「九条の会・わかやま」 278号を発行(2015年08月03日付)

 278号が3日付で発行されました。1面は、「九条の会・わかやま」連続講座 戦争をしない国をいつまでも(第2回:副島昭一さん、海堀崇さん)、「九条の会」呼びかけ人・鶴見俊輔さん死去、九条噺、2面は、自由と平和のための京大有志の会の声明書   です。

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「九条の会・わかやま」連続講座
戦争をしない国をいつまでも


 7月19日、「九条の会・わかやま」は「連続講座『戦争しない国をいつまでも』」第2回を開催しました。当会呼びかけ人・副島昭一さん(和歌山大学名誉教授)が「憲法九条と歴史」、海堀崇さん(憲法9条を守る和歌山弁護士の会会員)が「安全保障関連法案を変えたら日本はどう変わるか~自衛隊の活動や私たちの生活は~」と題して講演をされました。その要旨をご紹介します。

憲法を押し付けられたのは支配層
副島昭一さん

 「押し付け憲法論」だが、マッカーサーは日本政府に憲法草案を出すように求めた。ところが日本政府案は明治憲法とほとんど変わらない内容で、ポツダム宣言を踏まえた憲法になっていないと一蹴された。その結果GHQが草案を作ることになり、最終的にはマッカーサーが日本政府に押し付ける形になった。政府が作れなかった結果であり、支配層には押し付けられたが、多くの民衆には望んでいた内容の憲法と歓迎された。今の自民党は支配層の立場を引き継ぎ「押し付け」と言うが、「自分たちに」とは言わず、「日本に」と言う。安保条約も基地も押し付けられているのに、これは問題にしない。
 第1次世界大戦はそれまでに比べて遥かに大規模な総力戦で、被害も大きかった。戦争そのものをなくさなければならないという動きが出てきて、1928年に「戦争違法化」のパリ不戦条約ができた。日本もこれに参加するが、この条約には強制力がなかった。日本は、31年の満州事変からアジア太平洋戦争に突入し、戦争はアジア全域に広がっていった。40年に英米は「大西洋憲章」で反ファシズムを宣言し、この精神に沿って国際連合が出来ることになった。マッカーサーは戦争をやめるという思想を実現する歴史的使命を負っていた。それで最も進んだ理想をGHQは担っており、憲法九条として結実した。その意味で憲法九条は世界的な一番進んだ思想を体現していると言える。
 戦後、皇国史観は否定され、民衆の立場に立った歴史が考えられた。1980年代には侵略や植民地支配という加害の考え方も生まれ、南京事件、慰安婦、強制連行などが明るみに出された。90年代には河野談話、村山談話が出されて、戦前の戦争は正しいと考える勢力は危機感を持った。彼らの考え「修正主義歴史観」の特徴は自国の過去の膨張主義の肯定(アジアを西欧から解放)、外国人虐殺を否定(正当な軍事行動)、日本軍が行った行為を反省しないものだ。かつての罪悪、支配などを認めるとそれを自虐史観と呼び、過去の日本の戦争を自衛のための戦争と肯定する。
 私たちに必要な視点は、支配層と民衆を分ける、誰にとって利益か、誰にとって必要か、歴史に証拠を求めるなどだ。

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アメリカの先制攻撃すら支援
海堀崇さん

 1950年に発足した警察予備隊は、「警察力を補うため」に創設するとなっている。武器も軽装で、人員も7万5千人程度だった。52年、「わが国の平和と秩序の維持」を目的に保安隊に改組され、装備も重装備化し、人員は11万人になった。政府は「保安隊は弱体だから軍隊にあたらず、憲法9条に矛盾しない」と説明した。54年、日米相互防衛援助協定が結ばれ、「わが国の平和と独立を守り、わが国を防衛する」として自衛隊が発足したが、参議院で「自衛隊の海外出動を為さざること」という決議がされている。現時点で自衛官は約23万人弱である。
 今回の戦争法案で存立危機事態が定められ、自衛隊の活動は、個別的自衛権と我が国周辺での活動に制限されていたものが、地理的制限はなく集団的自衛権も行使するようになる。存立危機事態の認定は政府が行うが、相手国の援助要請を受けるという要件が含まれず、国際法上違法となる可能性がある。自衛であるかどうかのキーポイントは日本の主権が維持できるかだが、他国が攻撃された時に、日本の存立が危うくなるというのはどういう場面かよく分からない。重要影響事態では地理的制限なく米軍などの後方支援活動を行うことになっており、現に戦闘行為が行われている現場以外で行うとしているが、現場はどんどん移り変わる。国際平和共同対処事態では、一般法で他国軍隊の協力支援活動を行うが、これも現に戦闘行為が行われている現場かどうかが基準になっている。国際平和協力法では従来のPKO活動に加えて安全確保活動、駆け付け警護などが行え、武器使用も認められることになった。また、国際連携平和安全活動が加わり、国連が統括しない活動で停戦監視活動などを行うことになる。他国軍の武器等の防護、在外邦人の救出保護もすることになっている。ホルムズ海峡問題では石油という経済的理由で、相手国に武力攻撃をする可能性がある。アメリカは先制攻撃が国際法違反とは考えていないので、日本も米軍と一緒になって攻撃をしかける可能性がある。後方支援は兵站活動だから当然攻撃の対象となる。さらに事態の認定根拠は秘密保護法が足枷になり、国会のチェックを受けない可能性もある。
 国民に対する影響は、武力攻撃事態や武力攻撃予測事態が認定されると、地方公共団体、指定公共機関は必要な措置を実施する責務を負わされ、国民は協力することが求められる。政府説明では存立危機事態は武力攻撃事態に該当することが多いと言っているので、地方公共団体、指定公共機関もその対処に取り込まれることになる。海外にいる国民も協力させられる可能性もある。国民保護法は個別的自衛権が前提となっており、今回の改正には入っていない。集団的自衛権を行使すれば我が国が反撃を受ける可能性は遥かに高くなるので、国民の被害の可能性が高くなる。海外で米軍と協調するために軍備の増強も必要になるし、テロなどの様々な対策が必要となる。防衛予算の増加も考えられる。自衛官の死の危険も増加する。増税、福祉予算の削減による国民の負担の増加も考えられる。

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【第3回】 9月12日(土)午後2時から 和歌山県JAビルで

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「九条の会」呼びかけ人・鶴見俊輔さん死去

 「九条の会」呼びかけ人・鶴見俊輔さんが7月20日、93歳で死去されました。謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。7月24日付の毎日新聞に掲載された記事をご紹介します。

反戦平和追求 貫いた「思想の巨人」

 哲学者で評論家の鶴見俊輔さんは、大衆文化に至るまで膨大な知識に裏付けられた思想だけでなく、身をもって平和を追い求めた運動家でもあった。巨人の死去を知人らが悼んだ。
 「広く深く、アメリカ文化に通じた人だった。集会の立ち話で、愉快に教えられた。『民主主義者』そのもの」。作家、大江健三郎さんはしのんだ。鶴見さんは護憲を掲げ、04年に結成された市民団体「九条の会」で、大江さんや故・小田実さん、井上ひさしさんらと共に呼びかけ人となった。
 同会の事務局長を務める東京大学の小森陽一教授(日本文学)によると今年1月、呼びかけ人の一人で東京大名誉教授の奥平康弘さんが亡くなったときも、病床からでも運動に参加しようとする代筆のメッセージが寄せられるなど、最後まで会を気に掛け、財務面でも支え続けていたという。  1970年代まで大衆文学などアカデミズムの研究対象とならなかった分野に積極的にかかわった鶴見さんについて小森さんは「日本の社会と文化現象とをつなぎ、人間全体を研究する姿勢で人文科学を発展させた」と振り返りつつ、「戦争体験を思想化し、反戦平和を求めて生き抜かれた。大きな存在を失ったが、遺志を受け継いでいきたい」と誓った。
 市民運動のリーダーとして、晩年まで民主主義の力を信じていた。07年、憲法改正を掲げ参院選で大敗した安倍晋三首相について、毎日新聞の取材に、「楽観はできないけれど、大衆の中に動きがあるかもしれないね。もう少し見てみたい」と語り、「民主主義は完全に成立することはない。追い込まれて盛り返す。そのパワーが重要なんだ」と話していた。知的なユーモアも豊かだった。08年に「鶴見俊輔書評集成 全3巻」で毎日書評賞を受賞した際は、つえをつきながら登壇し「(米国留学したために)いまだに日本語はうまくない」「知識人とは異なる『悪い本』を読み続けて80年。一本貫いてきたものがある」と語って会場を沸かせた。また同年、京都市内であった講演会では「自分の葬式を『ご近所葬』にしたい。無信仰者として死にたい」などと話していた。

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【九条噺】

 読売、日経、産経、NHKなどは、「戦争法案」は「今国会での成立が確実となった」などと報じているが、果たしてそうか。「天声人語」が黒澤いつきさん(「明日の自由を守る若手弁護士の会」)の『安保関連法案 まだまだ阻止できます☆』が大きな反響を呼んでいることを伝えている▼それによれば、法案成立を阻止できるチャンスは、まだまだ残されているという。法案成立の道のりは2つあり、1つは、同一の会期内に衆議院と参議院の両方を過半数の賛成で通過する道のり。もう1つは、参議院が衆議院から法律案を受け取り60日以内に議決しないときに、衆議院の3分の2以上の賛成で再議決する道のりだ。だから、衆議院本会議で強行採決されても、参議院で可決されなければ法案は成立しない。参議院で可決しないまま60日経ったとしても、衆議院で再議決しない限り成立はありえない▼また、衆議院で可決して、参議院に送られたものの会期末となり「継続審議」になった場合、次の国会では、参議院は審議の続きから始まるが、衆議院はもう一度最初から審議のやり直しになる。この場合には、臨時国会で行われた衆院の強行採決は意味がなくなるという▼法案の内容がもっと国民に広く知られ、反対されると、ますます支持率は下がり、可決は難しくなる。対抗手段は、とにかく「戦争法案」の問題点を広く知らせ、国民の反対の意思をあらゆる方法で広げることだ。これからだ。諦める必要はまったくない。(南)

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自由と平和のための京大有志の会の声明書

戦争法案の採決が衆院特別委員会で強行された15日の前夜、京都大学吉田キャンパスの教室で声明書が読み上げられました。インターネットなどを通じ賛同が広がっています。全文をご紹介します。

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戦争は、防衛を名目に始まる。
戦争は、兵器産業に富をもたらす。
戦争は、すぐに制御が効かなくなる。
戦争は、始めるよりも終えるほうが難しい。
戦争は、兵士だけでなく、老人や子どもにも災いをもたらす。
戦争は、人々の四肢だけでなく、心の中にも深い傷を負わせる。
精神は、操作の対象物ではない。
生命は、誰かの持ち駒ではない。
海は、基地に押しつぶされてはならない。
空は、戦闘機の爆音に消されてはならない。
血を流すことを貢献と考える普通の国よりは、
知を生み出すことを誇る特殊な国に生きたい。
学問は、戦争の武器ではない。
学問は、商売の道具ではない。
学問は、権力の下僕ではない。
生きる場所と考える自由を守り、創るために、
私たちはまず、思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。

自由と平和のための京大有志の会

賛同署名はここから http://www.kyotounivfreedom.com/support/
          

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(2015年08月03日入力)
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