「九条の会・わかやま」 302号を発行(2016年07月17日付)

 302号が17日付で発行されました。1面は、改憲勢力 衆参で3分の2を超える、1人区 野党共闘に貴重な成果、共同通信出口調査(7月11日報道)安倍政権下での改憲は、戦争法廃止 改憲阻止へ決意新たに 参院選の結果について(16年7月11日 九条の会事務局)、九条噺、2面は、第25回「ランチタイムデモ」実施、コミック誌スピリッツ 付録に憲法、当会呼びかけ人・高木訷元さんが「空海の思想の真髄を描く」書籍出版、書籍紹介『憲法と政治』   です。

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改憲勢力、衆参で3分の2を超える

 第24回参院選の結果は、自民、公明の与党とおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の「改憲4党」に、改憲賛成の無所属・諸派を加えた「改憲勢力」は77議席。非改選88議席と合わせて改憲発議に必要な3分の2(162議席)を超え、与党だけで3分の2を占める衆院とともに両院で発議要件を満たしました。直ちに改憲発議が行われるという訳ではないものの、日本国憲法にとって重大な局面を迎えることになりました。
 安倍首相は10日夜の民放テレビ番組で、「舞台は憲法審査会に移るべきであって、そこで議論が深まっていく」と、衆参両院の憲法審査会で、与野党により具体的な改憲項目を絞り込む議論を進めたい意向を強調しています。
 しかし、安倍首相は6月8日から7月9日までの間、延べ40都道府県で100回以上の街頭演説をしたそうですが、ただの一度も憲法問題に触れず、大きな争点である憲法問題から逃げつづけていました。7月11日の朝日新聞社説が「改正の論点を選挙で問い、そのうえで選ばれた議員によって幅広い合意形成を図る熟議があり、最終的に国民投票で承認する。これがあるべきプロセスだ。『後出し改憲』に信はない」と言うように、この選挙結果は、決して安倍首相の狙いに国民が信任を与えたものではないと言わなければなりません。

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1人区 野党共闘に貴重な成果

 32ある1人区全てで実現した野党4党の統一候補は11議席を獲得し、自民党は21議席でした。前回の13年の参院選で自民党が勝利した複数の選挙区でも野党統一候補が勝利し、野党共闘に貴重な成果を挙げました。1人区で野党が獲得した議席は、民主党政権だった10年は29選挙区のうち8議席、前回は31選挙区のうち2議席だったのが、今回は32選挙区のうち11議席を獲得したものです。
 東北6県では秋田県を除く5県で勝利し、沖縄県では自民党候補に11万票近くの大差をつけて勝利しています。また、32選挙区の得票数では野党統一候補は903万票、自民党候補は1134万票で、野党統一候補は44.3%と自民党に迫っています。
 7月12日の朝日新聞社説は「小選挙区制の衆院、1人区が全体の結果を左右する参院のいまの選挙制度では、巨大与党に対抗するには野党共闘が最も有効であるのは間違いない」と指摘しています。

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共同通信出口調査(7月11日報道)
安倍政権下での改憲は




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戦争法廃止、改憲阻止へ決意新たに
参院選の結果について 16年7月11日 九条の会事務局


 今回の参議院選挙では、戦争法の廃止を柱とする野党共闘が大きな成果をあげる一方、安倍政権与党および明文改憲を志向する政党や無所属議員の議席の合計が3分の2を超えました。日本と憲法の進路にとって重大な局面を迎えています。
 しかし有権者は今回の選挙で明文改憲を容認したわけでは決してありません。政権与党は、選挙戦で憲法問題を争点にすることを徹底的に回避しており、また選挙期間中のマスコミ各社の世論調査でも明文改憲反対の回答が賛成を上回っています。
 にもかかわらず私たちは、「在任中の憲法改正」に執念を燃やす安倍首相が、参院選の結果を口実に改憲の実行に向けて攻勢を強めることを厳重に警戒しないわけにはいきません。しかも、国民の警戒心をそらすためにさまざまな改憲論を繰り出してはいるものの、安倍改憲が9条の改変に照準を定めていることは明らかです。
 九条の会としては、憲法のこの重大な危機に際し、改めて9条改憲反対の一点で多くの市民の声と力を結集し、改憲勢力の攻勢に対抗していく決意です。そのため来る9月25日に全国交流討論集会を開催し、改憲阻止のため、全国の九条の会の決意を固めあうことにしています。

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【九条噺】

 澤藤統一郎弁護士が「EU離脱国民投票」について、「民主主義は民意にもとづく政治だから常に正しいとは限らない。このことは脳裏に刻むべきだ。ナチスも天皇制政府も民衆の意思が支えた」と書かれている▼氏は「間接民主主義の不完全さはアベ政権の存在自体が見事な証明となっている」と言う。我々は「国民投票」という直接民主主義が最も民主的だと思いがちではないだろうか▼「国民投票」は一般に「レファレンダム」と呼ばれる。「プレビシット」も「国民投票」と訳されるが、権力者が自分の政策や主張を遂行するために、国民・市民の支持を取り付けるために行うもので、同じものではない。橋下大阪市長の「大阪都構想住民投票」は正にこれだ。民衆が独裁を支え独裁が民衆の支持という正当性を獲得する儀式だ。朝日GLOBE(15年7月)によれば、34年のヒトラーの総統就任プレビシットは賛成89.93%(投票率96%)だったそうだ▼氏は「EU離脱国民投票」は「日本国憲法改正手続きのあり方の教訓にしなければならない。その時点での主権者の意思は尊重されねばならないと、軽々に改正時の民意を絶対化してはならない」と言う。憲法改正は国会と国民の間で相当長期間の冷静沈着な熟議・熟慮が必要だ。参院選の結果、改憲派が3分の2を占めた今、熱に浮かされたようなプレビシット的国民投票は何としても避けねばならない。「EU離脱」の評価はともかく、これが「EU離脱国民投票」が教えるものではないだろうか。(南)

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第25回「ランチタイムデモ」実施



 7月1日、「第25回憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が、一昨年7月1日、閣議決定で集団的自衛権行使容認を決め、戦争法成立に向かった同じ日、10日の参議院選挙を目前にしたこの日に実施されました。
 蒸し暑い炎天下でしたが、約80名の参加者は、和歌山市役所を出発し、公園前から京橋プロムナードまでのコースで、「選挙に行こう」「戦争法はすぐに廃止」「憲法9条を守ろう」などと声を上げてアピールしました。
 次回第26回は8月8日(月)に行われます。

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コミック誌スピリッツ、付録に憲法



 4日発売の漫画週刊誌が選挙や憲法の特集を組み、付録に憲法全文を掲載した冊子を付けました。編集部は「選挙で関心が高まっている憲法について考えてもらいたい」と話しています。
 特集を組んだのは、4日発売の小学館の漫画週刊誌、「週刊ビッグコミックスピリッツ」です。特集では巻頭のカラーページで現在18歳の女性アイドル6人が選挙権を得ることや憲法について、それぞれの思いを語っています。また、付録として日本国憲法のすべての条文を載せた44ページの冊子が付けられています。冊子には憲法の条文のほか、雑誌に連載している13人の漫画家が「日本の今」をイメージして描いたイラストも掲載されています。
 この週刊誌の発行部数はおよそ16万部で、主な読者層は10代から40代だということで、選挙や憲法の特集を組むのは初めてです。坪内崇編集長は「18歳による選挙も始まったので、読者の関心に応えたいと企画した。憲法には義務や権利だけでなく、日本という国のありようも書いてあるので、自分で考えるきっかけにしてほしい」と話していました。(7月4日NHKオンライン)

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当会呼びかけ人・高木訷元さんが
「空海の思想の真髄を描く」書籍出版




 当会呼びかけ人の仏教学者・高木訷元さんが、慶応義塾大学出版会から『空海の座標:存在とコトバの深秘学』を3月15日に出版されました。
 慶応義塾大学出版会のホームページによれば、「著者が長年の思索をとおして逢着した、空海の真言思想の真髄を描き出す。本書では、青年期から晩年にいたるまで、時代背景にそくして空海の足跡を丁寧にたどりながら、『聾瞽指帰』『請来目録』「勧縁疏」『般若心経秘鍵』などの代表著作を読み解き、その思想の核心たるマンダラ思想の萌芽と体系化の流れを、迫力ある筆致で描き出す」と紹介されています。
 本書は四六判312ページ、2800円+税。



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書籍紹介 『憲法と政治』


私たちは「政治が憲法を強引に乗り越える」さまを目撃した――。安保・外交政策の転換、さらには「改憲機運」の醸成がどのように進められてきたかをていねいに検証し、国会・内閣法制局・裁判所の責務にも言及。立憲主義にたった法の論理を鍛え、平和の問題を権力の適切な統制と結びつけて考える必要を訴える、熱い警世の書。
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発行所:㈱岩波書店(岩波新書)
著 者:青井美帆(学習院大学大学院教授)
発行日:2016年5月20日(初版)
価 格:840円+税

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(2016年07月17日入力)
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