「九条の会・わかやま」 303号を発行(2016年08月11日付)

 303号が11日付で発行されました。1面は、「2016戦争展わかやま」開催 東京新聞論説委員・半田滋氏が講演、今後の市民連合の活動方針について 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合、九条噺、2面は、日本を憲法ごとそっくり変えてアメリカに差し出す安倍首相(半田 滋 氏 ① )、農山村から平和訴える 山の暮らしを記録し続ける「山の作家」 宇江敏勝さん(当会呼びかけ人)   です。

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「2016戦争展わかやま」開催
東京新聞論説委員・半田滋氏が講演


 「2016平和のための戦争展わかやま」が7月30日~31日、プラザホープ(和歌山市)で開催されました。



 30日午前中は4Fホールで、女性コーラス、平和紙芝居のオープニングに続き、東京新聞論説委員兼編集委員・半田滋氏が「安保法制後の安全保障・自衛隊はどうなる」と題して講演。約150人が参加しました。
 半田氏は、戦争法によって自衛隊が米軍の後方支援を行うと、「米軍と戦う相手から見れば自衛隊は敵。命を狙われる」と説明しました。拘束されると、交戦当事国でないためジュネーブ条約の捕虜の適用除外となり、拘束国の刑法で裁かれ、拘束されなくても武器使用によって日本の国内法で殺人、傷害致死で裁かれる。また、専守防衛の建前が崩れ、戦争法の上乗せにより自衛隊はますます肥大化し、海外での武力行使とあいまって、周辺諸国に日本への警戒感がますます増加し、東アジアで日本を起点とする軍拡競争になり、「日本を取り巻く安全保障環境の悪化」という安倍首相のウソが本物になってしまうと指摘しました。(講演要旨は別途紹介)



 また、2F多目的室ではピースライブが行われ、各グループの歌とピーストークを楽しみました。ギャラリーではパネル展示が行われました。戦前大阪を護るために和歌山に配備された「護阪部隊の戦跡」、「陸上自衛隊の海兵隊化・自衛隊の変貌」、和歌山県所有の公開資料「和歌山のビキニ被災船」、「戦争に抵抗した多くの和歌山県民」、「戦地から妻に宛てた手紙」、「戦争に反対して捕らえられた人の兄に宛てた手紙」、「7・9和歌山大空襲の前と後を撮した米軍の航空写真」      などの、戦争の惨状を伝えるパネルが展示され、多くの人たちが熱心に見学しました。





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今後の市民連合の活動方針について
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合


 参議院選挙期間中、自公連立与党が「憲法改正は主要な争点ではない」と繰り返していたにもかかわらず、安倍政権やその影響下にあるメディアは選挙後にわかに、あたかも憲法改正が既定路線であるかのように有権者をあざむいています。
 私たち市民連合は、改憲そのものを自己目的化するような倒錯した思考を拒絶し、個人の尊厳を擁護する政治の実現をめざして、ひきつづき安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めてまいります。
 各種世論調査を見ても明らかなように、主権者たる国民は憲法改正を喫緊の課題とはとらえておらず、改憲論議を勝手に進めていくことを国会議員に委任したとは到底言えないことから、安倍政権率いる「改憲勢力」は、今後、市民とともに共闘してきた立憲野党(民進党、共産党、社民党、生活の党)の分断を図り、改憲発議や国民投票と連動させるかたちで衆議院の解散総選挙を仕掛け、民主的正統性や立憲主義の見せかけを調達しようとする可能性があります。
 そこで、私たち市民連合としては、ひきつづき全国各地の市民運動と連携しつつ、来るべき衆議院選挙における小選挙区での野党共闘の取り組みを後押しするとともに、個人の尊厳を擁護する政治をいっそう具体化していくために立憲野党との政策協議を積みかさねていきたいと考えています。私たちの代表を一人でも多く衆議院に送り込むために、主権者たる市民の皆さんの粘り強い政治参加を呼びかけます。

                                2016年7月26日

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【九条噺】

 政治学者の岡野八代さんは、自民党の改憲草案について「憲法を破壊しようとする草案であって・・・権力者のための支配要綱とでも名づけないといけない」という▼その草案の解説書が太郎次郎社から出版されている。著者は自爆連 ― 自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合。「あたらしい憲法のはなしを見習って作った」という▼『あたらしい憲法のはなし』は、憲法の理念を中学生や国民に知ってもらうために、文部省が1947年に発行した。現在の文科省からは考えられないすぐれものだ▼自爆連の人たちはユーモアのセンスが抜群らしい。例えば、戦争放棄と書かれた溶鉱炉から戦車や兵士、戦闘機が出てくる絵がある。これは兵器を溶かし電車や船が出てくる文部省の絵を「見習って」いる▼文体もそうだ。文部省の冊子は、「みなさん」と呼びかける平易でやさしい語り口だ。自爆連の人たちも語りかける。戦争放棄は連合国の武装解除の考えだと説明し、「しかしみなさん、時代は変わりました」「戦争放棄という原則は迷惑な決まりなのです。しかし、みなさん、もう心配はありません」と続く▼草案の前文の主語が「日本国は」に変わるのは国民をつけあがらせないためだと説明し、「みなさんも国民であるならば、国民がいちばんえらいという国民主権にこだわるよりは、日本国民の誇りを持ち・・・」▼ユーモアを味わいながら、いつしか深く考え込んでしまう。(真)

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日本を憲法ごとそっくり変えてアメリカに差し出す安倍首相

 7月30日、「2016戦争展わかやま」の講演会が開催され、東京新聞論説兼編集委員・半田滋氏が「安保法制後の安全保障・自衛隊はどうなる」と題して講演されました。その要旨を4回(予定)に分けてご紹介します。今回は1回目。

半田 滋 氏 ①



 参院選挙は改憲勢力に3分の2の議席を取らせることになった。既に衆院は3分の2を取っている。これで安倍政権の内に初めての国民投票が可能な環境が整った。安倍首相は衆院選の時は一言も安保法制に触れなかったのに、自民党の大勝ちが分かったら、安保法制について国民の理解が得られた。憲法改正も進めていくと本音を述べた。今回は憲法審査会の議論が収斂するのを待ちたいと妙にしおらしく言っている。憲法審査会はどの条文から変えるかを秋の臨時国会から具体的に詰めていくことになると思う。参院選で3分の2を取り、次の衆院選までの約2年4カ月の間に早ければ第1回国民投票が行われるかもしれない。仮にそれがうまくいかなかったとしても、党の有力者から安倍首相の総裁任期を例外的にもう一期延長させてもよいとの声も出始めている。だから、来年、再来年ではなくもう少し先になるかもしれないが、任期延長の話が出たことで安倍政権の内に第1回国民投票が行われることはほぼ確実になったと言わざるを得ない。
 彼は一時期、96条の改憲規定を緩めようとしたが、「裏口入学」との批判で引っ込めた。だが一番やり易いのはこのような項目だと思う。憲法をころころ変えられるようにすることが有力候補と思う。緊急事態条項も有力な候補だ。これは加憲で公明党の賛成も得やすい。大規模災害が発生した時に内閣に強い権限を持たせ、内閣が作る政令を法律と同じような強制力のあるものにすれば災害復旧がいち早く実現すると主張する。しかし、実際には大規模災害では地方に権限を与え、必要なことを現場に判断させ、中央はそれに応えていくことが重要だ。国が責任を持ち対処するのはよいことだと思う国民も相当いるかもしれない。しかし、自然災害に隠れて騒乱状態でも国家緊急権を発動することが出来る。今回の安保法制で日本が他国から侵略される戦争だけでなく、自衛隊が海外で米軍と一緒に戦争する場合でも国家緊急権の対象になり得る。また、騒乱は何をもって騒乱とするかはその時の権力者の考え方次第となり、国民の権利も抑えられることになるかもしれない。緊急事態条項が国民投票に浮上した時は災害対応でなく、国が戦争をするために国民の権利を制限してくるものだと思わねばならない。
 安倍首相は憲法を変えたい理由を明示的に述べたことはない。祖父・岸信介が出来なかったことをやろうとしているのではないかと私も疑っている。岸信介は日米安保条約を現在の形にすることまではやったが、「自主憲法を制定し、対米自立を果たす」ことは出来なかった。安倍首相は「自主憲法制定」は同じかもしれないが、「対米自立」は疑問だ。むしろ、日本を憲法ごとそっくり変えてアメリカに差し出し、対米従属を強めようとしているのではないか。
 もうひとつの理由は自民党が12年4月に憲法改正草案を公表しているからだ。現憲法の基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の3本柱から全く異なり、国家主義、天皇元首制、国防軍の保持、そして基本的人権や知る権利などは公益や公の秩序の前には制約される。ほとんど大日本帝国憲法に先祖返りするような内容だ。党是で掲げている以上は自民党総裁としてこれをやる責務があると考えているのだろう。(つづく)

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農山村から平和訴える
山の暮らしを記録し続ける「山の作家」
宇江敏勝さん(当会呼びかけ人)




 山の民の暮らしを記録し続ける「山の作家」。名刺には「九条の会・わかやま」の肩書。林業や炭焼きをしながら若い頃から政治に興味を持ってきた。
 兄をガダルカナル島で失い、小学2年で敗戦。1947年、新制中学が発足する際、村人が山から木を切り出し校舎を建てた。中学で若い先生が憲法や民主主義を熱心に教えてくれた。「新しい村づくりと新しい民主主義の中で大人も子どもも生き生きしていた」
 熊野高校を卒業して山仕事を始めた。山奥の小屋に20人ほどで寝泊まり。夜みんなが酒を飲む横でランプの明かりで本や新聞を読んだ。20歳のとき、山小屋の仲間7人ほどで労働組合をつくった。雇い主の森林組合に「下草刈りは1ヘクタールいくら」「植林は1本いくら」と要求し、「賃金を上げないなら山を下りる」と交渉した。「私らは戦後教育を受けたから、言いたいことをはっきり言えたんです」
 木材輸入自由化をへて林業は衰退。山の暮らしの記憶を田辺市中辺路町の自宅で年に1冊ずつ本にする。昨年は炭焼きや筏(いかだ)師を描いた小説集『黄金色の夜』(新宿書房)を出版した。
 今、TPPを前にした農業も林業と同じ道をたどっているように見えるという。農山村の荒廃と並行するように「憲法改正」を唱える政治家が増えたとみる。「9条がノーベル平和賞に選ばれ、海外に軍を出さない国だと知ってもらえれば日本は平和外交ができる国になれるはず」。人権や自由という理念が輝く時代を取り戻したいと話す。
(藤井満・朝日新聞・和歌山版7月31日付)

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(2016年08月11日入力)
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