「九条の会・わかやま」 310号を発行(2016年11月09日付)

 310号が11月9日付で発行されました。1面は、「第13回憲法フェスタ」開催 守ろう9条 紀の川 市民の会、他国を守ることが何故日本の存立を守るのか(長谷部恭男氏 ③)、訃報 「九条の会・わかやま」呼びかけ人 福 幸吉 さん、九条噺、2面は、憲法改正でなく 今ある憲法を実現させよう  です。

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「第13回憲法フェスタ」開催
守ろう9条 紀の川 市民の会




(原通範代表)

 日本国憲法の70歳の誕生日の11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第13回憲法フェスタ」が約140人の参加で、和歌山市の河北コミュニティセンターで開催されました。午前中から「展示の部屋」では、会員の様々な趣味の作品の展示が行われ、コーヒーを飲みながら会員同士の会話が弾みました。「映像の部屋」では、DVD『速報・辺野古のたたかい』の、昨年の続編が上映されました。そのほか「リサイクルひろば」、「ヒロシマ・ナガサキ・原爆と人間」の写真展示も行われました。メイン会場は、午後2時から原通範代表の開会挨拶でスタートしました。原代表は、参院選で改憲勢力が3分の2の議席を占め、改憲をストップさせるためには、昨年の戦争法のたたかい以上の取り組みが求められる。学び、周りに広げるために、今日は楽しんで、これからの力にしてほしいと訴えました。



(クロウフィールド)
 第1部は、平和の歌をうたうファミリーバンド「クロウフィールド」の演奏です。演奏されたのは「イマジン」「レット・イット・ビー」を始め、参加者もよく知っている曲も多く、手拍子が起る場面もありました。オリジナル曲「この島~憲法9条のうた」や三線も加わった「島んちゅぬ宝」も演奏され、親子ならではのすばらしいハーモニーを聞かせてくれました。



(小林康二さん)

 第2部は、「笑工房」小林康二さんによる憲法漫談「これがアベさんの本音だ」です。黄色の阪神タイガース風の衣装と黒のハットで登場した小林さんは、今、なぜ憲法改正が必要なのか、その本音が聞きたくてアベさんを訪ねます。アベさんは「目的の1つは国民を戦争に動員できる法律が必要。2つは今後は国民の義務を増やして国家統制を強める。3つは昔のような美しい天皇制国家の再現」と答えます。何故自衛隊を国防軍に変えるのかは「専守防衛ではなく、『攻撃は最大の防御』が出来る軍隊にする」。集団的自衛権行使を合憲に覆したのは「日本の平和は日米安保条約によって守られてきた。従って、アメリカの敵は日本の敵。常識でしょう」。「日本の兵力不足には『徴兵制』を実施し、65歳以上を行かせる。反対する者は『若者を殺す気か』と脅せばイチコロ」と話しました。最後に、「このアベさんは、安倍晋三さんではなく、アベカンゾウさんです。心臓と肝臓は近いけれど別々のもの。しかし、この二人が考えていることは全く一緒。シンゾウもカンゾウも一心同体、油断大敵ですよ」というオチがつきました。



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他国を守ることが何故日本の存立を守るのか

 9月30日、和歌山弁護士会主催の憲法講演会が和歌山市で開催され、長谷部恭男・早稲田大学教授が「立憲主義と民主主義を回復するために」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は3回目(最終)。

長谷部恭男氏 ③



 第90回帝国議会(制憲議会、46年4月)で吉田茂首相、金森徳次郎大臣も言っていたのは「自衛のための戦争は出来ない」ということで、9条2項で「戦争遂行能力」は持てないので、例え自衛のためでも戦争は出来ない。では、日本に対して直接武力攻撃があった場合は何も出来ないのかは、日本国憲法が公布された同じ日に政府が『新憲法の解説』というパンフレットを発行しており、「9条があると日本は自己防衛の手段がなくなるのではないか」という疑問に対して、「いや、心配は要りません。日本はいずれ国際連合に加盟する。国連憲章は第51条で自衛権の行使は認めているので、自己防衛の手段がなくなることはない」という主旨のことを書いている。だから、9条に関して個別的自衛権の行使は認められるというのは、日本国憲法公布の時から変わらない。集団的自衛権は他国を守るために武力を行使するものだ。9条1項、2項がある以上は、集団的自衛権は無理だというのが政府の一貫した立場だった。それを14年4月1日に集団的自衛権も一部行使すべきだと解釈を変えてしまった。これは、それ以前の政府自身の論理・前提を採用しても、論理は成り立っていない。政府の憲法解釈には「論理的整合性」と「法的安定性」が要求される。「論理的整合性」はどういう場合に保たれるのかというと、従来の政府見解の基本的な論理の枠内ならば保たれる。基本的な論理は、「日本が外国から直接武力攻撃を受け、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があるからこそ、個別的自衛権の行使が許されるとしてきた。しかし、「他国が攻撃されて、我が国の存立が脅かされることなどないから、集団的自衛権はダメだ」と言っていた。閣議決定の、「他国に武力攻撃が発生して、何故我が国の存立が脅かされるのか」「他国を守るために武力を行使すると、何故我が国の存立の危機を脱するのか」は、全く分からない。個別的自衛権の行使だけが出来るという理屈をもってして、集団的自衛権行使も認められると言っても、論理的整合性が保たれる訳がない。集団的自衛権行使を認めたい人は理屈が通っていようがいまいが、とにかく必要だと言っている。どういう必要性があるのか、閣議決定は、「安全保障環境が変化したから、解釈を変える」と書いているが、どう変化しているかは説明していない。オーストラリアの経済平和研究所は「日本は世界で9番目に平和で安全な国」と言っている。本当に危ないのなら、何故、日本の防衛力を世界にばら撒いてアメリカの戦争のお手伝いをしようとするのか、危ないのは日本なのに、世界にばら撒いてどうするのかということになる。ホルムズ海峡や米艦保護の話はどうなったのか。いずれにしても必要性は全くない。
 日本周辺で大規模な軍事衝突が起る可能性は低いと思うが、ゼロではない。中国憲法の前文には「台湾は、中華人民共和国の神聖なる領土の一部である」と書いてある。だから、祖国統一の大業は必ず達成しないといけないとなる。ちなみに、尖閣諸島は中国の立場からすると台湾の一部だ。他方でアメリカは台湾をどうするのかだが、簡単に台湾を放棄する訳にはいかない。台湾はリベラル・デモクラシー国家なので、その防衛を放棄すると、東アジアの他のリベラル・デモクラシー諸国を見捨てるメッセージになり兼ねない。中国は、武力で統一を考える可能性はないとは言えない。中国は湾岸戦争以降のアメリカの軍事行動を観察しており、アメリカの軍事的な強みは軍事衛星を含む情報収集処理と、それに基づく正確な目標に対する軍事行動にあると考えている。台湾について武力衝突が起るとすると、中国は東アジアにおけるアメリカの軍事拠点に集中的な攻撃をかけてくるはずだ。日本国内の米軍施設は中国のミサイルの射程内だから、飛んでくる。対応するアメリカはエアー・シー・バトルと言われる反撃を始める。マラッカ海峡や東シナ海などの海上交通路の遮断などの可能性もない訳ではない。これは安倍政権が進めてきた集団的自衛権の行使とは全く関係がない話だ。深刻な軍事衝突が起る可能性もあるので、つまらないことで政治の力を使い果たすのではなく、きちんと公のところで議論することが大事ではないかと思う。(おわり)

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訃報
「九条の会・わかやま」呼びかけ人 福 幸吉 さん




 和歌山県保険医協会初代理事長で現顧問の福幸吉さん(医療法人福滋会福外科病院前院長)が10月23日に死去されました。90歳。謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

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【九条噺】

 沖縄県東村高江の米軍オスプレイパッド建設現場で大阪府警の機動隊員が、建設に反対する市民に「土人」「シナ人」などの差別発言を行った。公務員が一般市民に対して暴言を吐くことは許されないし、沖縄の歴史や現状に心を寄せれば決して出てこない言葉だ▼移設反対派とともに座り込んだ兵庫県の横山順一氏は、10月28日の朝日新聞「声」欄に「抗議する非暴力の抵抗だが、機動隊員らに強引に体を抱えられ私も無理やり移動させられた。あまりにも過激な抑えつけに驚いた。そして機動隊員が、抗議する人に『土人』『シナ人』と暴言。しかし隊員より驚かされたのは『出張ご苦労様』とねぎらった松井一郎大阪府知事だ。彼は反対派を『あまりにも過激』と評した。いったい実態を見たことがあるのか問いたい。『過激』なのは機動隊だった。地元住民ら反対派は全くの素手。声を出し、体を張っての行動しかない。憲法の下での民主的抗議の何を『過激』と言うのか」と書かれている▼そもそも松井知事には人権感覚があるのか疑問だ。警察庁長官も「あってはならない。指導を徹底する」と語っているのに▼また、朝日新聞によれば、和歌山県選出の鶴保庸介・沖縄北方相は「これが果たして県民感情を損ねているかどうか、虚心坦懐に見ていかないといけないのでは」「私は『これは間違っていますよ』とか言う立場にもありませんし」と語ったという。「県民感情を損ね、間違っている」のは誰の目にも明白だ。何を考えているか。(南)

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憲法改正でなく、今ある憲法を実現させよう



 10月29日、和歌山市のプラザホープで和歌山県保険医協会の講演会「テレビが伝えない憲法のはなし」があり、首都大学東京の木村草太教授(憲法学)が市民ら約270人に話しました。
 木村教授は、立憲主義について「過去に国家権力が犯してきた失敗を繰り返さないためにある」「国家権力の3大失敗(無謀な戦争、人権侵害、独裁)を防止するために、憲法に軍事力のコントロール、基本的人権の保障、権力分立などの規定が盛り込まれている」と説明しました。24条は「婚姻は両性の合意のみ」と定めており、「親に反対されても、当事者の合意で結婚でき、家族観を根本から変える9条以上のインパクト」と話しました。また9条については、「現在の国際法は武力不行使原則が確立している。9条はグローバルスタンダードだ」と指摘。13条では日本政府に対し、国内の安全(国民の生命・自由・幸福追求の権利)を保護する義務を課しおり、9条のもとでも個別的自衛権・自衛隊は合憲と言えても、「外国が攻撃を受けているとき外国を救いなさいという根拠になる条文は憲法にない。集団的自衛権の行使や国連軍への参加は明らかに憲法違反」と説明。戦争法について「政府がいま存立危機だと言えばいつでも自衛隊を海外に出動させられる。国会は事後承認」と告発しました。
 沖縄・辺野古基地建設問題は、憲法41条「国会は唯一の立法機関」、92条「地方公共団体の組織、運営に関する事項は法律事項」、95条「地方特別法は住民投票の承認が必要」から考えても、内閣だけで決定できるものではなく、根拠となる法律が必要だと説明しました。生存権の問題でも、「憲法改正を考える以前に、今ある憲法を実現できているのか」と批判しました。

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(2016年11月08日入力)
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