「九条の会・わかやま」 257号を発行(2014年10月29日付)

 257号が29日付で発行されました。1面は、「自衛の措置」の名目で海外で武力行使をする集団的自衛権(伊藤真さん ③ )、閣議決定はクーデターと呼んでよい暴挙(小林武さん ① )、九条噺、2面は、読者の85%が集団的自衛権の行使に反対 雑誌『通販生活』が投票結果発表  です。
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[本文から]

「自衛の措置」の名目で海外で武力行使をする集団的自衛権

 9月16日、和歌山県民文化会館で和歌山弁護士会主催の市民集会が開催され、弁護士・伊藤真氏が「集団的自衛権とは何か~その現状と問題点~」と題して講演をされました。要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は3回目。

伊藤真さん ③

 集団的自衛権は、自分の国が攻撃されていないにも拘らず、他国への武力行使が発生した時に日本が武力行使出来るものだが、閣議決定での要件は「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」となっている。しかし、「明白な危険」は時の政府が判断する。これを自衛の措置として認めた。閣議決定ではこれを自衛権の要件とせず、自衛の措置の要件としている。自衛の措置という名目でこれらの要件を満たせば日本は海外で武力行使が出来るとした。戦前自衛戦争の名の下に海外に出かけひどいことをしたので、外に出かけることは一切しない、自衛の名の下での武力行使をしないと言ってきたのを、自衛の措置という名目で海外で武力行使を自由に出来るようにした、これが根本だ。国連軍だPKOだと自衛の措置の名目で日本が海外で武力行使が出来ることを憲法が認めているとしたものだ。今までは自衛の措置と個別的自衛権を区別してきたが、それを自衛の措置として広く出来るようにした。「国民の幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」とは、「石油が入ってこないと幸福追求の権利が根底から覆される、だから出かけて行って」ということも理屈では可能だ。戦前の「満蒙は生命線」と同じことがこの解釈で可能になってしまった。単に集団的自衛権行使を認めたということだけではなく、本質的にこの国の憲法の構造が変わってしまうということだ。
 集団安全保障の名の下で国連軍に参加することも場合によっては可能となる。集団安全保障は国連の基本的な考え方で、国連の約束事を守らない国に対して加盟国がみんなで制裁したりする。集団的自衛権は仲間の外に敵がいること、外の敵への不信を前提にしている。根本的な発想が違う。集団的自衛権行使を認めるということは我が国の敵ではなくても仲間の敵は我が国の敵とし、向こうから見れば我が国が敵と思われてしまうものだ。これが集団的自衛権の構造だ。集団的自衛権を認めるということは、憲法で縛られる人たちが今まで勝手に出来なかったことを出来るようにすることだから、立憲主義を損ない国民を危険にさらすことになる。海外に出かけている日本人がテロの標的になることも考えられる。
 憲法9条は外交上非常に有効なカードだが、外交上の自由と選択肢を狭めてしまい、何よりも平和国家というこれまで築いてきた日本の価値あるブランドを自ら投げ捨ててしまうことになる。
 私たちが法律に従うのは、法律は正しいと考えるからだが、何故法律は正しいのか。民主主義で多くの国民の声に従っているから正しいと考えるのだが、本当に多数の声は正しいのか。情報操作や目先の利益に惑わされたりと正しい判断が出来ない時がある。理由は簡単で私たちは人間だということだ。人間は不完全で、間違いを犯すことがある。不完全な人間の声を集めて政治をするのだから、その結果間違うことがある。情報統制をされたら私たちは正しい判断は全く出来なくなる。秘密保護法の一番の問題点は私たちが判断するのに必要な情報をコントロールされるということで、それは主権者が主体的に行動出来ないことを意味する。ヒトラーの片腕といわれたヘルマン・ゲーリング元帥は「国民は常に指導者のいいなりになるよう仕向けられる。国民に我々は攻撃されかかっていると煽り、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればいいのだ。このやり方はどんな国でも有効だ」と言っている。赤ちゃんを抱えたお母さんのパネルを見せて国民を煽ればいい。国民は簡単に乗る。戦争は誰もやりたいと思わないが、こうして煽られれば誰でも戦争に駆り立てられる。だから私たちが賢くならないとダメだ。だから憲法がある。(つづく)

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閣議決定はクーデターと呼んでよい暴挙

 10月18日、憲法9条を守る和歌山市共同センター秋の憲法学習会が和歌山県JAビルで開催され、沖縄大学客員教授・小林武氏が「戦争をする国にはさせない~沖縄で考えること~」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

小林武さん ①

 今日のテーマは戦争をさせないということを沖縄から考えようということだ。
 7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定の標題は『国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について』となっている。ここに閣議決定の本質が隠されている。
 1つは、安倍首相は「国の存立を守ることが国民を守ることだ」と言う。これは「国民を守る」ということの意味をなくしてしまう論理で、「国を守る」ということでしかない。「国民を守る」は「国の存立」の中に吸収されてしまって特別な意味を持たない。戦前は正に「国家」しかなく「お国のため」「滅私奉公」という論理で「国民」は出てこなかった。軍は国民を守るものでなく国家を守るためにあるということだ。
 2つ目は、「切れ目のない」という言葉だが、いろんな軍事行動の間に切れ目がないということだ。個別的自衛権・集団的自衛権の間、集団安全保障・多国籍軍参加・国際的な平和協力活動の間、グレーゾーンの間に切れ目をなくし、何でも出来るようにして、どんな軍事行動にも対応できる仕組みを作った。
 3つ目は、中心は集団的自衛権行使であり、憲法解釈で可能だと宣言している。閣議決定の中に新3要件があり、限定された集団的自衛権だと、特に公明党が強調している。自民党の中には実際は国際標準の集団的自衛権で少しも制限されていないという人もかなりいる。この要件は少しも限定にはならない。理由の第1は、集団的自衛権は我が国が武力攻撃を受けていないにも拘らず我が国と深い繋がりがある国が戦争状態に入った時、我が国が相手側を攻撃するものだ。安倍政権はそこを繕うような言葉をいくつか入れ、新3要件と言っているが、「我が国の存立が脅かされる」も入っている。我が国が武力攻撃を受けたのと同じような言い回しだから、今まで通り「個別的自衛権」行使という印象を与える。これはごまかしで、「我が国の存立が脅かされる」とは、「アメリカとの信頼が揺らぐ」「我が国に石油などが入って来ない」ということであり、武力攻撃を受けていないのにアメリカの戦争に参加できる仕組みだ。第2は、「国際法上は集団的自衛権が根拠となる」と言っており、国際法上では一切の制限はない。第3は、この要件が充足されているかを決めるのは結局は政府だ。従ってこの要件は少しも政府の手を縛るものにはならないし、国民が政府に判断材料を問うた時、「それは秘密です」となる。秘密保護法なしには集団的自衛権行使容認はあり得ない。
 国会が世論通りの議席配分になっておれば、世論がよく政治に反映できるが、全くそうではない。国会の議席が歪んでいる原因は小選挙区制だ。自民党の得票は30%台で70%台の議席を占めている。一旦第一党がそのような議席を占めると第一党の横暴が始まる。安倍政権の国民の支持基盤は極めて脆弱なのだが、国会基盤は極めて強力だ。従って、どんどんこの政策を進めていくだろう。この閣議決定は憲法解釈とは言えないものだ。憲法解釈を変えるなら非常に深い検討が必要で、この憲法がどのようにして平和を憲法の中に入れたのか、個別的自衛権を容認した背景は何か、どういう理屈が使われたのか等々の多くの事柄を深く検討した上で、解釈を変えないと解釈とは言えない。しかも、重大であれば国民に諮り、国会の承認を得るのが当然だが、それをせずに十数名で決めたのはクーデターと呼んで差し支えない暴挙だ。(つづく)

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【九条噺】

 時々図書館で書架の前をぶらつく。先日、目についたのが『天皇と日本国憲法』。菅原洋一が歌う「知りたくないの」を書いたなかにし礼氏の本。組み合わせが意外に思えて手に取る▼全部で5章からなっており、第1章「天皇と日本国憲法」、第2章「リメンバー ヒロシマ・ナガサキ」・・・と続く。なかにし氏は旧満州牡丹江に生まれ、7歳でソ連軍の侵攻とそれに続く引き揚げ体験を持つ。氏は「憲法改正という名の改悪に反対である」と言い切る▼オペラ歌手の佐藤しのぶさんから核兵器反対の歌を依頼された時、「核兵器反対の先には戦争反対があり、それが9条を守る姿勢につながるのだから自分の主張とは首尾一貫している」と、知人らに呼びかけ歌をつくり、2年がかりでCDにする。「この仕事は、いつか誰かがやらなくてはならない使命のようなもの」という思いで全員が取り組んだという。その詞は、個人の幸せが第一で、国家という言葉を持ち出す人には用心しようという内容だそうだ▼小説や映画にもなった「楢山節考」についても述べている。「姥捨て」という棄民の説話は貧しさであり、背後に国家がある。現在も過去も沖縄の人々は棄民されている。満州に渡った人々も、中国残留孤児たちも、在日朝鮮人・韓国人もと続く。そして改憲で国民から民主主義を取り上げようとする政治家の頭の中では国民を棄民しているに違いないという。また一人素敵な人に会えた。(真)

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《「不条理な戦争-軍隊や武器で紛争を解決する戦争は幻想だ-②」は次号以降に掲載いたします。》

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読者の85%が集団的自衛権の行使に反対
雑誌『通販生活』が投票結果発表

 有料購読数が100万部を超える通販雑誌を発行する(株)カタログハウスは、『通販生活(2014秋冬号)』で、第46回国民投票「解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に賛成ですか?反対ですか?」(有効投票5420人)の結果を発表しました。その結果「集団的自衛権の行使は?」は、不要85.6%、必要10.5%、「集団的自衛権の是非を決める手続きは?」は、「憲法改定が必要」88.8%、「解釈変更でよい」6.8%となりました。これは世論調査ではありませんが、多くの人が集団的自衛権行使に反対していることを示していると思います。





共同通信社世論調査結果(10月18日~19日)



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(2014年10月30日入力)
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