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【九条噺】
1911年に雑誌『青鞜』を発刊し、「元始、女性は太陽であった」という言葉を残した平塚らいてう(1886~1971)の日本国憲法への思いを日本婦人団体連合会副会長・堀江ゆり氏の文から紹介したい▼戦後、らいてうが沈黙を破って行動を起こしたのは、1950年、全面講和を求める「非武装国日本女性の講和問題についての希望要綱」を野上弥生子ら5人の女性の連名で発表し、再軍備反対、憲法擁護を訴えたときであった。二度と戦争への道を許してはならないと、らいてうを突き動かした原動力は憲法9条だったという。新憲法に出会った時、戦前の家族制度を否定して男女平等をうたった24条はもちろん嬉しかったが、それにもまさる大きな喜びと感動を与えたのが9条だったと、らいてうは自伝に記しているという▼その後彼女は平和運動一筋の道を歩み、婦人運動、母親運動などの発展に尽力し、66年には、らいてうの遺言状とも言われる一文「憲法を守りぬく覚悟」で、「このいまわしい反動の嵐の中で、わたくしたちはどこまでも憲法を防波堤としてたたかう必要があり、それゆえにこそ、憲法改悪をねらう汚れた手から、あくまでも憲法を守りぬかなければならないと覚悟しております」と呼びかけた▼安倍政権によって66年当時よりはるかにいまわしい「壊憲」の動きが強まっている現在、私たちは、らいてうの「遺言」を噛み締めて、「壊憲」に抗していかなければならないだろう。(南)
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集団的自衛権行使に向け「存立事態」を盛り込む
1月10日付の朝日新聞は、「政府は、日本が侵略やテロを受けた際の国や自治体の対応を定めた武力攻撃事態法に、日本が直接攻撃を受けていなくても、集団的自衛権に基づいて自衛隊が武力を使うことができる『存立事態』(仮称)という概念を新たに盛り込む検討に入った。安倍政権は新年度予算の成立にめどが立つ3月以降に、同法改正案などの関連法案を通常国会の会期中に提出する方針だ」と報じています。
「存立事態」とは、日本と密接に関係する他国が武力攻撃などを受けて有事(戦争状態)になった時、日本が直接攻撃を受けていなくても、日本の存立や安全が脅かされたり、日本国民の権利が侵害されたりする危険があると、時の政府が判断すれば、自衛隊の武力行使や国民の権利制限が認められる状況を指しています。集団的自衛権が無限定に拡大される恐れがあります。
72年の政府見解は、日本に対する武力攻撃が起こり、爆撃などで国民の生命や権利が「根底から覆される場合」には最低限の反撃はできるはずだという理由で個別的自衛権を容認しました。他方、日本に対する武力攻撃がない場合の、集団的自衛権の行使は許されないとしました。
03年に制定された武力攻撃事態法では、日本が直接武力攻撃を受ける「武力攻撃事態」や、日本が狙われているような「武力攻撃予測事態」の際には、自衛隊や在日米軍への協力を地方自治体や公共機関に義務づけ、国民の権利も一部制限できる内容となっています。今回、新たに「存立事態」を設けることで、米国など同盟国が武力攻撃を受けたり、資源を運ぶ海上交通路が戦争で使えなくなったりするケースでも、公共機関や国民に同様の対応・協力を求めようとするのが狙いです。
集団的自衛権が「他衛権」なら、「存立事態」は「他国の事態」と言わなければなりません。
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