「九条の会・わかやま」 276号を発行(2015年07月10日付)

 276号が10日付で発行されました。1面は、「9条ママnetキュッと」結成1周年おはなし会開催、もう一度安倍首相を引き摺り下ろそう(小森陽一氏④)、九条噺、2面は、「和歌山障害者・患者九条の会」9周年の集い開催、「和歌山市ひがし9条の会」第8回総会開催   です。

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[本文から]

「9条ママnetキュッと」結成1周年おはなし会開催

 7月4日、結成1周年を記念して「引き裂かれた青春~特攻で散った兄~」という演題で小松雅也さんの講演会を開催しました。
 小松さんが小学校に入学した当時は、戦争へ行って御国のために手柄を立てて死ぬことは当たり前の時代、お兄さんが特攻へ志願された時も家族で本当に喜んだことなど、今とは違う時代背景があったことを知りました。特攻に志願するということはもう生きて会えないという中、飛行機の故障のためお兄さんが1日だけ戻られたこと。三重から九州までの途中、飛行機で美浜町の上空を通過する際、何度も旋回しながら九州へ飛び立れた最後のお別れの後、お兄さんから来た最後の手紙には「笑っていきます」「絶忠」(絶対天皇陛下に忠義をつくす意味だろう)と書かれていたことなどを話されました。
 戦後、お兄さんのお墓を訪ねて来られた女性の方や、65年経った命日にお悔やみ電報を送ってくれた方もいたそうです。小松さんが知覧を訪ね、隊員の寝床であった三角兵舎を見た時には、ここで最後の夜を過ごしたのかと思い、涙されたことや、絶対にお兄さんのことでは泣かなかったお母様が33回忌に初めて「今まではお国にあげた子やったんや!でももうこれで自分の子になったんや」と言って泣かれたことなど、とにかく戦争が起ればたくさんの悲劇が起る。命が軽んじられ、粗末にされる。「人の命は海よりも深く、地球よりも重たし」ということを伝え続けていきたいと話されました。
 戦争が二度と繰り返されないよう、子どもたちが毎日笑顔で学び生きていけるよう、平和を守り、日本が、世界の国々が戦争することがないように祈ります。(大谷美保さんより)

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もう一度安倍首相を引き摺り下ろそう

 5月23日、「5月の風に… 県民のつどい」が開催され、小森陽一氏(「九条の会」事務局長)が、「草の根運動で九条の無効化阻止するとき」と題して講演されました。要旨を4回に分けてご紹介します。今回は4回目で最終回。

小森陽一氏 ④

 92年6月にPKO法が通って自衛隊が海外に出ることになった。宮沢政権は自衛隊の装備は海外に持ち出さないとし、装備を持たずに行けるところは「非戦闘地域」しかない。この「非戦闘地域」が後にイクラに自衛隊を出した小泉政権を縛った。「非戦闘地域」という文言を国会で総理大臣から引き出したことは決定的に重要だった。
 安倍政権が拘っている切れ目とは何か。切れ目は私たちの草の根の運動で世論を変えて作ったものだ。04年6月10日、自衛隊はその時点で既にイラクに行っていたが、もう黙っておれないと「九条の会」を作ったが、ほとんど報道されなかった。マスメディアが報道しないのなら直接やるしかないと、全国で講演会を開くことになった。そして各地域で自発的に「九条の会」が生まれ、05年5月頃には全国で3000の会が出来た。しかし3000の会では小泉首相の郵政選挙に勝つことは出来なかった。自民・公明で3分の2以上の議席を取って、いつでも明文改憲が出来るようになり、第3次小泉政権は05年10月28日に自民党新憲法草案を出し、9条をばっさり削り、自衛軍を保持すると明記した。この同じ日に2+2で自衛隊が米海兵隊と一緒になって世界に展開できる攻撃型の基地を辺野古に造ろうと決めた。辺野古は戦争法制を使うための新基地だ。そして、日本軍が米軍と一緒に行動するなら即決する判断が必要だと日本版NSCを作れ、特定秘密保護法を作れとなった。この時の内閣官房長官が安倍晋三だった。そして彼が二度目の総理大臣になった時にこれを全てやりあげている。これが彼の歴史的使命だから必死だし、私たちはここで潰さなければならないということになる。
 06年、安倍首相は自らの任期中に憲法を変える、その前に戦後レジームを変える、教育基本法を変えると言った。全国の「九条の会」は4800だった。教育基本法の改悪は阻止できなかった。これが今の学校に対する弾圧と道徳を教科化して子どもたちにお国に対して命を投げ出すかどうかを点数で競わせるところまで攻撃がかかっている。07年国会では改憲手続法として「国民投票法」が議論されていた。毎年、読売新聞は4月1日に憲法世論調査をするが、「九条の会」を作った04年は「憲法を変えた方がいい」が65%で、「変えない方がいい」の22%の3倍だった。けれども07年は3年続けて「憲法を変えない方がいい」が増え続け、「変えた方がいい」はまだ多いけれども、拮抗していると報道した。この10日後に民主党・小沢一郎代表が国民投票法を議論していた衆院の特別委員会の枝野幸男を降ろした。彼は民主党内の最も改憲派で、集団的自衛権行使も容認の立場だった。安倍政権の下での改憲には協力しないという態度を最大野党・民主党が明確にした。それで5月14日に国民投票法が強行採決された。6月に参議院選挙に向けて民主党がマニフェストを出し、憲法改正を取り下げ、「国民の生活が第一」という政策に転換した。7月の参院選では民主党を始めとする野党が多数派になり、明文改憲はさせないという決断を国民が選挙で示した。その時小沢代表は「安倍政権の、テロ対策特措法に基づくインド洋での給油活動は国連安保理決議がないので憲法違反だ」と言った。これが世論の力だ。そして08年の世論調査は15年ぶりに「憲法を変えない方がいい」が多数派になった。
 そういう風に私たちは世論を変えていった。安倍首相は辞めず、07年9月5日シドニーでブッシュ大統領と首脳会談を行い、アフガニスタンにPKOで自衛隊を出してくれ、給油活動を続けてくれという要求に「職を賭して実現する」と応えた。でも民主党は反対しているので実現出来ず、1週間後の9月12日首相を辞任した。にも拘らず再び首相になれたということは、彼等が必死で草の根でやりながら政権を奪取したことになる。私たちは一度引き摺り下ろしたのだから、この力をもう一度発揮することが大事だ。
 どこまでやるか、「九条の会事務局からの訴えと提案」の「①法案が国会に提出される5月から8月までを山場月間に設定し、会の全力をあげて、会独自あるいは共同して可能なあらゆる行動に、創意をこらして取り組もう」「②世論調査をみても戦争立法には反対の人が多いように、戦争立法に対する漠然とした不安や懸念は広がっているが、戦争立法の危険性はまだまだ、国民の中に届いていない。創意をこらした宣伝行動が何よりも急がれる。各地、分野の九条の会は、くり返し戦争立法の学習会を開き、学習しよう」などの7項目を実行してほしい。
 本当に今が正念場だ。私たちの子どもや孫を戦場に送ることにするのかが問われる。そこは絶対に許さないという共同の運動を強力に進めよう。(おわり)

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【九条噺】

 「たま駅長」が死んだ。「たま駅長」は海外にまで知られているとか。私も、関東に住む友人から「たま駅長に会いたいなぁ」と言われ、驚いたことがある▼最近、「遺骨 戦没者三一○万人の戦後史」という本を読んだ。今なお戻ってこない親族の遺骨を探し続ける人々のルポ。著者は毎日新聞の記者。中国やロシア、東南アジアなど海外の戦没者は240万に上る。その多くはまだ残されたまま▼3月10日の東京大空襲の場合、火葬場の処理能力をはるかに超える遺体を放置しておくことは「士気に関係する」という理由で仮埋葬が行われた。埋めた場所は、公園、校庭、空地等把握できただけで150カ所に及んだ。3年後、改葬が始まったが身元の特定が難しく、判明したのは1割にも満たなかった▼硫黄島の場合、収容が始まったのは復帰前の1952年。が、収容作業は遅々として進まず、現在も続いている。出土の状態から考えて、埋葬とは名ばかりで、投げ入れられただけのようだ。満足に一体一体が出てくる訳ではない。しかも高温多湿のため、既に土に還り始めている。「死者の尊厳は完全に踏みにじられている」と著者は言う▼戦後70年、憲法9条はこのような遺骨を一体も作らせなかった。そしてこれからも決して作ってはならない。猫の葬儀に大勢の人が参列し、別れを惜しんだということが、何かとても貴重なことのように思えた。(真)

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「和歌山障害者・患者九条の会」9周年の集い開催

 6月28日、和歌山市ふれ愛センターで38名の出席で「総会&9周年の集い」を開催しました。
 前半の総会では、昨年の総会が、安倍内閣が集団的自衛権行使を容認する閣議決定を強行する前々日に開かれ、集団的自衛権が明白な憲法違反だという学習を行ったことも確認し、後半の講演では、「戦争法案の危険性とその阻止の展望」と題して小野原聡史弁護士にお話をしていただきました。「そもそも憲法とは? 戦争法案はどのようなもので、どんな危険性があるのか?」などを分りやすく教えていただきました。
 私たちの会で必ず行うことはフリートークです。出席者が思っていることを話します。「障害者は平和でなくては生きられない!軍事費にお金を使わないで!年金下げないで!消費税上げないで」との訴えも。今回発言された方全員が言われたことは「なんとしても戦争法案を阻止しよう」でした。7月12日の和歌山城での安保法制反対大集会&パレードにこぞって参加を呼びかける熱い会になりました。(会の事務局より)

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「和歌山市ひがし9条の会」第8回総会開催

 6月28日、東部コミュニティセンター(和歌山市)で「和歌山ひがし9条の会」の第8回総会が開かれました。ギター演奏、呼びかけ人の開会の挨拶の後、総会議事に入り情勢や経過報告、活動方針が提案されました。
 第2部は山﨑和友弁護士が「戦争しない国から戦争する国へ~安倍政権の戦争立法と日本国憲法の破壊~」と題して話されました。安倍首相の狙いは「戦争が出来る国」ではなく、すぐにも「戦争する国」だ。世論で止める闘いが大切になる。出来てしまっても使わせない世論が大事だが、一義的には作らせないことが大事だ。憲法審査会で自民党推薦の憲法学者を含め3人全員が、安全保障法制(戦争法制)は憲法違反だと発言、学者が揃って違憲の法律を廃案にと声明を出すなど、60年安保以降なかったことが起っている。今回の法律が合憲だと言う学者を探すことは困難だと思う。安倍首相の「日本の母子を乗せたアメリカ軍の船が攻撃を受けた時に放っておくのか」では、戦地からの救出は飛行機で行い、アメリカの議会では救出順位が決められており日本人の救出は想定していない。武力行使と一体化しない後方支援などあり得ない。兵站活動は前線の戦いを続けるための補給であり、攻撃されたら止めて帰れる訳がない。つじつまの合わない法律も一旦通れば、法律と整合性を持たせるためにと、憲法を改悪しようとすると締めくくられました。(石垣保さんより)

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(2015年07月10日入力)
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