「九条の会・わかやま」 328号を発行(2017年7月19日付)

 328号が7月19日付で発行されました。1面は、安倍改憲発言に和歌山の7市民団体が抗議声明、安倍首相による改憲発言についての声明、九条噺、2面は、第37回「ランチタイムデモ」実施、憲法施行70年「九条の会」講演会:戦争違法化の最先端を行く憲法9条 世話人・日本体育大学教授 清水雅彦さん、3項を追加することの法的意味 世話人・一橋大学名誉教授 山内敏弘さん、安倍内閣支持29.9%に急落    です。

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[本文から]

安倍改憲発言に和歌山の7市民団体が抗議声明



 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」など、日本国憲法改正に反対の立場をとる和歌山県内7つの市民団体は、安倍総理大臣が行った「憲法に自衛隊の存在などを明記し、2020年に改正憲法施行を目指す」との発言に抗議する声明を12日に発表しました。
 これは「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」や「9条ネットわかやま」など7市民団体が共同で発表したものです。
 声明では、ことし5月3日の憲法記念日に、安倍総理が「憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むことや、高等教育を無償化することなど憲法を改正し、2020年の施行を目指す」との発言に対して「憲法で自衛隊を明記すると、9条2項の「戦力不保持」の規範が無効化される。高等教育の無償化も財政措置さえ講じれば可能で、いまの憲法を改正する必要は無い」と主張し、安倍総理の発言に抗議しています。
 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の藤井幹雄共同代表は「安倍総理は、東京オリンピックの開催を理由に憲法改正を数の力で押し通そうとしているが、オリンピックは平和の祭典であり、政治利用するべきではない」と述べ、憲法改正に強い懸念を示しました。7つの団体は、自民党本部の安倍総裁や、和歌山県関連の全ての国会議員に宛てて、きょう、郵送で声明を送ることにしています。(和歌山放送ニュース7月12日)

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安倍首相による改憲発言についての声明

1 安倍首相は、2017年5月3日、唐突に憲法9条について 「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」、「 高等教育を無償化する」ことなどを内容とする憲法改正を実現し、2020年の施行を目指すと発言した。
  しかし、憲法尊重擁護義務を負っている内閣総理大臣が、主 権者国民や唯一の憲法改正の発議機関である国会の意向や論議 を無視し、期日を切った改憲提言をすること自体、そもそも許されない。
2 その上、その改憲提言の内容そのものが、問題の多いものである。
  まず、9条1項、2項をそのまま残しても、自衛隊の存在を憲法上に明記することは、現行憲法のもとで自衛隊にかけられている9条1項、2項による規範の縛りを無効化してしまうことになる。
  すなわち、現行憲法は、9条1項で武力の行使を禁じ、2項において軍隊及び「その他の戦力」を保持しないものと定めている。ここから、これまでの政府解釈によっても、自衛隊は「戦力」に該当しない「自衛の目的のために必要最小限の実力」の範囲でしか憲法上認められず、海外への武力行使目的での派遣や武力の行使は禁じられてきた。そのため、自衛隊が行えるのは武力行使に当たらない活動と例外的な自衛のために必要な活動に限定されるとされてきたが、憲法上に「自衛隊」を明記すると、それらの制約が解かれ、逆に9条2項の「戦力不保持」の規範が無効化することになると言わざるを得ない。
  従って、安倍首相の9条改憲案は、現行の縛りの中での制約された自衛隊をそのままの形で認めることではなく、現行の9条1項、2項の縛りを解く手段として機能することになる危険な内容を孕んでいるのである。
3 また、安倍首相は、「高等教育の無償化」を憲法に明示するよう提言しているが、現行憲法のもとでも、財政措置さえ講じれば高等教育の無償化は可能であり、憲法改正をする必要はない。
4 わたしたちは、安倍首相の上記改憲発言に抗議し、世界の宝である憲法9条の改悪を許さず、次の世代に引き継いでゆく決意を表明する。
  2017年7月12日
   憲法9条を守る和歌山弁護士の会
   九条の会・わかやま
   9条ネットわかやま
   安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま
   憲法九条を守るわかやま県民の会
   和歌山県平和フォーラム
   平和と憲法を守りたい市民の声

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【九条噺】

 30度を超す暑い日が続いている。家庭菜園の夏野菜は元気に育ち、食卓を賑わせてくれている▼先日、教科書展示会に足を運んだ。パン屋から「伝統文化を伝える」和菓子屋に書きかえられたと話題を呼んだ「道徳の教科書」を見るために▼道徳性という内面や価値観と関わる教科書とはどんなものだろうか。戦前、「修身」の教科書によって、子ども達の価値観が規範されていった歴史と重なり、興味があった▼写真やイラストが多用され、子ども達が興味を持つように工夫されているが、内容がよく似ている。検定に通った教科書だからと思いながらページを繰る▼泣き顔のカボチャのイラストが目に留まる。道路に伸びた蔓が車に引かれて泣いているのだ。他の野菜たちが「来ないで」と言っても、蔓はお構いなしに伸びていく。その結果・・・という訳だ。イソップ童話とのこと。「わがままはダメ」という設問がついている。他社の全てにも載っている。設問も同じ▼これはカボチャの「わがまま」なのだろうかと考え込んでしまう。日々生活する中で疑問に思ったことや感動したこと等々を、友だちや先生と議論し考えることが道徳性を育むことになるのではないか。設問に導かれて得る結論は、大人(いや、文科省か)が求める結論の押しつけではないか▼第1次安倍内閣が強行した教育基本法改悪が、今、じわじわと覆い被さってきているように思う。子ども達の豊かな学びのためにも安倍首相には退場してもらう他ない。(真)

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第37回「ランチタイムデモ」実施



 和歌山大空襲の慰霊の日の翌日であり、参院選からちょうど1年目でもある7月10日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第37回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、猛暑のなか約70人の方が参加しました。
 出発にあたり藤井弁護士は、安倍首相による改憲発言や、先の都議選の自民党の惨敗について「安倍一強体制にヒビが入った」と指摘。都議選最終日の秋葉原街頭での安倍首相の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」の暴言に対して、「私たちは、あんな安倍に負けるわけにはいかない」と運動の強化を訴えました。
 参加者らは「戦争する国絶対反対」「憲法無視する首相をかえよう」などと訴え、京橋プロムナードまで行進しました。
 また、京橋プロムナードでの終了挨拶では、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の提唱により県下の7団体が、安倍改憲発言に抗議する共同声明を12日に発表することも予告されました。(表面参照)
 次回(第38回)は、8月10日(木)です。
 以降の予定は次の通り。
(第39回)9月14日(木)
(第40回)10月11日(水)

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憲法施行70年「九条の会」講演会

 「日本国憲法施行70年『九条の会』講演会」が6月2日に開催され、呼びかけ人・世話人の10人のリレートークが行なわれました。その要旨を順に「九条の会ニュース」275号からご紹介しています。今回は9、10人目で最終。

戦争違法化の最先端を行く憲法9条
世話人・日本体育大学教授 清水雅彦さん




 5月3日の安倍首相のビデオメッセージで、憲法は国の未来、理想の姿を語るものという発言を聞いて、私は、安倍首相は法学部出身なのに勉強しなかったなと思いました。憲法はまずもって、国家権力制限規範です。そういう観点からすれば、9条で戦争と軍隊を規制している重みを受け止めず、憲法で縛られている側が、その縛りを緩めるような勝手な理想を言っている。
 この間、安倍首相が、7割、8割の憲法学者が自衛隊を違憲と言っているから変えると言いますが、実は違憲と考える憲法研究者は6割弱です。それが邪魔なのは、専門家が憲法違反と言うから、野党、国民も、そういう意識を持ったと考えるからです。
 日本国憲法は、20世紀の戦争違法化の最先端を走っています。第一次大戦後の国際連盟規約で侵略戦争の制限を試み、28年の不戦条約で侵略戦争を放棄しました。さらに、国連憲章で自衛戦争の制限もしている。事実上の自衛権行使の余地は残っていますが、これをさらに否定したのが9条、徹底的な戦争違法化の最先端にあると思います。
 今、世界に27の軍隊のない国家がありますが、日本が28カ国目になるのか、安倍政権のような方向に向かうのか。私たちは、憲法9条の理念と立憲主義を、安倍政権から取り戻さなければなりません。

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3項を追加することの法的意味
世話人・一橋大学名誉教授 山内敏弘さん




 「権力は腐敗する。絶対的な権力は、絶対的に腐敗する」という格言があります。現在の安倍政権の有り様にも、的確に当てはまっているように思われます。  最近の、森友学園の問題や加計学園の問題に関する安倍政権の対応を見ると、安倍政権の腐敗ぶりが顕著に表れています。
 現在、参議院で審議中の共謀罪法案についても、その法案の必要性や内容に関して、政府から多くの嘘が述べられております。
 そして、安倍首相の5月3日の改憲発言です。憲法9条2項は、一切の戦力、交戦権を否認していますが、自民党の中には、3項に「前項にもかかわらず、自衛隊の存在は認められる」と書く案があるようです。
 ちなみに、法律の世界では、後法は前法を廃すとの法原則があって先に制定された法が、仮に形式的に廃棄されていない場合にも、これと矛盾する新法が後に制定された場合には、前法は廃止されるということです。この法原則にならって、少なくとも、3項が優先的に解釈されることになります。
 確かに、自衛隊の存在は認めても良いという意見は、国民の間にあります。しかし、自衛隊の存在を認めて良いということと、その自衛隊を憲法で明記するということとは、非常に大きな差があり、違いがあるということに留意することが必要です。
 元衆議院議長の河野洋平氏も、「9条は触るべきではない。憲法を現実に合わせて変えていくのではなくて、現実を憲法に合わせる努力をしてみることが先ではないか」と述べました。
 安倍首相の9条改憲を、断固阻止しようではありませんか。

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安倍内閣支持29.9%に急落

 時事通信の7月の世論調査で、安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となりました。2012年12月の第2次安倍政権発足後、最大の下げ幅で、初めて3割を切りました。



(時事通信)

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(2017年07月21日入力 8月12日修正)
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