私たちは10年間に4人の呼びかけ人を失いました。小田さんがいつも言っていたことは「人間は小さな人間と大きな人間がいる。大きな人間が大きなことをやる――政治を動かすとか、戦争をするとか――しかし実際にそれをやるのは小さな人間だ。小さな人間がイヤだと言ったら大きな人間は何もできない。だから小さな人間よがんばれ」ということです。私たちは小さな人間ですが、私たちがいまの政治に絶望してあきらめてしまったら、政治はやりたい放題になります。
地球全体として2014年という年を考えてみたい。軍備を持って脅かして、戦争をしかけて事が解決するかといったら、そうじゃない。日本の憲法は、今までになく光を当てられています。私は一歩も引かないでこの憲法を守りたい。憲法の原点へ戻りたいということを自分の決心として申しあげたい。
集団的自衛権という言葉は憲法のどこにあるでしょうか。安倍内閣がやろうとしていることは、アメリカがどこかの国に戦争を始めるときに、一緒になって戦争をする国に日本を変えようということです。もっと恐ろしいのは、アメリカの同盟軍として日本が戦争をするだけでなく、特にいま尖閣列島のあたりで中国と日本がつば迫り合いをしていますが、どちらかが先に一発の銃弾を撃てば、撃たれた側は撃ち返すわけです。だから集団的自衛権だといって自衛隊を投入して、小さな火花だったものが戦争になる危険があるのです。
憲法9条を変えるといったらみんなの反撃がひどいから安倍さんはそういうことを考えていない。でも96条を先に変えることをあきらめ、9条をいじることもあきらめ、いま毎日の新聞をみていると集団的自衛権が勝手に一人歩きしています。
地球全体を見ると、戦争とか戦力という考えからは抜けよう、それよりも汚い水で子どもが死んでいく、子どもが学校に行くことができない、拉致されて15歳にも満たない子どもが暴行される、そういう平和でない状態から地球を解放したいということが一般の人たちの気持ちとして強くあると思います。そういう市民の気持ちを蹂躙しているのが今の安倍内閣だと思います。みんなが平和で安らかに、豊かに暮らしていきたい、世界中の人たちと仲良くしたい、戦争はしない、軍隊もいらないと心の底から思ったその日から満70年にならないというのに、そんなことには振り向きもしない。
それから3年前の福島の原発事故もまだ何も解決されていません。だけど原発事故など忘れたような顔をしている政治家たちは何と恥知らずだと思います。
私は国際オリンピック委員会も信用しません。日本がどういう状態にあるか知っているはずです。日本に来ている例えばフランスやドイツの人たちに向かって、母国の人たちから「早く放射能汚染のひどい日本から離れなさい」と勧告している。そういう国々を代表しているオリンピック委員会で、「放射能はどうなっていますか」と問われた安倍首相は、「完全にわれわれのコントロール下にある」と答えました。汚染された水を海に流して海が汚染されたらどうなりますか。日本だけの問題ではなく、世界中の海が放射能で汚染される日がくるかもしれない。安倍さんは財界の代表を引き連れて世界中をセールスして歩いています。トルコやインド、ベトナムと原発のノウハウを輸出する約束をしました。自分の国の中でもどうにもできないでいるものを外国に輸出して金儲けしようというのです。
私は88年のクリスマスに亡くなった大岡昇平さんの言葉を書いて持ってきました。大岡さんは日本の敗北をフィリピンの捕虜収容所で知るわけです。「祖国の敗北に人生の道半ばで出会うわが身の不幸に泣いたが絶望はしなかった。明治の初心に戻って4つの島の小国の幸福を築けばよいと思っていた」。大岡さんは見通していたと思います。私は、日本は小さな国でありたいと思っています。それなのに武器輸出3原則も非核3原則もなしにして、核兵器のノウハウも輸出するし、武器をつくり、武器を買おうという政治のもとにあります。それは結局経済界の人たちの欲望のお先走りしているからです。
今こそ、私たちは憲法を守る人間、国でありたい。武力は捨てました、武力を使って解決しようとは思いませんということを言うべき時です。いくら武力があっても武力をつかって解決することはありません。国境線がどこかということを武力で解決すれば、それはまた武力によってむし返されてもっとひどいことになるのは、先の戦争がつぶさに教えてくれています。
過去の歴史を、体験してきたことを、いま若い人たちに伝えなければなりません。加藤周一さんは老人と若者が同盟を組んでやっていかなければならないと言いました。今日、こんなに賑々しく集まったのは、二度と戦争はしない決意を固めあうためです。私たちの理想とするものをこの国の宝物として掲げていきましょう。
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【九条噺】
終戦記念日を前にネット上で朝河貫一『日本の禍機』を知った。原著は1909(明治42)年。1987(昭和62)年講談社学術文庫に入った▼文庫版のキャプションには「世界に孤立して国運を誤るなかれ――日露戦争後の祖国日本の動きを憂え、遠くアメリカからエール大学教授・朝河貫一が訴えかける。歴史学者としての明快な分析に立って、祖国への熱い思いが格調高く述べられ、読む者の心に迫る。彼の忠告も空しく、軍国主義への道をつき進んだ日本は、戦争、敗戦へと不幸な歴史をたどった。…彼の予見の確かさと祖国愛には、今なお学ぶべきものが多い」と記す▼5年前の1904年には英文で『日露紛争――その諸原因とその諸争点』において、日本の立場を「中国の主権尊重」と「諸国民の経済的競争の機会均等」の二大原則だと世界に弁じたが、日露戦争後の日本が「私曲(私利)」(おもに満州の権益)を図り始めて諸外国の疑念と中国の反抗を生む中で、日米開戦の恐れもあると日本の動きを批判叱咤したのが本書だ▼構成は「前編 日本に関する世情の変遷」「後編 日本国運の危機 第1章 戦後の日本国民多数の態度に危険の分子あることを論ず 第2章 日本と米国との関係に危険の分子少なからざることを論ず」▼第2次大戦後69年間、憲法の下で他国を侵略せず戦争せずに来た日本。集団的自衛権の閣議決定で、戦争をさせないためには、世論が決定的だ。「危険の分子」の有無を監視したい。(柏)
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(告知)市民集会「集団的自衛権って何ですか?」
第1部/講演「集団的自衛権とは何か~その現状と問題点~」
講師:伊藤真(いとう・まこと)氏
第2部/「先生、集団的自衛権について質問です!」
日時/9月16日(火) 開場/午後5時30分、開会/午後6時00分
場所/和歌山県民文化会館小ホール
主催/和歌山弁護士会
共催/日本弁護士連合会
入場無料、予約不要、手話通訳がつきます
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