「九条の会・わかやま」 338号を発行(2017年12月17日付)

 338号が12月17日付で発行されました。1面は、那賀郡の会「第13回9条まつり」開催、9条加憲で 2項のブレーキはあってないのと同じ(本 秀紀氏③)、九条噺、2面は、「くまの平和ネットワーク」憲法講演会開催、5野党 市民連合と連携、1ミリも動かさない条文などあり得ない(愛敬浩二氏③)、3面は、第42回「ランチタイムデモ」実施  です。

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那賀郡の会「第13回9条まつり」開催



 12月9日に紀の川市桃山会館で、「第13回好きなんよ!9条まつり」を開催しました。例年は、11月に屋外で開催していたのですが、12月開催ということもあり、屋内のホールで開催しました。寒さも厳しい中、200名近い参加者で成功することができました。
 開会のあいさつで、「九条を守ろう」那賀郡の会の呼びかけ人の一人である増田博さんが、「私たちの世代が、戦争の悲惨さや平和の大切さを若い世代に引き継ぐためにもう少し頑張ろう」と訴えを行いました。
 平和のリレートークでは3人が発言してくれました。和歌山弁護士9条の会の重藤弁護士は、安倍首相率いる自民党は先の衆院選では大勝したが、9条改憲の支持を得たのではない。改憲の発議を許さない運動と、もし発議されたとしても国民投票では、国民の過半数がNO!という判断を下すように運動をしていこうと力強く訴えてくれました。そのほかの2人は、戦時中の和歌山空襲の話を聞いたことや沖縄問題、北朝鮮問題の話を分かりやすく伝えてくれました。
 舞台発表では、楽器の演奏や歌・ダンス、マジックショーなどを披露していただき、拍手喝采を得ました。恒例のビンゴ大会・抽選会などでも楽しむことができました。カンパも例年になく多く集まりました。
 「安倍9条改憲を許さない」那賀連絡会の事務局からは、全国統一署名は3000万筆目標で、那賀地方では30000筆の署名を目標としていることを提起し、各団体・地域で奮闘しようと訴えました。(会の部家司好さんより)

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9条加憲で、2項のブレーキはあってないのと同じ

11月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第14回憲法フェスタ」が開催され、名古屋大学大学院教授(憲法学)・本秀紀(もと・ひでのり)さんが「安倍政権の9条破壊を許さない」と題して講演されました。要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。

本 秀紀 氏 ③



 12年の自民党改憲草案は9条2項を削除し、「国防軍」を創設するというものだ。今までは9条2項があったので、様々な歯止めが軍事的な組織や活動にかかっていた。2項は戦力を持たないと言っているから、軍事的な組織は一切認められないのが本来の解釈だと思うが、その立場に立たなくても、2項があるから日本政府は自衛隊を戦力とは言えず、自衛のための必要最小限度の実力だと言って合憲化してきた。だから自衛隊は専守防衛で、集団的自衛権も行使できないとしてきた。これが、14年に安倍内閣が閣議決定で集団的自衛権の行使を合憲とするまでの長い間、自民党が採ってきた解釈だ。だから、日本は自衛隊を持っていても専守防衛で、攻められたら守るがそれ以上のことはしないと、外国から平和国家のブランドがそれなりに認められており、今のところ攻撃の標的にもなっていない。安倍内閣が解釈を変えたが、9条2項があることによって歯止めはかかっている。自民党はこれが邪魔だから取り去り、国防軍を作るとした。これは良いか悪いかは別にして、筋は通っている。自衛隊は憲法違反という立場に立てば、2項と自衛隊を持つという規定は憲法上矛盾した規定が併存することになる。2項によって自衛隊が出来ることに制約が掛かるはずだが、そうはならないだろう。今まで9条2項しかなくて、戦力は持たないと強いブレーキがあるにも拘らず、その利きが緩くなっているところに、新しく自衛隊正当化の根拠を置けば、どちらが強いかと言えば、当然自衛隊の方が強くなる。2項のブレーキはあってないが如しとなる。これが事実上の空文化である。船田元氏は「次は2項をなくす2段階論を深めるのが首相の考えだ」と言っている。自衛隊そのものは合憲だが、集団的自衛権行使は認められないという立場に立てば、自衛隊を明記すると、今までと同じで無意味と言えるが、自衛隊が入ることで今まで利いていた制約が緩和され、集団的自衛権の行使も2項があって、憲法違反と主張出来るはずだが、自衛隊が明記されることによってその主張が弱まることになる。2項によって抑えられてきた軍事費も増えることになる。安倍内閣のように自衛隊も集団的自衛権行使も合憲だという立場に立てば、今は集団的自衛権行使も限定的で、日本が存立の危機になって初めて集団的自衛権行使が出来ると言っている。2項があるから建前上そう言わざるを得ない。しかしおそらく、自衛隊を正面から認めることによって、その自衛隊は現状においては安保法制=戦争法で集団的自衛権行使が出来る自衛隊が憲法に書き込まれることになり、全面的な集団的自衛権行使など、より「普通の軍隊」化が容易になっていくのではないか。
 衆議院の当選議員へのアンケートで84%が改憲に賛成している。ただどの項目を変えるかということは、意見はバラバラだ。9条加憲は49%で半分にもなっていない。ところが緊急事態条項だけは3分の2を超えて69%だ。ここでまとまるとは言えないが、少なくとも、緊急事態条項を忘れて、9条加憲反対だけでがんばるのは、危ないかもしれない。
 9条加憲は2項があることによってブレーキそのものは外さないが、その利きはどんどん緩くなっており、自衛隊を正面から憲法の中に認めることで、さらにブレーキが利かなくなる状態になり、その自衛隊は安保法制で集団的自衛権行使も可能な自衛隊で、これを認めるかどうかだが、当然変えたい人たちは「今までと変わらない」と言い、「自衛隊は肩身の狭い思いをしているので、これをちゃんと認めてあげよう」と言って、一般の人たちに通りやすくするために言っている訳だ。実際にはそれがあることによって今までと同じように海外で戦争する自衛隊を憲法で正面から認めるのと、事実上同じような結果になる。果たしてそれでよいのかが問われることになる。どこに依拠するかだが、9条を変えるというのは1項、2項をそのままにすることを前提としても、賛成は少ない。世論調査でも安倍首相のもとでの改憲賛成は39.4%、反対は50.2%、9条加憲は、賛成38.3%、反対52.6%だ。大体、賛成する人は3割から4割弱で、反対する人は過半数だ。従って、国会内は選挙制度で変造された勢力分布になっており、そこでやっている限りは勝負にならない。本当の民意を国政に反映するようにしなければならないが、選挙はしばらくないとなれば、選挙以外の場できちんと民主主義を鍛え上げる必要があるだろう。(おわり)

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【九条噺】

 12月6日の「天声人語」は言う。「同じものなのに呼び名が違う例は少なくない」と。「肉まん/豚まん」「かけうどん/素うどん」「串揚げ/串カツ」「炊き込みご飯/かやくご飯」を例にあげている。前者が関東で後者が関西だ▼筆者も延べ11年間東京で生活したが、元々が関西人だから「かけうどん」はあまり使ったことがない。また、会話の場面では同じ「はし」なのに「橋」と「箸」は関東と関西とでイントネーションが全く逆になっている例もあった。今でこそ関東に住む関西人が堂々と関西弁で喋っていることも多いが、50年ほど前はそうでもなかった。「その箸取って」の一言で関西人だとバレたこともある▼そんなことはどうでもよいが、「天声人語」が問題にするのは「金額」と「価格」だ。森友学園問題に関り、特別国会で財務省の太田充・理財局長が「金額のやり取りはしたが、価格の提示はしていない」と答弁した。「金額」と「価格」はどう違うのか。広辞苑によれば、金額は「金銭の額」であり、価格は「物の値打を金額で表したもの」とある。どこが違うのか。関東であろうが、関西であろうが「金額=価格」だろう▼森友学園と「価格交渉はしていない」と言い張るための珍答弁だが、こんな答弁で国民が納得できる訳がない。疑惑を否定し続けた佐川宣寿氏は今国税庁長官に「出世」している。国民を納得させないで、こんな珍妙な答弁で幕引きを図ろうとするのを許す訳にはいかない。(南)

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「くまの平和ネットワーク」憲法講演会開催



 「くまの平和ネットワーク」の憲法講演会が12月9日、新宮市福祉センターで開かれ、約100人が参加しました。和歌山信愛女子短期大学・伊藤宏教授が「ゴジラとウルトラマンがあなたに伝えたいこと」とのユニークなテーマで、現憲法の大切さや魅力について話されました。
 映画「ゴジラ」第1作は、第五福竜丸事件が起った1954年公開で、戦争の影を引きずり、当時の社会問題が描かれた大人向けの映画だと説明されました。その後ゴジラは子ども向け映画となったが、公害がテーマになったり、「戦争で命を落した無念さ、愚かさを忘れた日本にモノ申しに来ている」との設定になったりもしていると話されました。「人間は終わった直後は戦争を繰り返すまいと思うが、また始めてしまう、憲法前文の精神を思い起こすためにゴジラが日本に現れる意味がある」「教育基本法前文から『平和を希求』の文言が削除され、ウルトラマンの言っていた人類の平和や世界の平和が、国家にとって都合のいい『正義』に変質されそうだ」「皆さんには自信を持って行動して頂きたい。ゴジラを人間の英知で上陸させないようにしないといけない」と話されました。(松原洋一さんより)

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1ミリも動かさない条文などあり得ない

11月4日、「9条の会共同講演会」が和歌山県JAビルで開催され、名古屋大学大学院教授(憲法学)・愛敬浩二さんが「自衛隊を憲法に明記させてはならない」と題して講演されました。要旨を4回に分けてご紹介します。今回は3回目。

愛敬浩二氏③



 06年頃、財界を中心に日本は余りにも平等で活力がないから競争的社会に変えるという議論があった。当時、新自由主義的構造改革のための改憲が提案されていた。自民党の04年の改憲草案は、国家の積極的な関与によって守られる生存権、社会権、労働基本権から基本的人権の性格をなくそうというものであった。ところがさすがに自民党でも小さな政府は憲法改正レベルでは言わなくなった。これは予想外に日本が格差社会化、貧困社会化が進んだからだ。日本でも貧困問題が深刻な社会問題化してしまって、今さら日本が平等過ぎるので改革しようとは言えず、この問題は改憲派も論じなくなった。2000年代初めに改憲派が望んでいた2つの国家改造の「小さな政府」は実現してしまった。
 今世界でグローバル格差社会が広がっている。OxfamというNGOのダボス会議向けの16年の報告書は、世界の資産保有額の上位62人の総資産が下位36億人の総資産に匹敵すると言う。15年の貧しい半分の総資産額は5年間で41%減少している。上位62人は44%増加している。急速にグローバル格差社会は進んでいる。さらに最近、政治家はポピュリズムに走る。典型例はトランプとEU離脱だ。トランプは労働者の味方だと言いながら富裕層が利益を得る法人税減税をしようとしている。トランプも富裕層で労働者の味方である訳がない。しかし、民主主義社会では労働者を巻き込んで政権をつくらなければならない。その時、誰を敵にするかだが、ひとつは外国人、もうひとつは弱い人の味方をするリベラルだ。かつて製造業に勤めそれなりの生活をしていた人で、製造業が外国にどんどん出て行き、就く仕事がなく落込んでいる人たちがいる。今、あなたたちを守ると言いながら、グローバル経済をさらに進める政治家がたくさんいる。イギリスのEU離脱の問題でも、保守党は、EUに多くの金を使い、外国人労働者が来て、職を奪っていると言った。選挙のためにポピュリズム的な形で支持を獲得しつつ、グローバル格差社会の進展に関る政治家は、嘘をつかざるを得なくなる。世界はこういう状況で、安倍政権はこの流行に乗っている。財界も安倍首相に何も言わず、盲目的に従っている。それは安倍首相が進めている方向がよいと思っているからだ。安倍首相が進めようとしている道は9条の問題だけではない。
 9条3項加憲論は、周到で無敵な計画ではない。「安倍首相の憲法改変発言は、悲願と言われる割に軽い。彼には国民に向けて持論を展開するだけの論理はありません。あるのは底の浅い情緒だけです」という高村薫さんの分析が一番正しい。何故急いだのか、それはこの10月の総選挙がなければ総裁任期は18年12月まで延ばせるが、総選挙を10月にやった。安倍首相は来年の総裁選で再任されても21年9月までだ。すると彼が9条改憲を実現するためには、もし、民進党の体たらくや北朝鮮問題がなければ、3分の2を取れたかどうかは分からない。3分の2を取れなければ自分の任期中の憲法改正は無理になる。そうすると18年12月より前に憲法改正発議をしたかった。発議をするためには17年秋に自民党の改憲案を提案し、18年1月からの通常国会で予算を作ったら、憲法改正案の議論に入り、3~4カ月議論させて、夏に発議して国民投票をする。18年の総選挙より前か同時に国民投票をしたいからだと思う。何故、夏休みまでに改憲案を出さねばならないかというと、国民投票法は発議後60~180日を要求している。最初の改憲は、60日は無理で120日ぐらいは必要だろう。そうするとタイムリミットは7月末になる。そうすると4月末までに何とか改憲案を出して、18年の総選挙時に国民投票にかければ、何とか改憲出来ると踏んだと思う。それでも自分が総裁の時に改憲を実現したと言えないから、たまたまオリンピックがあるから「20年施行」と言うと、「18年投票」ということが非常に分かりやすくなる。周到ではなく底が浅いが、非常に危険な提案だ。安倍首相には情緒はあるが、国家観はない。過大評価をしないことだが、野蛮な情熱を持っている危険な人間だ。国家観があって、それとの関係で周到に考え抜いて行動するのではない。
 まず、現状肯定のための9条改憲はあり得ない。もともと、1ミリも動かさない条文などあるのか。以前の政府解釈は9条2項の戦力不保持との関係で、50年ぐらいかけて積み重ねてきた政府解釈の帰結として集団的自衛権行使は違憲だという基準だった。それを7・1閣議決定で取り払った。結果、今政府には「出来る/出来ない」の基準はない。現在の政府解釈を前提にすると、基準はないのだから、1ミリも動かさない条文はあり得ないということになる。今の政府解釈はやってよいことと悪いことがはっきりしていない。はっきりしないものを基準にすることは出来ない。百歩譲って線を引くことが出来て、それを動かさないという条文を作るとしても、それを守る可能性はない。9条2項という明確な条文の下であっても解釈を変更した訳だから、新たに条文を作っても必要があれば変える。結果、1ミリも動かさない提案はあり得ないし、信用出来ない。「本当に動かさないなら条文を作ってみろ」と言うことが重要だ。(つづく)

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5野党、市民連合と連携



 民進、立憲、共産、自由、社民の野党5党幹部は7日午前、安全保障関連法に反対する団体「市民連合」と衆院議員会館で会合を開き、安倍晋三首相が唱える憲法9条改正の国会発議阻止に向けて連携していくことを確認した。今後も協議を重ね、2019年の参院選に向けた共闘につなげたい考えだ。
 先の衆院選で、立憲、共産、社民3党と市民連合は、首相が提唱する9条改憲に反対することなどで合意。こうした政策面での協力関係の維持、発展を目指す。来年2月の沖縄県名護市長選での連携も模索する。
 7日の会合は市民連合が呼び掛け、民進党の福田昭夫幹事長代理、立憲の福山哲郎幹事長、共産党の小池晃書記局長らが出席した。希望の党については「立憲主義に反する安保法制を肯定している」として招かれなかった。(時事ドットコム12月7日付)

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第42回「ランチタイムデモ」実施



 76年前に太平洋戦争が始まった日である12月8日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかけた「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、100人が参加しました。
 和歌山市役所前での出発にあたり藤井幹雄弁護士は、安倍政権の戦争する国づくりを批判し、再び戦争する国にしてはならないと訴えました。参加者は「憲法壊すな」「安倍改憲絶対反対」などを訴え京橋プロムナードまで行進しました。
 次回は1月17日(水)です。

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(2017年12月16日入力)
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