「九条の会・わかやま」 314号を発行(2017年1月6日付)

 314号が1月6日付で発行されました。1面は、緊急事態条項は独裁への道(由良登信弁護士 ③)、「19日総がかり行動」に3000人、謹賀新年、九条噺、2面は、市民連合 衆院選「野党共闘」に向けシンポ開催、書籍紹介 『憲法くん』  です。

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緊急事態条項は独裁への道

 12月4日、「9条の会共同企画相談会」を開催し、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の由良登信弁護士が「自民党憲法草案がめざす日本の姿」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は最終回。

由良登信弁護士 ③



 戦争の放棄・平和主義については、第2章を「戦争の放棄」から「安全保障」に変える。憲法9条2項があることによって、自衛隊が出来ないことは、①海外派兵、②集団的自衛権の行使、国連の平和維持活動を行う国連軍で、その目的・任務が武力行使を伴うものへの参加、④攻撃的・壊滅的破壊能力を持つ兵器の保有、⑤徴兵制、⑥交戦権行使、⑦先制攻撃、があり、国の政策として、⑧非核3原則、⑨武器輸出3原則、⑩軍事費支出GNP1%枠、などがある。これは自衛隊が9条2項の戦力に当たると憲法違反になるので、それには当たらないという限界のものだが、安倍政権は出来るところから、なし崩し的に変えてきている。戦争法は海外派兵を一部出来るようにした。南スーダンの「駆け付け警護」の任務遂行に必要ならば武器使用も出来るように変えた。集団的自衛権の行使を可能にするために武力攻撃事態法を改正し、存立危機事態という日本が攻められていなくても、日本と密接な関係にある国が攻められたら自衛隊も防衛出動出来るとした。防衛出動は手段に制限がなく、何でも出来る。そういうものを導入してしまった。安倍政権は日本を守るためには核武装も可能だと言っているが、日本国民の頭上で核兵器を使用出来る訳がない。軍事費も5兆円を突破した。随分先取りされているが、まだ9条2項がある。自衛隊はまだ正式の軍隊ではない。正式の軍隊にするためには、軍事刑法が整備され、軍事裁判所を設けなければならない。自民党改憲草案では自衛軍ではなく国防軍と正式の軍隊になっている。国防軍は我が国を守る以外に、国際社会が協調して行う活動も行うと言っている。これは国連の活動に限定していない。多国籍軍に日本も入ることを想定している。公の秩序を維持する活動も行う。これは銃口を国民に向ける治安出動だ。「国民の生命若しくは自由を守るための活動」では、この国民は日本にいる国民に限定しておらず、海外にいる国民を守るために国防軍が出て行くということだ。国民に「国と郷土を守る」義務をうたい、国防軍の機密保持に関する法律をつくり、国防軍に審判所(軍法会議)を置き、9条の3で国に領土保全等を義務づけ、これを国民と協力して行うと、国民にも義務付けをしている。そして、第9章に有事の際の「緊急事態の宣言」の規定をおくようになっている。
 国民主権では、天皇を元首、日章旗を国旗、君が代を国歌と定めて国民に義務づける。天皇の国事行為に内閣の「助言と承認」が必要とされているのを、「内閣の進言」に変え、憲法尊重擁護義務から天皇を外す。「その他の公的な行為を行う」と、天皇の出来る行為を広げる。人権保障も後退する。全ての人権に及んでいる12条、13条の総則規定に、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と書き、「個人として尊重される」を「人として尊重される」に書き換え、「公益及び秩序」に反しない限り尊重するというようにして、「公益及び公の秩序」が人権より優先するものにしてしまう。「個人」とは国家・社会の対立概念で、「個人」と書いていることが重要であり、これを「人」にすれば本来の意味を失う。これを置いておくと人権制約が出来ないので書き替えている。表現の自由(集会・結社・出版その他一切の表現の自由)は民主国家では最大限の尊重が必要なのに、12条、13条の網を被せた上に、さらに「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」を新設している。
 第9章に「緊急事態」を新設する。これが新設されたら憲法が停止してしまう危険な内容だ。これは内閣総理大臣が緊急事態の宣言をすると、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。今は国会しか法律は作れないが、政府だけで法律と同じものが作れる。今まであった法律を変えることも出来る。野党が反対して作れなかった法律を作ることも出来る。立法権を内閣が握り、総理大臣は財政上必要な支出、その他の処分も出来る。つまり、国会審議なしで予算をどんどん使うことが出来る。地方自治体の長に必要な指示が出来る。国会のコントロールは事後でもよく、何時までという限定もない。日本国憲法が国家緊急権についての規定を置いていないのは、これがあれば危ないからだ。明治憲法ではこれによって軍部が独立して動くことを可能にしていた。ワイマール憲法のもとで、ヒトラーが大統領令のようなものを頻発し、最後は授権法で憲法を変える権限まで与え、独裁が敷かれることになった。災害の時は災害対策基本法で緊急にどうするかは規定されている。日本が攻められた時の対応は武力攻撃事態法と国民保護法で細かく規定されている。緊急事態に対するものは国会で審議して法律を作っておけばよい話だ。むしろ、東日本大震災の時は権限を国に集中するよりも、地方に臨機応変に出来る権限を与えるべきだと言われている。衆議院が解散されている時に緊急事態が発生しても、それについて憲法は参議院の緊急集会の規定を用意している。選挙後国会が召集されたら、暫定的に取った参議院の対策は国会で審議し直すことになっている。(おわり)

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「19日総がかり行動」に3000人



 オスプレイ墜落に怒りが沸騰する中、12月19日の総がかり行動は、国会議員会館前で「沖縄弾圧今すぐやめろ。基地はいらない」と3000人が声をあげました。
 主催者挨拶で、高田健氏は「15年9月19日以来続けてきた19日行動は全国各地で心ひとつにたたかっています。沖縄でオスプレイ2機が墜落したが、本日全面解禁とは。高江のヘリパッド建設に反対する住民への圧力やPKO法に違反する南スーダンへの自衛隊派兵。4野党と市民の共同の構図を作り出し、戦争法廃止のたたかいをやりとげよう」と強調しました。
 沖縄からかけつけた、北上田毅氏はオスプレイ墜落事故や辺野古・高江でのたたかいを報告し、「沖縄の生の声を防衛省にぶつけてきた。たたかいを強化する。沖縄の現状を来て見てほしい」。日本ボランティアセンターの白川徹氏は南スーダンの現状を報告、「現地スタッフからは『駆けつけ警護』はやめてほしい。NGOの活動ができなくなる。軍事支援ではなく、民生支援を」。日弁連の山岸良太氏は「戦争は最大の人権侵害、平和ブランドの憲法をいかそう」。戦争をさせない1000人委員会の福山真劫氏は、韓国の民衆運動のうねりに学び「安倍を絶対に許さない。安倍政権を打倒しよう」と訴えました。
 民進党・山尾志桜里衆議院議員、社民党・福島瑞穂参議院議員、日本共産党・穀田恵二衆議院議員が激励にかけつけ、「『19日行動』を力に、たたかいはこれから。野党と市民の共同の力で、新しい政治をきりひらき、新たな年を展望しよう」と呼びかけました。(憲法共同センターNEWS188号より)

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【九条噺】



 12月13日にオスプレイが沖縄県名護市の海岸に墜落したが、事故原因究明もされないまま、わずか6日後に飛行を再開し、1月6日に給油訓練も再開するという▼日本政府は一貫して「墜落」との認識を否定し、繰り返し不時着」と表現している。写真(沖縄タイムス)を見てほしい。どうしてこれが「墜落」ではなく「不時着」なのか。広辞苑によれば「不時着」とは「故障や燃料欠乏などで航続不能となり、予定しない地点に降りること」とある。これが「降りた」と言えるのか。どうみても「落ちた」のだ▼オスプレイは、木更津駐屯地、横田基地、佐賀空港などにも配備が予定され、全国各地で事故が発生する可能性がある。「不時着」との日本政府の言い換えは、今後のオスプレイ導入への影響を恐れ、墜落事件を矮小化しようとするものだ▼さらに許し難いのは、沖縄県の安慶田副知事の抗議に、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は、「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ」と述べ、表情は怒気に染まり、テーブルをたたく場面もあったという。大事故を起しながら、謝罪するどころか、「感謝せよ」とは、何たる言い草か。占領者そのものの暴言だ▼①事故原因の徹底究明、②飛行中止と配備撤回、③在沖海兵隊の撤退、④ニコルソン氏の更迭、という沖縄県議会の決議の実行以外に解決の道はない。(南)

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市民連合、衆院選「野党共闘」に向けシンポ開催



 市民連合は21日、都内で「衆院選挙をどう闘うか~立憲政治の再生を」と銘打ったシンポジウムを開催した。基調講演した憲法学者の石川健治東大教授は、「市民連合が掲げる『個人の尊厳』というキーワードはとても重要になってくる」と強調した。
 「どんな人でもその生に尊厳がある。今その尊厳が傷つけられ、権力の行使によって侵されていないか。そうした視点が重要」と訴えた。  「『立憲政治』は大正デモクラシーの頃『猜疑(さいぎ)の政治』と定義され、政治家や権力や民意へ疑いの目を向けることを意味していた。1930年代後半になって、『信頼の政治』と『信仰の政治』の2つの道筋が登場した。『信頼の政治』とは、主張はともかく政治家を信頼し預けるということ。これが今台頭し、安倍政権の独裁を招き、ステルス性の権威主義を形作っている。『信仰の政治』とは、日本会議のような、ある種『カルト的な政治』」と分析した。「この三つ巴の中で、『猜疑の政治』が押されているのが現状で、どれも単独で過半数を奪えないため、改憲勢力は、『信仰の政治』と結び付き、また『信頼の政治』に近づき、改憲の原動力としている。この状況の中で、今一度『猜疑の政治』について考えてもらいたい」と語った。
 「『個人の尊厳』には、『自由』『責任』『尊厳』の意味があり、特に『責任』については『平和』も含まれる。そのため、選挙に行かなければならない。『選挙権』は、憲法学では『権利であり公務』とされる。極めて勤勉な日本人が、これほど投票に行かないのは『公務』ということが認識されていないからだろう。『個人の尊厳』における『責任』というコンセプトは大事にしたい」と話した。(神奈川新聞より)

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書籍紹介 『憲法くん』



憲法くんは、まだまだ元気です。
平和のことも政治のことも楽しく語り、笑いとともに考えていくつもりです。
だからみなさん、
憲法くんがいつまでも元気で長生きできるように、
みんなで力を尽くしましょう。
――松元ヒロ
■ひとり芝居「憲法くん」をご存知ですか
日本国憲法施行から50年目にあたる1997年の初演以来、松元ヒロさんが機会があるごとに演じているのが「憲法くん」です。日本国憲法を人間に見立ててユーモラスに描き、その大切さを訴える8分ほどの短いネタですが、最近は「憲法くん」を演ってほしいという要望がとても多くなってきたといいます。(講談社HPより)
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発行所:(株)講談社
著 者:(作)松元ヒロ、(絵)武田美穂
発行日:2016年12月19日
価 格:1,400円+税

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(2017年01月07日入力)
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