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今回の総選挙で分かったこと
11月4日、「9条の会共同講演会」が和歌山県JAビルで開催され、名古屋大学大学院教授(憲法学)・愛敬浩二さんが「自衛隊を憲法に明記させてはならない」と題して講演されました。要旨を4回に分けてご紹介します。今回は1回目。
愛敬浩二氏①
総選挙で改憲動向にどんな変化が生じたのか。自民党と公明党で315議席、維新などを加えると衆議院で3分の2を獲得出来ているし、参議院でも改憲勢力が67.3%の163議席、衆参両院で3分の2を占めている。改憲案は衆参それぞれの3分の2以上で発議するので、現在は発議出来る正念場にある。希望の党は伸びず予想の半分しかいかなかった。反面、立憲民主党が伸び野党第一党になった。私は、意外な結論ではなく、自公で3分の2は取るだろうと思っていた。安倍首相が敗戦ラインを過半数に置いたことが驚きだった。今回の選挙では政権交代などあり得ない。どれだけ安倍政権の議席を減らすかが課題だと思っていたので、この結果は当然だと思っているし、がっかりもしていない。あの状況で総選挙をしたら、こういう結果になるのは残念だが、仕方がない面がある。変に落胆するよりは、こういう結論は仕方なかったことにしつつも、より積極的に評価すべきことが幾つかある。今回の選挙で明らかになったことは、自民党よりも右に行く野党が出てくると伸びないということ。12年の衆院選で安倍政権は圧倒的議席数を得たが、比例代表得票率は27.6%しかなく、今回より10%ほど少ない。維新の会やみんなの党がかなりの議席を獲得した。政権にあった民主党は57議席なのに、維新は54議席で野党第一党になりそうだった。ところが安倍自民党は非常に右寄りになり、現在の自民党は左振れしない政党になっている。05年と09年総選挙で物を言う政治家たちが自民党からいなくなり、12年総選挙で議席を増やした。小選挙区制では党公認でなければ当選しないので、執行部に楯を突くことは出来ない。自民党は税金で賄われている政党で、金も執行部が握っている。現在は幹事長と官房長官に権力が集中する形で、今自民党は小選挙区制と政党助成法で多様性がなくなっている。希望の党の見苦しい排除の動きが起きたのも、現在の制度では一定の政党の公認でないと当選しないし、大きな政党に入っていないと比例で復活当選が出来ないので、どこかの政党に付くことになる。政治を見苦しくしないためにも、今の制度は与党に余りにも有利なので、難しいとは思うが制度改革は必要だ。市民にとっての政治はこの程度のものでよいはずがないとの思いを持ち続けないと政治はよくならない。
自民党が多様性のない政党なのに、右に寄ってしまったので、自民党より右の野党は伸びる余地がない。維新は12年に54議席を取り、安倍自民は維新と連立を期待した。そうすれば公明に脅しが利く。ところが維新は伸びなかった。13年参院選では44人の候補者で8人しか当選しなかった。みんなの党も34人で8人だった。14年衆院選で維新は41議席、16年参院選では大阪維新28人で7人だった。プラスマイナスゼロで全く伸びていない。こころの党はゼロだった。次世代の党は2で、17減らした。選挙結果は数字だけ見てがっかりするのでなく、どこに可能性があるかを見る必要がある。もし、希望の党が自民より右に行くと伸びない可能性がある。ここ7、8年の選挙結果を見ると、自民党より右に寄れば安倍に投票した方がよい訳だから、極右でもない限り投票しない。国民はそこまでになっておらず、総選挙では安倍への支援も、彼の政策への支援でなく、安倍には賛成しないが、自民党が好きとなっている。世論動向を見る時、希望の党とかをもう一度左振れさせるかが重要な問題だと思う。小池氏には全く期待していないが、民進党から希望に移り悩んでいる人をどうやってもう一度元の鞘に戻すかは重要な問題だ。今回の選挙結果を14年と比べると、共産党が著しく減ったが、これの評価も14年総選挙で躍進した事実を確認しておく必要がある。乱暴な言い方をすると、議席数は元に戻ったことになる。09年、12年に比べれば数は増えている。14年に共産党が伸びたのは、民主党がはっきりとしていなかったからだ。民主党は13年末の特定秘密保護法に反対するプロセスで少し左振れが起り、決定的に左振れを起したのは15年の安保法案に対するプロセスだ。その前の14年の段階では、自民党も民主党も評価しない浮動票が共産党に流れた。今回、共同通信の調査では、無党派層の浮動票は30%が立憲民主党に行っている。これは圧倒的な数字で、自民党は無
党派層の浮動票は20%しか来ない。当然共産党の数字は減ることになる。だが、激減したから残念だと思う必要もないのかもしれない。このように政治情勢をまとめると、自民党は勝ち続けているにも拘らず、野党が自民党より右に行くと野党は伸びない。(つづく)
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議会制民主主義の危機が非常に高まっている
11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第14回憲法フェスタ」が開催され、名古屋大学大学院教授(憲法学)・本秀紀(もと・ひでのり)さんが「安倍政権の9条破壊を許さない」と題して講演されました。要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。
本 秀紀 氏 ①
憲法を変える時にはこれだけは守らなければならないものがある。立憲主義と民主主義は共通土俵で、どんな立場であれ、守ることが前提となる。安倍政権は共通土俵を破壊する政権として登場した。 立憲主義とは憲法に従って国は動き、憲法で国の構造を縛るということだが、安倍首相には守るつもりがない。そんな人が憲法を変えると言うのは意味が分からない。「では、変えた憲法は守るのですか」ということになる。守ることが前提で、「ちょっと不都合があるから、変える」ということになるはずだ。守るつもりもなく、憲法解釈を勝手に変えて、中身を別物にしてしまうような人が、憲法を変えますと言っても、それを真面目に取り合うこと自体がおかしな話だ。だが、相手は権力者だからどんどん進めてくるので、無視している訳にはいかない。
憲法が変わると、憲法違反の共謀罪などが憲法から見てもOKとなる。今ならこの法律はおかしいと言えるし、憲法は表現の自由や民主主義を定めているので、怖れることなく行動できる。それが萎縮して戦前のようにどんどん悪い方向に行ってしまう。今は日本国憲法があるから、萎縮することなく声を出して、正に日本国憲法が実現する社会を作っていくことが大事だ。
最初に確認したいのは、議会制民主主義の危機がここにきて特に高まっているのではないかということだ。日本の民主主義は国民主権だが、国民が直接統治するのではなく、代表者を選び代表者が国民の代りに動かしていく。だから、代表者が集まった議会がどうなっているかが非常に重要だ。ところが今、国会はあってなきが如しの状態だ。解散権の乱用問題があり、今回の解散は憲法の考え方に反している。菅官房長官や二階幹事長は、解散権は総理の専権事項だと、総理大臣は自由に好きな時に解散出来るかの如く言っているが、日本国憲法はそんな考え方を採っていない。憲法の考え方を権力者に守らせる仕組みがないので、好きなようにやっているだけだ。憲法研究者有志の緊急声明は、「衆議院の解散は、重要な問題について国民の意思を問うための機会としてなされるべきであって、国民の意思表明を求める必要があり、また選挙を通してその意思表明が行なわれる条件が整った場合に限られる」としている。総理大臣がいつでも好きなように解散出来るというのは決定的な間違いだ。今回の解散は「もりかけ隠し」「私利私欲」解散だ。最近の問題は著しい国会軽視だ。国会は国民の代りに政治を行う国民代表が集まっている機関だから、憲法41条は、「国権の最高機関」と定め、内閣などより位が上だとしている。しかし、安倍首相によって、あってなきが如しの扱いを受けている。憲法53条は、衆参どちらかの4分の1以上の議員が要求したら内閣は臨時国会を開かなければならないと定めている。6月に共謀罪を強行採決して、「もりかけ問題」を追及されないように、国会を延長せずに閉じた。野党から臨時国会の要求があったにも拘らず、期限が書いていないと一切応じなかった。形式的に憲法が禁止していないことを、憲法に明記していないことはやってもよいという論理だ。自衛隊を持ってはいけないと憲法に書いていないのに憲法に書くことと、論理は一貫しないのだが、そういう状態になっている。特別国会は総理大臣を指名するだけだから、来年まで国会を開かないつもりだった。そうすると、国民の代表機関、国権の最高機関が1年の半分以下しか動いていないことになる。国会軽視も甚だしい。今度は野党の質問時間を短くすると言っている。これは短くするとかいうことではなく、原則を変えて逆の状態にすることだ。最近の運用は野党8、与党2だが、これを議席に合わせ野党3、与党7にしようと言っている。議会は民意の縮図でなければならないから、政党の支持率通りの質問時間にするのはひとつの考え方だ。しかし、今日多くの国で、野党に多くの質問時間を与えている。国民の代表機関は、政府に対してその行動を監視し、チェック、コントロールする役割がある。国会で与党が出してきた法案や疑惑を追及する、それを国民が見て、おかしいと声を上げるために国会はあるはずだ。だから、野党に多くの質問時間を与えるのは、国会の役割からして当然のことだ。しかも、何故与党の質問時間を増やせと言っているのかというと、若手議員が地元で何故質問しないのかと言われるからだとか。落ち目の芸能人かと言いたい。さらに与党の質問は意味がない。疑惑を晴らすのではなく、「疑惑はないですね」と質問して、「その通り」という答えを引き出すだけだ。挙句の果てに、時間が余り般若心経を唱える者まである。これで質問時間を増やすと、落語を語る者まで出るかもしれない。与党の中からも政府が一方的に決めるので、党も議会もいらないと思っているのではないかという声さえ出ている。議会は国民の代表者だから、その向こうにいる主権者国民も軽んじていることになる。(つづく)
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【九条噺】
加計学園の獣医学部新設問題を審議していた衆院文部科学委員会で、日本維新の会の足立康史衆院議員が、自民党・石破茂元幹事長、希望の党・玉木雄一郎代表、立憲民主党・福山哲郎幹事長を名指しし、「犯罪者だと思っている」と発言し、朝日新聞の記事も「捏造」と繰り返したという▼犯罪と断定する証拠を何も示さず、「犯罪者」と言うなど国会議員としての資格は全くない。名指しされた石破氏は、「発言の挙証責任は足立氏にある。国会議員としての品位も問われ、信頼を失墜させる発言だ。論評にも値しないような発言を国会議員がすることに悲しみを禁じえない」と語ったという。全くその通りだ▼足立氏は翌日、「陳謝し、撤回したい」と述べたという。これなら、最初から嘘だと自白しているのと同じだ。しかし、朝日新聞の「捏造」は撤回しないという。朝日新聞は「発言は事実に反し、弊社の名誉を傷つけるものです。足立氏に強く抗議します」とコメントしている。足立氏は、国会で民進党に対し「アホ」と発言するなど、昨年だけで4回も懲罰動議を出されている常習犯だ▼この数日前にツイッターに「朝日新聞、死ね」と投稿していたという。「保育園落ちた日本死ね」を思い出す。でも、この2つは全く別物だ。「保育園」は、待機児童問題の深刻さを投げかけ、国民の共感を得て世の中を動かした。「朝日」は、何の根拠も示さない悪罵に過ぎない。足立氏には一刻も早く国会を去ってもらわねばならない。(南)
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第41回「ランチタイムデモ」実施
11月15日、41回目の「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、強風の中、70人が参加しました。 次回は12月8日(金)。
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