「九条の会・わかやま」 312号を発行(2016年12月13日付)

 312号が12月13日付で発行されました。1面は、「9条の会共同企画相談会」を開催 和歌山市と周辺の9条の会が、「日本を取り戻す」とは戦前の体制に戻すこと(由良登信氏①)、「第12回好きなんよ9条まつり」開催、九条噺、2面は、第30回「ランチタイムデモ」実施、「駆け付け警護」 9条改正連動させる狙い 水島朝穂 早稲田大学法学学術院教授  です。

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[本文から]

「9条の会共同企画相談会」を開催
和歌山市と周辺の9条の会が




(副島呼びかけ人の挨拶)

 12月4日、和歌山市で「9条の会共同企画相談会」を開催しました。安倍政権によって危険な憲法破壊が進められ、明文改憲も狙われている中で、個々の「9条の会」の取り組みは重要ですが、単独では困難な会があるのも現実です。そこで、共同すれば出来ることがあるのではという趣旨で相談会を開催したものです。「九条の会・わかやま」事務局が、和歌山市、岩出市、紀の川市、海南市、海草郡、有田市、有田郡の9条の会に呼びかけ、当日は、14団体から25名が参加されました。また、相談会は欠席だが、趣旨には賛同し、共同企画に参加すると表明された会が9団体ありました。



 相談会に先立ち、由良登信弁護士が「自民党憲法草案がめざす日本の姿」と題して講演をされました。由良弁護士は、立憲主義を崩壊させ、不戦の誓いをなくし、戦争の放棄を削除し、国民主権・基本的人権保障を後退させる「自民党改憲草案」を縦横に斬り、私たちが広く手をつなぎ、ひとりひとりが自分の言葉で危険性を話し、そして楽しく取り組もうと呼びかけられました。(講演の要旨は別に掲載)
 今後、相談会の内容をベースに具体化を進めることになりました。今からの賛同は073-427-5205(柏原)までご連絡をお願いします。

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「日本を取り戻す」とは戦前の体制に戻すこと

 相談会での由良弁護士の講演「自民党憲法草案がめざす日本の姿」の要旨を3回に分けて紹介します。今回は1回目。
 


 参院選で改憲勢力が3分の2の議席を占め、戦後最大の憲法の危機だ。日本会議は安倍政権で改憲が出来ないなら、以後チャンスはなく、今しかないと思っている。参院選で安倍首相は憲法改正は争点ではないと言い、街頭演説でも憲法をこのように変えたいとは全く言わなかった。選挙後は、自民党は結党以来改憲を党是としており、改憲案はHPで公開し、その上で自民党が選ばれたと言っている。選挙では支持されないと分かっていて言わなかった。立派な案ならそれを訴えて信を問うべきだ。安倍首相は選挙後の会見で、憲法改正を「自分の任期中に果たしていきたい」「わが党の案をベースにしながら、衆参両院で3分の2を構築していく。それがまさに政治の技術だ」と言っている。「政治の技術」には自民・公明・維新だけでなく、改憲発議に民進党も取り込んでいきたいという気持ちがあるようだ。
 安倍首相は保守ではなく、右翼でタカ派だ。保守とは、今ある文化・伝統・制度を維持しながら、改良すべき点があれば少しずつ変えていくのが保守だ。安倍首相は日本国憲法が大嫌いだ。登場した時に「戦後レジームからの脱却」と「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」の2つのスローガンを掲げた。「憲法前文には、敗戦国としての連合国に対する詫び証文のような宣言がある」「アメリカは、自らと連合国側の国益を守るために戦争の放棄の条項を作った」と言っている。ここには、日本の侵略戦争で、日本国民310万人、アジアの2000万人の命が奪われたことへの謝罪の気持ちが全くない。侵略戦争であったことも認めようとしない。「戦後レジームからの脱却が日本にとって最大のテーマ」「日本を取り戻す」と言う。何から取り戻すのか。それは戦後の憲法体制から、日本を取り戻すということで、戦前の体制に戻そうということだ。これは正式の自民党の目標で、安倍首相だけでなく、自民党そのものの問題だと見る必要がある。
 経団連は07年に、「自衛隊や集団的自衛権の憲法上の位置づけが不明確であり、実効ある安全保障政策の展開が制約されている。自衛隊が国際社会と協調して国際平和に寄与する活動に貢献・協力できる旨を、憲法上、明示する必要性が高まっている」「経団連は、2010年代初頭までに憲法の改正の実現をめざす」と言っている。早く憲法改正をせよと財界戦略として追及してきている。
 アメリカは、安全保障戦略として、出来るだけ日本に肩代りさせ、米軍と自衛隊が一体的な運用をしていくことを言い続けている。だが、憲法9条によって集団的自衛権行使が制約されている。「この禁止事項を取り払うことで、より密接でより効果的な安全保障協力が可能になる。これは、日本国民のみが下せる決定である」と言う。憲法改正はアメリカにはどうすることも出来ない問題だ。「憲法9条は、日米同盟の邪魔だ」とアーミテージ報告で言い続けている。
 日本会議が国民運動として「憲法改正を実現する1000万賛同署名」に取り組んでいる。賛同を求める7項目は自民党改憲草案の要約そのものだ。そして、住所と電話番号を書くようになっている。これは、国民投票の際に賛成を呼びかけるための名簿作りだ。既に700万人以上から集め、昨年11月には「日本武道館1万人集会」を行った。彼らは「九条の会」の運動を恐れ、それを教訓にして自分達も国民運動を作っていかないと国民投票で過半数は取れないと考えている。まさに正念場を迎えている。(つづく)

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「第12回好きなんよ9条まつり」開催



 11月20日、桃山スポレクセンター(紀の川市)で「第12回好きなんよ9条まつり」を開催しました。当日は天気にも恵まれ、300名近い参加者で成功することができました。開会の挨拶で、「九条を守ろう」那賀郡の会の呼びかけ人・増田博さんが、「戦争法が強行採決され、具体化がされる中で、南スーダンへ派遣された自衛隊が駆け付け警護もするようになった。右翼的な思想を持っている稲田防衛大臣は危険極まりなく、家の中でぼやいているのではなく、外で怒りの声を広げていこう」と挨拶されました。
 平和のリレートークには4人が発言してくれました。和歌山弁護士9条の会の金原弁護士は、改憲派が緊急事態条項の新設を主張する理由は、大規模自然災害への対処などではなく、真の狙いは「戦争をする」ためにどうしても必要だからだと発言されました。そのほかの3人は、沖縄高江のヘリパッド建設反対の行動に参加した感想、教育への反動政策の押しつけ、若者の憲法カフェでの論議、などのこれらの発言に、参加者たちもこれからの運動に確信を持ってくれたと思います。
 まつりの舞台では、6つの団体・個人に楽器の演奏や歌・ダンスなどを披露していただき、クイズ・抽選会なども楽しみました。また、昨年を上回る23の団体が模擬店やバザー、展示を出店してくれて、まつりを盛り上げてくれました。カンパも例年になく多く集まりました。(事務局長・部家司好さんより)

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【九条噺】

 かつて大阪での9条世界会議に関わられたカトリック教会・松浦悟郎司教が、和歌山市の屋形町教会で講演された。悪法が次々強行される現下の情勢をパンドラの箱の話に例え、封じられていた邪悪なものが飛び出し世を暗くしたが、箱の底に「希望」が残っていたと語り出された▼これと関わるが先日のテレビ討論で、南スーダン国連PKO派遣の自衛隊に「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」の任務を加えたことが武力行使に繋がるのではとの論点になった。与党側が「首都ジュバは安全」「建設が主任務」と危険性を打ち消す中で、公明党が「安保条約もPKO法も大騒ぎしたけど何も起らなかった」と発言したのには呆れた▼今回の新任務は昨年強行した安保関連法(戦争法)に基づいて、旧来の歯止めを無くし、日本が攻められていなくても世界のどこまでも出かけ戦闘に参加できる方向に大きく転換する、具体的な一歩である。これまで憲法9条の制約のおかげで戦闘に参加せずに来た背景を故意に無視して、今まで通りと吹聴するのは詭弁だ▼国民はこの程度の理屈に納得しているのか。政権からの統制と自主規制による「ものが言えない空気」も指摘されている。しかし多くの人が生活に忙しく、もの申す運動に共感を覚えていないとも言われることが一層問題だろう▼なかなか難しいと感じる。だが、改憲の国会発議を許さず国民投票に持ち込ませないための希望は、世論をおいて外にはない。正念場が続きそうだ。(柏)

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第30回「ランチタイムデモ」実施



 太平洋戦争開戦の日・12月8日、第30回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われました。比較的穏やかな天候の中、90名の参加者は、元気に和歌山市役所前から、イチョウが黄色く色付くけやき大通りを通って、京橋プロムナードまでの行程をアピールしながら行進しました。
 次回(第31回)は1月16日(月)。いつものように正午に和歌山市役所前集合、12時20分にスタートして京橋プロムナードまでの行進です。

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「駆け付け警護」、9条改正連動させる狙い
水島朝穂・早稲田大学法学学術院教授




 駆け付け警護の新任務を付与することには9条改正に連動させていく狙いも込められている。昨年の安保関連法制のPKO協力法改正で、自衛隊員の武器使用のハードルが大幅に下がった。歴代政府は憲法上の問題から「自己保存型」の武器使用を超える武器使用は認めてこなかったが、昨年のPKO法改正では防護対象者に「宿営地に所在する者」と「保護しようとする活動関係者」が加わり、任務を妨害する相手を排除する場合の武器使用も認められた。この背後には、武器使用の権限を拡大したい、という制服組の思惑が見え隠れする。安倍政権には、こうした流れに乗りながらも、さらに先のことを考えている節がある。
 南スーダンの現状は「紛争当事者間の停戦合意の成立」などの「PKO参加5原則」を明らかに満たしていない。そもそも南スーダンPKOは「第4世代のPKO」と呼ばれ、全紛争当事者の同意を必要としないタイプに変質している。日本がそこに参加する前提が問われるべきものだったのである。今年7月には政府と反政府勢力の間で大規模な戦闘が発生し、反政府勢力トップのマシャール副大統領自身が「和平合意は破綻した」と認めた。安倍政権は相手が「国家または国家に準ずる組織」でなければ、憲法9条が禁じる武力行使には当たらないとしているが、南スーダンの現状はPKO部隊と政府軍とが対峙する場面もあり得る事態に陥っている。撤退こそ検討すべきにもかかわらず、安倍政権は先月、部隊の派遣延長を決めた。このタイミングでさらに新任務を付与しようとしていることは理解し難い。安倍政権は自衛隊があえて戦闘に巻き込まれるようにしているのではないか。
 あってはならないことだが、仮に戦闘によって死者が出て、羽田空港に国旗に包まれた柩が到着した時、安倍首相は「二度と犠牲者を出さないために、武力行使を禁じた憲法を変える必要がある」と演説するのではないか。劇場型の政治に翻弄される今の日本社会を見ていると、新聞やテレビのニュースが情動に満ちた報道で溢れることは容易に想像できる。世論が感情的になるこの時こそ、9条改正への好機。駆け付け警護の任務付与はそう見込んでのこととしか思えないような性急で強引な手法である。南スーダンへの自衛隊派遣をこれ以上続けてはならない。(毎日新聞11月10日付より要約)

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(2016年12月14日入力)
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