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「立憲政治、取り戻す」、「民間立憲臨調」設立
安全保障関連法の成立から4カ月を迎えた19日、同法に反対してきた学者や弁護士らが「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」を設立した。
憲法学者の樋口陽一東大名誉教授や小林節慶大名誉教授ら約2百人が参加。安保法に対するさまざまな反対運動を支えたり、夏の参院選に向けて広く政治のあり方について考えてもらったりするため、学識的に情報を分析し、発信していく。
19日、東京・永田町で開いた会見では、安保法の強行成立は、立憲主義を否定した暴走だとする声明を発表。代表世話人の樋口氏は、「明治政府の権力者たち自身が採用した立憲政治が、今の安倍政治によって正面から攻撃された。取り戻さなくてはならない」と強調した。
世話人の水島朝穂・早稲田大教授は、「改憲が正面に据えられる参院選に向けて、どこを選ぶのか、どういう政策を取るのか、安全保障をどうするかを全部棚上げし、立憲主義を壊してきた政権にどう向き合うか。有権者に論点を提示し続けたい」と語った。
参院選に向けては野党共闘を呼びかける「市民連合」などの動きもあるが、事務局幹事の小林氏は「この団体としては政治運動は一切しない」とした。
樋口氏、水島氏、小林氏を除く代表世話人、世話人は次の皆さん。
▼代表世話人=宇都宮健児(弁護士)、三枝成彰(音楽家)、宝田明(俳優)、湯川れい子(音楽評論家)
▼世話人=青木理(ジャーナリスト)、伊勢崎賢治(東京外国語大院教授)、伊藤真(弁護士)、今井一(ジャーナリスト)、岩上安身(同)、大谷昭宏(同)、大森典子(弁護士)、岡野八代(同志社大院教授)、奥田愛基(SEALDsメンバー)、角谷浩一(政治ジャーナリスト)、香山リカ(立教大教授)、木内みどり(女優)、古賀茂明(元経産官僚)、佐高信(評論家)、佐藤学(学習院大教授)、角田由紀子(弁護士)、寺脇研(京都造形芸術大教授)、中野晃一(上智大教授)、長谷部恭男(早稲田大教授)、原中勝征(医療法人理事長)、福岡政行(白鴎大教授)、福山洋子(弁護士)、吉原毅(城南信金相談役)(「東京新聞」1月20日付)
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言葉「緊急事態条項」
ここに至り「緊急事態条項」が大きな問題として急浮上しています。
国会議員の任期は、憲法45条、46条で定められており、この任期を法律で延長することはできないとされています。東日本大震災のような非常事態で、国政選挙が実施できない場合の政治空白の回避策が現憲法にはないので憲法改正が必要だというのが「緊急事態条項」導入論のひとつです。
しかし、緊急事態が発生して総選挙が実施できず、衆議院議員が欠けた状態が長引いても、憲法54条2項で、内閣は閉会中の参議院の緊急集会を求めることができます。参議院議員は任期が6年で、3年毎に半数を改選することになっています。もし、参議院の通常選挙が日程通り実施できなくなっても、まだ、非改選の議員が残っていることになります。緊急時の対応を国会に諮らず、内閣だけで対処するという事態は最悪でも3年間は現出しません。
そもそも何故最初から国政選挙が実施出来ないと決め付けるのか、第2次世界大戦中の42年も日本は総選挙を実施しています。緊急事態が起きてから、国会に諮って「この法律をすぐに作らないと対処できない」ということが本当にあるのなら、そんなことに気づかずに放置していた政府や国会の能力的欠陥であって、憲法の欠陥ではありません。
「緊急事態条項」の問題は単に国会議員の任期を延長するという問題ではありません。いかなる努力をしても防ぎきれない緊急事態には、国民の生命財産などを守るために、内閣総理大臣に権限を集中して人権を平時より制約することが必要になるという議論もあります。しかし、内閣総理大臣に権限を集中させても、東日本大震災のような大津波は防げるものではありませんし、原発事故は人災であり、「いかなる努力をしても防ぎきれない」事態とする訳にはいきません。東日本大震災の政府の対応のまずさは災害への備えや対策が不十分だったからで、「緊急事態条項」がなかったからではありません。
自民党改憲草案は、98条と99条に緊急事態の規定を定めています。「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃、内乱、大規模な自然災害その他の緊急事態において…緊急事態の宣言を発することができる」「緊急事態には、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができ、財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」「緊急事態には、何人も、…国その他公の機関の指示に従わなければならない」と定めています。要するに地震や戦争などで内閣が緊急事態と判断したときは、三権分立をやめて、内閣が法律と同じ効力のある政令を作れるようにする(国会の立法権限を内閣にも与える)というもので、「憲法停止条項」と言うべきものです。
緊急事態の宣言がなされた場合は、「何人も」国の指示に従わなければならないので、国民も、企業も、地方自治体も、国などの指示に従う義務を負うことになります。自民党Q&Aは、「国民の生命、身体及び財産という大きな人権を守るために、その範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもありうる」と言います。表現の自由はこの「大きな人権」に入っていません。内閣が緊急事態宣言をした時、「国民の生命や身体の安全を守るため」という「名目」で、内閣に不都合な言論を禁止してしまうということが容易にあり得る、ということになります。報道規制、デモや集会の禁止などがすぐに思いつきます。緊急事態には国などの指示に従わなければならない訳ですから、内閣に不都合な言論を禁止した場合、それに従わずに言論を続けたら処罰されるということも想定されます。内閣の独断でこういうことができ、これは正に「戒厳令」と同じです。
最近は人権制限などとは切り離し、災害などの場合の国会議員の任期延長を優先する案も出ています。しかし、これは国民の反対が少ないところから改憲の実績を上げ、本丸の9条改憲への突破口にしようとするものと言わなければなりません。
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【九条噺】
元陸上幕僚長・火箱芳文氏が「国会審議で『自衛官のリスクの増大』について政府が明確に答えなかった。国民も政府も自衛隊が出た場合には危険を伴うという前提に立つべきだ」と述べている(毎日新聞12月20日付)▼「安保関連法が今後施行されたら、自衛隊がリスクのある任務を遂行する機会は増えるだろう。リスクを負って盾になる自衛隊に国民が『気をつけて任務を果たして』と尊信の念で送り出せるような支持があることが望ましい。自衛官に負傷者や犠牲者が出るかもしれないという覚悟を、国民に持ってほしい」とも述べている▼「戦争法」は前線と後方、戦闘地域と非戦闘地域という区別をなくし、今の瞬間に戦闘が行われていないところなら活動できるとし、米軍などに武器や弾薬を提供し、発進準備中の航空機に給油や整備ができるとした。さらに任務遂行型の武器使用や駆け付け警護も認めた。こうして自衛隊は、従来よりも何百、何千倍ものリスクを負うことになった。戦後70年間、一人の外国人も戦争で殺さず、一人の戦死者も出すことがなかった自衛隊が、今、「殺し殺される」危機に直面している▼「盾」と言うが、日本人の盾ではないだろう。自衛官に負傷者や犠牲者が出ることなど日本人は誰も望んでいない。私たちに求められるのは、そんな「覚悟を持つ」ことや「顕彰や万が一の場合の自衛隊員や家族の処遇も考える」ことではなく、その根源となっている「戦争法」を廃止することだ。(南)
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戦争法「今すぐ廃止」5800人が国会前行動
安全保障関連法の成立から4カ月を迎えたことに合わせ、法律の廃止を求める抗議行動が19日、東京・永田町の衆議院第二議員会館前を中心に行われた。参加者はプラカードや横断幕を手に「戦争できる法律いらない」「今すぐ廃止」などと訴えた。
主催は国会周辺での大規模な行動を続けてきた市民団体「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」。
安保法反対の抗議行動には毎回参加しているという東京都杉並区の無職高木玄夫さんは「思想的なものというより、憲法、平和を守りたい一心。4カ月たっても、関心はまったく薄れない」と話した。
江戸川区で子育てのサポート活動に取り組む中村昌子さんは「子ども、孫世代のためにも絶対に廃止させないといけない法律。夏の参院選で、反対派が多数当選するように頑張りたい」と力を込めた。(「東京新聞」1月20日付)
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和歌山でも、第19回ランチタイムデモ
前夜来の雨模様の上に、冷たい風が吹きすさび、首都圏からは積雪による交通網大混乱のニュースが届く中、1月18日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかけた第19回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が実施されました。「今日の天候では…」と心配の中、スタートしてからも途中合流してくる人たちが続き、最終的には80人の方が参加し、「戦争法は廃止」「憲法9条を守ろう」とアピールしました。
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