「九条の会・わかやま」 263号を発行(2015年01月25日付)

 263号が25日付で発行されました。1面は、「女の平和」人間の鎖 赤く国会を囲む、なぜ「女の平和」なのか 横湯園子さん(発起人)、第8回「ランチタイムデモ」実施、九条噺、2面は、集団的自衛権行使に向け「存立事態」を盛り込む  です。
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[本文から]

「女の平和」人間の鎖、赤く国会を囲む

 集団的自衛権の行使容認や改憲に反対する女性たちが、赤のファッションを身に着けて国会を囲む「『女の平和』ヒューマンチェーン(人間の鎖)」が、1月17日に行われた。国会の周囲約2キロを約7000人(主催者発表)が手をつなぎ、「誰一人、戦争に行かせません」と声を上げた。
 「女の平和」は北欧・アイスランドの女性たちが1970年代、地位向上を求めて赤いストッキングをはいた運動がモデル。アイスランドでは80年に女性大統領を誕生させるなどの成果を挙げた。
 この日の実行委員で、元中央大教授の横湯園子さん(75)は、赤いベレー帽をかぶって国会正門前のステージに登壇。「怒りの赤、情熱の赤、エネルギーの源となる赤で、全国の女性が安倍政権に『ノー』と示そうではありませんか」と呼び掛けた。
 参加者は赤いコートやマフラー、手袋などを身に着け、幼い子供を連れた母親の姿も。約2時間のイベントで「人間の鎖」を4回つくった。「女たちは人を殺し合うのは嫌です」「憎しみと戦いを拡大させません」と、つないだ手を振り上げた。(1月18日付・東京新聞より)







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なぜ「女の平和」なのか
横湯園子さん(発起人)


 いつの間にか、政治が戦争への道へと動き出していた。日本をアメリカといっしょに海外で「戦争ができる国」に変えようとする集団的自衛権の閣議決定など、なぜ、殺し合いをさせるのか。なぜ、緑の地球を壊すのか。なぜ、命を愛おしむ声が届かないのか。どうしたら平和を願う声が届くのか。悩み、問い続ける日が続いた。
 それは晩夏の頃の夜明け前のことであった。ふっと気がつくと、「女の平和」という文字が浮びあがってきた、と言うとオカルトチックに聞こえるかも知れないが、何とはっきりとした文字であったことか。
 なぜ、「女の平和」なのか。まず私の戦争の記憶を記したい。父は治安維持法下で幾度か逮捕され、獄中で結核に冒され、仮保釈中に死亡。29歳という若過ぎる死であった。私が1歳の時である。母は活動家ではなかったが獄中の父の身元引受け人になるために新聞紙上で結婚宣言をして一族から勘当。その後、母の実家は没落、両親も死亡。思想犯の未亡人として辛酸を嘗めながら終戦をむかえている。
 幼い頃の私は母の手を決して離さない泣き虫だったそうだが、母子をねらうグラマン機のパイロットの笑っている目、累々とした焼死体の中にいるかもしれない母親を探し歩く少年、終戦直後の食糧難などを覚えている。焦土と化した国土と戦争孤児。母親のいた私は幸せだったのだと今にして思う。
 私のような、否、私よりもっと、底なしの地獄を見てきた人は多いはずである。今、その絶望を語る時ではないか。戦争を知らない世代も憎しみより愛を、戦争より平和を願っている。その願いを共に声にしたい。それが平和憲法に守られてきた私たち、日本人の声なのだから。
 憎しみによる愛国心を煽って戦争をする為政者たちの手段は今も昔も変わらない。集団的自衛権の名によって日本が「戦争ができる国」になるなんてとんでもない。どうしたらよいのかと眠れない夜を過ごす人も多いのではないか。死者もまた、平和を願っているはずで、時に風の音となり雲間の光となって、時に「女の平和」の文字となって、私たちに語りかけているのではないか。
 そう思った時、即、パソコンの前に身を移し、ウィキペディアで調べてみると、古代ギリシャのアリストパネスの戯曲『女の平和』とアイスランドのレッドストッキングの2つがあった。戯曲は教養書として聞いたことがあった。早速、書店で入手。アテネとスパルタの戦争を終わらせるために女たちが手を結び、セックスストライキを行なうという内容であった。セックスストライキを呼びかけるわけにはいかないと、レッドストッキングに目を移した。
 アイスランドでは1970年に古い因習を打ち破る運動がはじまり、国際婦人年の75年に女 性の90%がレッドストッキングを身につけて休暇をとり、家事を放棄して女性の役割がいかに重要であるのかを訴え、大統領府前の中央広場を女性たちがうめ尽くすという歴史的な大集会があったことを知った。80年、民選による初の女性のヴィグディス大統領が誕生。86年にレーガン、ゴルバチョフ両大統領の呼びかけにより平和会談がレイキャビークでもたれ冷戦終結のきっかけとなるが、それを主宰したのが彼女であった。(ウィキペディア、前田朗『軍隊のない国 27の国々の人々』による)
 2人の女性に相談。賛同者が3人、4人と集まり実行委員会もでき、1月17日には赤いものを身につけて、国会をヒューマンチェーンで囲みましょうとなった。
 「女の平和」殺し殺されるのはイヤ! アイスランドで女性たちが立ち上がった〝レッドストッキングの戦い〟の史実に思いを重ねて、「女たちからのレッドカードを」である
。  呼びかけはさざ波のように広がってきたとは言え、アイスランドにはほど遠いが、1月17日が歴史を変えるターニングポイントとなるように、赤いコートやベレー、スカーフ、ストッキングなどを身につけて国会議事堂前に集まりましょう。
 国会議事堂前に集まれない人はそれぞれの地域で、赤いものを身に着けて、「殺し殺されるのはイヤ」の声を響かせましょう。(「女の平和」1・17国会ヒューマンチェーン Facebookより )

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第8回「ランチタイムデモ」実施

 1月17日「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかけた8回目の「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われました。次回は和歌山弁護士会主催で、2月16日(月)12時から行われます。(デモスタートは12時20分)




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【九条噺】

 1911年に雑誌『青鞜』を発刊し、「元始、女性は太陽であった」という言葉を残した平塚らいてう(1886~1971)の日本国憲法への思いを日本婦人団体連合会副会長・堀江ゆり氏の文から紹介したい▼戦後、らいてうが沈黙を破って行動を起こしたのは、1950年、全面講和を求める「非武装国日本女性の講和問題についての希望要綱」を野上弥生子ら5人の女性の連名で発表し、再軍備反対、憲法擁護を訴えたときであった。二度と戦争への道を許してはならないと、らいてうを突き動かした原動力は憲法9条だったという。新憲法に出会った時、戦前の家族制度を否定して男女平等をうたった24条はもちろん嬉しかったが、それにもまさる大きな喜びと感動を与えたのが9条だったと、らいてうは自伝に記しているという▼その後彼女は平和運動一筋の道を歩み、婦人運動、母親運動などの発展に尽力し、66年には、らいてうの遺言状とも言われる一文「憲法を守りぬく覚悟」で、「このいまわしい反動の嵐の中で、わたくしたちはどこまでも憲法を防波堤としてたたかう必要があり、それゆえにこそ、憲法改悪をねらう汚れた手から、あくまでも憲法を守りぬかなければならないと覚悟しております」と呼びかけた▼安倍政権によって66年当時よりはるかにいまわしい「壊憲」の動きが強まっている現在、私たちは、らいてうの「遺言」を噛み締めて、「壊憲」に抗していかなければならないだろう。(南)

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集団的自衛権行使に向け「存立事態」を盛り込む

 1月10日付の朝日新聞は、「政府は、日本が侵略やテロを受けた際の国や自治体の対応を定めた武力攻撃事態法に、日本が直接攻撃を受けていなくても、集団的自衛権に基づいて自衛隊が武力を使うことができる『存立事態』(仮称)という概念を新たに盛り込む検討に入った。安倍政権は新年度予算の成立にめどが立つ3月以降に、同法改正案などの関連法案を通常国会の会期中に提出する方針だ」と報じています。
 「存立事態」とは、日本と密接に関係する他国が武力攻撃などを受けて有事(戦争状態)になった時、日本が直接攻撃を受けていなくても、日本の存立や安全が脅かされたり、日本国民の権利が侵害されたりする危険があると、時の政府が判断すれば、自衛隊の武力行使や国民の権利制限が認められる状況を指しています。集団的自衛権が無限定に拡大される恐れがあります。
 72年の政府見解は、日本に対する武力攻撃が起こり、爆撃などで国民の生命や権利が「根底から覆される場合」には最低限の反撃はできるはずだという理由で個別的自衛権を容認しました。他方、日本に対する武力攻撃がない場合の、集団的自衛権の行使は許されないとしました。
 03年に制定された武力攻撃事態法では、日本が直接武力攻撃を受ける「武力攻撃事態」や、日本が狙われているような「武力攻撃予測事態」の際には、自衛隊や在日米軍への協力を地方自治体や公共機関に義務づけ、国民の権利も一部制限できる内容となっています。今回、新たに「存立事態」を設けることで、米国など同盟国が武力攻撃を受けたり、資源を運ぶ海上交通路が戦争で使えなくなったりするケースでも、公共機関や国民に同様の対応・協力を求めようとするのが狙いです。
 集団的自衛権が「他衛権」なら、「存立事態」は「他国の事態」と言わなければなりません。

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(2015年01月25日入力)
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