「九条の会・わかやま」 339号を発行(2018年01月01日付)

 339号が1月1日付で発行されました。1面は、和歌山市で青年たちがデモ 、9条運動はオーバーラップする合意で(愛敬浩二氏④)、九条噺、2面は、みなべ「九条の会」が街頭で呼びかけ、安倍政権の下での憲法改正  です。
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[本文から]

和歌山市で青年たちがデモ



 青年たちが呼びかけた「政治をなおそうデモ2」が12月10日、和歌山市で行われました。
 「私たちは、デモを特別なイベントではなく生活の一部として、和歌山の文化のひとつとして広めていきたい」という青年たちが、「この街、日本、世界をほんのちょっとでも良くするために私たちはどう考え、何をしたらいいのか」と考え、計画されたものです。  約1時間30分のコースで、前回と同様にシュプレヒコールはなく、先導車(サウンドカー)の荷台をステージとして、代る代るスピーチを行っていくというスタイルのデモでした。
 この日は、「世界人権宣言」が1948年12月10日に国連で採択されたことを記念して「人権デー」と定められた日ということもあり、「人権を考える」というテーマで、「在日コリアン」「子どもの貧困問題」「難民問題」などのスピーチが続きました。
 実行委員長の服部涼平さんは、ハンセン病患者への差別の例をあげながら、「命が軽んじられ、人権の尊重がなされず、社会的弱者という言葉が存在する社会、19人の命が奪われた相模原事件、在日コリアンへのヘイトスピーチ、沖縄や岩国など民意を無視して作られる米軍基地、福島から避難した子どもが転校先の学校でいじめにあっている、結婚したら慣れ親しんだ名字をどちらかが名乗れなくなる制度、同性愛者は法的に結婚できない、学費が高くて進学をあきらめる高校生、挙げたら切りがない人権侵害の数々。この人権侵害が平然とまかり通る社会の向かう先は、あなたや僕の人権が侵されていく未来です。しかし、僕ら市民には、状況を変える力がある。和歌山から声をあげましょう。デモには参加者の数が絶対に必要です。運動主体の数の可視化は、市民の思いの可視化です」と訴えました。
 今回は和歌山大学の学生の参加者が2~3人というレベルから確実に多くなり、参加者は、和歌山大学が前面に出て大変心強いと話していました。

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9条運動はオーバーラップする合意で

11月4日、「9条の会共同講演会」が和歌山県JAビルで開催され、名古屋大学大学院教授(憲法学)・愛敬浩二さんが「自衛隊を憲法に明記させてはならない」と題して講演されました。要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目で最終回。

愛敬浩二氏④



 既に安倍提案を軍事大国化のための解釈改憲や明文改憲への呼び水として喜んでいる人がいる。斎藤隆氏(元統合幕僚長)は「2項が維持されれば、自衛隊は陸海空軍とは切り離された特殊な存在であり続ける可能性はある。しかし、根拠規定が明記され、合憲と整理された後に、軍隊とは何か、自衛隊とどう違うのかなどのかみ合った議論につながっていくのではないか。軍事法廷の要否、戦死者の問題、本格的な集団的自衛権に踏み込むべきか否かなどの論点もある」と、ここまで行くと述べている。戦死者の問題とは靖国神社公式参拝のことだ。今、自衛官は敵前逃亡しても自衛隊法違反で通常裁判所で処罰されるか、懲戒免職だ。こんなに優しい軍隊はない。だから軍事法廷がないと機能しない可能性がある。自民党改憲案には国防軍に軍事審判所を置くとある。これがないと海外で軍隊として機能出来ない。安倍首相は深く考えていないかもしれないが、これを利用して一気に強い国家に転換させようという人もいる。従って、9条3項加憲論は止めなければならない。
 9条運動の課題として、オーバーラッピング・コンセンサスを提起したい。みんな意見が違っても、オーバーラップする合意はあるというコンセプトだが、利害・価値観多元化社会でみんなが共同生活をしようと考えたら、信教の自由、表現の自由などは互いに尊重しようというコンセンサスが出来るはずだ。現代の日本の平和主義にもオーバーラップするコンセンサスはあると思う。それは、日本の平和・安全が危機に瀕していないにも拘らず、自衛隊が海外で武力行使をすることの憲法的禁止だと思う。この中には自衛隊合憲論者も含まれる。但し、ここでコンセンサスがあるからと言って、左に振れさせようという運動がなくなってはいけない。
 戦後の平和運動を見る時、違憲論と合憲論のせめぎあいの均衡点としての政府解釈が重要だ。7・1以前の政府解釈の集団的自衛権行使は違憲というのは、政府が将来のことをよく考えて作ったのではない。1954年の自衛隊発足時から国会内に3分の1の憲法改正反対の野党があり、国民的支持があったからだ。強力な9条違憲論にたった野党があったから、内閣法制局はそれとの対抗で解釈を積み上げてきた。違憲論と合憲論の均衡点の中でぎりぎりで作ってきた解釈だ。だから内閣法制局だけに期待するのは間違いだ。戦後日本の平和運動は、9条の平和主義だけに頼って成長してきたものではない。反基地運動、反核運動という生活に根差した運動が憲法9条という理念と結び合って成立してきたものだ。単に第2次世界大戦の反省だけで9条がある訳ではない。だから、広島、長崎、沖縄、福島、という政府の無責任さの記憶を語り、戦後の反核運動、反基地運動の成果として均衡点がある。ある時期日本は自分の安全だけを考えてけしからんと批判されたが、今は巻き込まれ危機意識さえなくなってきている。ミサイルがアメリカに向けて飛ぶとJアラートが鳴るのは、アメリカの戦争に巻き込まれる状況だ。韓国大統領はアメリカが北朝鮮を攻撃する場合は韓国政府の承諾を得よと言っている。安倍首相がこういう交渉をしたという話は聞かない。今こそ巻き込まれ危機意識は重要で、安全保障で現実主義なのだということで再構築する必要がある。
 9条改憲国民投票が行われるかもしれないという危機感を持ちつつ、我々がきちんと運動をしておくと、国民投票をする以上勝たなくてはならないから、勝てる状況がなければ国民投票は行わないかもしれない。選挙制度と政党助成金で民意が国政に反映されなくなっているので、民意をどのように国政に届けるかが課題だ。単純に政権交代可能な野党を作るという形で野党共闘を矮小化してはならない。そうしたら、保守2大政党でもよい訳だから。国政に反映されない民意をどう国政に届けるかという問題だから、今後の課題は如何に希望の党を左振れさせるかが重要になる。立憲民主党の合意も得ず国民投票に突入すると、ヘタすると五分になるかもしれない。改憲派は「否決され、自衛隊がなくなってもよいのか」と言う。イギリスのEU離脱のように、二者択一をする場合、政治家はとんでもない嘘をつく。そういう脅しをかけることで「自衛隊が残らないと困る」という人たちを引っ張り込もうとする。安倍改憲が否決された場合の帰着点は7・1閣議決定の前の状態に戻すべきだと立憲民主党は主張すべきだ。これだと、自衛隊を認める人たちも賛成する。しかし、全員がその論調になってはいけない。違憲論と合憲論の均衡点としてある訳だから、自衛隊合憲論者を中道にするためにも左に引っ張る人がいなくてはいけない。やはり武力によらない平和、最終的には自衛隊違憲論、廃止まで行くという希望を持って運動する人たちがいることが非常に重要だ。そのことを踏まえ、少なくとも我々は自衛隊違憲論に立ちつつ、最低1990年代まで戻すこと、即ち、海外派兵は全面禁止を主張する。ここまで戻すということによって、立憲民主党をより左振れさせる。海外派兵全面禁止と言うと、自衛隊違憲論と整合性が高い。共産党は立憲民主党とは違うが、協力出来るという形でやっていく必要がある。私たち一人一人が何故9条改憲に反対なのか、平和憲法に賛成なのかを自分の言葉で自分のストーリーとして語ることが重要だ。そうすれば市民社会のレベルで9条改憲に反対する動きが出てきて、そうすれば立憲民主党もこういうラインで闘うだろうし、共産党も安心して闘えるだろう。結果、国民投票さえ出来ないかもしれないし、そういうようにしていかなければならない。(おわり)

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【九条噺】

 安倍政権の強権的運営に眉をひそめることが多いが、今回は巡航ミサイル問題を取り上げる▼毎日新聞12月22日付クローズアップ2017に「長射程巡航ミサイル導入へ」「敵基地攻撃も可能」「揺らぐ専守防衛」の大見出しで「トランプ政権が追い風」とも加えた。18年度予算案に航空自衛隊の戦闘機に搭載する長射程巡航ミサイルの関連経費22億円を計上した件▼安倍首相は12月1日、導入の必要性を説明した小野寺五典防衛相に「国会は大丈夫なのか」と問う。日本海から北朝鮮に届く長射程で、「専守防衛」との整合性が年明けの通常国会で問題になる。防衛相は「自衛隊員の安全を確保しつつ日本を防衛するため必要」と訴えて、首相も理解を示した▼記事から論建てを察するに、①ミサイル全般の性能向上で射程の長さからは攻撃用か防衛用か言えず、自衛のために長い槍を持つだけ、②敵地攻撃はアメリカにゆだね、日本は防衛を分担する、③ミサイル搭載だけでは現在の戦闘機や衛星情報の技術的制約から敵地攻撃はできない、等が考えられる▼しかし、安保法制の下で日米分担論は根拠薄弱だ。また、技術的制約はすぐに解決できる。だから、射程の長さで攻撃用と断言できないとするのはもっともらしい詭弁だ▼ちなみに、技術的制約があるなら長い槍にならず矛盾と突っ込むのは本題からそれる。なぜ今、長射程巡航ミサイルかの答は「敵地攻撃」だ。このような憲法違反の危険な軍拡はやめるべきだ。(柏)

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みなべ「九条の会」が街頭で呼びかけ



 みなべ町のみなべ「九条の会」(柳田孝二代表)が12月10日、町内で「憲法9条を守ろう」と呼び掛ける街頭活動をした。
 同会によると、町内の7団体が11月に「憲法9条を守ろうみなべ町民の会」を立ち上げた。全国で3千万人の署名を集める活動が進められているのに合わせて、町内でも来年5月末までに3千人の署名を集める目標で、署名用紙を全戸に配布する予定だという。
 この日の街頭活動は、月1回しているものを規模を大きくしての実施。同町東吉田の交差点にメンバー約20人が集まった。「戦争への道につながる集団的自衛権行使はノー」などと書いた横断幕や旗を掲げ、マイクで「終戦に当たり、日本は二度と戦争はしない、戦力は持たないと世界に誓いました。その誓いが憲法9条です。安倍政権は2020年オリンピックを新しい憲法で迎えたい。憲法も変えたいと言っています。大変なことです。みんなの力で戦争につながる憲法9条の改悪をやめさせましょう」と署名への協力を呼び掛けた。(紀伊民報12月14日付)



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安倍政権の下での憲法改正



共同通信世論調査(12月3・4日実施)

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