「九条の会・わかやま」 347号を発行(2018年05月02日付)

 347号が5月2日付で発行されました。1面は、青法協憲法記念行事「憲法を考える夕べ」開催 前川喜平氏ら講演、自衛隊加憲は新たな改憲の始まり(三宅裕一郎さん②)、九条噺、2面は、第46回「ランチタイムデモ」実施、「和歌山障害者・患者九条の会」春の交流会開催、「戦争はイヤ!憲法9条を守る和歌山市南の会」結成  です。
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青法協憲法記念行事「憲法を考える夕べ」開催
前川喜平氏ら講演




 4月27日、青年法律家協会和歌山支部主催の「憲法を考える夕べ」が和歌山県民文化会館・大ホールで、1500名が参加して開催され、「これからの日本 憲法と教育の危機」と題して、前文部科学事務次官・前川喜平氏と京都造形芸術大学教授・寺脇研氏の講演とディスカッションが行われました。
 前川喜平氏は、加計学園問題の本質は権力者たちが権力を私物化したことに尽きる。一般的に禁止されている獣医学部の設置の特権が始めから加計学園に与えられることになっていた。特定の人の利益のために「国家戦略特区」という制度を使ったということだ。ライバルを排除するために後付けで条件を付け、実質を審査することなく排除した。2015年4月2日に加計学園の事務局長と今治市の企画課長らが内閣府と首相官邸を訪れて首相秘書官らに会ったことが今治市の文書に正直に書かれている。まさに加計ありきがはっきりと分かる。しかもそれが「首相案件だ」と言っている。加計学園問題については記録がないことではとても否定できない。国政私物化が明らかになった。これでもこの内閣を支持するのかと言いたいと指摘しました。
 今、憲法は岐路にある。頂点にいるのは安倍氏だが、安倍氏に付いて行くのか、違う方向に行くのかということだ。自民党は憲法改正は党是だと言うが、以前は多様性のある政党だった。今はフランスの極右政党と同じだ。1980年代の中曽根内閣から教育基本法改正の動きがあった。これは憲法改正とセットだ。憲法と教育基本法は一体のもので、教育基本法は準憲法的法律と言われた。2006年に改正されたが、元の前文には「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」としている。第一次安倍内閣によって教育基本法改正が憲法改正の前段階として行われた。全体として個人を軽んじ、国家を重んじる方向にあるのは間違いない。第二次安倍内閣では道徳の教科化が行われた。ひとつの道徳的価値に子どもたちを無理やり誘導するものだ。個人の尊厳を自覚し、それを侵すものを許さないことが必要だが、これは教師と生徒、親と子にあっても本来必要なものだ。もう一つは学校、家族、郷土、国家などの集団への帰属が重視され、個人の尊厳がなくなってきている。
 憲法に対して危機感を持っている。憲法を作っているのは主権者国民だが、憲法を知らない国民が多い。今もこの会場の外には憲法を知らない人が何万人もいる。その人たちに憲法を自覚的に考えて判断する力はあるのか。ナチスのように国民が知らない間に憲法が変えられてしまう、そういうことが起こりかねない。その序章が教育基本法改正で、教育を国家主義的な方向にもっていこうとしている。ここでそれを押し止めないと、もっと暴走していくことになると、危機感を表明しました。

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自衛隊加憲は新たな改憲の始まり

 3月24日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第14回総会で、三重短期大学教授(憲法学)・三宅裕一郎さんが、「憲法9条が果してきた役割 ~『自衛隊』の明記によって何が変わるのか~」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

三宅裕一郎さん②



 自衛隊加憲で可能になることの4点目は、自衛隊のための土地収用が拡大する可能性が出てくること。現在「自衛隊のための土地収用」は「公共の利益となる事業」とは明記されていない。自衛隊が憲法に書き込まれたら、自衛隊の正当性が認められ、憲法29条3項の「私有財産は、…公共のために用ひることができる」の「公共」の中に自衛隊が含まれて、自衛隊のための土地収用が合憲となる。
 最後に、自衛隊加憲はゴールではなく、さらに新たな改憲が必要で、軍事的改憲への呼び水となるという問題を含んでいる。新たな改憲への「終りの始まり」に過ぎない。他国並みの活動が自衛隊に可能になれば、軍隊に不可欠な軍事裁判所の設置が必然的に求められる。軍隊だけに適用される軍法という特殊な法体系を適用する特別な裁判所が軍法会議だ。軍隊は自己完結的な非常に規律を求める組織で、敵前逃亡などが相次ぐと軍隊としての運用が出来なくなるので、それを防ぐために軍隊には一般市民に課せられる法律とは別個の特殊な規律を定めた法律で縛りを掛けることが必要になる。自衛隊を加憲すると何らかの形で軍法会議が必要になる。そうすると次は76条2項の特別裁判所禁止条項を変える必要が出てくる。05年の自民党新憲法草案は76条3項に軍事裁判所が明記されている。12年の改憲草案では9条の2の5項に軍律法廷がある。従って、9条だけを変えれば終りとはならない。自衛隊の存在を憲法に書き込むと、日本国憲法は機能不全を起こしてしまうことになる。いろんなところに機能不全が発展していくので、そこを擦り合わせる改正がどうしても必要になり、「終りの始まり」ということになる。なお現在は、自衛隊員が服務に反する行動を行った場合は7年以下の懲役か禁錮の刑が科せられるが、軍隊と認められると敵前逃亡などは死刑が科せられる可能性が出てくる。
「軍事」を憲法に書き込むことの「意味」と「無意味」を考える。憲法は我々個人が人間らしく暮らすために必要不可欠な価値(基本的人権)を保障することに最大の目的がある。この人権を権力による侵害から守るために国が持つ権力に対して制限を加えるのが憲法の役割であり、権力制限規範であると言う。憲法は「やっていいこと」を認める一方で「それを踏み越えることはやってはいけない」と、一定のタガをはめるのが権力制限規範の意味ということになる。憲法に「軍事」を書くことの意味は権力制限規範として、軍事に対するコントロール機能を果すという意味になる。例えば、どの国家機関が戦争を開始するかしないかを決めるのか、開始された戦争の最高指揮権を持つのは誰か、などの明記が考えられる。憲法の軍事力条項は、軍事力行使にブレーキをかけるという側面を併せ持っている。一方、自衛隊加憲は軍事力に対する権力制限規範として意味を持ち得るかと言えば、これは無意味でしかない。日本国憲法は軍事に関しては「0(ゼロ)」の状態を採用しているからだ。言い換えれば、日本国憲法は軍事に関して沈黙することによって軍事に対する徹底的なブレーキをかけ続ける権力制限規範としての機能を果してきた。つまり、「0」の状態を維持している日本国憲法に自衛隊を書き込むということは、当然「0」の上に「+α」が乗ることになるので、「何も変わらない」という話にはならない。軍事の「権力拡大規範」にしかならない。「0」の状態で軍事に徹底的に縛りをかけるという構造が自衛隊加憲で簡単に壊されてしまいかねないということになる。
 改めて原点に立ち返り自衛隊とはどんな存在なのかを確認したい。自衛隊加憲をアピールする時に安倍政権が利用するのは自然災害救援だが、彼らは本当にそういう認識でいるのか。自衛隊に対する政府の基本認識は、16年程前に防衛大臣が、自衛隊の本来の任務は「国家を守るために敵を殲滅する存在」で、国民は「その環境づくりの役割を担わされる存在」だと語っている。従って、政府は災害復旧支援などを根拠としてアピールしているが、私たちは先のような認識を持っている事実を訴えていく必要がある。(つづく)

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【九条噺】

 真新しいランドセルが大きく見えるかわいい後姿。まだ体にしっくりこない制服姿の中学生。登下校中の子どもたちの中にあって1年生はすぐ分かる。「学校は楽しいかい」「ワクワクすること見つけたかい」と、声をかけたくなる▼前川喜平氏が名古屋の中学校で行った授業に対する文科省の介入問題。文科省は名古屋市教育委員会に、前川氏を中傷するような質問や授業について細かな質問を送り、録画記録の提出まで求めたという。自民党の文部科学部会に所属する2人の国会議員からの働きかけによるものだったらしい▼個別の中学校の授業内容に対する文科省のこの行為は、教育内容への国家の介入でなくてなんであろう。文科省というのは、教育への外部からの圧力から学校を守る盾になるものではなかったのか▼「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである(後略)」。第一次安倍内閣によって改悪される前の教育基本法の前文である。教育基本法と憲法はセットであった▼国家主義教育への深い反省から出発した教育基本法によって、憲法の下で国家権力をはじめとするいかなる圧力にも屈しない教育の仕組みが作られたのだ。今もこの精神は生きている。新しい決意を各々の胸に秘めたであろう子どもたちが輝く社会を作らねばならない。(真)

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第46回「ランチタイムデモ」実施



 強風が吹き荒れた4月11日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第46回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、70人が参加しました。和歌山市役所前のデモ出発で藤井幹雄弁護士は、公文書改ざん、日報隠ぺい、データ捏造などの安倍政権の政治私物化を告発、「憲法改ざんを許すわけにいかない。安倍政権は退陣せよ」と訴えました。参加者らは「戦争する国絶対反対」「憲法壊すな」と訴え、京橋プロムナードまで行進しました。
 次回は5月16日(水)です。

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「和歌山障害者・患者九条の会」春の交流会開催



 春の陽気に誘われて、障害者・患者九条の会は4月1日、「みんなでいこら!貴志川線で巡る平池の旅」と題して交流会を行いました。紀の川市平池緑地公園は甘露寺前駅から5分。珍しい水草や多種の水鳥・渡り鳥が生息する魅力的な周囲約1・5㎞のため池です。語り部の方から平池の話をお聞きし、その後は昼食交流会です。初参加の方、ひさびさに出会う方など26名が集いました。ギター演奏に合わせて平和の歌を大合唱、景品を持ち寄ってのビンゴゲーム、手と頭の体操を目的にお手玉遊び。みんなで春の自然と平和な時間を満喫、生きている喜びを実感する一日となりました。交流会の後に、JR和歌山駅に戻ったメンバー11人で駅前署名宣伝を行いました。集めた署名は17筆と少なかったのですが、初めて参加した人3人、初めてマイクを握った人もあり、こうした活動も継続していこうと思います。(事務局の野尻誠さんより)

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「戦争はイヤ!憲法9条を守る和歌山市南の会」結成

 4月22日、和歌山市で「憲法9条を守る和歌山市南の会」結成のつどいが開かれ43人が参加しました。和歌山市南部で53人(22日時点)が呼びかけ人となり、結成されたものです。  世話人は、北畠弘之氏(宗善寺住職)、西畑昌治氏(医師、「九条の会・わかやま」呼びかけ人)、藤本清二郎氏(元和歌山大学副学長)、和田治氏(キリスト教会牧師)の4氏です。

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(2018年05月02日入力)
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