈を変えて行使すると言う。「特定秘密保護法」や「NSC法」と一体のものとして「国家安全保障基本法」という大変危険なものを予定している。これは集団的自衛権を行使するために、いろんな法律を作るというプログラム規程だ。
 集団的自衛権という言葉は日本の法律には登場しない。国連憲章51条にあるが、国連憲章は自衛のためでも武力行使は非常に例外としている。全ての加盟国は国際紛争を平和的手段で解決しなければならないと行動原則を打ち立てている。加盟国が集団で紛争を解決する集団安全保障が国連の目的だとしている。具体的には平和に対する脅威・破壊・侵略行為が起った時は、まず経済制裁などの非軍事的措置で押え込む。それでも止まらない場合は安保理が加盟国の軍隊を指揮して軍事的に対応をするのが国連の仕組みだ。しかし、国連軍が来るまでの間どうするのか、安保理でひとつの結論にならない場合はどうするのかがあり、それで51条で例外の例外として自衛権を認め、現に攻められていて、国連軍が来るまでと、かなり限定したものとなっている。自衛権による武力行使を認めるのは歴史的に見て非常に危険だ。過去の戦争は自衛の名目でやられている。集団的自衛は自国に武力行使されていなくても同盟国に発生していたら出ていいという考え方だから更に危険だ。第2次大戦後の紛争は集団的自衛権という名目で出て行っている。かいらい政権を打ち立て、その政権の要請で出て行くという形で武力介入をしている。何故集団的自衛権が国連憲章に入っているのかだが、当初、安保理の許可がなければ一切の強制行動は出来ないとなっていたが、常任理事国に拒否権を認めたため、安保理が機能しない場合にということで、アメリカ主導でソ連も賛成して集団的自衛権を入れ込んだ。
 これまで日本政府の解釈は、自衛隊を合憲とするために、54年以来9条は「自衛のための必要最小限の実力を保持することまで禁止していない」ので、「自衛隊は必要最小限の実力だから憲法違反ではない」と言い続けている。「急迫不正の事態に対処し国民の権利を守るためのやむを得ない措置として始めて自衛ができる」「日本国民に危害が発生した時しか自衛権は発動できない」「必要最小限の措置に止まる」の3要件が必要だというのが政府のこれまでの解釈だ。集団的自衛権を持っていても憲法の下で許されるのはわが国に対する攻撃に限られ、他国の領土・領空・領海に自衛隊を派遣するのは自衛の必要最小限度を超えるので許されないと答弁し続けてきた。ところが安倍氏は『新しい国へ』の中で「権利はあるが行使できないというのは何時まで通用するのか」と言い、集団的自衛権行使を可能とし「国家安全保障基本法」を制定すると言っている。安倍氏は歴代の首相の中で際立つ危険な思想の持ち主だ。この人は戦後の憲法体制が嫌いなのだ。彼の言う「美しい国」は戦前の国家だ。天皇が大好きで、日本は天皇を縦糸にして織られたタペストリーだと言う。彼の言う「美しい国」は天皇制国家で、軍隊を持った強い国家で、そこへ日本を持って行きたいと思っている。「日本を取り戻す」とはそういうことだ。(つづく)

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2013年12月19日入力)
[トップページ]