「九条の会・わかやま」 238号を発行(2014年2月5日付)

 238号が5日付で発行されました。1面は、集団的自衛権行使容認 反対が賛成を大きく上回る<共同通信社・全国世論調査>、安倍首相 集団的自衛権検討へ 施政方針演説 「安保法制懇」前面に立て、特定秘密保護法に言いたい・意欲的な人材の育成阻害 和歌山大学長・山本健慈さん、九条噺、2面は、特定秘密保護法廃止求め150人行進、国家安全保障基本法案の危険性④、言葉「憲法改正限界」  です。

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[本文から]

集団的自衛権行使容認
反対が賛成を大きく上回る

<共同通信社・全国世論調査>

 共同通信社が1月25~26日に実施した全国電話世論調査によると、憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の行使容認に反対は53・8%を占め、賛成の37・1%を上回っています。反対の声をさらに大きくしたいものです。
 その他の調査項目では、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画については、「市長の理解が得られるまで中断」は42.9%、「計画撤回」は17.9%、「予定通り進める」は31.7%で、「計画の中断・撤回」で60.8%となっています。

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安倍首相、集団的自衛権検討へ
施政方針演説 「安保法制懇」前面に立て


 安倍首相は1月24日始まった通常国会の施政方針演説で、アデン湾の海賊対処行動を例にあげ、「日本の自衛隊は日本だけでなく、世界が頼りにしています」などと述べた後、「集団的自衛権や集団安全保障などについては、『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)』の報告を踏まえ、対応を検討してまいります」と述べました。歴代の首相で、集団的自衛権について、国会の場でここまで踏み込んだ発言をしたのは安倍首相が初めてです。
 もともと「安保法制懇」は安倍首相の私的諮問機関にすぎず、何の権限があるわけでもありません。その顔ぶれもとても客観的公平さをもったものとは言いえない安倍首相のお気に入りグループで、懇談会の座長代理を務める北岡伸一・国際大学長にいたっては、報告書提出の前から、「集団的自衛権に関する日本の解釈が世界の基準とずれており、日本の行動を著しく制約している」(「読売」1月27日)と、憲法9条の存在を無視した発言をしています。(「九条の会ニュース」179号より)

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特定秘密保護法に言いたい・意欲的な人材の育成阻害
和歌山大学長・山本健慈さん

 和歌山大学は「生涯あなたの人生を応援します」というメッセージを掲げている。学生たちには生涯、好奇心を持って自主的、意欲的に生きてほしいと思っている。
 好奇心の行き着く先は分からない。ただ、歴史に名を残す優れた研究者の多くは、既存の研究や社会に疑問を持ち、現状を変えようと発想したところから出発している。
 何が秘密かも知らされない特定秘密保護法は「どこに地雷が埋まっているか分からない」という恐れを抱かせ、何かを知ろうとする若者たちの意欲を萎縮させる制度だ。意欲的な人材を育てることは社会の要請でもある。それを阻害するような制度には、大学の経営を任されている者として異議を唱えたい。
 生涯学習の研究者としても疑問がある。
 すべての市民に学ぶ機会を保障する制度づくりは世界の潮流で、政府も大学がその中心となることを求めている。しかし、市民に学習の自由が保障されなければ、絵に描いた餅となる。
 東日本大震災の後「地域の絆」が強調されるが、原子力発電所への賛否をめぐる分断のように、地域は本来、価値観の対立のるつぼのようなところだ。住民が自由に学習して自由に発言し、対立する他者に敬意を払って合意点を見つけることでしか、本当の絆は生まれないだろう。
 特定秘密保護法は「触れてはならない」「話してはならない」という領域を生む制度であり、社会の発展とは根本的に両立しない。(毎日新聞13年12月31日東京朝刊より)

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【九条噺】

 「慰安所」が最初に開設されたのは1938年1月13日、上海の楊家宅で。日本軍直営だった。その後まもなくして、軍の体面上、直営は好ましくないということで民営化されたが、運営などは引き続き軍が直接関与した。陸軍省では所管をめぐって兵務課、衛生課、恤兵(じゅっぺい)部、大臣官房で争いとなり、最終的に恤兵部の所管となった(恤兵=兵士を物資・金銭等で慰める)。で、この「慰安所」には兵隊は午前10時から午後5時まで、下士官は午後1時から午後9時まで、料金は1回2円などと書いた「慰安所規定」が「兵站司令所」名で掲示されていた。なお「慰安婦」の検診は軍医が担当した。(「慰安所」は中国で最終的には280箇所)▼このような「慰安所」がつくられたのには相応の理由がある。日本軍は前年7月の「盧溝橋事件」を契機に本格的な中国侵略に乗り出し、12月頃には早くも首都(当時)南京に及び、陥落させた。その侵略の様相は〝奪い尽し・殺し尽し・焼き尽す〟。女性には群がって凌辱の上で殺害するという残虐さで、それらが外電で報道され、日本軍の威信を地に落とすことになった。そこで「軍の体面を守るため」急きょ「慰安所」を設置することになった次第▼「慰安所」には当然「慰安婦」が必要になる。それが与論島や島原地方をはじめ、貧しさのために各地から売られて運ばれてきた女性たち、植民地だった朝鮮半島から力ずくで連れてこられた女性たちが「慰安所」に配属されたのである。(佐)

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特定秘密保護法廃止求め150人行進

 特定秘密保護法の廃止を求めて、「Stop!秘密保護法わかやま共同行動」は1月24日、和歌山市内で「パレード」を実施しました。昨年末に続き4回目で、約150人が参加し、「戦争は秘密から始まる」と書かれた横断幕を掲げ、「知る権利を守ろう。廃止に」と声を上げ、市役所前から京橋プロムナードまでを行進しました。

 東京では通常国会初日に合わせて、特定秘密保護法廃止を求める集会が国会周辺であり、約3000人が国会議事堂を取り囲む「人の鎖」を作りました。

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国家安全保障基本法案の危険性④

 自民党は12年7月6日に「国家安全保障基本法案(概要)」を発表、衆・参両選挙で制定を公約し、戦争ができる国づくりをめざして成立を狙っています。この法案の危険性を自由法曹団の「国家安全保障基本法制定に反対する意見書」などから要約してシリーズでご紹介しています。今回は4回目で最終回。

⑩国民を戦争に動員する

 第4条は、「国民は、国の安全保障施策に協力し、我が国の安全保障の確保に寄与し、もって平和で安定した国際社会の実現に努めるものとする」として、国民に対しても戦争への協力義務を課しています。これも「武力攻撃事態法」の国民の協力義務を拡大し、有事、平時を問わず、国民を戦争へ動員する体制を作ろうとするものと言わなければなりません。
 これまでも、日米同盟のもと、米兵による数々の凶悪犯罪や騒音等による平穏な生活の破壊といった自衛隊・米軍基地被害が繰り返されていますが、この協力義務によって、いっそうの基地被害などの受忍を強いられることになります。また、この協力義務によって、建設、運輸、医療などに関わる国民が戦争に動員されたり、国民の財産が強制的に取り上げられたりするなど、いっそうの人権侵害がまかり通ったり、憲法前文が規定する平和的生存権を否定する結果になりかねません。

⑪軍需産業を育成し、武器輸出入を奨励する

 第12条は、「国は、我が国及び国際社会の平和と安全を確保するとの観点から、防衛に資する産業基盤の保持及び育成につき配慮する」とし「武器及びその技術等の輸出入は、我が国及び国際社会の平和と安全を確保するとの目的に資するよう行わなければならない」と武器輸出入を公認しています。
 長年、武器輸出の事実上の全面禁止を定めている「武器輸出3原則」を完全に放棄し、日本を「死の商人」国家とするものです。第12条には、「国際紛争等を助長することのないよう十分に配慮しなければならない」と書かれていますが、最も国際紛争を抱えるイスラエルにF35戦闘機が輸出されて紛争の悪化の恐れが繰り返し指摘されているにも拘わらず、安倍政権が官房長官談話でF35戦闘機の機体・部品のアメリカへの輸出を強行したことから明らかなように、この規定は何の歯止めにもならないでしょう。

⑫立憲主義に真っ向から反する

 1954年に自衛隊が創設されて以降、「憲法9条のもとで、武力行使が許されるのはわが国に対する侵害であり、他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は憲法上許されない。海外での武力行使や他国の武力行使と一体となった活動は許されない」と、長年積み重ねられてきた政府の憲法解釈とそれをもとに作られてきた国内法制を、その時々の政府や国会の多数で、このような方法で変更することは立憲主義に真っ向から反するものです。(おわり)

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言葉「憲法改正限界」

 安倍首相は96条の改正に関して、13年6月「平和主義や基本的人権、国民主権に関わるものは3分の2のままに据え置くべきだという議論もある。そうしたことも含めて議論していく」と語りました。これは言い換えれば「平和主義、基本的人権、国民主権」でも3分の2以上の賛成があれば変えられるということになります。
 しかし、憲法はこの96条の手続きに従いさえすればどんな改正でも出来るという訳ではありません。憲法改正には限界があり、その憲法の基本原理は変えることが出来ないということを「憲法改正限界」と言い、憲法学の常識となっています。
 日本国憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と、恒久平和と国民主権の理念を明記し、97条では「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と基本的人権の尊重の原理を規定しています。そして、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」と基本原理は改正してはならないと明記しています。「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」の基本原理に関わる改正は、形式的に96条の手続きで行われても、合法的改正とは言えず、もはやクーデターとしか言いようがないものです。

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(2014年2月7日入力)
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