安倍政権になってアメリカに協力するだけではない部分が出てきている。彼は「戦後レジームからの脱却」即ち、憲法を中心とした戦後の仕組みから脱却すると言っている。安保条約を廃棄して民主的な政権を作るというのならいいが、そうではなく、アメリカがやってきたことを否定する意味も持ち、右翼的な色彩も出ている。例えば東京裁判は勝者による断罪とか言って東京裁判を正面から認めない。東京裁判を認めないということはアメリカが今までやってきたことを認めないことを意味している。さらに侵略の定義については定まったものがないと言い出している。アメリカは真珠湾攻撃で侵略を受けたと思っているのに侵略を否定するのかとなる。「右翼の軍国主義者と呼びたいならどうぞ」と国際舞台で発言したし、靖国神社参拝もそうだ。アメリカですら行くなと言っているのに強行した。だから、今の安倍政権が狙う改憲はアメリカや経済界に従属した改憲の側面もあるが、それだけではなく、どうも、アメリカから独立して戦争をしたいと思っている節がある。アメリカは経済進出できないところで戦争をするが、日本の周辺地域で戦争をしたいと思っている訳ではない。逆に経済活動が阻害されるから困るのだ。靖国参拝も経済界はいい思いはしていない。参拝したら日本の企業は中国で批判を受け活動がし難くなる。経済的にうまく行っているところで戦争したいという思いはアメリカも経済界もない。にも拘わらず右翼になってきて韓国や中国と軋轢が生まれ、ひとつ間違うと戦争になるということになると、アメリカにとっても経済界にとっても予定外で、大変なことになる。今の安倍改憲には右翼的な性格があることを押さえる必要がある。
何故このような政権が生まれるのか。選挙制度が大きな問題だ。衆議院は、戦後は中選挙区制で議員定数も512だった。それが94年に「小選挙区比例代表並立制」になり、議員定数も480になっている。参議院は定数2の選挙区は3年毎に1人ずつ改選するので事実上小選挙区、4人区は2人区だ。これが12年の衆院選で自民党は小選挙区では43%の得票率で議席占有率79%、237人の当選者、比例区の得票率は27.62%しかないのに小選挙区・比例区合計で議席占有率61.3%、294人の当選者を出している。また、13年の参院選は選挙区では42.7%の得票率で議席占有率64.4%、47人の当選者、比例区の得票率は35.6%で選挙区・比例区合計で議席占有率53.7%、65人の当選者を出している。要するにその政党の支持率を正確に反映する比例区得票率は30%足らずなのに60%以上の議席を得ており、民意を歪曲する小選挙区中心の選挙制度だからこそ、国民とかけ離れた政権が出来る。議会に自分の意思を代弁してくれる人がいてこそ国民主権だ。国民主権に合わない議会制は議会制民主主義とは言わない。
自民党の「憲法改正草案」は戦力を持って戦争するのだということになっている。しかし、その文案の中に集団的自衛権という言葉は出てこず、自衛権という言葉が出てくる。この中に集団的自衛権が含まれるということを自民党の「Q&A」が解説している。自民党は集団的自衛権と言っても全部やる訳ではない、一部だけだと解説するが、これを皮切りにどんどん拡大していくのだ。「国防軍は国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動を行う」と書いている。しかし、これには「国連」という言葉がない。ということは必ずしも国連決議がある場合に限定するという訳ではなさそうだ。
従来は集団的自衛権の対象はアメリカが想定されていた。ところがアメリカから独立する方向でのタカ派的・右翼的な改憲の側面では、「安保法制懇」の北岡伸一座長代理が「シーレーン防衛」を言っている。日本の物資を輸送する船舶が攻撃を受けた場合は、それがアメリカの船舶でなくても集団的自衛権を行使しようという議論をしている。(つづく)
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【九条噺】
日本は、中国侵略に際して、まず柳条湖事件(1931年9月)を機に東北部制圧に乗り出す一方で、翌年には上海に〝飛び火〟させる作戦に出た。列国の目をそらし、混乱させるのも目的の一つといわれた。その上海で、2月某日、陸軍は「3人の日本兵が敵陣地の『廟行鎮(びょうこうちん)』に自爆突入して戦死した」と発表した。「朝日」や「毎日」など各メディアもこれを大きく取上げ、「肉弾三勇士」、「爆弾三勇士」などと讃えたために、3人の兵士は「国民的英雄」ともてはやされた▼各紙はさらに「讃える歌」の歌詞を募集したところ、「朝日」、「毎日」だけで応募が20万通を超えたという。結局、最も広く普及し歌われたのは、「毎日」で1等になった与謝野鉄幹作詞による「爆弾三勇士の歌」だったという。鉄幹の歌詞は10番まである▼(1)廟行鎮の敵の陣/我の友隊すでに攻む/折から凍る如月の/22日の午前5時/(7)時なきままに点火して/抱き合いたる破壊筒/鉄条網にたどりつき/我が身もろとも前に投ぐ▼関東軍司令部はすでに半年前からメディアに「皇軍の美談・人道主義」を宣伝するよう求めていたという。また、この「三勇士」についても「伍長が爆弾の導火線を短く切り、逃げられないようにしたのだ」との証言もあるという。真偽は不明だが、いずれにせよ、人の命が羽毛のように軽く扱われたのだった。(佐)
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野中広務氏、安倍首相を痛烈に批判
2月19日の共同通信は、「野中広務元官房長官は19日、参院の統治機構調査会に参考人として出席し、安倍晋三首相の政権運営を『議会制民主主義が相当に危険な状態だ』と批判した。集団的自衛権の行使容認を検討する政権の有識者懇談会について『偏ったブレーンを集めている』と指摘した。首相が集団的自衛権の行使容認をめぐる憲法解釈に関し『私が責任を持っている』と国会で答弁したことに対しては『非常に誤った道を歩みつつある。内閣は自分たちの行動に高揚している』と非難した。安倍政権には与党や国会の議論を軽視する傾向があるとして『最後には内閣と与党に大きな亀裂を呼ぶ不安を持っている』と述べた」と報じています。
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会報発行続ける
田辺9条の会 87号発行
みなべ「九条の会」 60号発行
田辺9条の会は毎月1日付で発行。B5判8ページの大作です(2月は休刊)。みなべ「九条の会」は今年が会結成10周年で、不定期ながらA4判2ページで発行を継続し、60号に到達しました。
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