「九条の会・わかやま」 322号を発行(2017年5月6日付)

 322号が5月6日付で発行されました。1面は、「HAPPY BIRTHDAY 憲法 in WAKAYAMA 2017」開催 憲法の誕生日をみんなで楽しく祝う、安倍政権を支える3つの勢力のための改憲を狙う(植松健一さん ②)、九条噺、2面は、青法協和歌山支部「憲法を考える夕べ」開催 中野晃一・上智大学教授が講演、「平和を願う町民のつどい」開催 みなべ「九条の会」  です。

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「HAPPY BIRTHDAY 憲法 in WAKAYAMA 2017」開催
憲法の誕生日をみんなで楽しく祝う




 憲法記念日の5月3日、和歌山城西の丸広場で、日本国憲法の誕生日を祝い楽しく過ごす4回目の催しが行われました。並んだテントに、子どもの遊びコーナー、署名コーナーや、うどん、焼き鳥、コロッケ、からあげ、わた菓子、ビールなどの食べ物の店も出て、参加者は食べたり、買ったり、演奏などを聞いたりと、思い思いに楽しんでいました。



 中央ステージでは高校生のバンド、津軽三味線、ハワイアンフラ、子どものメッセージ&コーラス、高校生の和太鼓、よさこい踊り、ホームバンド、ちんどん楽団などの演奏が披露され、大きな拍手や声援が送られました。最後に餅まきが行われました。



 開会に当り藤井幹雄弁護士は、「日本国憲法の70回目の誕生日にあたり、70年前に人びとがどんな気持ちだったかを考えたい。暗澹たる時代が終わり、希望を持って新しい時代を迎えた。それから70年間、憲法は日本と日本国民を守ってきた。ますます世界に必要なものになっている。そのことを思いつつ、憲法の誕生日をお祝いしよう」と挨拶をしました。



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安倍政権を支える3つの勢力のための改憲を狙う

 4月1日の「守ろう9条 紀の川 市民の会」第13回総会で立命館大学法学部教授(憲法学)植松健一さんが「安倍首相はなぜ憲法を変えたいのか」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

植松健一さん ②



 レジュメには「すでに『憲法』を変えてしまった安倍政権」と書いているが、日本国憲法は今のところ幸いにして条文自体は変えられていない。「憲法」を英吾で「constitution」という言い方をした時は、条文だけをイメージするのではなく、この国の制度とか法律とかいろんなものを含めてこの国の形を作っているもの全体を指す。明治期には「国憲」と呼んでいた時代がある。正確に言えば「国憲に関る法(constitutional law)」が今我々がイメージする憲法だ。そのように考えると、特に安倍政権になってから、少なくとも戦後の「constitution」が大きく揺らいで、捻じ曲げられている。それまでは、いくら首相に人事権があるといっても、やってはいけないことがあるということが権力担当者に共有されていたが、どんどん潰されてきた。一定の独立性を保ち、専門的な立場から政権が暴走しないようにコントロールする立場にある、例えば日本銀行、NHK、内閣法制局などのトップを替えることによって政権の意向に近い政策を遂行させてきた。最近では最高裁判官人事も危なくなっている。
 自民党は憲法改正案を出しており、今後どうなるかを考える際には、そもそも安倍政権とはどういう政権なのか、或いは誰がそれを期待し歓迎しているのか見ておく必要がある。安倍政権を支える勢力は大きく分けると3つある。1つはアメリカだ。トランプで少しややこしくなったが、従来のブッシュ政権であろうが、オバマ政権であろうが、基本的には日本に軍事的なより一層の協力を求めてきた経緯がある。トランプは大統領になる前に駐留はやめるみたいなことを言って、安倍首相が飛んで行きご機嫌を取って、尖閣は安保の適用範囲だと言ったら、一部のマスコミは、安倍政権は頑張ったみたいなことを言っているが、ブッシュ政権もオバマ政権も尖閣を守ると言っており、ゼロ回答に過ぎない。その結果として、思いやり予算の減額とか、普天間基地は必要なのかなどの議論は、とても言えない状況を作ってしまった。外務省筋、自衛隊の制服組などが米軍と共同訓練をやる中で、米軍と発想が一緒になっている幹部層がこれを支持している。2つ目は、グローバル企業を守っていくために様々な成長戦略をやらねばならない勢力がいる。これは経産省とともに防衛省内の防衛装備庁がその代表だ。最後の3つ目は、安倍晋三という人格に期待している勢力、日本会議などの復古的な人たちということになる。そして、これらの人たちがイメージする憲法像があり、それらが今の改憲論考で共同し合い、時には矛盾を起こしながらやっているような感じがする。
 アメリカの利益を何とかしようということになると、日本はもっとアメリカの助けになるような軍事大国にならなければいけないということになり、これを憲法改正でやろうとすると、今の解釈改憲での限定的な集団的自衛権の行使では不十分で、普通の軍隊にしたい、制約のない集団的自衛権になると、9条を破棄するような完全な国防軍化、それに付随する軍事裁判所とか緊急事態条項を作っていくのが大事な課題になるし、それを国民精神の中で支えるためには愛国心条項も必要となる。ただこれを、政府解釈の変更でやってしまったので、緊急の必要性は後退しているのではないか。
 グローバル企業を支えていくのは新自由主義型の改憲論ということになる。例えば、財政規律をもっとしっかりして赤字を作らない健全財政条項、経済戦略特区や道州制などを実施するための地方自治規定の改正、二院制だとなかなか迅速な決定ができないということで参議院の廃止または権限縮小、社会権規定の削除なども考えられている。ただこれを進めると人々の心は荒み、社会は分断化されるので、この矛盾を隠すために愛国心条項・家族条項がここでも活躍することがある。ただ、これらも憲法レベルでやらなくても法律レベルでやれることも多い。
 右翼的な復古的な改憲は、昔からある話だが、押し付け憲法破棄という発想や、天皇元首化、愛国心・家族条項、政教分離規定の緩和、個人の尊重規定の改廃、「公益」による人権制限などがある。ただ、森友問題などを見ると、安倍政権は「日本会議ど真ん中」みたいな部分とはちょっと距離を置いている可能性がある。安倍首相は最近露骨なことを言わなくなっている。政権維持のためだろう。
 私は、安倍政権はそんなにも憲法を変えることに頑張らないのではないかと思うが、安心かというとそうではない。(つづく)

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【九条噺】

 安倍政権の中から問題発言が頻発している。務台俊介・復興政務官の「長靴業界はだいぶ儲かったんじゃないか」。今村雅弘・復興相の(福島の自主避難者は)「本人の責任でしょう。裁判でも何でもやればいいじゃないか」。山本幸三・地方創生相の「一番のがんは学芸員。この連中を一掃しないと」…▼4月11日には、和歌山県選出の鶴保庸介・沖縄北方相が、辺野古新基地建設に反対する沖縄県の動きに、「ポジショントーク(自身に都合のよい発言)をするような向きも、ないではないかもしれない」と述べた。知事選・衆院選・参院選の結果を見れば「辺野古移設反対」の沖縄県民の意思は明かだ。県民が政府に反対の声をあげることを、「気持ちよかったね、というだけで終わったんじゃ意味もない」と、県民が溜飲を下げるために言っているかのような発言も許せるものではない▼昨年9月、鶴保氏は政府と県の訴訟について「早く片づけてほしいということに尽きる」と語った。これこそポジショントークだろう。例の「土人発言」問題では、間違っているのは明々白々なのに、「私は『これは間違っている』とか言う立場にない」などと発言し、厳しく批判された▼と、この文を書いている最中の25日、再び今村復興相の「東北だったから良かった」が飛び出した▼沖縄や復興の担当大臣の、沖縄や東北の人々の心を傷つける発言は許されるものではない。議員辞職を求め、安倍首相の任命責任も厳しく追及されなければならない。(南)

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青法協和歌山支部「憲法を考える夕べ」開催
中野晃一・上智大学教授が講演




 4月28日、和歌山県民文化会館小ホールで、青年法律家協会和歌山支部主催の「憲法を考える夕べ」が開催され、上智大学国際教養学部教授・中野晃一さんが「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」と題して講演をしました。
 中野教授は、「現在の政治状況は、自民党が極右化し、公明党がそれに対してアクセルを踏み、維新の会が補完勢力としての役割を果たしている。トランプ大統領の登場で『ポスト真実』の時代がきたが、安倍首相はそれ以前から、黒を白と言いくるめ、集団的自衛権行使容認などを行った。今は立憲民主主義を守り、創っていかねばならない時だ。今の自民党は投票率が上がると負ける可能性が高い。昨年の参院選1人区で野党統一候補が11人当選したことに自信を持ち、立憲野党の統一候補を作るのが最低条件だ。これで勝負ができる」と力説しました。(講演要旨は次の323号から掲載の予定)

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「平和を願う町民のつどい」開催
みなべ「九条の会」




 みなべ「九案の会」(柳田孝二代表)は23日、みなべ町芝の南部公民館で第7回平和を願う町民のつどいを開いた。憲法施行70周年の節目を迎え、改めて平和と憲法9条を守るべきだと訴えた。
 あいさつで柳田代表は、改憲の動きが強まっていることや、力で支配する世界情勢となっていること、北朝鮮問題が軍事行動に発展すれば日本が巻き込まれて国土が戦場となる可能性かあることなどに触れて「そんなことはあってはならない。安倍内閣は危険な道を歩んでいることを理解して、世界の宝の憲法9条を守っていかなければいけない」などと語り、協力を求めた。
 来賓として小谷芳正町長と豊田泰猛町教育長が出席。小谷町長は「日本国憲法を変える、変えないは皆さんの心にかかっている。国民が反対すれば変えることはできない。司法的な立場であまり審議されていないのが現実で、憲法について知ってもらい、どういうことがあっても戦争を避けようという思いでやっていただきたい」と話した。
 印南町の木村三千代さん、田辺市の松本紀子さん、上富田町の宮本幸子さんによる「和歌山ネーネーズ」が三線の弾き語りをした。沖縄出身で長らく小中学校で教諭を務めた木村さんが、辺野古の基地問題や、米兵の事件が多発する沖縄の現状を説明した。
 ドキュメンタリーDVD「9条を抱きしめて」の上映もあった。
 公民館2階では、原爆や戦争関連の写真集や本、資料などを展示して平和の大切さをアピールした。(紀伊民報4月24日)

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(2017年05月06日入力)
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