「九条の会・わかやま」 292号を発行(2016年02月19日付)

 292号が19日付で発行されました。1面は、九条の会が緊急アピール 安倍首相の九条明文改憲発言に抗議する、第20回「ランチタイムデモ」実施 和歌山市、九条噺、2面は、「立憲デモクラシーの会」 シンポジウム開催 「緊急事態条項」必要なし 長谷部氏講演要旨、「安倍政権NO!」「野党は共闘」求め1万人が大行進   です。

    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

九条の会が緊急アピール



 安倍晋三首相が9条を含む憲法の改正について積極的に発言していることに対し、護憲派の文化人らでつくる「九条の会」は8日、東京都内の参院議員会館で記者会見し、安倍首相の発言に抗議する緊急アピール文を発表した。
 アピール文では、国会答弁で憲法9条改定に言及したことに、「9条の意義を正面から否定する考えの持ち主」と批判。昨年の安全保障関連法案の採決や憲法への「緊急事態条項」創設の主張については、「解釈変更と法律制定による憲法破壊に加え、明文改憲の主張を公然とするに至った」と強調。「自らの憲法尊重擁護義務をわきまえない安倍首相の明文改憲発言に断固抗議します」と訴えた。
 呼びかけ人の作家、澤地久枝さんは「安倍さんは憲法9条2項を変え、殺し、殺される交戦権を認めようとしている。戦死者を出さなかった歴史が終わり、『絶対にやらない』と70年余り前に誓った戦争がよみがえる。命がけで反対しなければ、日本は戦争をする国になる」と語気を強めた。憲法学者の渡辺治・一橋大名誉教授は「安倍首相は戦争法(安保関連法)を強行可決して自衛隊を出そうとしたが、戦争をする国になるために憲法全体が大きな障害物になっていることが確認されたため、この最後のとりでを壊そうとしている」と語った。(朝日新聞2月9日付)

    --------------------------------------------------------

安倍首相の九条明文改憲発言に抗議する

 安倍晋三首相は、2月3日と4日と5日の連日、衆議院予算委員会の審議において、戦力の不保持を定めた憲法9条2項の改定に言及しました。その際に、「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いをもっている状況をなくすべきだ」という逆立ちした我田引水の理屈や、「占領時代につくられた憲法で、時代にそぐわない」という相も変わらぬ「押しつけ憲法」論などを理由に挙げました。これらは、同首相が、憲法9条の意義を正面から否定する考えの持ち主であることを公言するものに他なりません。
 昨年9月、政府・与党は、多くの国民の反対の声を押し切って、日本国憲法がよって立つ立憲主義をくつがえし、民主主義をかなぐり捨てて、9条の平和主義を破壊する戦争法(安保関連法)案の採決を強行しました。この時は、「集団的自衛権の限定行使は合憲」、「現行憲法の範囲内の法案」などと、従来の政府見解からも逸脱する答弁で逃げ回りました。ところが今度は、そうした解釈変更と法律制定による憲法破壊に加えて、明文改憲の主張を公然とするに至ったのです。それは、有事における首相の権限強化や国民の権利制限のための「緊急事態条項」創設の主張にも如実に現れています。
 私たち九条の会は、自らの憲法尊重擁護義務をまったくわきまえないこうした一連の安倍首相の明文改憲発言に断固抗議します。2007年、9条改憲を公言した第1次安倍政権を退陣に追い込んだ世論の高揚の再現をめざして、戦争法を廃止し、憲法9条を守りぬくこと、そのために一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。
 2016年2月8日
                                    九条の会

    --------------------------------------------------------

第20回「ランチタイムデモ」実施
和歌山市




 前日とはうって変わり、寒風が吹きすさぶ2月15日、第20回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、110名の参加者が和歌山市役所から京橋プロムナードまでを行進しました。14年6月23日の第1回以来、記念すべき第20回となりました。次回は3月14日です。

    --------------------------------------------------------

【九条噺】

 朝日新聞(2月9日デジタル)によると、「北方領土問題を担当する島尻安伊子・沖縄北方担当相が9日の記者会見で、手元のペーパーを読んだ際、『千島、はぼ、ええっと、なんだっけ』と『歯舞』を読めず、言葉を詰まらせた。その直後、近くにいた秘書官が島尻氏に『はぼまいしょとう』とささやいた」という。これは笑い話で済まされない大失態だ▼漢字が読めないということでは麻生太郎財務大臣が、「未曾有」を「みぞゆう」、「踏襲」を「ふしゅう」、「怪我」を「かいが」などと読みひんしゅくを買ったのが有名だが、こんな状態なら、島尻氏は「色丹」を「しょくたん」、「国後」を「こくご」、「択捉」を「たくそく」などと読むのではないかと心配してしまう。地名・人名などの読み方は難しいところもあるが、島尻氏は、いわゆる「北方領土」問題も担当する閣僚だ。北方4島の名前ぐらいは当然正確に言えなければ話にならない。麻生氏とは少し訳が違う。この程度の知識・能力しかない人を「沖縄北方担当大臣」に指名した安倍首相は言い訳のしようもないだろう▼沖縄では辺野古新基地建設が強行され、翁長知事を先頭に沖縄県民や国民が基地建設に反対している時、それに対応する立場にもあるはずだ。島尻氏は沖縄県選挙区選出の参議院議員だ。まさか、「辺野古」を「へんなこ」と言うようなことはないだろうけど、官僚が作るペーパーの漢字には全てルビを振ってもらうようにしたら。(南)

    --------------------------------------------------------

「立憲デモクラシーの会」、シンポジウム開催
「緊急事態条項」必要なし




 2月5日、「立憲デモクラシーの会」主催の公開シンポジウム「憲法に緊急事態条項は必要か」が全電通労働会館多目的ホールで開催され、満席の約500人が参加しました。長谷部恭男・早稲田大学教授(憲法学)が講演をしました。
 長谷部氏はフランス、ドイツ、米国の憲法体系を紹介しつつ、自民党が新設を目指す「緊急事態条項」は、日本には「いらない」と断言し、ナチス・ドイツを例に挙げ、権力集中の危険性を論じました。また、仮に「緊急事態条項」を導入し、「緊急事態宣言」が発せられた場合は、日本には、高度に政治的な問題について裁判所は判断を避けるという「統治行為論」がある。 つまり、司法によるコントロールも期待できないため、事実上、権力を掌握した政府が暴走すれば制御する術がない。緊急事態条項を新設するのであれば、「統治行為論」を廃止し、内閣による裁判官の人事権もより厳格なハードルを設けなければならないと指摘しました。さらに長谷部氏は、「単一の生き方に国民を誘導する」のが自民党改憲草案の考え方であると批判し、「安倍総理は『法の支配、民主主義は普遍的な価値』とよく言うが、単なるリップ・サービスだ。騙されてはいけない」と会場に訴えました。
 パネルディスカッションのパネラーの石川健治・東京大学大学院教授(憲法学)は、緊急事態への対処を法整備ではなく、憲法に盛り込もうとする自民党の狙いは、「法律を待たないで、内閣が物事を決められるようにすること」で、「これは、ほぼ戒厳の問題と一致する」と説明しました。「戒厳とは、議会を飛ばして決定出来ることと、軍隊を動かせるのがポイントだ」と解説し、「デモが国会前に大勢集まり、警察では防げない時に自衛隊を投入する。そのための条項だ」と指摘しました。

    --------------------------------------------------------

長谷部氏講演要旨



 緊急事態条項は必要か。ドイツの基本法には防衛上の緊急事態条項がある。攻められた時に緊急事態を発動する。なぜドイツの基本法にはこういう条項があるのかというと、ドイツは連邦国家だ。立法、行政の権限が連邦政府と各州政府に分割されている。そのため緊急時に権限を連邦政府に吸い上げて対処する必要があるので、こういう条項が置かれている。日本は連邦国家ではない。緊急時に対処する法律を作っておけばいい。現に災害対策基本法や有事法制があり、必要なものは出来ている。さらに何かが必要なら法律を作ればいいだけの話だ。アメリカは、大統領は非常の事態には連邦議会を招集出来ると書いてあるが、日本は政府がいつでも国会を召集出来る。衆議院が解散されている時、緊急の事態が起り総選挙が出来ないことに対処する必要があるという議論だが、昭和17年4月の太平洋戦争の最中にも総選挙は実施された。緊急事態条項がある場合は裁判所によるコントロールが不可欠だ。そうでないと権力を集中した政府が何をやるか分からないからだ。考えておかねばならないのは統治行為論だ。統治行為論で裁判所がコントロールしないことにならないようにしなければならない。

    --------------------------------------------------------

「安倍政権NO!」「野党は共闘」求め、1万人が大行進



 安倍政権に反対するデモ行進が14日、東京・渋谷であり、参加者は「安倍政権NO!」「野党は共闘」と書かれたカードを掲げ、渋谷と原宿の街を歩いた。
 行進に先立って開かれた集会会場となった代々木公園のケヤキ並木一帯には多くの参加者が集まり、政治学者の中野晃一さんが安保法制について「憲法を壊す、立憲主義をないがしろにすることのどこが保守なのか」と力説。精神科医の香山リカさんは「もはや平和は静かにつくるものではなく、強引に奪おうとする人から闘って奪い返すものになった。一緒に立ち上がって怒りを表明しよう」と述べた。
 「市民は学者よりも知恵がないかもしれない。アーティストより影響力がないかもしれない。だが、我々には意志がある」。学生団体「シールズ」の中心メンバーの一人、牛田悦正(よしまさ)さんは香港で起きた民主派のデモ「雨傘革命」の参加者から聞いた言葉を紹介し「諦めない意志が大事」と呼び掛けた。(毎日新聞デジタル2月14日付【写真も】)



    ―――――――――――――――――――――――――――――
(2016年02月21日入力)
[トップページ]