「九条の会・わかやま」 270号を発行(2015年04月14日付)

 270号が14日付で発行されました。1面は、「護憲の志、受け継ぐ」奥平さんに別れ、安保法制 今国会での成立「反対」が上回る(共同通信・全国世論調査)、九条噺、2面は、あらゆる形でアメリカの戦争に加担(渡辺治さん ②)   です。

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[本文から]

「護憲の志、受け継ぐ」奥平さんに別れ

 1月に85歳で亡くなった「九条の会」呼び掛け人の一人で東京大名誉教授の憲法研究者、奥平康弘さんの「志を受けつぐ会」(作家の大江健三郎さんら発起人主催)が3日、東京都調布市グリーンホールで開かれた。市民ら9百人が出席し、死の直前まで平和や護憲のため積極的に発言を続けた奥平さんに別れを告げた。
 奥平さんとともに九条の会の呼び掛け人の大江さんは「奥平さんは九条が持つ人間的な良いところが戦後の若い人の人間性をつくったのではないかと言っておられた」と指摘。「こういう機会にそのことを伝えるのが(奥平さんの)志を受け継ぐ私にとっての仕事であります」と話した。
 やはり九条の会の呼び掛け人の作家、澤地久枝さんは、奥平さんが亡くなる前日にこの会場で護憲を訴えていたことに触れ「最後の戦場の跡に来た思いだ。(改憲を進める)安倍内閣にノーと言うことが奥平先生の志を継ぐことだ」と話した。
 会では1月の集会での奥平さんの映像が流され、調布九条の会憲法ひろば合唱団が「アメイジング・グレイス」を歌った。あいさつに立った妻・せい子さんは「夫には『追悼会を開くな』と言われていたが、改憲に反対して団結する集いになればと思った。今は優しい顔で喜んでいると思う」と話した。(東京新聞4月4日付朝刊)

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安保法制、今国会での成立「反対」が上回る
────── 共同通信・全国世論調査 ──────


 共同通信社が3月28日、29日に実施した全国世論調査によると、安全保障関連法制の整備自体は、反対は45.0%で、賛成を4.4ポイント上回っていますが、安保法制の危険性への理解がまだ広がっていないとも言えそうです。しかし、安保法制を今国会で成立を図ることに、49.8%が反対と答え、賛成を11.4ポイント上回りました。米軍に自衛隊が戦闘支援できる範囲について、地理的制約を撤廃することには61.9%が反対し、「非戦闘地域」から拡大する政府方針にも69.6%が反対と答え、他国軍を戦闘支援するための自衛隊の海外派遣には、77.9%が必ず事前の国会承認が必要だとしています。
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●あなたは、集団的自衛権を行使できるようにする法整備に賛成ですか、反対ですか。

●安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使に関連する法案を今の通常国会に提出し、成立を図る方針です。あなたは、この方針についてどう思いますか。

●日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生した際に戦闘を行う米軍に対し、自衛隊が後方支援できる範囲はこれまで事実上「日本周辺」とされてきましたが、政府はこの前提を外す考えです。あなたは賛成ですか、反対ですか。

●政府が検討している法整備では、国際紛争に対処する他国軍を後方支援する自衛隊の活動範囲が従来の「非戦闘地域」から広がる可能性があります。あなたは賛成ですか、反対ですか。

●あなたは、他国軍の後方支援で自衛隊を海外派遣する際には、必ず事前の国会の承認が必要だと思いますか。

●安倍首相は戦後70年に際して首相談話を発表する考えです。あなたは、この談話に歴代首相の談話にあった「植民地支配と侵略」への「反省とおわび」を盛り込むべきだと思いますか。

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【九条噺】

 3月20日の「安保法制自公合意」に関するQ&Aが自民党のHPにある。決め付けとはぐらかしだらけだ▼「武力行使をする海外派兵は、一般に許されない、という従来からの原則は一切変わりません」とある。「一般に許されない」ではなく、「如何なる場合も絶対に許されない」が従来の原則だ。「一般に許されない」のなら「特別な場合は許される」となる。「特別な場合」とは時の政権が必要と認めた場合ということだろう▼「平和憲法が根底から破壊されるのでは?」には「武力行使を目的としてかつてのイラク戦争や湾岸戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません」と根拠も示さず決め付けている▼「自衛隊員が、海外で人を殺し、殺されることになるのでは?」には「人を殺すために行くのではありません」とあり、また「PKO活動や人道復興支援などは、戦争をする目的で派遣されるのではありません。海外での武力行使を行う必要もないのです」と言う。「人を殺しに行く」という国がどこにあるのか。海外で米軍の後方支援をしていてそこが戦闘現場となってしまえば、戦闘に巻き込まれ、武力行使をしなければならなくなり、自衛隊員が殺し、殺されることになるという指摘には全く答えていない▼挙句の果ては「決断には批判が伴うものです。しかし、批判をおそれず…行動へと移し」などと言う。国民多数の反対の声には一切耳を貸さず、強行突破するという安倍首相の宣言としか思えない。(南)

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あらゆる形でアメリカの戦争に加担

 3月15日に開催された「九条の会・全国討論集会」で、事務局の渡辺治さんが行った「安倍改憲は何をめざすか」と題する情勢報告(要旨)を「九条の会ニュース」から3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

渡辺治さん ②

 安倍内閣のやった第3の柱は、戦争を遂行するために不可欠でありながら、9条があったためできなかった制度の創設です。①日米共同作戦をするには、自衛隊が、イージス艦で集めた情報をアメリカに送り、それを解析してもらうための秘密保護法の制定、国防戦略、国家安全保障戦略、戦争指導部・日本版NSCの設置です。②日米軍事同盟を強化するためには辺野古新基地建設も強行しなければなりません。さらに、③武器輸出3原則の廃棄、軍事援助をして、途上国に影響力を行使するためのODA大綱の破壊です。
 さらに、グローバル企業の競争力を強化するための、④グローバル企業のための市場づくりです。TPP、原発再稼働です。安倍内閣は、「地球儀俯瞰外交」と称して、50カ国以上の国々を訪問していますが、大量の財界人を引き連れてやっているのが、原発やインフラの売り込みです。
 そして、安倍内閣がもっとも力を入れているのが、⑤国民意識を改変する「教育改革」、歴史の修正、改竄です。

(2)安倍内閣の誤算

 ところが、安倍内閣の第1の柱、解釈改憲の問題での誤算でつまづきました。それは、集団的自衛権行使容認の解釈改変の前に強行した特定秘密保護法に対する反対運動の高まりでした。これで、それまで自民党と二人三脚で進んでいた公明党が動揺、消極に転じたのです。内閣法制局も、その態度を硬化させました。  そこで、安倍内閣はアメリカの戦争にすべて協力する、集団的自衛権の全面容認を始め、あらゆる場合に自衛隊が海外で武力行使できるような既存解釈のちゃぶ台返しをあきらめ、政府解釈の「延長線」上の集団的自衛権の「限定行使論」に転じたのです。これは、アメリカの戦争の内、放っておくと、日本の安全に直結する場合には、日本が攻撃されていなくとも、アメリカの戦争に武力で加担するというものです。
 そのため、安保法制懇の5月15日の報告の直後の記者会見で、報告の内、既存政府解釈の全面否定をしている部分は、反対だと言ってのけました。公明党向けです。それもこれも、集団的自衛権行使に対し、市民の反対の声が高まったことが原因です。
 しかし、安倍内閣はそうした妥協と引き換えに、もう1つの障害物である、「武力行使との一体化論」を廃止することを獲得したのです。公明党も、内閣法制局も、これを呑んだ結果、「後方支援」と言えば、いつでも、どこでも戦地に自衛隊を送り込むことができるようになる保障を手に入れたのです。
 こうして、安倍内閣が手にした第1の柱が、7月1日の閣議決定です。そこには2つの側面があります。
 第1は、集団的自衛権容認を核にあらゆる場合に自衛隊を海外に派兵するための政府解釈の改変を行ったという面です。閣議決定は、集団的自衛権の限定行使を容認しただけでなく、自衛隊の海外での後方支援を縛っていた、もう1つの制約「武力行使との一体化論」も事実上、撤廃しました。
 しかし、閣議決定では、限定行使論に長い条件がつきました。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において」我が国が攻撃されないでもアメリカの戦争に加担するという条件です。この条件は国会での闘争に必ず役に立つはずです。

3.戦争立法で何をめざしているか?

(1)「切れ目のない対応」の重大な意味

 第3の主題は、戦争立法の全体像を明らかにすることです。戦争立法の全体像はまだ発表されていません。しかし戦争立法の主たる柱は、3つあります。
 第1の柱は、「いつ(・・)でも(・・)、どこ(・・)でも(・・)、どんな(・・・)戦争(・・)に(・)でも(・・)、あらゆる(・・・・)形(・)で(・)、自衛隊がアメリカの戦争に後方支援で加担」できる法律を作ることです。政府は「切れ目のない」対応と言っていますが、自衛隊が憲法9条の縛りをなくして「普通の軍隊」、大国の軍隊と同じになることを意味します。
 「いつでも」には、2つ意味があります。1つは、戦時でも平時でもアメリカの戦争や軍事行動に加担するという意味です。
 もう1つは、アメリカの戦争が日本の安全に影響ある時もない時も、アメリカの戦争に加担するという意味です。アメリカの戦争が「我が国の平和と安全に重要な影響」を与える場合には改正周辺事態法で自衛隊はアメリカの戦争に後方支援します。
 朝鮮や、アジア、さらには中東の戦争でも「我が国の平和と安全に」影響ありという口実がつけば、自衛隊を派兵します。
 しかし、日本の安全とはなんの関係もないアフガンの戦争、シリアへ米軍が介入する場合、さらにはウクライナの戦争、こういうときにも自衛隊は、今度は「国際社会の平和と安全」名目で、新たにつくる海外派兵恒久法で派兵することになります。
 「どこでも」というのは、今までの政府解釈で戦地には行かないという制限があったのを取り外し、どこの戦場にも派兵できるようにするということです。  周辺事態法でも海外派兵恒久法でも、自衛隊はどこでも、戦地に赴くことができるようになります。
 「どんな戦争にでも」というのは、国連決議で多国籍軍が組織された戦争だろうと、国連決議のない「有志連合」の戦争だろうと、自衛隊は後方支援に行けるということです。改正周辺事態法も、派兵恒久法も、国連決議のない戦争にも自衛隊が派兵できるようにします。
 「あらゆる形で」というのは、後方支援だろうと、人道復興支援だろうと、停戦監視、治安維持だろうと、船舶検査だろうと、邦人救出だろうと、どんな形でも自衛隊は行けるようにするということです。戦時の米軍への後方支援は改正周辺事態法、海外派兵恒久法でおこないます。輸送、調達などですが、注目すべきことは、弾薬提供もできるようにすることです。(つづく)

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(2015年04月15日入力)
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