「九条の会・わかやま」 326号を発行(2017年6月23日付)

 326号が6月23日付で発行されました。1面は、自民党の圧勝阻止のためには統一候補が最低条件(中野晃一さん ④)、憲法施行70年「九条の会」講演会での呼びかけ人・世話人のリレートーク①(2面、3面にも)、九条噺、2面は、安倍政権「共謀罪」法を強行採決 「共謀罪」法は廃止! 議会制民主主義を守れ!、第36回「ランチタイムデモ」実施、3面は、憲法施行70年「九条の会」講演会での呼びかけ人・世話人のリレートーク①(つづき)   です。


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自民党の圧勝阻止のためには統一候補が最低条件

 4月28日、青年法律家協会和歌山支部の「憲法を考える夕べ」が開催され、中野晃一・上智大学教授が「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」と題して講演されました。その要旨を4回に分けて紹介します。今回は4回目で最終回。

中野晃一さん ④



 自民党の圧勝を阻止するためには、立憲野党の共闘を市民が後押しし、統一候補を作ることが最低条件となる。そうすれば勝負の形が出来る。ただ、勝負の形が出来ても、必ず勝てるとは限らない。参院選の32の1人区の統一候補は事実上の一本化だけのところもあったが、それでも11の選挙区で勝てた。13年の参院選では31の1人区の内29を自民党が取っている。野党の2つはオール沖縄と岩手県で、民主党はゼロだ。そこから11まで取れるようになった。これが一本化の力だ。一本化をする時の大きな課題は本来の政治のあるべき姿ではないということだ。野党共闘をすべきだと訴えているが、これがいつまでも続く方がよいとは思っていない。ましてや、野党共闘は異なる政党がお互いにどこで一致しているのかをきちんと確認した上で政策で合意して、候補者を一本化するもので、政党を合併させようというのではない。違うままでよい。民進党を見ると自分たちだけでやりたいと思っていると思うが、実力を見た時、メディアを相当押さえつけ、官僚も全力で安倍政権をバックアップし、さらに創価学会の基礎票があり、そこを民進党が自分たちだけでやってかなう訳がない。野党共闘をするのは当り前で、それをきちんとやらねばならない。それで勝負の形が出来、私たちの多くが気持ちよく応援することが出来る。受け皿が出来て、政治を諦めた人たちがもう一度戻ってくると、実はこれを引っくり返すことは、そんなに難しいことではない。少なくとも3分の2を阻止することは十分に可能だ。それがあるから、民進党の中にいろんな意見があっても、最終的には野党共闘に戻ってきているのは、それが理由だ。民進党が蓮舫・野田体制という極めて保守的な政治家が中心にいるにも拘らず、野党共闘に舵を切り、多くの民進党議員が野党共闘でいくしかないと合意し始めているから、長島昭久離党、細野豪志代表代行辞任が出てきたのが実態だ。政党は本来、それぞれの綱領・政策があって、独自の候補者で選挙を戦うのは当り前だ。今、土俵を壊す人がいるので、東だろうが、西だろうが力士が力を合わせて止めなければいけない状況だ。それだけではない。今、民進党は結党以来一番右にいっているが、それでも野党共闘をした方がよいと思うのは、選挙がその歯止めになることが参院選で実証されたことと、もうひとつは国会を見ても成果がある。民進党は議員を見ると一番右に行っているにも拘らず、昨年の参院選は結党以来最も護憲の立場で戦っている。3分の2を許さない、安倍政権の下では改憲させない、9条には手を出させないなどは、民進党はこれまで言ったことは一度もない。野党共闘と市民のタガが民進党にそうさせている。国会で最も多くの反対票を投じているのは民進党だ。自民党にも公明党にも、本当はこの安倍政権の政治はおかしいと裏では言っていても反対する人はいない。向こうがそうなら、こちらが純化して日本会議とか連合だとか言って排除していたら、かなう訳がない。野党共闘を市民の側がやった。野党側は放っておいたらこんなことは出来ない。14年12月に「総がかり行動実行委員会」が出来、これが今の共闘体制を支えている。安保法制は強行されたが、野党はがんばれと市民運動が声をあげた。それに応えた人が野党共闘を作るようになり、私たちは踏みとどまっている。これは違うということをリスペクトし合って、違うけれど、禁じ手以前の、土俵を壊すようなことはやってはいけない。昔の自民党は常に横綱のようにきれいに勝っていたが、それが暴走し始めている。そうしたら、もっと弱い力士かもしれないが、止めなければならない。そうしてもう一度相撲を楽しむことが出来るのだと思う。違っていても一緒になれる人との共同をやっていかないと、国家権力ありき、国威の発揚ありきとなる。人々の生活のために政治や経済や社会があるのではないか。だから戦争はいけない。真っ先に踏みにじられるのは女性であり、若者であり、個人の尊厳だ。私たちはいろんな経緯があったかもしれないが、みんなで手を合わせて、今踏み止まって、もう一回真っ当な政治を創るために、いろんな人が力を合わせて、こんなおかしな日本を退場させなければならないと歩むことに希望がある。若者は絶望の中で生まれ育ってきているから、ここから始めればいいではないかと言っている。彼らが入っていける場を作れば立憲民主主義はここから創れる。(おわり)

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【九条噺】

 安倍政権は2020年に9条改憲を目指すことを公言し、一昨年の安保法制に続いて「共謀罪」法の強行に見られる通り、反対を押さえ込んで海外で戦争できる体制を確立しようとし、国会での多数を頼んで、野党や世論の反対の声を聞かず暴走を重ねている。沖縄の基地新設も地元と国民の反対を押し切って強行している▼「共謀罪」をめぐって、大臣らの「抗議集会はテロ」「(反政府的な運動の関係者は)一般人ではない」「治安維持法は適法だった」などの反動的な暴言は聞くに堪えないし、この法律が反政府的な意見や運動を敵視し、テロ集団と見なしてつぶそうとする狙いを隠し持っているという危険な本質を、自ら明かしている▼また、森友学園、加計学園問題では、首相の友人への便宜を図る国政私物化の姿があぶりだされた。官邸からの圧力があったことを元文科省要職者が勇気をもって告発し、政権は火消しに腐心している▼かつてなら内閣がいくつか倒れたくらいの失政続きと言える。このような政権でありながら高い支持率を維持しているのは何故か。疑問に思い続けていたのだが、どうやら景気が上向いて株価も上がり「民主主義よりカネ」という層の支持を得ているのと、雇用状況の数値が良いことで若者の支持が高いという事情らしい▼とすれば、非正規雇用の多さ、歯止めのない時間外労働、福祉切り捨てなどの現実を解明し、軍事費増加や徴兵の危険など、平和の大切さを訴える時だろう。(柏)

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憲法施行70年「九条の会」講演会

 「日本国憲法施行70年『九条の会』講演会」が6月2日に開催されました。講演会では呼びかけ人・世話人のリレートークが行なわれました。その要旨を順に「九条の会ニュース」275号からご紹介します。

小さな組織が力を合せ安倍退陣を
呼びかけ人・作家 澤地久枝さん




 今、皆さんは安倍さんのやり方に怒っています。では、どうしたらいいか。九条の会が、日本中にあります。加藤周一さんは、日本の運動の特色は、小さな組織がたくさん全国にあることとおっしゃいました。九条の会もそうです。加藤さんは、この個々の組織が1つにまとまって力になるとおっしゃっていました。
 それから、小田実さんが亡くなる前、戦前の日本と非常に似ていると言っていました。しかし、安倍さんがこんなに暴走するとは想像されていなかった。すさまじいのは、憲法施行70年の日のメッセージでした。憲法9条の第1項、第2項はそのまま、第3項に自衛隊の規定を加えると言いました。
 安倍さんも内心では恐れているだろうと思います。みんなが自民党を離れて、野党に投票するようになったら、安倍さんも今のようなところにいられないわけですね。皆さんは、この警戒の気持ちを隣にいる人につなげるようにして、もっと力になるように、安倍さんが本当に眠れないような、そういう力にしていきましょう。私たちは自信を持ってやっていきたい。

「連戦連敗」でも押し込まれていない
世話人・名古屋大学教授 愛敬浩二さん




 私は今日、九条の会の呼びかけ人であった奥平康弘先生の亡くなった後に出版された『「憲法物語」を紡ぎ続けて』を持ってきました。先生はこの中で連戦連敗論を言っています。負けるかもしれないけれども、精一杯たたかってきたという本です。他の本では、「ぼくはね、連戦連敗だったという事実を言いたいわけではなく、…闘いというのは、決して一方が完全に勝ち、他方が完璧に負けたという話ではない」ことを言いたいのだと書いておられる。
 私自身も、連戦連敗の繰り返しです。私がこのような集りに顔を出し始めたのは、PKO協力法の制定過程で、国会前にと誘った友人の「若いのが来るとおじさんとおばさんが元気が出る」という言葉からです。
 それ以来、ほんとに、私も連戦連敗だと思います。PKO協力法、周辺事態法…。しかし、反対してきたからこそ、まだこの状態にあるのだと思います。自衛隊が南スーダンから帰って来ざるを得なかったのも、あれだけの反対があったからです。危機は認識しなければいけないが、相手に十分追い込ませていないことも、自信を持っていかなければいけないと思います。

平和で平等であってこそ女性が輝く
世話人・早稲田大学教授 浅倉むつ子さん




 安倍首相は安保関連法制を強行しましたが、支持率は下がっていない。それに自信を持って、いよいよ在任中の明文改憲に意気込んだと思います。しかし9条3項に自衛隊の存在を書き込んだとしても、矛盾を増幅するばかりだと思います。
 今、安保法制に対して、全国で、違憲訴訟が提起されております。全国では18本、原告の数は6200名を超えるそうです。
 実は、女性たちによる訴訟も起きています。安保法制違憲訴訟女の会で、私も106人の原告の1人になっています。
 戦争と軍隊が、女性の性を常に道具として支配の対象にしてきたことは、日本軍の性奴隷制や沖縄の米軍による性暴力の現実を見れば分かります。この違憲訴訟において、私たちは安保法制による、女性に対する権利侵害性を明らかにしていきたい。
 安倍首相に言いたい。女性が輝く社会になって経済発展することを本当に願うのであれば、まず、平和と平等を私たちに保障してください、と。日々の生活で戦争の不安を抱えながら、また、格差によって人々の尊厳が脅かされている社会では、誰も決して活躍することなどできません。

軍学共同は9条と相容れない
世話人・名古屋大学名誉教授 池内了さん




 自然科学者が反核運動あるいは憲法を守る運動に参加することが非常に少なくなっている。苛烈な競争原理があり、商業論理が入ってきて「役に立つ」ことが強調されたりする。そして、文部科学省からの研究費が非常にやせ細ってきて、防衛省からの資金に頼っていくという問題もあります。
 軍学共同とは、防衛省からの資金を大学や研究機関の研究者たちがもらって軍事研究の下請けをやっていく問題。学術会議が声明を出し、軍事力に基礎を置いた安全保障研究に対し、国の介入が懸念されることに、研究者たちは慎重に、と述べています。
 防衛省からの資金提供は、平和のための研究であるべき科学研究が、軍あるいは戦争のための研究に転化していく、これは憲法9条の平和主義と矛盾する。もう1点は、憲法23条「学問の自由」ですが、その中味は私たちが作っていく必要がある。
 最後に、原子力開発、あるいは宇宙開発は安全保障に資するということになっています。安全保障という言葉を使って憲法を変えていくのが、安倍晋三の狙いであると見抜いて、人間の安全保障こそ大事であることを、常に主張していきたい。

憲法に新しい命を吹き込む力
世話人・ドイツ文学翻訳家 池田香代子さん




 国会の実況中継を見ていると、消してしまいたくなります。しかし、「政治家が嘘をつくことから始まる。それを国民が真実だと錯覚するようになり、それがファシズムを許してしまった」と言ったジャーナリストがいます。ですから嫌でも、付き合っていかなければならない。憲法前文は、「日本国民は正当に選挙された国会における代表を通じて行動し」とありますが、今の選挙制度は公正ではないのです。
 ドイツでメルケルさんが苦戦している1つに、難民問題があります。ドイツ基本法第16A条には「政治的に迫害されているものは、庇護権を有する」とあり、憲法を守って難民を受け入れているのです。これは、第2次世界大戦中、近隣の諸国に侵略し、難民もたくさん生んだことへの反省です。
 メルケルさんは、東ドイツの出身だけに、ドイツ基本法への思い入れが深い。憲法を希求した人が、憲法に命を吹き込む。それがメルケルさんの行動から読み取れます。私たちの国に当てはめると、もしも、沖縄から首相が生まれたとき、私たちの憲法に新しい命が吹き込まれるのではないか。
 沖縄のこと、原発のこと、そして憲法9条のこと等々、私たちは多数派です。私たちはあきらめる必要はない。

聞いていないと思われた人たちも…
世話人・元朝日新聞記者 伊藤千尋さん



 この3月、沖縄に行きました。宮古島でこんな話がありました。2005年に、宮古島に自衛隊を誘致することを町議会が、緊急動議で決めてしまった。抗議したら強行採決をした議員たちは、反対するなら今すぐここに、町民の半分でも集めてみろと。
 言われた方は、車にスピーカーを積んで、すぐに体育館に集まるよう呼びかけた。2時間後、体育館に集まったのが3500人。そして決議をどうするかと聞いたら、16人いた議員のうち15人が白紙撤回しますと。地元の宮古島九条の会の女性がこの光景を見て、誰も聞いてないと思っていたら、私たちの声は通じていたと言っていました。  安倍政権も、強行に次ぐ強行でいろんな物事を決めてきた。ついに、憲法9条の第3項に自衛隊を明記すると言っている。いったん憲法に明文化されたら、自衛隊は大手を振ってまかり通ります。町に戦車で出ます。高等学校に隊員が大手を振ってリクルートに来ます。どうすればいいのか。
 去年の秋、大きな政変が起きた韓国に学べばと取材したら、私たちは日本に学びましたといわれた。2015年の夏、国会前の12万人、あれを見て奮起したというのです。
 私たちも、今度は韓国に習いましょう。

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安倍政権、「共謀罪」法を強行採決
「共謀罪」法は廃止! 議会制民主主義を守れ!


 思想・良心の自由を侵す憲法違反の「共謀罪」法が6月15日早朝の参院本会議で強行採決が行なわれ、自民、公明、維新の賛成多数で可決・成立しました。安倍政権は、一方的に参院法務委員会での審議を打ち切って本会議採決を行う「中間報告」という異例の方法で異常な強行採決を行ないました。民進、共産、自由、社民の4野党は安倍内閣不信任案の共同提出など、安倍政権の横暴な国会運営に結束して徹底抗戦しました。国会周辺でも、「共謀罪絶対廃案」など夜通し抗議の声が続きました。
 「共謀罪」法案は衆参の委員会審議で、テロ対策の有効性や必要性の根拠が揺らぎ、処罰や捜査の対象もあいまいさが浮き彫りになりました。国連の特別報告者も「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と懸念を表明しました。「共謀罪」法は憲法19条違反の違憲立法であり、「共謀罪」法廃止の新たなたたかいを展開することが求められます。

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第36回「ランチタイムデモ」実施



 梅雨の晴れ間が広がった6月12日、第36回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が実施され、80人が参加しました。
 3年前(14年)集団的自衛権行使容認の閣議決定が風雲急を告げる6月23日、憲法の破壊を許してはならないと始まって以降、毎月実施され、36回目を迎えました。市役所前での出発で藤井幹雄弁護士は、「アベによるアベのためのアベの改憲を許してはならない」と訴え、「『共謀罪』法案を廃案にできるかどうかは私たちの運動にかかっている」と強調。森友学園・加計学園問題での政治の私物化を批判し、国民の手に政治を取り戻そうと訴えました。参加者らは「共謀罪」廃案などを訴え、京橋プロムナードまで行進しました。
 次回の第37回は7月10日(月)です。

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(2017年06月23日入力 25日修正)
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