「九条の会・わかやま」 288号を発行(2015年12月23日付)

 288号が23日付で発行されました。1面は、野党統一候補を支援する「市民連合」設立、今逃げている政府・与党を追及することが大切(高作正博さん④)、九条噺、2面は、当会呼びかけ人・宇江敏勝さん新刊、戦争法成立3カ月 各地で若者デモ、和歌山でもランチタイムデモ   です。

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[本文から]

野党統一候補を支援する「市民連合」設立



 安全保障関連法に反対して国会前で抗議してきた学生団体「SEALDs」などの5団体が20日、来年の参院選に向けて野党統一候補を支援する「市民連合」を設立し、東京都内で記者会見した。来年4月の衆院北海道5区補選でも野党候補を応援するという。
 設立されたのは、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」。「SEALDs」「学者の会」「ママの会」など5団体の有志が中心。ほかの団体にも参加を呼びかける。全国32の1人区で候補者を絞り込むよう野党に働きかける。安保法の廃止や集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回といった基本方針に賛同する候補者を推薦し、選挙応援などをする。独自候補は擁立しない。
 会見に出席した山口二郎・法政大教授は「政党同士の話し合いによる共闘が難しい現実を見て、発足に至った。自民党政治への対抗軸をつくり、市民に働きかけていきたい」と訴えた。
 「SEALDs」メンバーで筑波大院生の諏訪原健さんは「市民がリーダーシップを発揮して自分たちで社会を動かしていく。民主主義を取り戻すということだ」と話した。
 市民連合の設立を受けて、民主党の岡田克也代表は20日、山形県白鷹町で記者団に「非常に考え方が近く、ぜひ連携したい」。共産党の志位和夫委員長も、札幌市で「この提唱を受けて、真剣な話し合いを行っていきたい」と述べた。(朝日新聞12月21日付)

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今逃げている政府・与党を追及することが大切

 11月3日に「守ろう9条 紀の川 市民の会」が「第12回憲法フェスタ」を開催し、関西大学教授(憲法学)・高作正博(たかさく・まさひろ)さんが「『戦争法制』で日本はどんな国になるのか~私たちはどう対抗するべきか~」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目で最終回。

高作正博さん ④



 今回の法律への反対運動は大きな希望を持てる内容だった。元々は憲法に基づいて軍事力を縛る考え方で憲法は作られている。憲法9条の内容は戦前の反省を踏まえて作られている。戦前も一応議会があり、民主主義があり、議会が統制する仕組みを用意していたが、治安維持法により反対の声が弾圧され、民主主義がなくなってしまった。つまり、民主主義で軍事力を統制するやり方が失敗したので、戦後になって民主主義では不十分だから憲法で縛るという考え方が9条の思想だ。民主主義で失敗した経験を反省しないまま憲法を変えることは出来ないので、これまでの改憲論をずっと潰してきたのが戦後の流れだ。それを解釈改憲で勝手に憲法の拘束を外してしまったのが今回の法律だ。立憲主義の考え方でこれまでやってきたが、舞台は変わった。国会で統制する、国会議員を選ぶ私たちが統制するといった民主主義の流れの中で軍事力をどう抑え込むのかという問題に議論が移ってきているのが今の流れではないか。従来は、憲法を持ち出せば議論に決着がついていた。しかし、解釈改憲が行われたので、憲法を持ち出してもなかなかうまく行かない状況になったので、私たちは日々どうするかが求められている。これはまさしく民主主義という問題になる。
 ひとつの可能性としては、若い人を中心として一人称で反対の声をあげる人が印象的だった。従来は何を考えているか分からない「曖昧な私」が今回の反対運動の中で、「私は」「私の意見では」で語る声が強かったと思う。これに大きな希望を持つことが出来る可能性がある。そうすると「自分はどうするか」が問われてくる。私たちに自分と考え方が相容れない人たちを排除したり人格を攻撃したりすることはなかったか。例えば「SEALDs」の考え方に対して日本が戦争をしたという歴史認識が不十分ではないかと指摘した人がいたが、その人をネット上で攻撃する声が多く出た。さらにその人が外国籍だったこともあり人格攻撃に向って行った。これはあってはいけないことだ。また、大きな集会で組織の旗を出すなという声もあるが、旗がないとどこに行けばいいのか分からない訳で、声をひとつにするのはいいのだけれど、自己規制が過ぎる傾向があるのではないかと思う。他者を傷つけないことが最低限必要だ。
 忘却、無気力に陥らない、これが今特に必要だ。さらに世論の誘導に乗らないことも重要だ。「ナイラの証言」というものがある。15歳のクウェート人の女性がアメリカ議会で「病院でイラクの兵隊が赤ん坊を取り出し、保育器を奪い、赤ん坊は死んでいった」と発言した。この発言で一気に湾岸戦争に参戦するという議論に流れたが、この証言は全て嘘だったという話だ。日本でも湾岸戦争のトラウマがある。湾岸戦争の時日本は1兆2千億円の支援をしたが、クウェートが感謝する国の中に日本はなかったので、金を出すだけでなく、自衛隊を海外に出そうという議論になった。実際にはほとんどの額がアメリカ政府に渡り戦費に使われ、クウェートに支払われたのは6億円に過ぎなかった。こういう誘導に乗らないように気をつけなければならない。
 次に「追及の可能性」の問題では、安保法制が通った後、政府は逃げている。ここでこそ追い詰めるチャンスだ。議員の4分の1の要求があれば臨時国会を開かねばならないのに開催を拒否している。また、議論自体から逃げている。安保法制の議論が終った後、また経済だと議論のすり替えを行った。参院選の直前に南スーダンのPKOで駆け付け警護をする部隊が行くのは具合が悪いので、現実になるのは選挙が終ってからになる。私たちは忘れていないことを示す必要がある。参院選でもし野党が大きく負けると、与党に3分の2を取られるので、改憲に進みうる状況になる。さらに与党でも野党でもない存在がいる。そういう政党に少なくとも3分の2を取らせないことが求められる。改憲は選挙が終ればやると言っているので、今逃げている政府・与党を追及することが大切だ。(おわり)

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【九条噺】

 先日『火垂るの墓』の直木賞作家、野坂昭如氏が亡くなった。奥様は告別式で野坂氏の「戦争をしてはならない。巻き込まれてはならない。戦争は何も残さず、悲しみだけが残るんだ」という言葉を紹介し、「『火垂るの墓』は世界で読まれています。日本の大事な一冊になってほしい」と紹介されたという。野坂氏のこの言葉と作品は思想信条、戦争体験の有無や世代、国を超えて、多くの人に共感されるものだ▼現に、「戦争をしてはならない」という日本国民多数の意思に基づいて日本国憲法9条は戦争放棄を定めている。「日本は戦争しない国だ」と国の基本をすえたもので、政府と国会はこのしばりの範囲内で動くものだ▼ところが安倍内閣は昨年7月の閣議決定で、海外で他国の戦争を手伝うため自衛隊を派遣する「集団的自衛権行使」の容認を決めた。日本が攻められた時だけに「個別的自衛権」を認める歴代政府の憲法解釈を捨て、憲法9条を変えないまま解釈変更で「海外で戦争できる」とした▼自衛隊の海外派遣には裏付けとなる細かい法制が必要なので、今年「平和安全保障関連法制」を一括上程し、9月の参議院で成立させた。国会周辺と全国で広範な反対運動が盛り上がり、野党も呼応して追及する中、与党の数の力での強行だった▼与党リーダーが民意に構わず何でも通す独裁手法は、国民の総意で定めた憲法の枠を守るという「立憲主義」の破壊だ。安保法制を民意で廃止へ、2千万人署名が鍵になろう。(柏)

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当会呼びかけ人・宇江敏勝さん新刊
炭焼き、筏流し・・・山の民の失われた暮らし描く




 「山の作家」で知られる田辺市中辺路町の宇江敏勝さんが、丸太を流す筏師や炭焼きなどの世界を舞台にした民俗伝奇小説集「黄金色の夜」(新橋書房)を出版した。高度経済成長を経て失われた山の民の暮らしを描いている。
 宇江さんは熊野高校を卒業後、炭焼きや林業で暮らしてきた。今回の本に載せた小説6編も、その体験をもとにしている。民俗伝奇小説集としては5冊目。
 本のタイトルとなった「黄金色の夜」は、備長炭を焼く男の話だ。備長炭は通常の木炭と異なり、最後の仕上げに空気を送り込んで高温にすることで金属のように硬くなる。そのとき、透明に近い黄金色に輝くという。そんな炭焼きの現場でおそろしいことが起きていた――という筋書きだ。
 「猿の猟師」の主人公がとる猿は、脳みそは頭痛やぜんそくの薬、睾丸は婦人病の薬として珍重されたという。猿を殺すと、赤い顔が青白くかわる様子が人間の死に際とそっくりらしい。そんな描写から、不気味な物語に導かれていく。
 「最後の牛使い」は、この本では唯一、米作りの農民を取り上げている。農業機械の導入で集落から牛が消え、農薬によってアメンボやゲンゴロウが全滅するなか、ただ一人、牛で田を耕しつづけた男の生き様を描いた。
 「黄金色の夜」は四六判174ページ、2千円(税別)。(朝日新聞12月9日和歌山版)



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戦争法成立3カ月、各地で若者デモ

(東京)

 安全保障関連法の成立から3カ月となった19日、各地で安保法制に反対するデモがあった。東京・原宿周辺で高校生グループ「ティーンズ・ソウル」が主催したデモでは、制服姿の高校生を先頭に、家族連れや大人たち約1千人(主催者発表)が歩き、「憲法守れ」などと訴えた。同グループのメンバーで高校2年の女子生徒はマイクを握り、「私たち高校生も主権者です。これからも政治のことを考え続けていく」と訴えた。沿道では多くの若者が足を止め、携帯電話で写真を撮ったり、ビラを受け取ったりしていた。デモ隊は「一緒に歩こう」と呼びかけた。(朝日新聞12月20日付)

(大阪)

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和歌山でもランチタイムデモ



 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」は8日、第18回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」を和歌山市で実施し、100人が参加しました。参加者らは「戦争法絶対反対」「壊すな憲法」「戦争したがる総理はいらない」などと訴え、市内を行進しました。

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(2015年12月24日入力)
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