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「紀南ピースフェスタ2017」開催
8月5日~6日、今年で8回目となる「紀南ピースフェスタ」が田辺市で開催されました。
オープニングは京都を拠点にベラルーシ、福島などの被災地やドヤ街、途上国などを訪れ歌ってこられたシンガーソングライター・阿部ひろ江さんのコンサート。阿部さんの平和を願う思いが、大地とつながっているような飾らない歌声と共に伝わってきました。この日は、各ブースでの展示や出店のほか、憲法に関していろんな意見や思いを聞き合う「憲法まちかど対話」が行われたり、夕方からは別室で神島高校演劇部による演劇『わたしたちのマララに』が上演されたりしました。上演日の数日前に地元紙が演劇部の活動を取り上げたこともあり、多くの方が来場くださり、高校生たちの熱演に引き込まれていました。
2日目のお昼には東日本大震災での原発事故以降、福島から関東地方に移住されたお母さんと紀南で福島の保養に取り組むグループの代表らによる『ハッピィアイランドはどこ?今福島を伝えたい』のトークセッションが行われました。保養キャンプに取り組むグループが全体的には減ってきているとのこと。お話を聞きながら、組織立った大きなキャンプでなくとも遠くの親戚の家を訪れるような関係性を築きながら保養キャンプを続けていけたらと思いました。午後から別
室で行った『沖縄の話を聞く会』では予定の時間をオーバーして熱い話し合いが続きました。この他、今回は、箏の会の皆さん、手話サークルによる手話コーラスの皆さんの演奏などがあり、その中で、平和への思いをそれぞれの方の言葉で語ってくださったことが大変力強く感じました。
今回特筆すべきことのひとつは真砂充敏田辺市長から初めてピースフェスタ開催に寄せてメッセージをいただいたことです。いつか市長や多くの議員らが参加してくださったらなあと思います。
『みんなでたべるとおいしいね』。これは「9条ママnetキュッと」の皆さんが今回のピースフェスタのために台本を練り練習を重ねて上演された人形劇のタイトルです。この言葉に私たちの思いが込められていると思いました。弱い立場の人が一方的にがまんさせられる社会ではなく、時間がかかっても話し合うことを大切にし、お互いを尊重し合えるようになること。それが新しい世界を切り開いていくことにつながるのだと思います。今年もさまざまな形でご支援くださった皆さまにこの場を借りて感謝申しあげます。(実行委員会・木川田道子さんより)
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「9条3項という戦略 - 安倍提案批判②」
『青年法律家』(7月25日発行)から、立命館大学法学部教授(憲法学)・植松健一氏の「『9条3項』という戦略-安倍提案批判」から抜粋して、2回に分けて転載させていただきます。今回は2回目で最終回。
植松健一氏 ②
自衛隊の憲法的承認は、以下のような現状をさらに進行させるだろう。
第1に、自衛隊制服組の政治的発言力・影響力の上昇である。すでに、近年の自衛隊法改定を通じて、制服組は内局のコントロールの及びにくい組織になりつつある一方、一体的運用の過程での米軍との緊密な情報共有を資源として、安全保障政策決定における発言力を強めている。いまや統合幕僚長は安倍首相と頻繁に面会し、国家安全保障会議にも陪席し、そして安倍提案に賛意を表明するような存在だ。しかも、南スーダンPKO日報廃棄に象徴されるように、大臣による文民統制も機能していない。かかる状況の中で、自衛隊に憲法上のお墨付きを与えることは、自衛隊統幕を旧陸軍の参謀本部化を招くことにならないか。
第2に、日本社会に根強い「自衛隊タブー」の浸透が危惧される。現在ですら、自衛隊に対する冷静・客観的な批判すら許さない風潮がある。軍事予算拡張を「人殺しの予算」と呼んだ国会議員へのバッシング然り、自衛隊配備を犯罪増加の観点から反対した宮古島市議への議会の辞職勧告然りである。このような風潮のまま自衛隊が憲法上の組織となると、もはや自衛隊批判それ自体が「反憲法的言説」のレッテルを張られるだろう。防衛装備庁が推進している武器の輸出や大学での軍事研究の促進や中高生を対象とした強引な入隊勧誘なども、全て批判の許されない聖域になりかねない。「ツッコミどころ満載」の安倍提案だが、国民の拒否感は従来の自民党改憲案に比べて低いのも事実だ。読売新聞5月15日の世論調査では、安倍提案への賛成は53%にのぼる(反対35%)。国民の中にある自衛隊に対する「専守防衛の組織」とりわけ「災害救助で頼りになる組織」というイメージが、この数字を支えているのだろう。このことを踏まえて安倍提案に対峙するならば、「自衛隊」が専守防衛の枠組みを超えて米軍と一体の外征軍に変貌している現実を、組織・権限・運用実態の面から丁寧に説明し、「憲法が認める自衛隊」のグロテスクさをイメージさせることが、まずは重要だろう。(おわり)
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【九条噺】
作曲家・なかにし礼さんは言う▼あの戦争で大変な犠牲を払い、ついに手に入れた最高の憲法ですよ。米国の押しつけだとか言いますが、これは戦後日本の再出発の世界に向けた宣言書なんです。各国が認めて、反対しませんでした。世界が希望する国の形を与えてくれたとも、我々が選んだとも言えます。大きな歴史のうねりの中で生まれた本当に奇跡的な、最高の芸術作品だと思います▼その憲法の下でとにかく戦争しないで70数年やってきました。これの何が不都合なのでしょうか。国民は誰ひとり戦争が起きて幸福にはならないのに、なぜ政治家のまねをして改憲に賛成しなきゃならないのか▼日本の理想はまだ実現されていません。この憲法の名の下にこれから実現するべきなのです。その努力を怠り、反省すべきを反省せず、戦前の軍国主義を勘違いして、そこに「美」を求めるのはとんでもない反動です▼それなのに若者はそれを知らないし、今、それを言おうとすると大変です。小泉政権の頃から「日本は悪くなかった」という国民意識の改革のようなものが始まり、そうした洗脳が10年近くかけて実を結んできたわけです。国民意識の変化は怖いですよ。自民党は改憲を言うとき、「対案を出してくれ」と求めます。それには各党が「反対なんだから対案なんて出す必要はない」と言えばおしまいなんです。もともと改正の必要がないわけだから。そうすれば国民の目も覚めますよ▼と。私たちへの警告も含めて。(南)
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安倍流9条加憲は「憲法条文内クーデター」
水島朝穂氏(早稲田大学法学部教授)
(水島朝穂氏のホームページより抜粋し掲載させていただきました)
安倍首相は、9条1項、2項を存続させて、「9条に自衛隊を書き込む」という新方式を唐突に提案した。だが、現状維持どころか、そのもたらす効果はあまりにも危険である。
第1に、9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定している。政府解釈は、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」(自衛力)であり、2項の「戦力」には当たらないとし、自衛のための必要最小限度の範囲内にとどまれば、核兵器を保有することも合憲と解釈している。従って、「自衛力」の明記で、「自衛のための」核兵器の保有が可能であることが憲法上確定する。
第2に、安倍政権は、「自衛のための必要最小限度の実力」に集団的自衛権の一部が含まれるという違憲の解釈変更を行ったので、「自衛力」には集団的自衛権の一部が含まれることになる。日本が攻撃を受けていないにも拘らず、攻撃することができる。これは、相手国からみれば日本が先に攻撃したことになり、その報復攻撃は免れない。集団的自衛権を認める改憲に賛成するということは、報復攻撃により一般市民が殺害されるリスクを覚悟するということである。
第3に、明記される「自衛」の拡大解釈を防ぐ手立てはないことにも注意しておく必要がある。政府は従来、「自衛」のために「武力の行使」が許容されるのは、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合」に限られるとしてきたが、安倍政権は、集団的自衛権を認め、この限定を骨抜きにしてしまった。従来の政府解釈による自衛権行使の要件のひとつに「①我が国に対する急迫不正の侵害があること」があったが、「解釈変更」により、要の安全装置である①の要件が破壊されてしまった。だから、「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」が「自衛」の範囲の「解釈変更」の理由になるのであれば、新9条の「自衛」の範囲も同じ理由で拡大解釈されないという保証はない。
第4に、自衛隊の制服組トップには、政治の統制や防衛省内局などを意に介さない「政治的軍人」が多い。栗栖元統幕議長は、「いざ戦闘となれば自衛隊は独断する」「徴兵制は有効だ」「いざとなれば超法規で戦闘突入する」と発言して解任され、現在の河野統幕長は、自衛隊を憲法に明記する提案を「非常にありがたい」と述べた。政治に介入しないというプロの軍人としての矜持すらない。自衛隊では、このような危険な「政治的軍人」がトップに座ってきた。
自衛隊が憲法に明記されれば、自衛隊は天皇、国会、内閣、裁判所、会計検査院と並ぶ憲法上の機関に格上げされ、自衛隊に一定の権威が与えられ、新9条をフル活用し、市民社会に軍事的思考が浸透していくだろう。
自衛隊を明記したとしても、自衛隊は9条2項の「戦力」不保持の規範的影響は受け続ける。政府は、軍拡を行っても、「自衛力」の範囲内であると強弁を続けることになる。結果、「戦力」概念の骨抜き、換骨奪胎が完成する。これまで9条2項が自衛隊に対して果たしてきた立憲的統制のダイナミズムが崩壊して、「自衛隊」のまま「軍隊」となる。「憲法条文内のクーデター」と言えようか。
他方で、新9条で自衛隊「自体」が合憲になったとしても、自衛隊の個別の「装備・人員」が「戦力」に当たることはあり得るから、自衛隊の違憲性は問われ続ける。9条2項が葬られるのは時間の問題である。
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ブックレット紹介 『安倍9条改憲は戦争への道』
内容:2017年6月20日開催の九条の会事務局主催学習会の講演に、それぞれの講演者が手をいれたもの。
①「安倍首相の改憲発言-そのねらいと危険性」渡辺治さん(一橋大学名誉教授・政治学・九条の会事務局員)
②「安倍首相の改憲発言-その憲法論的検討」浦田一郎さん(一橋大学名誉教授・憲法学)
③資料など
A5判84頁 頒価500円(郵送料金別途)10冊以上の申し込みは8掛け
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