「九条の会・わかやま」 243号を発行(2014年4月12日付)

 243号が12日付で発行されました。1面は、集団的自衛権否認63% 9条改憲反対64% 朝日新聞世論調査、集団的自衛権は大国がどこかを叩くためのもの(森英樹氏①)、九条噺、武器輸出を解禁 日本が紛争助長国に  です。

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[本文から]

集団的自衛権否認63%
9条改憲反対64%
朝日新聞世論調査

 4月7日の朝日新聞は全国郵送世論調査の結果を発表しました。それによると、集団的自衛権について「行使できない立場を維持する」は63%で、昨年調査の56%から7ポイント増加し、「行使できるようにする」の29%を大きく上回っています。憲法9条については「変えない方がよい」は64%で昨年調査の52%から12ポイント増加し、「変える方がよい」の29%の倍以上になっています。さらに、自衛隊を国防軍にすることは「反対」68%・「賛成」25%、非核3原則は「維持すべき」82%・「見直すべき」13%、武器輸出拡大は「反対」77%・「賛成」17%と、「平和国家・日本」を求める声は圧倒的に多くなっています。改憲の是非については、今の憲法を「変える必要はない」は50%で、「変える必要がある」の44%を上回っています。
 集団的自衛権の「行使できない立場を維持する」は、女性は全年代で元々高かったのですが、今回は男性40代、70代が各47%から6割近くに増え、特に20代では77%と、昨年調査の58%から19ポイントも増加しているのが目立ちます。憲法9条についても「変えない方がよい」が男女とも全ての年代で上回っています。
 今の憲法を「変える必要はない」の理由(3つまでの複数回答)では「平和をもたらした」76%、「国民に定着した」40%、「個人の尊重を重んじている」36%、「変えるほどの問題はない」36%などが目立ちます。憲法の平和主義への評価が非常に高くなっています。「変える必要がある」の理由では、「国防の規定が不十分」50%、「古くなった」46%などですが、「どこがどう不十分か」「古くなって何が問題か」は不明です。

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集団的自衛権は大国がどこかを叩くためのもの

 3月30日、和歌山市で「守ろう9条 紀の川 市民の会」の第10回総会が開催され、名古屋大学名誉教授・森英樹氏が「『国家安全保障基本法』は戦争体制を作りあげるもの」と題して記念講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

森 英樹 氏 ①

 自民党の結党精神は憲法を変えることにあり、9条がメインターゲットだ。その集約として安倍政権が出てきたと言えるが、安倍政権は異様なところがある。自民党改憲草案は2年前の野党時代に作ったもので言いたい放題だが、9条は章のタイトルを「安全保障」に変えている。安保条約は危険な戦争条約だし、国家安全保障会議は現代の大本営といわれる戦争指導機関だ。「安全保障」に変えるのは非常にきな臭いものだ。日米安保の安全保障はセキュリティの翻訳だが、セキュリティとは元々「心配がない」ということであり、安全というより安心に近い概念だ。安心は主観的なものだから、不安を高めれば高めるほどセキュリティの装置もどんどん膨らませなければならない。戦前、不安を高めに高めて戦争膨張政策を採り、あの悪しき戦争に進んだ歴史を繰り返さないために9条で「武力行使はしない。一切の戦力を持たない。交戦権も捨てる」と宣言した。ところが50年に朝鮮戦争が始まるとアメリカの命令で再軍備が始まる。本当は軍隊を作ったのだが、軍事力を禁止した憲法があるので、警察力であれば憲法違反にはならないと名前を警察予備隊とした。52年に日米安保を結んだ時に保安隊に成長し、54年に自衛隊になった。本来ならば憲法に合わせて現実を修正するのが普通の主権国家のやり方だが、自民党はそうせず、現実に合わせて憲法を書き換えようと、55、56年の国政選挙で両院で3分の2を取り、憲法を変えようとした。しかし、まだ戦後10年しか経っていないので、国民の戦争はもうごめんだという意識は非常に強く、自民党の狙いは実現しなかった。そこで57年に岸内閣が憲法解釈を変えた。「日本は戦争しないし、戦力は持たない。しかし、独立国家だから憲法に書いてなくても自衛権はあるから、自衛力は持ってもいい。戦力に至らざる自衛力は合憲である」という理屈をつけた。従って、自衛隊は自衛に徹する部隊であり、軍ではなく隊である。戦車でなく特車、駆逐艦ではなく護衛艦、戦闘服ではなく作業服と呼び、海外出動は海外出張となっている。自衛隊内のトイレに「憲法で守ってもらう自衛隊」という落書まで現れ、戦わない自衛隊を標榜してきた。そこには憲法9条が屈折しながら反映している。戦後69年にもなるのにこの部隊は1人も殺さず、1人も殺されていない。世界でも稀に見る組織で、恐らく歴史上初めてだろう。この戦争をしない自衛隊が首相には戦後レジームに映る。自民党改憲草案は9条1項の「戦争の放棄」は維持するが、「武力による威嚇」「武力の行使」は限定付きでしか放棄しない。2項は全くやめて、「自衛権の発動は妨げない」とした。国防軍に「国際的に協力して行われる活動」を行わせる。これは国連活動が主眼ではなく、集団的自衛権が主眼だ。これらを全てOKにするための規定が予定されている。
 国民の中には自衛権を支持する声は結構多い。集団的自衛権はその延長で「まぁいいか」と受け止められている側面がなきにしもあらずだ。国連憲章51条に載っているが、国連憲章の草案にはなかったものだ。これはラテンアメリカ諸国が要求した。アメリカから侵略される不安があるため、もし、国連が助けに来てくれない場合にはラテンアメリカ諸国が団結して反撃したいので、この条文を入れようとした。ところが、実際にこの条文に従って起ったのは全く別のことで、南ベトナムに傀儡政権をつくり、その政権と同盟を結び、傀儡政権の要請という恰好で、北ベトナムが攻めてきそうだという懸念だけで、北爆を開始した。このように大国がどこかを叩く時の理由に使っているのが集団的自衛権だ。これは、「お前さんには何の恨みもございやせんが、アメリカさんと杯を交わした渡世の仁義がございますので、お命頂戴いたします」というヤクザの理屈と同じだ。57年以後の政府解釈でさえ、日本の防衛のためだけに認めたのが自衛権、自衛力、自衛隊だから、集団的自衛権はこの限界を超えることは明らかだ。だから歴代政府は集団的自衛権だけは憲法違反になると言ってきた。今、問題の本質が分かってきて反対の世論は強まっている。そこで、「安保法制懇」に「集団的自衛権は限定付きだ。日本の安全に重大な影響を与える場合に限り行使を認める」と報告させ、「安心してほしい」と集団的自衛権行使を容認しようという流れが今出てきた。安倍首相の論理では、「アメリカが要請してきているのに、それを放ったらかしたら日本の安全に重大な影響を与える」と言うのは目に見えている。だから、この限定はほとんど意味がない。しかし、国民の批判を前にこの限定を付けてくる可能性は高い。今の内から「騙されてはいけない」と確認したい。(つづく)

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【九条噺】

 安倍首相がかねてから主張してきたのが「戦後レジーム(戦後体制)からの脱却」。なかでも憲法9条をなきものにすることが安倍流「積極的平和主義」の眼目でもあった。先だっての靖国神社参拝を機に、その仕掛けは確実に進められているように思う▼安倍首相は「憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を容認する是非について『安保法制懇』で議論したい」と答弁した。はじめて知ったが、首相の私的諮問機関で、正確には「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」という。やたら長くて難しそうだが、北岡伸一国際大学長ら14名のメンバーの大半が集団自衛権の行使容認派で、記者会見でも「政府から言われたらいつでも出せる」と言ったそうだからふざけたハナシだ。要するに安倍首相の「自作自演」なのである。首相は「行使容認には限度が」あると、一見深刻な顔で慎重さを強調するが、さて腹中はどうだろう。〝行け行けどんどん〟と沸き立っているのではないか▼内閣法制局に詳しい西川伸一明治大学教授は「歯止めをかける法的手段はなく、あとは国民の良識だけ」と言う。東京生まれでシカゴ大名誉教授のノーマ・フィールド氏は「戦後と地続きでなくなったというか、敗戦後に日本人が真剣に議論したことがゼロになりつつあるように思います」と言う▼加えて「武器輸出3原則」の実質撤廃である。ある意味「今が崖っぷち」という見方もしっかりと受け止めたい。(佐)

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武器輸出を解禁
日本が紛争助長国に


 4月2日の東京新聞は、「政府は1日の閣議で、武器や関連技術の海外提供を原則禁止してきた武器輸出3原則を47年ぶりに全面的に見直し、輸出容認に転換する『防衛装備移転3原則』を決定した。武器輸出の拡大につながる抜本的な政策転換で、憲法の平和主義の理念が大きく変質する。日本でつくられたり、日本の技術を用いた武器弾薬が海外で殺傷や破壊のために使われ、紛争を助長する恐れもある」と報じています。
 武器輸出3原則は、67年佐藤内閣の時に(1)共産圏(2)国連決議で禁止された国(3)国際紛争の助長の恐れのある国─への武器輸出の禁止を国会で表明し、76年三木内閣が3原則の対象地域以外も「憲法の精神に則り武器の輸出を慎む」として原則禁止にしたものです。
 今回の決定は輸出を原則禁止し、例外として限定的に許可してきたものを、審査が通れば輸出可能にする訳ですから、従来の原則からは大転換です。さらに、重要な案件は国家安全保障会議(日本版NSC)が非公開会合で可否を最終判断するとしています。
 「防衛装備移転3原則」は、(1)国連安全保障理事会の決議に違反する国や、紛争当事国には輸出しない(2)輸出を認める場合を限定し、厳格審査する(3)輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る─と条件をつけています。足かせが多いように見えますが、(1)では紛争当事国の定義を狭め、米国やイスラエルなどは紛争当事国には含まれません。(2)では「日本の安全保障に資する」と言えば、政府の判断で相手国をいくらでも拡大できます。武器の種類についても限定しておらず、部品・関連技術だけでなく完成品の輸出も可能となります。(3)ではアメリカがどのように適正管理をするというのでしょうか。F35戦闘機や「ミサイル防衛」装備など日米が共同開発した武器を、米国が日本の事前同意なしに他国へ売却することも可能になります。この決定は国是とも言われる「武器輸出3原則」をなくし、平和国家の看板を捨て去るもので、日本もテロの対象になる恐れもあります。

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(2014年4月13日入力)
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