俺はね、憲法は変えたらダメだと思っている。戦後68年間、日本がどこの国とも戦争をしないで経済を発展してこられたのは憲法九条のおかげだよ。九条は世界に誇れる日本だけが持っている宝ですよ。
ところが安倍政権になってから、急速に物騒な世の中になってきた。双方が自国の領土だと主張し合って決して譲らないのが領土問題のやっかいなところ。だからって、グローバリズムとかTPPとか経済の流れはどんどん国境を越えている現代に、国境問題で隣国同士が血を流し合ってどうするんだ。
俺たちは、一に日本人、二にアジア人だよ。中国も韓国も隣り合っているんだから、これから先、否が応でもずっとつきあっていかなきゃいけないんだ。アジアの他の国との関孫も同じだろう。だからアジア各国が集結して、「EU」みたいな組織はつくれないのだろうか。名前は「AU(アジア連合)」がいい。
ドイツとフランスは二度も世界大戦を戦い合った国だけれど、今はEUの主要国同士、絶対に戦争はできない関係をつくっている。「AU」をつくることで中国、韓国をはじめアジアの国々の関係も変わってくると思うんだ。
中国も韓国も反日ばかり言っている状況でAUをつくるなんて夢物語だ、みたいに思う人もいるだろうけど、反日の遠因は、日本人が過去の侵略戦争についてきちんと歴史を検証していないからじゃないのか。満州事変から日中戦争が終わるまでの中国人の犠牲者は、大変な数だったらしい。韓国だって、日本が一方的に併合してしまったわけだろ。もう謝ったんだからいいじゃないかと開き直るんじゃなくて、かつての非は非として認めて、これからは同じアジアの隣国同士、融和の道を進むべきだよ。
ドイツでは、西ドイツ時代に当時のヴィリー・ブラント首相がワルシャワにあるユダヤ人のゲットー蜂起記念碑に出向いて跪いて献花したし、今は首都ベルリンのど真ん中にホロコーストで虐殺されたユダヤ人のための記念碑をつくっているじゃないか。東京のどこに、中国や韓国、アジアの犠牲者のためのモニュメントがある?
AUがつくれれば、集団的自衛権の行使容認なんてことも必要なくなる。あれはアメリカの属国化をさらに進めて、アメリカの戦争に日本が参加していくためのものだ。
フィリピンでは議会がアメリカとの条約の批准を拒否して、スービック海軍基地とクラーク空軍基地をアメリカ軍から返還してもらった。当時のエストラーダ副大統領は、「アメリカ軍がいなくなって経済は厳しくなったけれど、主権国家としての誇りは取り戻した」と言ったらしい。エライものだと思ったなあ。俺は日頃から言っているんだけれど、日本はB級国家でいいから誇りをもった国がいい。少しくらい貧乏になっても、ブータンのような幸福度世界一の国を目指してほしいよ。
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【九条噺】
中国は古く唐代の言い伝えでは、1月の晦日(31日)を「送窮」(貧乏神を追い払う)日として、町なかに向って酒をそそぎ、礼拝したのだという。その日は各家々がこうして追い払ったのだが、中にはいくら追い払っても貧乏神が去らず、ついには居座って、「相馴染(あいなじ)みて」仲良く暮らす者までいたのだとか。貧乏神と相馴染むとは気の毒な話だが、しかし一笑に付して終り!という訳にもいかないらしい。とてもしぶとくて今の世もなお我々の近くに潜んでいるとか▼安倍首相なども例えば新年度の予算案をみても、消費税増税や厚生年金保険料の引上げ、住民税や固定資産税等の引上げをはかり、他方で、医療費を値上げし、年金や生活保護基準の引き下げをはかる方針だと伝えられており、まるで貧乏神の味方≠ナはないかと思ってしまう▼ところで、安倍内閣の予算編成の基本方針は「@デフレ脱却A強い日本、強い経済、豊かで安全・安心な生活B予算の重点化」となっている。何よりも「強い日本・強い経済」というのが目立つ。安倍首相によれば「悪しき戦後政治から脱却して強い日本を取り戻す」ことが「歴史的使命」なのだとか▼素朴な疑問として「強い日本を取り戻す」というのは「いつの、どんな日本」を指すのか、小生にはよく判らない。ただ、「悪しき戦後政治から脱却」というのは世界に誇る平和憲法を早く葬りたいという、安倍首相らのかねてからの強い願いともいう。(佐)
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国家安全保障基本法案の危険性B
自民党は12年7月6日に「国家安全保障基本法案(概要)」を発表、衆・参両選挙で制定を公約し、戦争ができる国づくりをめざして成立を狙っています。この法案の危険性を自由法曹団の「国家安全保障基本法制定に反対する意見書」などから要約してシリーズでご紹介しています。今回は3回目。
F時の政府の判断で軍事行動が行われる恐れがある
第2条は、「安全保障の目的は、外部からの軍事的または非軍事的手段による直接または間接の侵害その他のあらゆる脅威に対し、防衛、外交、経済その他の諸施策を総合して、これを未然に防止しまたは排除すること」と規定しています。
「脅威」を具体的に特定しないで「その他のあらゆる脅威」としてしまうと、「脅威」の判断を時の政府のフリーハンドに委ねてしまい、時の政府が考える「脅威」に軍事的対応をするということになってしまいます。
G安全保障政策を最優先事項として、教育などの各分野に介入する
第3条1項は、「国は第2条に定める基本方針に則り、安全保障に関する施策を総合的に策定し実施する責務を負う」とし、第3条2項では、「国は、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安全保障上必要な配慮を払わなければならない」と規定しています。
これは政府が決定した安全保障政策の遂行を内政の最優先事項として、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野に介入し、安全保障政策の遂行に反する施策を認めないというものです。戦前のような軍国主義教育や、宇宙航空技術や原子力技術の軍事転用といった危険な道を切り開くことになってしまいます。
H地方自治体を戦争に動員する
第3条4項は、「地方公共団体は、国及び他の地方公共団体その他の機関と相互に協力し、安全保障に関する施策に関し、必要な措置を実施する責務を負う」として、地方自治体に対して政府の決定した安全保障政策に従う責務を課しています。
現在、地方自治体はいわゆる「周辺事態法」で内閣から協力を求められる立場におかれ、さらに「武力攻撃事態法」では国の決定した措置を実施する責務を課せられています。その上に、第3条4項で、いわゆる有事の際だけでなく、平時においても地方自治体に対して国の決定した措置を実施する責務を負わせ、地方自治体の自主的な判断や対応を完全に否定するものになっています。もしこのような責務を地方自治体が負わされたら、普天間基地の辺野古移設に反対する沖縄県内41市町村の全首長、全議会の声や、この度の名護市長選挙に示された民意を封殺して、基地移設を強行することも可能となってしまいます。地方自治を無視し、政府が決定した政策を強行することが、この規定の目的といえます。(つづく)
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書籍紹介『はじめての憲法教室』
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