東京では通常国会初日に合わせて、特定秘密保護法廃止を求める集会が国会周辺であり、約3000人が国会議事堂を取り囲む「人の鎖」を作りました。
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国家安全保障基本法案の危険性④
自民党は12年7月6日に「国家安全保障基本法案(概要)」を発表、衆・参両選挙で制定を公約し、戦争ができる国づくりをめざして成立を狙っています。この法案の危険性を自由法曹団の「国家安全保障基本法制定に反対する意見書」などから要約してシリーズでご紹介しています。今回は4回目で最終回。
⑩国民を戦争に動員する
第4条は、「国民は、国の安全保障施策に協力し、我が国の安全保障の確保に寄与し、もって平和で安定した国際社会の実現に努めるものとする」として、国民に対しても戦争への協力義務を課しています。これも「武力攻撃事態法」の国民の協力義務を拡大し、有事、平時を問わず、国民を戦争へ動員する体制を作ろうとするものと言わなければなりません。
これまでも、日米同盟のもと、米兵による数々の凶悪犯罪や騒音等による平穏な生活の破壊といった自衛隊・米軍基地被害が繰り返されていますが、この協力義務によって、いっそうの基地被害などの受忍を強いられることになります。また、この協力義務によって、建設、運輸、医療などに関わる国民が戦争に動員されたり、国民の財産が強制的に取り上げられたりするなど、いっそうの人権侵害がまかり通ったり、憲法前文が規定する平和的生存権を否定する結果になりかねません。
⑪軍需産業を育成し、武器輸出入を奨励する
第12条は、「国は、我が国及び国際社会の平和と安全を確保するとの観点から、防衛に資する産業基盤の保持及び育成につき配慮する」とし「武器及びその技術等の輸出入は、我が国及び国際社会の平和と安全を確保するとの目的に資するよう行わなければならない」と武器輸出入を公認しています。
長年、武器輸出の事実上の全面禁止を定めている「武器輸出3原則」を完全に放棄し、日本を「死の商人」国家とするものです。第12条には、「国際紛争等を助長することのないよう十分に配慮しなければならない」と書かれていますが、最も国際紛争を抱えるイスラエルにF35戦闘機が輸出されて紛争の悪化の恐れが繰り返し指摘されているにも拘わらず、安倍政権が官房長官談話でF35戦闘機の機体・部品のアメリカへの輸出を強行したことから明らかなように、この規定は何の歯止めにもならないでしょう。
⑫立憲主義に真っ向から反する
1954年に自衛隊が創設されて以降、「憲法9条のもとで、武力行使が許されるのはわが国に対する侵害であり、他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は憲法上許されない。海外での武力行使や他国の武力行使と一体となった活動は許されない」と、長年積み重ねられてきた政府の憲法解釈とそれをもとに作られてきた国内法制を、その時々の政府や国会の多数で、このような方法で変更することは立憲主義に真っ向から反するものです。(おわり)
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言葉「憲法改正限界」
安倍首相は96条の改正に関して、13年6月「平和主義や基本的人権、国民主権に関わるものは3分の2のままに据え置くべきだという議論もある。そうしたことも含めて議論していく」と語りました。これは言い換えれば「平和主義、基本的人権、国民主権」でも3分の2以上の賛成があれば変えられるということになります。
しかし、憲法はこの96条の手続きに従いさえすればどんな改正でも出来るという訳ではありません。憲法改正には限界があり、その憲法の基本原理は変えることが出来ないということを「憲法改正限界」と言い、憲法学の常識となっています。
日本国憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と、恒久平和と国民主権の理念を明記し、97条では「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と基本的人権の尊重の原理を規定しています。そして、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」と基本原理は改正してはならないと明記しています。「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」の基本原理に関わる改正は、形式的に96条の手続きで行われても、合法的改正とは言えず、もはやクーデターとしか言いようがないものです。
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