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自民党改憲案は日本を軍国主義時代に戻すもの
12月4日、「9条の会共同企画相談会」を開催し、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の由良登信弁護士が「自民党憲法草案がめざす日本の姿」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。
由良登信弁護士 ②

憲法は、国民が国家権力を縛る鎖だ。戦前でも伊藤博文は「天皇主権だが憲法はその主権者を縛るものだ。そして人権を保障するものだ。そうでなければ憲法を作る意味がない」と、明治憲法を作る時に述べている。安倍首相は明治憲法にも至っていない。安倍首相の戦前には、大正デモクラシーなどは頭になく、天皇を戴き、軍隊をもって国民一体となって進む強い国家を「美しい国」と描き、そこに回帰しようとしている。明治憲法よりさらに悪い発想で動いている。憲法についての理解が全くされていない。日本国憲法は平和主義、国民主権、人権尊重の3本柱で成り立っているが、自民党改憲草案はこの柱を全て根元から倒していく。
まず、立憲主義を理解していない。国民が国家権力を縛るものだから、現行憲法は前文に「日本国民がこの憲法を確定する」とし、権力を行使する人たちに、99条で「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と憲法尊重擁護義務をうたっている。ところが自民党改憲草案は、「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と、憲法が国民に指示をし、国民はそれを守ることになる。ここが決定的な性格の違いだ。そして、憲法制定の目的を、「日本国は、天皇を戴く国家」で「日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」としている。
たくさんの国民の義務を書き連ねているのも大きな特徴だ。現行憲法は納税の義務、勤労の義務、保護する子女に普通教育を受けさせる義務の3つだけを書いている。そこに、①国防義務、②日の丸・君が代尊重義務、③領土・資源確保義務、④公益及び秩序服従義務、⑤個人情報不正取得等禁止義務、⑥家族助け合い義務、⑦環境保全義務、⑧地方自治負担分担義務、⑨緊急事態指示服従義務、⑩憲法尊重義務の10個を付け加えている。一見当り前に見える言葉でも一旦憲法に明文で書くと意味合いが変わる。それを具体化する法律や政令が作られ、それを強制するための法制度が作られることになる。日本国憲法にある権利は、それがなかった時代があったことを思い浮かべると一番理解が早い。それを想像すると、この権利が果たしている意味が人間らしく生きていく上で絶対に必要なのだ、民主国家を形作る上で絶対に必要だと分かる。逆になかった義務が書き込まれると、どんなことになるのかを想像する必要がある。国防の義務をうたえば、必要であれば徴兵することも、ここから具体化されていく可能性がある。国歌、国旗尊重義務を置くと君が代を歌わないということが出来なくなる。個人の尊厳、人権の尊重の総則規定に当たる12条、13条に「公益及び公の秩序」に反しない範囲で人権を認めるという規定を置こうとしている。24条に家族助け合いの義務をうたう。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わねばならない」とし、前文の「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」にリンクしている。これを明文で書くと具体化する制度が出てくる。例えば、社会保障を求める時、まず家族に求めよということになる。自民党の社会保障政策は、自助、共助、公助となっている。社会保障は公による生活保障であって、自助、共助は社会保障ではない。それを明文で憲法に書くと、社会保障が後退するだけでなく、夫婦の関係でもいろいろと強制されていくことになる。環境保全義務と緊急事態宣言の2つの規定がお試し改憲の目玉として打ち出されてくる可能性が一番高い。環境保全の責務が25条の2に、「国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない」とあるが、本当に書き込むのなら、「全て国民は、良好な環境を享受する権利を有する。国は、それに応える義務を負う」とすべきだ。努力規定は国を縛るものではない。現行憲法の13条、25条から環境権は導かれる。こんな内容なら意味がないだけでなく、むしろ有害だ。また、現行憲法では地方自治については「組織・運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて・・」とあり、「地方自治の本旨」とは団体自治と住民自治だと確定している。和歌山市のことは和歌山市で決める(団体自治)、決め方は住民が主人公となって決める(住民自治)ということだ。それを92条2項で、「住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う」としている。役務とは福祉サービスのことで、受ける権利を持つけれど、負担を公平に負うという義務を置くと、福祉サービスを受けたければ、その財源を住民が分担せよと憲法に書き込むことになる。国の役割ではなく住民に福祉サービスを転化してくる根拠になるのではないかと思う。前文に平和を国民の権利として位置づけている平和的生存権もばっさり削っている。国民が主権者だと現行憲法は繰り返しうたっているが、それもほとんど影を潜めることになる。自民党改憲草案は「和を尊び」と言う。これはよいように見えるが、少数意見や政府批判は排除されるのではと心配する。そして、国民が権力を縛るという考え方を感じさせない。憲法という言葉はあっても実質的な憲法ではない。(つづく)
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南スーダンPKO派遣、憲法学者101人が反対声明

南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)をめぐり、憲法学者が9日、101人の連名で、安全保障関連法に基づく新任務「駆けつけ警護」などが付与された陸上自衛隊の部隊派遣に反対する声明を発表した。
名を連ねたのはいずれも憲法の研究者で、飯島滋明・名古屋学院大教授、成沢孝人・信州大教授ら。声明では、自衛隊が南スーダンで武器使用に踏み切れば憲法9条が禁じる武力行使にあたるとして、部隊の派遣反対と撤収を訴えた。
事務局を務める清水雅彦・日本体育大教授は同日、東京都内で開いた記者会見で、「憲法研究者として黙って見てはいられない」と話した。石川裕一郎・聖学院大教授は(内戦状態の地域では)武器使用と武力行使の区別ができるのか疑問だ」と指摘した。(12月9日付朝日新聞デジタル)
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声明は、「わたしたち憲法研究者は、安倍内閣が自衛隊の南スーダンPKO活動に対して新たに付与した『駆け付け警護』と『宿営地の共同防護』任務は、日本国憲法第9条で禁止された『武力の行使』に当たると考えます。それゆえ、私たち憲法研究者は日本政府に対し、以下の理由から自衛隊を南スーダンPKO活動から即刻撤収させることを要求します」とし、「①安倍内閣の『積極的平和主義』の危険性、②『PKO法』の危険な改正、③内戦状態の南スーダンへの『派遣』で自衛隊員の生命をおろそかにする安倍内閣」を指摘し、「④必要なのは憲法による真の『積極的平和』の実践、⑤南スーダンからの自衛隊の撤収と憲法違反の『安保関連法』の廃案廃止を」と要求しています。
声明全文→http://home.384.jp/kashi/9jowaka/shinbun4/16kenpo-kenkyusha-seimei.htm <ここをクリック>
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【九条噺】
南スーダンPKOに派遣された自衛隊の「駆け付け警護」とは、PKOに参加する自衛隊が、救援要請に基づいて、武装集団に襲われている国連やNGOの職員、他国軍のいる所へ〝駆け付け〟て、武器を使用して、助ける任務だ▼ところが、自衛隊は外国の部隊とともに「駆け付け警護」を行うことになるのに、閣議決定資料(英文)には英語ではなく、「kaketsuke-keigo」と、日本語を単純にローマ字表記したものになっているそうだ▼菅官房長官は、11月25日の会見で、ローマ字表記されていることについて、「英語があるとは承知していない」などと、しどろもどろになったという。用語を政府として定めなければ、国連や外国部隊などの外国人には理解されないだろう▼ある軍事ジャーナリストは「『駆け付け警護』は英語に訳すなら、PKF(Peace Keeping Forces=国連平和維持軍)の活動だ。自衛隊はPKFには関わらないことになっているので、PKFとは言えない。protection(防護)ではこちらから出向くニュアンスがない。やむを得ず〝kaketsuke-keigo〟となったのでしょう」と言う。稲田防衛相は「駆け付け警護」を「人道的見地」から実施すると説明したが、世界の常識では憲法9条が禁じる海外での武力行使に他ならないから、変な〝英訳〟でごまかしているのだ▼日本国民には「困っている人を助けることはよいことだ」と思わせ、海外で武力行使ができる自衛隊への質的な変貌を狙っていると思えてならない。(南)
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「市民連合わかやま」野党4党に統一候補要請書

(県庁での記者会見)
今年7月の参院選和歌山選挙区で事実上の野党統一候補を擁立した市民団体「市民連合わかやま」は8日、野党4党に対し、次期衆院選も統一候補で臨むよう申し入れた。市民連合の共同代表4人が民進、共産両党の県事務所を訪れて要請書を手渡し、社民党県連と自由党大阪府総支部連合会には郵送した。
要請書では、安保法制の廃止や、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回など、4項目の政策に取り組んでくれる統一候補を要望。擁立に向けて、野党各党との合同会議を早急に開くことも求めている。
この日、県庁で記者会見した共同代表の豊田泰史弁護士は要請について、「平和国家の日本の先行きが危ぶまれる状況。野党が共闘すれば、安倍政権の暴走を止めるための解決策は見い出せる」と説明。参院選のように市民連合から候補者を出すのではなく、政党の公認候補の中から一本化するのが望ましいとの考えを示した。(12月9日付毎日新聞和歌山版)
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「市民連合わかやま」賛同団体・賛同者の集い開催

(挨拶される堀内秀雄・和歌山大学名誉教授)
「市民連合わかやま」は、事実上の統一候補を擁立して参院選に参加しました。この成果をさらに発展させるために、これまでの活動を振り返るとともに、「市民連合わかやま」の理念・目的を再確認し、今後の方向について話し合う集いが、11月23日に開催され、県下から数十名の方が参加しました。
開会挨拶とこれまでの経過報告を、代表の豊田泰史弁護士が行い、その後、リレートーク、そして参加者が自由に意見を述べました。「市民連合わかやまは、15年9月19日に成立した安全保障関連法を廃止し、14年7月1日の集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回し、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すための活動及び個人の尊厳を擁護する政治を実現するための活動をすることを目的とする」という「申合せ」が全会一致で承認されました。当面の活動方針は「来るべき衆院選において、立憲野党に共闘を呼びかけ、その実現を目指す活動を行う」となりました。
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