「九条の会・わかやま」 335号を発行(2017年11月10日付)

 335号が11月10日付で発行されました。1面は、「第14回憲法フェスタ」開催 守ろう9条 紀の川 市民の会、行き着く先は 普通の軍隊・戦争ができる国(青井 美帆 氏 ③)、九条噺、2面は、「9条の会共同講演会」開催   です。

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「第14回憲法フェスタ」開催
守ろう9条 紀の川 市民の会


 11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第14回憲法フェスタ」が和歌山市の河北コミュニティセンターで開催され、約120人が参加しました。午前中から「展示の部屋」では、会員の趣味の作品が展示され、コーヒーを飲みながら会員同士の会話が弾みました。「映像の部屋」では、昨年に続き沖縄のDVD『高江-森が泣いている2』が上映されました。そのほか「リサイクルひろば」、「ヒロシマ・ナガサキ・原爆と人間」の写真展示も行われました。



(原通範代表)

 メイン会場は、午後2時から原通範代表の開会挨拶でスタート。原代表は、安倍首相の目論見通り憲法改正を許したら、共謀罪で憲法フェスタも取り締まり対象になりはしないかと心配するが、そんなことをさせないように、私たちは学び活動を強め、安倍改憲を阻止しようと訴えました。



(戸台敏治さん)

 第1部は、和歌山県出身で、戦前の治安維持法弾圧犠牲者・戸台俊一氏の甥・戸台敏治さんが、東京で日本プロレタリア文化連盟(コップ)の活動をしていた戸台俊一氏が検挙されて、留置場で10カ月間も拷問を受けた事実を告発するとともに、自己の思想に誠実に生きた俊一氏の人間像を紹介されました。
 続いて、7月に国連で開催された「核兵器禁止条約交渉会議」に参加した白井春樹さんから、会議の様子やニューヨークでの行動内容の報告がありました。



(本秀紀さん)

 第2部は、名古屋大学大学院教授(憲法学)本秀紀(もと・ひでのり)さんが、「安倍政権の9条破壊を許さない~海外で戦争する『自衛隊』は認められない」と題して講演をされました。 本教授は「歌う憲法学者」として有名で、ギターの弾き語りで歌を披露されながら講演をされました。歌は「戦争を知らない子どもたち(替え歌付)」「兵士Aくんの歌」「島んちゅぬ宝」でした。
 先の総選挙結果について、選挙は民意を議会構成に変換するものなのに、小選挙区制により民意と乖離している。自民党の比例区得票率は33%なのに全体の議席は61%にもなっている。議席数を見ても真の民意はつかめない。民意は「安倍首相を信頼せず」が51%にもなっていると選挙制度の問題点を指摘。安倍改憲の内容は、「2020年を新しい憲法施行の年に。年内に改正案を示す。臨時国会が終る前に自民党案を提出したい」というものだ。本音は「新憲法制定」だが、かなりの部分は実質的改憲により実現しようとしている。自衛隊の「9条加憲」は、自衛隊を違憲とすると、9条2項と自衛隊の保持が矛盾するので、2項が「無効化」する。集団的自衛権を違憲と考えると、2項によって利いていた自衛隊への諸制約が緩和され、2項の「無効化」につながる。集団的自衛権を合憲とすると、「普通の軍隊」化が容易になると解説されました。9条破壊を許さないためには「民主主義を鍛え上げ」「安倍改憲の問題点と狙いを広める」「戦争法の発動阻止」「対抗的な平和構想の練り上げ」が必要と訴えられました。

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行き着く先は、普通の軍隊・戦争ができる国

9月20日、和歌山弁護士会主催の憲法学習会で、学習院大学教授(憲法学)・青井美帆さんが「安倍首相の新たな改憲提言について」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。

青井 美帆 氏 ③



 自衛隊の特殊性を実現していくためには、今の9条の加憲ではまだ途中段階だ。自衛隊が全世界規模で動くことを担保するためには、その先の改正が当然待っている。行き着く先は普通の軍隊、戦争ができる国というところまで改正の話は進む。理屈から考えても今の中途半端なところで終るはずがない。「書き込むだけ」というのは詭弁であるし、騙まし討ちだ。変わらないと言いながら変えてしまうということだけは決して許してはならない。
 政治は「1か0(ゼロ)か」の世界ではない。「気持ち」の問題が重要だ。そもそも「何故憲法が憲法なのか」を考えた時、それは私たちが「正当なものだ」とみんなが思っているからに他ならない。「みんなが思っている」は定量化出来ないので、「気持ち」の問題を押し出して議論するはかなり危険だ。安倍政治はこの部分を攻撃してきている。「みっともない憲法」とか言い、今は憲法に書かれていることを守らないことばかりを行なっている。憲法53条による臨時国会も召集しない上に、議論もせず冒頭解散する。憲法違反だ。政治が憲法に従わないことを国民に慣れさせようとしている。これが一番効果的な壊憲の手法だ。これでは力の政治になってしまうし、人の支配になってしまう。法によって縛られることを根本から否定してしまう。国家として一番やってはいけないことだ。憲法は最終的には私たちがどう思っているのかが支えている。9条についての解釈という理屈に加えて、国民の気持ちが一体となって、総体として日本の実力組織を統制してきた。理屈だけではなく、私たちの気持ちがなければ、この試みはうまく行かなかったはずだ。9条の下でいろんな現実が作られてきた訳だが、大きいものとして、「日米同盟」と「自衛隊」についての意見を分類すると、1つ目は「安保条約は破棄し、普通以上の軍隊に」、2つ目は「日米同盟は固守、普通の外征軍に」がある。さらに3つ目に「自衛隊肯定」、4つ目に「日米同盟疑問」、5つ目に「非武装平和主義」がある。言い換えると、1つ目は「やってしまえ」、2つ目は「国を守るためにはやむを得ない」となる。これまでの改憲とかの議論の軸はしばしば揶揄を込めて4つ目と5つ目の間におかれたりした。今真価が問われるのは、2つ目と3つ目の間ではないか。「戦争はしない」「国家のために殺されない・殺さない」という9条の価値観に対して、「国のために殺し合う・殺される」ことへの根源的疑問は3~5の立場は共通して持っているものだ。3という立場は今の living constitution(生きている憲法)の姿かもしれない。3~5の立場はいずれも日本国憲法が出発した時の価値観に立っていることに思いを致したい。「変わりません」と言いながら180度の転換があるが、正面から憲法改正をすべきだという理由が未だ説明されず、全体構造・青写真・未来像が示されていない。国民を議論の蚊帳の外へ置こうとしている人が、議論に加わってくださいと言う訳がない。外に追いやろうということにおかしいと声をあげるのは我々の義務だ。我々は主権者として、必要な手続き、必要な青写真、考え方、情報を提示すべきだと言うのはどんな立場に立つにしても共有できるはずだ。安倍改憲メッセージは「具体的な議論を始めなければならない時期に来ている」と言う。それでは、具体的な議論は提示されたのかというと、それはない。「私は、少なくとも、私たちの世代の内に、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきであると考えます」とも言う。これも具体的とは到底思えない。違憲かという議論が生まれるか生まれないかはポイントではない。自衛隊、防衛行政の説明の仕方が180度変わる、その変わる先が見えないので具体的な議論と言うべきではない。本来、実力組織を統制するということは、我々が9条の下で初めて立ち向かうような話でなく、明治開国以来の近代日本の課題でもある。それに今までうまくいった例がないし、まだ実現していないということにも思いを致さなければならない。軍隊の統制に失敗したのが大日本帝国憲法だ。その後、軍隊をなくしたということで、今、持っているのは自衛隊で、軍隊の統制にはまだ正面からぶつかっていない。実力組織をどうやって国家がコントロールするのかという問題が背後に常にある。国家の統治が存在し得るためには、後に暴力・実力が必要となり、これは課題だ。自衛隊というような言い方をすれば解消する問題ではない。従って大きな問題として控えているのは権力と政治、国家と個人のあり方、近代日本の課題が問われているのに、この問題を直視しないということでは、余りにも不真面目だ。結局のところ我々に問われているのは、「権力は制限されなければならない」ということを真に自分たちのこととして受け止められるかどうかで、ここを「大丈夫ではないか」と進んでしまうと後戻り出来なくなってからでは、あまりにも払う代償が大き過ぎることになる。(おわり)

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【九条噺】

 自民党が国会の与野党の質問時間の配分を見直すと言っている。何かと問題を起こす3年生議員が言い出し、現在の「与党2割、野党8割」を議席数に応じた配分を主張しているとか。菅官房長官も、「議席数に応じた質問時間の配分という主張は、国民からすればもっともな意見だ」と〝理解〟を示したそうだ。「国民からすれば」と言うが、いつ国民がそんなことを言ったのか▼彼らは立憲主義を理解しないだけでなく、議員内閣制という基本すら理解していない。議員内閣制とは国会の多数決に基づいて内閣(政府)が組織され、国会に対して責任を負う制度である。多数派である与党は政府と一体であり、政府が法案を作成する過程で議論する機会がある。与党議員が、了承した法案等の不備を指摘したり反対したりする訳がない▼与党と政府の方針は基本的に一致しているのだから、野党の質問時間を削ってしまったら、国会の国政をチェックする役割が果たせなくなり、国会が政府の翼賛機関になってしまう。だから、野党に多くの質問時間を保障するのが当然であり、今までも自民党はそうしてきた▼立憲民主党・長妻代表代行は「自民党が野党時代、強力に要請をして今の配分比となった」と言っている。自分たちが要求しておいて、今それを逆転させよとは何たる言い草だ。過去には与党議員が質問時間を持て余して、般若心経の一部を唱えたという馬鹿げた話もある。野党から、「暴挙」との声が上がるのは当然だ。(南)

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「9条の会共同講演会」開催



 11月4日、和歌山県JAビルで「9条の会共同講演会」が開催され、約150人が参加しました。
 この講演会は「九条の会・わかやま」が、紀北・西牟婁・東牟婁では「9条の会」などが共同して行事を開催しているが、和歌山市周辺では、それが行なわれていないので、共同で講演会を開催し「安倍改憲阻止」に取り組もうと呼びかけ、その呼びかけに応えた和歌山市と周辺の市町村の「9条の会」など26団体が共同で開催したものです。



 当日は名古屋大学大学院教授(憲法学)で「九条の会」世話人の愛敬浩二さんが、「自衛隊を憲法に明記させてはならない~安倍改憲を許すな~」と題して講演をされました。
 愛敬教授は先の総選挙の結果について、選挙制度の「効果」によって自民党は過剰な議席を獲得した。しかし、安倍首相の選挙での争点を隠す手法は、憲法改正国民投票では使えない。改憲勢力として希望の党に期待をしている。安倍首相の「9条3項加憲論」は「憲法の私物化」の極致であり、国民に向けて持論を展開するだけで、底の浅い情緒に過ぎない。「現状を1ミリも動かさない」条文が作れるのか、集団的自衛権行使を解禁した政府が新9条を厳格に解釈する保障はあるのかと指摘されました。(講演要旨については次号以降に紹介予定)

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(2017年11月14日入力)
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