「九条の会・わかやま」 239号を発行(2014年2月20日付)

 239号が20日付で発行されました。1面は、「九条の会事務局」から訴え 集団的自衛権容認許さぬ世論盛り上げへ、集団的自衛権行使はアメリカの戦争に協力するため(上脇博之氏 ① )、九条噺、2面は、安倍首相 解釈改憲で「最高責任者は私」と暴言 立憲主義を真っ向から否定するもの、書籍紹介『日本国憲法VS自民改憲案』   です。

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「九条の会事務局」から訴え
集団的自衛権容認許さぬ世論盛り上げへ


 「九条の会」の事務局スタッフは2月14日、記者会見を開き、昨年10月7日に「九条の会」よびかけ人が発表したアピール「集団的自衛権行使による『戦争する国』づくりに反対する国民の声を」(本紙229号参照)への賛同者名簿を発表しました。そして小森事務局長らは、この間の憲法をめぐる情勢はアピールが懸念した方向で推移していることを指摘し、全国の「九条の会」が「戦争する国」づくりに反対する世論と運動をさらに大きく盛り上げるため旺盛な学習を軸に、多彩な取り組みをすすめることをよびかける「九条の会事務局からの訴え」を発表しました。

「九条の会事務局からの訴え」

 九条の会は、昨年10月7日に、「集団的自衛権行使による『戦争する国』づくりに反対する国民の声を」とのアピールを公表しました。九条の会事務局では、各界で活躍されている方々にこのアピールへの賛同をお願いし、多くの方から賛同を寄せていただきました。この呼びかけに応えた、全国の各地域、各分野の九条の会によるさまざまな取り組みも広がっています。
 現在、憲法をめぐる情勢は、まさしくこのアピールが懸念した方向で推移しています。与党による国家安全保障会議設置法や特定秘密保護法の採決の強行、「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の閣議決定、南スーダンPKOでの自衛隊による韓国軍への小銃弾の提供、仲井真沖縄県知事による名護市辺野古の埋め立て承認など、アメリカとともに海外で戦争する国づくりへの道が敷かれようとしています。さらに、安倍首相は、12月26日にこともあろうに靖国神社に参拝して、侵略戦争に対する無反省ぶりをさらして、国内外から激しい批判を呼んでいます。
 そうしたなかで、安倍首相は、1月24日、施政方針演説であらためて集団的自衛権の容認と明文改憲に意欲を燃やしました。4月にも予想される「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告を受けた、閣議決定によって集団的自衛権に関する政府の憲法解釈を変更することが画策されています。安倍首相は、「政府の答弁に私が責任をもって、そのうえで選挙で審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではない」(2月13日、衆院予算委)と、選挙で信任されれば時々の内閣が自由に憲法解釈の変更ができるかのごとく述べていますが、これはそもそも憲法は権力行使のあり方を規制するものとする立憲主義の原則を根本から否定するものです。
 こうした動きのなかで、昨年の九条の会のアピールは、いっそう切実さを増しています。辺野古への普天間基地移転にきっぱりとNOを突き付けた1月19日の名護市長選挙での稲嶺市長の再選は、憲法9条を守ってアジアの平和を実現しようと願う人々に大きな励ましとなっています。
 九条の会にとって正念場ともいえる今こそ、特定秘密保護法の廃止を求める取り組みなどによって培われた運動の広がりを踏まえて、集団的自衛権行使による『戦争する国』づくりに反対するさらに大きな運動を盛り上げていこうではありませんか。そのための旺盛な学習運動を軸とした多彩な取り組みを活発にすすめることを、心から呼びかけます。
 2014年2月14日

九条の会事務局

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集団的自衛権行使はアメリカの戦争に協力するため

 2月11日、和歌山市で「平和・人権・民主主義2・11和歌山市集会」が開催され、神戸学院大学教授・上脇博之氏が「日本国憲法VS自民党改憲案~なぜ民意と反する法律が成立するのか?~」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

上脇博之氏 ①

 安倍政権と国民は全く逆の立場で、ネジレ現象が生まれている。従来はネジレというと衆参両院の多数派のことを言っていたが、今は国民の多数派と政権との関係だ。国民主権なのに国民の意思に基かない政治が強行されている。例えば原発では再稼働反対が60%なのに、政権は再稼働に前向きだ。普天間基地問題もそうだし、それ以外にも消費税やTPP問題もある。国民の多数派の意見とは違う政権が出来てしまっている。これでは国民が願う政治が行われないし、国民の願いに反する予算や法律が作られ、その延長上で憲法改悪が行われるということだ。
 今の安倍政権は2つの顔を持っている。アメリカに従属するという顔とともに、アメリカから「独立」「自立」するという顔だ。それは憲法に基づく自立ではなく、むしろ憲法を破壊し、昔の軍国主義に近い方向でアメリカから独立しようとする右翼的、タカ派的、靖国史観的な側面が安倍政権にあるという、2つの顔を確認したい。
 アメリカ従属という点で言うと、9条改憲はアメリカが要求してきたことだ。アーミテージ・レポートでは9条を変え、集団的自衛権を行使できるようにしてほしいということをアメリカ自身が要求している。今ひとつは経済界だ。日本経団連と経済同友会が憲法を変えろと言っている。何故言うかだが、アメリカは経済進出できないところには戦争を仕掛けて進出する。戦争した後に金儲けが待っている。戦争の後の復興のために経済活動をする、その時にアメリカの戦争に協力してくれた国の会社は経済復興に参加させる方針を採っている。そうすると死の商人たちは戦争が金儲けできる手段だからアメリカの戦争に協力しようということになる。その時に重要なのが集団的自衛権だ。自国が武力攻撃をされた時に反撃するのが個別的自衛権だが、集団的自衛権は軍事同盟を結んでいる国が攻撃されたら自国が攻撃されていないのに反撃が出来るというものだ。日米安保条約は集団的自衛権を明記している。日米安保を肯定する人たちは「世界の大国であるアメリカに刃向かって戦争する国なんてない。集団的自衛権があるから日本は守られている」と言う。ところが、アメリカが武力攻撃を受けても、日本は反撃できない。集団的自衛権は9条があるから行使できないというのが政府の見解だ。政府から戦争をする手段を奪って戦力が持てないようにしているのが9条だ。しかし、警察予備隊から保安隊、自衛隊になっていった時に、自衛隊は戦力ではないのかという問題が生じた。日本政府は今でも戦力は持てないと言う。自衛隊は戦力ではなく、自衛力だと言っている。自衛力と戦力はどう違うのか。専守防衛の守るだけの必要最小限の範囲内であれば自衛力、必要最小限を超える場合は戦力と言っている。この解釈は、自衛隊を正当化した上で、集団的自衛権は持ってはいるが行使は専守防衛の枠を越えるので、9条があるから出来ないと説明してきた。だから9条を変えるのは、「外国から攻められるかもしれないから」ではなく、アメリカと一緒になって集団的自衛権を行使できるようにしたいからだ。9条を変えれば戦争をするのだ。9条を変えたからと言って戦争する訳ではないという人がいるが、それはウソだ。集団的自衛権の行使はアメリカの要請があれば自衛隊も戦地に行くということだ。湾岸戦争やイラク戦争は後方支援の名目で出て行った。本当はあれも集団的自衛権の行使だが、日本政府は集団的自衛権の行使ではないと言ってきた。今アメリカと一緒に戦地に行くことをアメリカは要求してきている。何故なら、今やアメリカは自分たちだけで戦争をして経済進出をする力がないので、他国も巻き込んで戦争をする方向に行っている。集団的自衛権行使容認はアメリカの戦争に協力するためにやっている。
 もうひとつは国連決議を利用する場合がある。国連は集団安全保障体制と言うが、加盟国が攻撃された場合は経済制裁などでやめさせるが、最後の最後は国連軍で介入してやめさせるというのが国連憲章だ。今は多国籍軍というが、それに参加するのにも9条が邪魔になる。アメリカが国連決議を利用して戦争をする、そのときに9条が邪魔だから変える。国連の戦争も今は実質はアメリカの戦争だ。だから、集団的自衛権を行使してアメリカの戦争に参加する場合もあれば、多国籍軍に参加してアメリカの戦争に参加する場合もある。いずれにしても9条を変えないと出来ない。だから、アメリカも日本の経済界もそれを要求している。(つづく)

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【九条噺】

 島田陽子の詩を読む。〝うち 知ってんねん/あの子 かなわんねん/かくれてて おどかしやるし/そうじは なまけやるし/わるさばっかし しやんねん/そやけど/よわい子ォには やさしいねん/うち 知ってんねん/あの子 かなわんねん/うちのくつ かくしやるし/ノートは のぞきやるし/わるさばっかし しやんねん/そやけど/ほかの子ォには せえへんねん/うち 知ってんねん/そやねん/うちのこと かまいたいねん/うち 知ってんねん〟。(何とのう気恥ずかしい気持やなぁ)▼もう一篇。〝きかいに つようて/げんきが ようて/スピードずきな おんなの子やで/うちのゆめは パイロットや/ジャンボジェット機 うごかしたいねん/おんなの子でも やれるねん/やったら なんでも やれるねん(中略)ちから つようて/どきょうが ようて/スリルのすきな おんなの子やで/うちのゆめは レンジャーや/災害おきたら たすけにいくねん/おんなの子かて やれるねん/そやけど せんそう いややねん/へいたいさんには ならへんねん〟。(優しゅうて元気の出る詩やなぁ)▼そやけど、安倍首相はいま、秘密保護法に続いて集団自衛権の行使容認と〝9条壊し〟にまっしぐらや。詩にゆっくり親しんでる間に「戦争が廊下の奥にたっていた」(渡辺白泉)ということにもなりかねん。やっかいなことにならんように、ご互いにがんばらんとあきませんなぁ。(佐)

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安倍首相、解釈改憲で「最高責任者は私」と暴言
立憲主義を真っ向から否定するもの


 安倍首相は12日の衆院予算委員会で、集団的自衛権行使を認める憲法解釈の変更について「最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と、立憲主義を真っ向から否定しました。
 13日の東京新聞は「憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ、歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。首相の発言は、それを覆して自ら解釈改憲を進める考えを示したものだ。首相主導で解釈改憲に踏み切れば、国民の自由や権利を守るため、政府を縛る憲法の立憲主義の否定になる。首相は集団的自衛権の行使容認に向けて検討を進めている政府の有識者会議について、『(内閣法制局の議論の)積み上げのままで行くなら、そもそも会議を作る必要はない』と指摘した。政府はこれまで、集団的自衛権の行使について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条から『許容された必要最小限の範囲を超える』と解釈し、一貫して禁じてきた」「元内閣法制局長官の阪田雅裕弁護士は、首相の発言に『選挙で審判を受ければいいというのは、憲法を普通の政策と同じようにとらえている。憲法は国家権力を縛るものという《立憲主義》の考え方が分かっていない』と批判した」と報じています。
 自民党内からも批判が相次いでいます。村上誠一郎元行革担当相が「首相の発言は、選挙で勝てば憲法を拡大解釈できると理解できる。そのときどきの政権が解釈を変更できることになるのは問題がある」と批判したのを始め、野田毅党税調会長、溝手顕正参院議員会長、船田元・党憲法改正推進本部長らが批判。古賀誠元幹事長も「立憲国として考えられない」と批判しています。

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書籍紹介『日本国憲法VS自民改憲案』

自民党改憲案は、日本を再び戦争をする国に変えようとするが、問題はそれだけにとどまらない。平和的生存権は否定され基本的人権の保障も変質する。憲法は国家権力を拘束するものから、国民を拘束するものへと変わり、「憲法改正の限界」を超える憲法改悪だ!
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著 者:上脇博之
定 価:857円+税
発 行:2013年7月10日 初版第3刷発行
発行所:日本機関紙出版センター

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