「九条の会・わかやま」 271号を発行(2015年05月02日付)

 271号が2日付で発行されました。1面は、みなべ「九条の会」が「憲法9条を語る集い」を開催、戦争立法を通したら 安倍内閣は明文改憲に踏み出す(渡辺治さん③)、九条噺、2面は、言葉「存立危機事態」、言葉「重要影響事態」  です。

    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

みなべ「九条の会」が「憲法9条を語る集い」を開催

 4月26日、みなべ町長を来賓に迎え、目標100人に対して、例年の2倍の約130人の参加で「憲法9条を語る集い」が開催されました。


 みなべ町長

 この集いは「九条の会」(東京)の「草の根で、多様で創意的な取り組みを」という呼び掛けに応えて企画されたものです。
 メインのリレートークは「九条への思い」を高校生・青年・子育て世代・婦人・僧侶・戦争体験者から、それぞれの立場で語ってもらうものでしたが、いろんな事情で4名のトークとなりました。「戦争になれば戦地に行かされる可能性がある。敵を殺せるのか、無理だと思う。友達や後輩も人を殺す所に行かせたくない。9条を守るために勉強をしなくては」「米国の戦争に巻き込まれることが現実味を帯び、不安でいっぱいだ」「日本国憲法、9条こそが人間としての良心で、普遍的立法だと確信している」「毎年平和の誓いをした。その約束を捨てるわけにはいかない」などと話されました。
 由良登信弁護士は憲法をめぐる現状の厳しさ、特に安倍政権は従来の解釈を変更して「改憲」してしまおうとする暴挙に出て、非常に危険な状態となっている。「安全保障法制」はまさに「戦争する国」づくりの大変な法案で予断を許さない事態となっている。今こそしっかりした議論と息の長い運動が必要だが、今の9条を守る運動は地方からのたたかい、中高年層の踏ん張りなどに支えられているので、安倍政権の暴挙を許さないために、気長に、しかもしぶとい運動を続けていこうと強調され、いざ国民投票となれば、権力はメディアをフルに使いしゃにむに強権的にやってくることを見通した運動が必要だということも話されました。(平野憲一郎さんより)


    --------------------------------------------------

戦争立法を通したら、安倍内閣は明文改憲に踏み出す

 3月15日に開催された「九条の会・全国討論集会」で、事務局の渡辺治さんが行った「安倍改憲は何をめざすか」と題する情勢報告(要旨)を「九条の会ニュース」から3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。

渡辺治さん ③

 次にPKO以外の形での「人道復興支援」「停戦監視」「安全確保」は、PKO協力法を改正していけるようにします。今までだと、イラクのサマーワ、バクダッドへの人道復興支援や安全確保活動は、イラク特措法を作っていましたが、今後は、PKO協力法の改正で行けることになります。
 最後に、PKO活動の武器使用や活動も拡大され、「駆け付け警護」もできるようになります。
 要するに、今度の法改正で、湾岸戦争も、ソマリアも、ユーゴも、アフガンへも、イラクへも、シリアへも、ウクライナへも、90年代以来のすべての戦争に自衛隊は参加できるようになるのです。これこそ、アメリカが待ち望んできた、アメリカの戦争への加担の実現です。
 第2の柱は、アメリカの戦争でも、放っておくと「我が国の存立が脅かされる」場合には、アメリカの戦争へ武力行使を伴って加担できるようになることです。集団的自衛権行使の場合です。
 自衛隊法、武力攻撃事態法改正で、このような「存立事態」には、自衛隊は「防衛出動」で、武力行使できる規定を入れることになります。この集団的自衛権にも地理的制約はないため、「我が国の存立が脅かされる」という口実なら、どこででも戦争できるようになります。現に安倍首相自身は、「我が国の存立を脅かす事態」という条件を緩めて、どこででも戦争できるようにすることに執着しています。
 第3の柱は、日常的に米軍や場合によってはオーストラリア軍と共同で、アジア太平洋地域をパトロールし、情報収集、警戒監視を行ったり、日米共同訓練を行ったりできるよう、そうした共同監視、訓練時に、米艦等が攻撃された場合には、自衛隊も応戦できるようにしました。但し、これは自衛隊法95条の「武器等防護」の規定を改正し、米軍等の「武器等防護」という口実で、できるようにしようとしています。
 この戦争立法が通ったら、自衛隊は「普通の国の軍隊」と同様、自由に米軍を支援して戦争できます。9条は独自の意味を失います。

(2)戦争立法を止められたら?

 先に安倍内閣は、集団的自衛権の行使容認等の閣議決定をしましたが、閣議決定だけでは自衛隊は一歩も動けません、国会で十数本に上る法改正や、派兵恒久法を通さなければなりません。戦争立法を潰せば、「戦争する国」づくりを阻むことができます。

(3)逆に安倍内閣の戦争立法を通すようなことがあると?

 逆に、私たちが戦争立法を通すことがあれば、安倍内閣は、明文改憲に踏み出すことは間違いありません。
 安倍内閣が解釈改憲のみならず明文改憲にもこだわるのは安倍首相の個人的な思いもありますが、「戦争する国」づくりには、解釈改憲だけでは完結せず、「戦争しない国」を前提にした憲法全体の転換が不可欠だからです。戦争しないことを前提にした日本国憲法には、軍隊保持の規定がなく、集団的自衛権の規定もありません。安倍内閣も集団的自衛権の包括容認はあきらめざるを得ませんでした。緊急事態には、政府の命令で市民の自由を制限禁止することができる規定がありません。戦時に言論報道を規制できる制限規定もありません。
 自民党が野党時代の2012年につくった、日本国憲法改正草案はまさしくそうした「戦争する国」をめざしたものです。
 しかし、安倍内閣がすぐ9条の改正を出せるはずはないし、公明党や民主党も乗れない。そこで、公明、民主党などが賛成できる環境権、緊急事態条項、財政健全化条項などで、まず改憲をやり、次に本命に入る段階論です。しかし、繰り返せば、私たちが安倍内閣の解釈改憲を阻むことができれば、安倍内閣は、明文改憲には手をつけられなくなります。それどころか、安倍に代わる首相も、容易に改憲を口にできなくなります。
 今、安倍内閣の解釈による改憲を阻むことが、アジアの人々、そして次の世代に対する私たちの責任です。(おわり)

    --------------------------------------------------

【九条噺】

 ようやく翁長知事と菅官房長官の会談が実現した。沖縄県民の切実な願いや世論に押されて逃げ回っている訳にはいかなくなったのだろう▼この日、会場に入る知事を激励する集会が開かれたという。「沖縄県民は自ら基地を提供したことはない。沖縄戦後、強制接収されたものだ」「自ら奪って県民に苦しみを与え、代替案を持っているのかということ自体政治の堕落だ」。知事の言葉一つ一つに、沖縄は言うに及ばず、日本中のあちこちで胸を熱くし、拍手が起こったことだろう▼福井地裁は高浜原発の再稼働を差し止める仮処分決定を出した。記者会見で、菅官房長官はこれまでの政府見解を繰り返し、「再稼働を粛々と進める」と語った。「粛々と」という言葉は、翁長知事に「上から目線」と批判され、「使わない」と言ったはずではなかったか▼政府が国民に語る言葉を聞くたびに腹立たしくなる。これらの言葉が国民の心に届いていると考えているのだろうかと思ってしまう。いや、それよりも心に届く、届かないということなど気にも留めていないのだろう▼「積極的平和主義」という言葉。「積極」とは「対象に対して進んで働きかけること」、「積極的」とは「積極なさま」(広辞苑)。だから、9条を積極的に活かし、世界に向け核兵器の全面禁止や紛争解決のための外交力の発揮、世界中の国々と友好関係を結ぶことだと思っていた。安倍首相が使うまでは▼9条を守ることは、言葉を「取り戻す」ことでもあるのかもしれない。(真)

    --------------------------------------------------

言葉「存立危機事態」

「武力攻撃事態法」は、我が国への武力攻撃が発生または明白な危険が切迫しているという「武力攻撃事態」を定義し、我が国に対する武力攻撃に際して自衛隊をどのように使用するのかということを定め、国会の承認を得る手続きなどを規定しています。
 政府の従来の憲法9条解釈による自衛権行使は、①我が国に対する武力攻撃に対処するための個別的自衛権行使に限定した武力行使、②個別的自衛権行使以外の場面での武力行使の禁止を2大原則としています。武力攻撃はあくまで我が国に対するものであり、他国に対するものは含まれていませんでした。
 「存立危機事態」とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義し、集団的自衛権行使を可能にするために「武力攻撃事態法」に「存立危機事態」を書き込みます。しかし、これは我が国への武力攻撃が発生した訳ではありません。しかも、「存立が脅かされる明白な危険」とは「我が国が武力攻撃を受ける可能性」だけでなく「経済的混乱」も含む概念で、判断は時の政権です。「明白な危険がある」と言えば海外でアメリカと一緒に戦争をすることになります。


(図は中日新聞4月18日付より)
    --------------------------------------------------

言葉「重要影響事態」

 「周辺事態法」では、日本周辺で戦争が起こり、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」を「周辺事態」と呼び、憲法の枠内で対米支援を可能にしました。自衛隊の活動地域を「後方支援地域」と名付け、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう」、つまり、日本周辺で戦闘が行われる可能性のない地域と規定しています。
 「重要影響事態」とは「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」とし、この「周辺事態法」という名称を「重要影響事態法」に変え、日本周辺という地理的制限を名実ともになくし、支援対象を米軍以外にも拡大し、戦争中の他国軍を地球規模で支援することになります。テロ特措法やイラク特措法で禁止されてきた戦地での後方支援を可能にすることに加え、弾薬提供、発進準備中の戦闘機への給油・整備、武器輸送も可能になります。後方支援とはいえ、いつ戦闘が起こるかもわからない戦地で、戦闘に直接関わる支援を行う訳ですから、自衛隊が戦闘に巻き込まれ、自衛隊員が「殺し、殺される」事態となってしまいます。


(図は中日新聞4月18日付より)

    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2015年05月03日入力)
[トップページ]