「九条の会・わかやま」 340号を発行(2018年01月14日付)

 340号が1月14日付で発行されました。1面は、9条改憲 「必要ない」53%、北朝鮮問題に憲法9条改正で対応できるのか【井上正信弁護士のQ&Aより抜粋】、九条噺、山の作家『熊野木遣節』出版 当会呼びかけ人 宇江敏勝さん、言葉「巡航ミサイル」、書籍紹介『ピンポイントでわかる自衛隊明文改憲の論点』 だまされるな!怪しい明文改憲  です。
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9条改憲、「必要ない」53%



 本社加盟の日本世論調査会が先月9、10両日に実施した憲法に関する世論調査によると、戦争放棄や戦力不保持を定める憲法9条の改憲について「必要はない」が53%で過半数となった。「必要がある」は41%。安倍晋三首相が加速を促す改憲の国会論議には、67%が「急ぐ必要はない」と答えた。一方、9条に限らず、憲法を「改正する必要がある」「どちらかといえば改正する必要がある」と回答した改正派は55%で、2016年2月の前回調査(54%)と横ばいだった。
 首相が9条への自衛隊明記案を提唱し、自民党をはじめとして議論が活発化しているが、世論と温度差があることが浮き彫りになった。
 安倍首相の下での改憲に53%が反対し、賛成の39%を上回った。昨年10月の衆院選で改憲が争点だったかを尋ねたところ「争点だったとは思わない」は70%に上った。
 9条改憲の必要があると答えた人に重視すべき点を聞いたところ「現在の自衛隊の存在を明記するべきだ」が54%で最多だった。9条に限らない憲法改正派に理由を問うと、64%が「憲法の条文や内容が時代に合わなくなってきているから」と回答。「新たな権利や義務などを盛り込む必要があるから」が25%で続いた。
 改憲で議論すべき対象(3つまで回答)は「九条と自衛隊」が62%でトップ。2位以下は「緊急事態条項の新設」36%、「教育無償化を規定」29%、「知る権利・プライバシー保護」22%、「天皇制」22%など。
 改憲を「必要はない」「どちらかといえば必要はない」とした反対派は38%(前回40%)。その理由として、38%が「戦争放棄を掲げ、平和が保たれている」を、31%が「改正すれば『軍備拡張』につながる恐れがある」を挙げた。憲法問題に「関心がある」「ある程度関心がある」は計72%で、前回より微減。19年夏の参院選までに国会が改憲の「発議をするべきだと思う」は52%に達した。(東京新聞1月3日付)

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北朝鮮問題に憲法9条改正で対応できるのか
【井上正信弁護士のQ&Aより抜粋】


憲法9条改正と北朝鮮問題との関連は

 北朝鮮問題は憲法9条改正と常に結びつけられてきましたが、80年代の有事法制研究は、78年日米防衛協力の指針を具体化するためでした。99年周辺事態法は、97年改訂日米防衛協力の指針を具体化するものでした。03年、04年の有事法制も97年改訂日米防衛協力の指針を具体化する内容です。15年安保法制は14年新日米防衛協力の指針を具体化するものでした。このように見ると、憲法9条改正問題は、常に日米安保体制、日米同盟の強化と不可分の関係であったとも言えるでしょう。

北朝鮮の脅威は9条改正の理由になるのか

 北朝鮮脅威は憲法9条改正とは無関係なはずです。9条改正は我国と日米同盟の抑止力を強化するためですが、そのような改正をしてみても、抑止が効かない北朝鮮の核・弾道ミサイル開発は解決しないからです。
 そもそも世界最大・最強の軍事国家である米国でも北朝鮮の核開発と弾道ミサイル開発を止めさせることができませんでした。憲法9条を改正して日本がこれまで以上に軍事力を強化し、日米同盟の抑止力を強化してみても、北朝鮮を抑止できるはずはありません。
 北朝鮮脅威論は憲法9条改正に都合の良い口実として使われているだけです。問題は憲法9条にあるのではなく、我国の北朝鮮政策にあります。対話を拒否した制裁強化と軍事的抑止で北朝鮮の核開発や弾道ミサイル開発をやめさせることはできません。しかもこれは武力による威嚇を含む政策ですから、憲法9条に真っ向から反する政策です。

北朝鮮脅威論にどう向き合えば良いのか

 北朝鮮の脅威として語られているのは、弾道ミサイルと核兵器の脅威です。しかしこれらは北朝鮮問題から派生した問題に過ぎません。本当の脅威は、朝鮮半島での大規模武力紛争です。さらに、トランプ政権と安倍内閣の北朝鮮政策も脅威を構成します。さらに核兵器の存在が現実的な脅威となっています。核抑止力・拡大抑止力(核の傘)が、平和と安全を維持するのではなく、真逆の核兵器使用の脅威となって現れています。
 私たちが北朝鮮の脅威に向き合う場合に、大前提に置くべき条件は、絶対に武力紛争にしてはならないとの強い意志です。朝鮮半島で大規模武力紛争が発生すれば、朝鮮半島は核兵器による被害を含めて、破滅的な被害を受ける可能性があります。日本は米軍の後方支援と前進基地として、自衛隊と日本の総力を挙げた米軍支援がなされます。その結果北朝鮮からの核攻撃を含む弾道ミサイル攻撃も想定しなければなりません。
 北朝鮮の脅威を軍事的抑止力と制裁の強化で解決するのか、それとも北朝鮮との外交交渉で解決するのかという2つの路線の対立があります。どちらの途も北朝鮮の脅威を削減する、なくすることを目指しているはずです。その選択肢としては以下の3つをあげることができるでしょう。
 ①北朝鮮の脅威を物理的に破壊、一掃する。この方法は国連憲章と現代国際法の下では取りえません。北朝鮮がいかに脅威であっても、米国や日本に対して武力攻撃を行っていないので、自衛権行使はできません。中国との武力紛争のリスクもあります。さらに、金正恩政権崩壊後の朝鮮半島やその周辺での混乱が北東アジアの国際関係に及ぼす想定外の影響もあります。
 ②軍事的抑止力を高めて北朝鮮の脅威を封じ込める。安保法制と憲法9条改正の立場です。これが成功する見込みはありません。失敗すると武力紛争になるリスクが高いものです。軍事的緊張が高まる中で、双方が互いの意図を読み違えた結果偶発的な軍事衝突から本格的な武力紛争になることが懸念されます。
 ③外交手段で相手の脅威を削減する。経済制裁は外交手段の一部です。しかしこれだけでは成功する見込みはありません。北朝鮮との対話を通じて北朝鮮に対する「安心の供与」で解決しなければなりません。「安心の供与」とは、こちら側が北朝鮮の脅威にはならないと確信をさせる外交のことです。

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【九条噺】

 NHKによれば、ユニセフのレーク事務局長が日本の子どもの貧困率が先進国でも高い水準だと懸念を示し、格差解消に向けて教育などの機会の平等を確保すべきだという考えを示したという▼そして、国連の世界の持続可能な開発目標「SDGs」が、あらゆる貧困の解消を掲げているにも拘らず、日本の子どもの貧困率が先進国の中でも高い水準にあり、「日本のおよそ16%の子どもが深刻な貧困状態にある。とりわけ豊かな社会で子どもが飢えや格差に苦しむことがあってはならない。その原因の多くは医療と教育の不平等にある」と懸念を示したという▼日本の子どもの貧困は「途上国並み」と断じられたに等しく、由々しき問題と言わざるを得ない。1970年代、「一億総中流」という言葉があった。国民の大多数が「自分は中流」と思える社会だった。「総中流」こそ良い社会ではないのか▼愛敬浩二教授は、06年頃、財界から日本は余りにも平等で活力がないから競争的社会に変えるという新自由主義的構造改革の改憲が提案されたが、予想外に日本の格差社会化、貧困社会化が進み、今さら日本が平等過ぎるので改革しようとは言えず、憲法改正レベルでは言わなくなったと言う▼安倍首相は国会で「子どもの貧困対策は未来への投資であり、国を挙げて推進していく」と言ったはずだ。アメリカから2基2000億円もの「イージス・アショア」を買う金があるなら、子どもの貧困対策に回すべきではないのか。(南)

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山の作家『熊野木遣節』出版
当会呼びかけ人・宇江敏勝さん




 田辺市中辺路町で文筆活動を続け「山の作家」として知られる宇江敏勝さんが7冊目の民俗伝奇小説集「熊野木遣(きやり)節」(新宿書房)を出版した。
 宇江さんは県立熊野高校を卒業後、炭焼きや林業の仕事をしながら文学を学び、小説やエッセーなどを執筆してきた。近年は、若いころに熊野の古老から聞いた話や山暮らしの体験を基に民俗伝奇小説をシリーズとして書き、年1冊のペースで出版している。
 今作は、山深い集落の伝統的な暮らしが時代とともに移り変わり、失われていく様をテーマにした短編7編を収録した。
 表題作の「熊野木遣節」は、熊野の山中から切り出した木材を川に流して運ぶ男たちの仕事を描いている。「七はぎの産着」は、健やかな成長を祈って山の神の前に子を捨てる習俗を軸に、戦前から平成にかけての生活と家族の変遷、子や孫に注ぐ愛情を著した。
 他に、不思議な体験や動物との関わりを記した「神かくし」「あなぐま」「狼(おおかみ)のはなし」、雨水だけで稲を育てる「天水田」、果無山脈の山の仕事場で働く男女の交流の物語「いただきの女たち」も収めた。
 宇江さんは「かつて熊野の山奥にあり、今は失われてしまった習俗や産業、熊野弁などを味わってもらえれば」と話した。
 四六判241ページ。2200円(税別)。
(毎日新聞和歌山版12月18日)

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言葉「巡航ミサイル」



 政府は、航空自衛隊の戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載するための調査費を予算案に計上する方針を固めました。しかし、射程が長いため「敵基地攻撃能力」として使用することが可能です。政府は今まで、自衛隊は日本が攻撃(侵略)された場合、それに反撃するための「実力」だと言ってきました。ならば、何百㎞も先を攻撃できる巡航ミサイルが必要なのでしょうか。
 政府が導入を目指すのは、「JSM」「JASSM-ER」「LRASM」の3種類。
 巡航ミサイルは、主にジェットエンジンで推進する無人誘導の有翼ミサイルで、低空飛行するためレーダーに捕捉されにくく、水平面での動きも蛇行を繰り返しながら飛んでいきます。これは相手が予想していない側面や後ろからの奇襲攻撃をする目的と、速度が遅いので弾着までに敵艦が移動しており、自分で探しに行かなければならないという理由からです。
 政府は敵基地攻撃能力の保有も視野に入れ、「日本版トマホーク」といえる長距離巡航ミサイルの「国産化」を検討していることが分かっています。

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書籍紹介『ピンポイントでわかる自衛隊明文改憲の論点』
だまされるな!怪しい明文改憲




2017年10月22日の総選挙でも、改憲勢力が国会の3分の2以上を占めた。憲法改正発議・国民投票がいよいよ目前に迫ってきたのではないか。すでに明らかになった自民党改憲4項目(9条への自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、参議院合区解消)を検討し、そこに潜む問題点を洗い出し、改憲について熟慮し、発言するために知力をつける。
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発行所:㈱現代人文社   TEL:03-5379-0307
    FAX:03-5379-5388 メール:hanbai@genjin.jp
   著 者:清末愛砂(編)、飯島滋明(編)、髙良沙哉(編)、池田賢太(編)
出版日:2017年12月05日
価 格:900円+税

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