「九条の会・わかやま」 266号を発行(2015年03月01日付)

 266号が1日付で発行されました。1面は、憲法9条を根底からくつがえす「戦争立法」と改憲の暴走を止めよう 九条の会がアピール、想定される「安全保障関連法案」とその問題点 ③、九条噺、2面は、書籍紹介『憲法の「空語」を充たすために』、言葉「周辺事態法」  です。
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[本文から]

憲法9条を根底からくつがえす
「戦争立法」と改憲の暴走を止めよう
 九条の会がアピール 「主権者の声を全国の草の根から」



 安倍晋三内閣は、先の総選挙で与党が3分の2を確保したことで白紙委任を得たかのごとく、昨年7月の閣議決定を具体化する「安全保障法制の整備」に向け、暴走を加速させようとしています。
 その内容は、政府自らが60年以上にわたって違憲としてきた集団的自衛権の行使に踏み出すことをはじめとして、国連の集団安全保障措置や多国籍軍の軍事行動などへの後方支援を、どこでもかつ迅速に行えるようにする自衛隊派兵恒久法の制定、「駆け付け警護」や「任務遂行のための武器使用」の解禁など、広範多岐にわたっており、自衛隊が海外で他国の軍隊と肩を並べて軍事行動ができるようにするための「戦争立法」に他なりません。これは、憲法9条を根底から破壊するものであり、テロなどとの暴力の応酬の連鎖にはまり込むことをも意味します。その先には、憲法に「国防軍」を明記するなどの明文改憲が控えています。
 安倍政権は、この野望実現のため、4月の統一地方選挙後に法案を上程して一括審議に持ち込もうとしています。しかし、総選挙後に行われたマスコミによる世論調査でも、「集団的自衛権行使容認に反対」の声が過半数を占めています(2014年12月15・16日共同通信で55%、2015年1月15・16日毎日新聞で50%)。政府・与党が「戦争立法」の全容の公表や日米ガイドラインの再改定の日程を先送りし続けているのも、この国民の世論を恐れてのことにほかなりません
。  いま、こうした国民世論を受け、安倍内閣の暴走にストップをかけようとするさまざまな団体による取り組みが発展し、それらの団体間の共同が広がっています。これを、私たちは心から歓迎し、その成功を願ってやみません。同時に、結成から10年を経過した私たち九条の会にとっても、その真価が問われる正念場です。
 戦後70年の今こそ、日本国憲法9条の意義を再確認し、日本と世界に輝かすべき時です。それこそが、世界に広がる暴力の連鎖を断ち切る保障です。全国のすべての「九条の会」が、憲法9条を破壊する安倍内閣の戦争立法と明文改憲に「NO」の声をつきつけ、その暴走をストップさせるために、草の根での訴えと話し合いを創意をこらして展開しましょう。
 2015年2月23日

九条の会

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想定される「安全保障関連法案」とその問題点 ③

 安倍政権は昨年7月1日の「集団的自衛権行使容認」の閣議決定を踏まえた「安全保障関連法案」を今通常国会に提出しようとしています。想定される「安全保障関連法案」の内容とその問題点について、「戦争をさせない1000人委員会」のHPに掲載されている飯島滋明・名古屋学院大学准教授の論考を要約してご紹介します。今回は最終回。

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8.なにが問題か

 安倍政権は安全保障関連法案を今国会に提出するのに必死になっている。しかし、改正が予定されている法律は紹介しただけでもかなりの数に上る。これだけの法律の制定、改正にはかなりの労力が必要になる。法案作成あるいは国会での審議にもかなりの時間が費やされるはずである。
 第3次安倍内閣の下で想定される安全保障関連法案では、アメリカの戦争のために自衛隊が海外でも武力行使を行うことになり、国民や自治体、指定公共機関が法的に協力させられるといった、「アメリカの戦争のための国家総動員体制」が構築される可能性がある。忘れてはならないのは、近隣諸国の民衆2~3000万人、日本国民310万人もの犠牲者を出したアジア・太平洋戦争の敗戦から今年はちょうど70年になる。「ガイドライン再改定」「安全保障関連法制定」、ひいては「憲法改正」によって再び海外で武力行使をしようとする安倍政権の政治を私たちは認めてもいいのか。
 安全保障関連法は日本に関係のない戦争に日本国民を巻き込んで危険にさらし、戦争で外国の民衆を殺害する可能性をもつ危険な法律だが、安倍首相の今までの国民主権、議会制民主主義無視の政治手法からすれば、こうした法律でもまともな議論もせずに数をたのんで強行的に採決する可能性が高い。そうである以上、まずは統一地方選挙後に提出されることが想定される安全保障関連法案を国会に提出させないように、主権者の意志を権力者に示す必要がある。また、安全保障関連法案が提出されたとしても、アメリカの戦争のために日本人や海外の民衆の生命と安全を危険にさらす安全保障関連法を成立させない主権者意志を、例えば、デモや集会などで法案に断固反対する意志表明が必要となるだろう。

9.新法制定、廃止、法改正が想定される「安全保障関連法案」の一例

①根拠法
⇒「防衛省設置法」3条、「自衛隊法」3条を改正し、防衛省・自衛隊を海外派兵のための組織に
②日本が攻撃されてもいない「存立事態」の際に
 ○「防衛出動」を可能にするため
 ⇒「自衛隊法」76条、「武力攻撃事態法」9条4項2号などの改正
 ○「武力の行使」を可能にするため
 ⇒「自衛隊法」88条の改正
 ○自治体、指定公共機関、国民を協力させるため
 ⇒「武力攻撃事態法」3条1項、「国民保護法」1条、3条1項、「特定公共施設利用法」5条などの改正
 ○個人の権利・自由を制限するため
 ⇒「武力攻撃事態法」3条4項、「国民保護法」5条2項などの改正
 ○アメリカへ飛来する弾道ミサイル迎撃のため
 ⇒「自衛隊法」82条の3第1項の改正
 ○アメリカの武器を守るため
 ⇒「自衛隊法」95条の改正
③「グレーゾーン」への対応
⇒国際法上は「自衛権」行使の要件を満たさない「グレーゾーン」の際に自衛隊の武力行使を可能にするため、「領域警備法」の制定か、「海上警備行動」(「自衛隊法」82条)や「治安出動」(「自衛隊法」78条)などの手続を簡略化
④海外派兵のための法整備
⇒海外派兵のための「恒久法」制定、「周辺事態法」の廃止あるいは大改正。
⑤「駆け付け警護」
⇒「恒久法」「PKO法」などに「駆け付け警護」任務新設。
⑥任務遂行のための武器の使用の緩和
⇒「正当防衛」「緊急避難」に限定されていた武器使用基準を緩和し、「任務遂行」のための武器使用を可能にするため、「PKO法」24条、「周辺事態法」11条、「船舶検査法」6条1項などの改正。
⑦「機雷除去」「臨検」
⇒世界中で「機雷除去」「臨検」を可能にするため、日本周辺に限定されている「機雷除去」「船舶検査」に関わる法律の規定(「周辺事態法」「船舶検査法」「外国軍用品等海上輸送規制法」)の改正。
(おわり)

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【九条噺】

 過日の毎日新聞「特集ワイド」は伝える。昨年12月3日、俳優・宝田明さんがNHKの番組「ゆうどき」へ生出演時のこと。女性アナウンサーから「戦争を全く経験していない世代に伝えたいことは」と問われ、「無辜(むこ)の民が無残に殺されるようなことがあってはいけませんね。国家の運命というのは、たかが一握りの人間の手によってもてあそばれている運命にあるんですよ。だから間違った選択をしないよう、国民は選挙を通じて、そうではない方向の人を選ぶのか、あるいはどうなのか…」▼宝田さんが言葉を継ごうとすると、聞いていた男性アナが突然、「その辺は各自、思うところがあるでしょうから、個々の選択がありますけどね…」と、制止するかのように割って入り、「戦争を知っている世代として、これからもいろんな演技を見せていただきたいです。ありがとうございます」と、終了を〝宣言〟したそうだ▼一旦は「そうですね」と応じた宝田さんが再び口を開き、きっぱりと「声を大にして、戦争は絶対起こしちゃいけないということをメッセージし続けていきたいと思います」と言い切った。ぎこちない空気の中、ようやく画面が切り替わったという▼男性アナは何が問題だというのだろう。NHKは公共放送であり、政府広報機関ではない。公共放送は政府と一定の距離を置いているからこそ権力をチェックできる。放送法は「表現の自由を確保する」「健全な民主主義の発達に資する」を掲げている。(南)

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書籍紹介 『憲法の「空語」を充たすために』



 日本社会の根底から自民党の改憲戦略を糾明する。日本国民は「憲法の主語」たりえているのか ― 著者初の本格的憲法論。日本国憲法のもつ本質的な脆弱性を認識し、主語にふさわしい重みを獲得するために。法治国家から人治国家への変質、グローバル化と国民国家の解体を許さない。
(江川治邦氏推薦。『通販生活』も「目からウロコ本」と紹介)
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著 者:内田 樹(うちだ・たつる)
発行所:かもがわ出版
発 行:2014年8月15日
定 価:本体900円+税
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著者プロフィール
専門はフランス現代思想、映画論、武道論。武道家。神戸女学院大学文学部名誉教授。

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言葉 「周辺事態法」
 93年の北朝鮮のNPT脱退表明に対し、米国は寧辺への空爆を計画し、1059項目の対米支援を日本に要求しました。日本は、「集団的自衛権の行使は禁止されている」として断ったので日米関係が悪化しました。そこで「周辺事態法」を95年5月に制定したのです。日本周辺で戦争が起こり、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」を「周辺事態」と呼び、憲法の枠内で対米支援を可能にしました。  「周辺事態法」は自衛隊の活動地域を「後方支援地域」と名付け、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう」と規定しています。自衛隊が「後方支援地域」で米軍への補給、輸送、修理及び整備、医療などが実施できるようにしました。地方自治体や民間も「港湾・空港の使用」「公立・民間病院への患者の受け入れ」などで協力を求められることになっています。武器・弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備は禁止されています。
 安倍内閣は集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を具体化するため「周辺事態法」を「改正」し、「地理的な制約をなくし、『我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態』であれば、世界のどこで発生しても支援を可能にする」「米軍に限定している支援対象をそれ以外の軍にも拡大する」「支援内容も、現行は認められていない武器・弾薬の提供などを可能にする」ことを狙っています。「後方地域」や「非戦闘地域」という自衛隊の活動場所の制約が取り払われ、自衛隊の支援対象である他国軍が「現に戦闘行為を行っている現場」以外ならどこでも活動できるという危険なものになります。

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(2015年03月01日入力)
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