「九条の会・わかやま」 298号を発行(2016年05月23日付)

 298号が23日付で発行されました。1面は、小林節氏講演会開催、緊急事態条項は日本国憲法の基本原理への重大な挑戦(石埼学さん③)、九条噺、2面は、個人主義をわざと利己主義と混同させて否定(青井美帆さん②)、3面は、安倍首相はやりたいことを多数決で押し通す(小林節氏①)、第23回「ランチタイムデモ」実施、高校生への署名呼びかけと街宣活動実施 みなべ「九条の会」  です。


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[本文から]

小林節氏講演会開催



 5月14日、和歌山市民会館大ホールで「小林節氏講演会」が開催され、約1000人が参加しました。
 冒頭「市民連合わかやま」共同代表の豊田泰史弁護士から「『戦争する国』づくりへ邁進する安倍政権によって日本は岐路に立たされている。安倍政権を倒す以外にない。由良登信弁護士が参院選統一候補として立ち上がった。共産党、社民党、生活の党からは推薦をもらっており、民進党は候補者を降ろしたが、自主投票だと言っている。自主投票は安倍政権を利するだけ。最後まで民進党の推薦を求める。みなさんからも民進党に要請を出してほしい」との訴えがありました。



(由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士)

 続いて由良登信弁護士は「戦争法廃止に向って、憲法通りに政治を元に戻す、そのために働きたいと立候補を決意した。戦争法は誰が見ても9条違反の法律だ。憲法違反を押し通す政治を絶対に許さないという気持ちを強く持っている。そういうことを許していると平和だけでなく民主主義もみなさんの人権もどんどん奪われていく。そういう危機感を持っている。みなさんの平和を求める熱い思いを受け止め国政の場に届ける」と訴えました。
 「政治の暴走を止めるために」と題して講演をされた小林節氏(慶応大学名誉教授)は、講演の中で自らが立ち上げた「国民怒りの声」について、「参院選1人区では統一候補擁立が進んだが、比例区が心配だ。『自民党は怖い。民主党の失敗は許せない。共産党はちょっと…』と思っている人がいる中で、大同団結すれば比例区でも野党が広がり、政権交代が早まる。決して投票依頼はしないし、媚は売らない。眠っている人に起きてほしいと思っているだけだ」と説明しました。

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安倍首相はやりたいことを多数決で押し通す

 小林節氏講演「政治の暴走を止めるために」の要旨をご紹介します。今回は1回目。

小林 節氏 ①



 自由とは、人は全て違い、違いが許され、暴力や犯罪が行われない限り先着順に言いたいことが言え、多様な意見を自由に交わせる社会が自由だ。しかし、今の政府がやっていることは自分たちを否定する発言があれば不公平と言って論難する。権力者である大臣が誰で、警察官が誰であっても、権力を執行する相手が私か、あなたかに拘らず同じ扱いをする、これが法治国家だ。我々はしていいことと、してはいけないことが分かっているから安心していられる。法治国家は誰であっても扱いが変わらない国家だが、どうも安倍政権を見ると法治国家には見えない。法律になんと書いてあろうが、安倍首相がやりたいと思ったことを多数決で押し通す。
 まず、9条について論点は2項だ。陸・海・空その他の戦力は持たない。これは決定的なことだ。それだけではなく国の交戦権は行使しない。さらに軍法会議は置かない。戦争は国際法の分野の問題で、国と国が武力を辞さない対立関係に入ることを戦争という。国と国がぶつかる場所は原則として国内ではない。世界には200ぐらいの国という人格があり、それを律しているのが国際法だ。国内でぶつかれば裁判で決着をつけるが、国際社会は国と国が争っても裁判ではけりがつかない。例えば、領土問題で日本はロシア、韓国、中国と争っている。領土とは最初に発見し、その国が平和裏に行政管理して領土と宣言すると領土となる。これを国際司法裁判所に訴えても、相手が受けないと裁判が成り立たない。国際社会とは客観的第三者がシロクロをつける社会ではない。だから、各国が軍隊を持っている。襲わない、襲われないと考えながら生きており、時々トラブルが起きるのが戦争だ。戦時国際法というのがある。「戦場で軍人は民間人に手を下してはいけない」などだ。逆に言えば、戦場では軍人には手を出してもよいということだ。同じ人間なのに、軍人を殺せば褒められ勲章が貰える。これが戦時国際法の姿だ。これは普通の裁判所で裁きようもないから、軍法会議という特別な場所で裁くし、独立した主権国家が交戦権を行使した瞬間に平時から戦時に変わる。日本は独立した主権国家だから国際法上は戦争する権利があるように思われるが、戦争に出て行こうとすると憲法に軍隊は持てない、交戦権は行使出来ない、軍法会議もないと書かれている。公務員は法律・条例と予算がないと行動できない。日本は軍隊を持てない、交戦権を行使出来ない以上、軍隊を組織して戦争をしに行く手続法がなかった。我が国は戦争ができない国だ。これが最高法の憲法の原則だ。だから、自衛隊は警察予備隊という第二警察として作られたので管轄は国内であり、海外には出て行けない。(つづく)

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緊急事態条項は日本国憲法の基本原理への重大な挑戦

 4月2日に「守ろう9条 紀の川 市民の会」が「第12回総会」を開催し、龍谷大学法科大学院教授(憲法学)・石埼学(いしざき・まなぶ)さんが、「戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう ~今、私たちにできること~」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。

石埼学さん ③

 安倍首相は憲法9条を改正し、海外に派兵する自衛隊を合憲化したいのははっきりしている。しかし、戦後70年の中で平和憲法への愛着は深く国民の間に染み付き、9条を変えるべきではないという声は極めて強い。9条改正に正面から取り組むのは自民党にとっても非常にリスクがある。それで最初、96条改正を考えたが、最近は自然災害を引き合いに緊急事態条項を新設しようとしている。緊急事態条項は「外部からの武力攻撃、内乱、大規模自然災害等の緊急事態のために憲法を遵守して統治をしていたのでは、憲法秩序そのものが守りきれない場合に、一時的に内閣に権力を集中し、事態に対処して、憲法秩序を守る権限を定める条項」と定義されている。一時的に権力分立の仕組みや人権保障を停止するものだ。そもそも緊急事態とは何かを条文化することはかなり困難で、時の政権の判断に委ねられる危険性がある。国際化したテロの時代では、テロは何時どこで起るか分からないので、緊急事態が発せられた場合はいつ終るか分からないことになる。国家の存立を守るために必要だというが、憲法が定めている国のあり方が国家であって、憲法と別に国家がある訳ではない。憲法を停止して国家を守るという発想は論外だ。自民党案の緊急事態条項の内容は余りにも酷い。緊急事態条項は自然災害のためには必要がない。必要となるのは戦争、内乱、クーデターだ。改正前の武力攻撃事態法も、その関連法として国民保護法が制定され、指定公共機関(運送会社、医療機関など)に国が協力依頼できる仕組みができている。日本国憲法があるから国民保護法は全て政府からのお願いで、強制できない。戦争に備えた緊急事態法制はできているので、これらの法制をきちんと使うためには憲法に緊急事態条項が必要になる。武力攻撃事態が発生し集団的自衛権を行使すると、他国の負傷兵士の日本での治療が必要で、医療機関に協力を強制しなければならない。海外で武力行使、集団的自衛権行使など、日本国憲法と違う憲法を作り戦争をする国になるのなら、緊急事態条項は必要不可欠な条項だ。戦争する以上敵前逃亡は許されず、場合によっては民間人も強制的に動員し戦争に加担させなければならない。国民にいろんな義務を課さなければならないから恐ろしい。
 緊急事態条項の挿入を安倍首相はお試し改憲と思っているかもしれないが、客観的には安保関連法や有事関連法を十全に発揮させるために必要な条項だ。現行でも災害対策基本法をはじめ緊急事態法制はある。これらの法令は憲法上の緊急事態というほどではない緊急事態に対応するもので、憲法に違反すると考える憲法学者はまずいない。これらは憲法を変えることなくできる。諸外国の憲法と違い日本国憲法は意図的に、戦争、大規模な内乱、クーデターなどの緊急事態条項を排除している。前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」とし、権力分立を定め、国民の権利を手厚く保障するのが日本国憲法の仕組みだ。日本国憲法制定の一番の動機は政府の行為によって再び戦争が起こらないようにすることだ。そのために権力分立を定め、裁判所に違憲立法審査権を与え、充実した人権保障規定を置いている。緊急事態条項が必要になるような事態を招かないために人権保障や権力分立を定めているので、緊急事態条項を入れると憲法がぐちゃぐちゃになる。
 緊急事態条項新設の提案は日本国憲法の基本原理に対する重大な挑戦だ。これによって安保関連法など緊急事態法制が本当に動き出し、国民が動員される仕組みを作っていくことになる。自民党改憲案の通り緊急事態条項が新設された場合、できるようになるのは、まず国民の協力の義務化だ。武力攻撃事態やその恐れが生じた場合、国民保護法を発動して物資の輸送とか医療の提供とかを国民に義務付けられる。あるいは報道機関の統制もできるようになるし、令状抜きの逮捕や捜索もできるし、立法権も含む内閣への権限の一時的な集中が行われる。今は立法は国会だけができるが、それとは別に法律と同等の効力を持つ政令を内閣が制定する。緊急事態条項を導入するとこんなことが可能になる。それは、自由な報道や裁判所の令状とかを保障することで政府が暴走しないようにし、それによって平和を貫くというのが日本国憲法の基本的な理念なので、自然災害のために緊急事態条項が必要だという議論はよこしまなものだ。
 今、私たちにできることは、行動することだ。「憲法9条にノーベル平和賞を」という活動もある。請願権の行使として2000万署名への協力もある。請願を受けた国会は誠実に処理する義務があるので重要だと思う。地域での地道な活動も重要だ。選挙がある。安保関連法の廃止を目指す政党や議員を応援すること、投票すること。そうでない議員などと対話してみること。立法機関の担い手である議員や候補者と対話し、市民の思いを直接伝えることも大事なことと思う。国会が変わらないとどうしようもない。参院でも改憲勢力が3分の2を取ると、憲法改正についての動きが大きくなる可能性がある。何よりも憲法改正の提案がなされなくても安保関連法ができてしまっている今日、これが発動されることによって戦死者が出ることが現実的に考えられる。今までとは明らかにステージが違うところに今いると思う。(おわり)

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【九条噺】

 5月3日付の朝日新聞の世論調査結果によると、日本国憲法を変える「必要はない」は昨年の48%から55%に増え、「必要がある」は43%から37%に減った。「必要はない」理由は「平和をもたらした」が72%と最多だった▼憲法9条も「変えない方がよい」が昨年の63%から68%に増え、「変える方がよい」の27%(昨年29%)を大きく上回った。安保関連法「賛成」は34%、「反対」は53%で、「反対」と答えた人の93%が憲法9条を「変えない方がよい」と答えたそうだ。戦後70年、先の戦争を経験していない人が圧倒的多数の日本で、平和への希求は年齢を超えて受け継がれ、日本国憲法の平和主義は国民に広く深く定着していると言えるだろう▼他方、安倍政権の下での憲法改正は「賛成」25%、「反対」58%と、「反対」が2・3倍になっているにも拘らず、安倍内閣の支持率は、「支持」43%、「不支持」49%と、「不支持」が多いものの、圧倒的とは言えない。参院選で一番重視する政策の1位は「景気・雇用」30%で「憲法」は8%だ。生活が苦しめられ、そこから抜け出すことが国民の一番の関心事になっている。当然だろう▼安倍内閣の経済政策は、「評価する」47%、「評価しない」50%と拮抗しているが、「暮らし向きは良くなった」はわずか4%。アベノミクスという言葉に幻想をいだかされている人が多いのではないか。平和と生活の問題をセットで訴える必要性を強く感じる。(南)

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個人主義をわざと利己主義と混同させて否定

 4月30日、青年法律家協会和歌山支部主催の「憲法を考える夕べ」が開催され、学習院大学教授(憲法学)青井未帆さんが講演されました。概要を2回に分けてご紹介します。今回は最終回。

青井美帆さん ②



 自民党改憲草案の警戒点は、「憲法のあり方」「国家と個人の関係」「自由平等の理解」などの根本的なところが今と全く違うことだ。個人主義をあえて利己主義と混同させ、何度も繰り返し否定し、「家族については何も書かず徹底した個人主義であるのが最大の欠陥だ。これが行き過ぎた自由や過剰な権利意識を日本全体に浸透させた元凶」と主張してきた。自民党改憲草案の「国柄」は、国家、歴史、文化、国民、社会が渾然一体と、同じ平面に立ち、同じ方向を向いている。立憲主義は、我々は個人として尊重され、個人の自由は無限定で、国家ができることは限定されているとする。近代憲法は国家と個人は対比する関係だ。ただ、日本では一般に「和・絆・家族」などが重視されることがある。それを重視する生き方は個人の自由だが、国が強制するものではない。日本では素朴な自然の感覚(日本らしさ、家族の絆など)を持つ層も多いので、この層に働きかけるのが一番効率的だろう。
 9条は、軍事的合理性が貫徹することへ根元的な疑問を提起する武器である。自衛隊は作られたが、9条を認めながら、9条には違反しないという議論をしてきた。そのように法を支える意識が相当強かったから9条が70年間継続してきた。
 閣議決定の存立危機事態は「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」としている。これは憲法13条の幸福追求権の言葉で、国の安全を個人の幸福追求で説明している。9条で「戦わない」と定めている中で、13条があるから国に国防の責務があると言ったら、今までの面倒な議論は全部必要がなくなる。だんだんと国の安全保障の議論の軸がずれていっている。
 ママの会は「だれの子どももころさせない」という標語を掲げているが、この言葉は、何故憲法で「戦わない国」にしたのかと密接不可分だ。13条で存立危機事態、集団的自衛権行使を議論するような今日の政治には抵抗することが必要だ。
 三権の中で近年は内閣が異常に大きくなり、国会と裁判所はどうなのかが問われている。司法の役割は伝統的にアンパイアで、裁判所は訴えが合法なら違憲判断をしないのが今までのあり方だが、「一人一票」訴訟では立法府の態度について最近は言うようになり、権力をチェックする役割を受け入れつつある。権力の安定、法秩序の維持はこれまでと同じにはいかないだろう。私たちは違憲訴訟、請願権行使、表現の自由、選挙の投票などいろんな形で、いろんな知恵を絞って、いろんな方法で、おかしいと訴えていかなければならない。自由な立場で真面目な政治を求めることができるのは最終的には個人だ。(おわり)

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第23回「ランチタイムデモ」実施



5月11日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」主催の安保法制廃止を訴える「第23回憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、小雨も降り出す悪天候の中、80人が参加し、和歌山市役所から京橋プロムナードまで、「戦争する国絶対反対」「憲法壊す総理はいらない」などと訴えて行進しました。和歌山市役所前での挨拶は藤井幹雄弁護士、行進終了の挨拶は由良登信弁護士でした。
 次回は6月13日(月)です。

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高校生への署名呼びかけと街宣活動実施
みなべ「九条の会」




みなべ「九条の会」は5月2日、18歳から選挙権の行使ができる中、「南部高校生」に2000万人署名を訴えました。登校する生徒の皆さんに「校門付近で署名の協力を訴えています」とチラシとハンドマイクで呼びかけ、校門近くでは机を用意し署名を訴えました。ホームルームまでのごく短い時間帯のため十分な訴えはできませんでしたが、50人から署名を集めることが出来ました。
 5月3日の憲法記念日は、11年目の地方紙折り込みチラシ作りと街宣活動に取り組みました。当日は強風警報発令中のため、例年のようにこいのぼりが見られない中でしたが、9時から3時半までの行動でした。(平野憲一郎さんより)



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(2016年05月26日入力 2024年4月20日修正)
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