「九条の会・わかやま」 349号を発行(2018年05月31日付)

 349号が5月31日付で発行されました。1面は、日本を軍事大国にするために9条の歯止めを外す (渡辺治さん ①)、第47回「ランチタイムデモ」実施、憲法の大切さ訴える みなべ「九条の会」街宣活動実施、九条噺、2面は、日高町 3000万人署名目標突破 113%に、言葉 「9条の2」  です。
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日本を軍事大国にするために9条の歯止めを外す

 5月19日、プラザホープ(和歌山市)で「We Love 憲法~5月の風に~」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治氏が「かつてない市民と野党の共同で安倍改憲にNOを!」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介します。今回は1回目。

渡辺治さん ①



 安倍首相は年頭記者会見で、今年こそ新しい憲法を国民に示すと訴えた。自民党大会で改憲案を決定、憲法審査会に出し、衆参両院で可決・発議し、今年秋に国民投票、改憲を実行する目論見だったが、思惑に反して、森友問題、加計問題、日報問題、セクハラ問題が次々起り、安倍首相の改憲スケジュールは大きく狂ってしまった。メディアは安倍首相の下での改憲はなくなったと伝えているが、安倍首相は、政権にいる限りほとぼりを冷まして必ず改憲に出てくる。安倍政権を倒さない限り改憲は止まらない。安倍政権を倒して改憲を阻むかの正念場が今年だ。
 9条1項、2項を残し、自衛隊は保持する規程を入れる安倍改憲案は、常識を覆したもので、今までこんな改憲案は出てきたことがない。今までの常識は9条2項をなくして、自衛のための軍隊を持てるという規程を入れて、日本を堂々と戦争ができる国にするものだった。今回の提言はこの2項を残し、加えて自衛隊保持の規程を入れるという改憲案だが、安倍首相は何故出してきたのか。
 安倍首相は何故9条改憲に執念を持っているのか。第2次安倍政権になってから、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の閣議決定、戦争法の強行採決、共謀罪法の強行採決があり、改憲へのチャレンジを続けているが、9条改憲は安倍首相の思い付きではない。自民党は1955年の結党時に自主憲法制定を政綱に入れ、それ以来60年以上に渡って何度も改憲しようとしてきた。安倍首相は最後のバッターとして出てきている。私たちが「安倍改憲」と呼ぶ理由は、安倍首相の特段の役割がある。別の首相だったらこんな形の新しい改憲提言をすることはなかっただろう。安倍首相だからこそ、こんな改憲の危機が訪れている。
 安倍首相が改憲に固執するのは、アメリカが日本に「ともに血を流せ」と強い圧力を加え、その障害となっている9条を変えろという圧力を加えていること、特にトランプ政権になり圧力が強くなっていることがある。アメリカは、1991年の湾岸戦争以来27~8年戦争をし続けており、他国での戦争に国民の不満がある。オバマもトランプも戦争をやめると公約して大統領になっており、特段に強い圧力を日本にかけてきているが、それだけではなく、安倍首相は歴代の首相が持たない野望をもった首相だ。それは、日本を中国やロシアと対抗出来る大国にしたい。米英仏露などが、いざとなれば軍事力をもって対処し、大国として振舞うのに、日本は憲法に縛られそれが出来ない。何としても大国になるために憲法改正をして、自衛隊を自分の国益のために海外に出せるようにするというのが狙いだ。
 9条1項の主旨は多くの国の憲法にあるが、2項の戦争をしないために軍隊を持たないという規程は、当時は日本だけで、今もほとんどの国はこのような憲法は持っていない。しかし、実際には世界有数の軍隊である自衛隊があるのに、何故安倍首相は9条改憲に執念を持つのか。実は9条は日本の軍事化と自衛隊に対する大きな歯止めになっている。この歯止めを外さない限り安倍首相はどんなに力んでも日本を軍事大国にすることは出来ない。自民党は何度も9条2項をなくし、堂々と軍事力を持てることにチャレンジしてきた。しかし、日本国民はその都度その企みを潰してきた。一番大きかったのは1960年に岸内閣が安保条約を改定し、日米対等の軍事同盟条約にし、そのために憲法を改正しなければならないと、安保改定から憲法改正を目指したが、大きな反対運動が起り、安保改定は強行されたが、岸内閣は倒れ、憲法改悪は潰れてしまった。これが自民党にとって憲法改正の挫折になった。1960年は戦争が終って15年しか経っておらず、まだ国民の7~8割が戦争を知っていた。憲法を改悪しアメリカの戦争に従って日本が戦争をする国になることは受け入れられないと、若い人たちを中心にした圧倒的な運動が盛り上がり、岸内閣を倒した。自民党の政治家たちは、再び日本を戦争をする国にする憲法改正をすると、自民党政権自身がもたないと、自民党政治は大きな転換をした。それから30年間、自民党はどの政権も憲法改正を封印した。歴代首相は「私の時代は憲法改正をしない」と言う状況が始まった。政府は、軍隊を持たないという9条2項の下で自衛隊を維持しなければならなくなり、「自衛隊は憲法が禁止する戦力ではない」「自衛権は自然の権利だ。侵略されたら撃退する実力は、必要最小限度のものでなくてはならない」「自衛隊は必要最小限度の実力だ」と説明した。当時の市民運動や野党はこのようなまやかしは誰も信じなかった。当時アメリカは50万もの部隊を投入して、沖縄などの米軍基地を利用してベトナム攻撃をやっていた。そんなアメリカの侵略戦争に加担する自衛隊は憲法違反の軍隊だということで、憲法裁判などが起り、自衛隊の装備などは決して自衛のための必要最小限度の実力ではないと主張した。(つづく)

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第47回「ランチタイムデモ」実施



 5月16日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第47回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、70人が参加しました。和歌山市役所から京橋プロムナードまで、「安倍9条改憲NO!」を訴えて行進しました。
 この「ランチタイムデモ」は、集団的自衛権行使容認の閣議決定がされようとする危機が迫る中、14年6月23日に第1回が実施され、15年2月16日(この時は「和歌山弁護士会」主催)を除き、丸4年間、毎月実施されて第47回を迎えたものです。
 次回は6月13日(水)です。

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憲法の大切さ訴える
みなべ「九条の会」街宣活動実施




 憲法記念日の3日、みなべ「九条の会」は、みなべ町内で憲法9条の大切さを訴える街宣活動を実施しました。
 車で町内を走りながら「今日は5月3日、憲法記念日です。今の憲法が誕生してからなんと71年が経ちました。その71年間、日本はよその国に戦争を仕掛けに行ったことも、他の国から仕掛けられたこともありません。私たちは日本に憲法9条がある幸せを絶対に手放しません。憲法9条は、戦争で無残に命を失った多くの兵士の遺言です。しかし今、憲法9条を変えてしまう準備が着々と進められています。安倍首相は『戦争はしない・戦力は持たない』という9条2項の後ろに、『内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする実力組織である自衛隊を保持する』という条文を付け加えようと執念を燃やしています。私たちは、『戦ある世にさせない』『9条は今のまま大切に守り育てたい』と願っています。そのため、みなべ町で3000人の署名を集めています。どうぞよろしくお願いします」と、3000万人署名への協力を呼び掛けて回りました。(会の平野憲一郎さんより)

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【九条噺】

 5月3日の東京新聞社説に「ホトトギスという鳥は、自分で巣を作らないで、ウグイスの巣に卵を産みつける。ウグイスの母親は、それと自分の産んだ卵とを差別しないで温める」とあった▼『日本大百科全書』には、「ホトトギスはカッコウ同様、典型的な托卵性の鳥で、自分では巣を作らず、ウグイスなどの巣に卵を産み、その後の世話をその巣の親鳥に任せてしまう。卵の色はウグイスと同じチョコレート色で、1つの巣に産み込む卵の数は普通1個である。この卵はウグイスなどの卵よりも1、2日早く孵化(ふか)し、雛はまだ孵化していない他種の卵を背中に乗せて巣外に放り出してしまう。こうして巣内を独占し、やがて巣の親鳥よりも大きく成長していく」とある▼社説は、「一度多数を制すると、たちまち正体を現わし、すべての反対党を追い払って、国会を独占してしまう。民主主義はいっぺんに壊れて、独裁主義だけがのさばることになる」ことのたとえとして挙げている▼安倍首相は、「憲法に自衛隊を書き込んでも、自衛隊の任務や権限に何らの変更もない」と言うが、何の変更もないのなら、改憲など全く必要がない。何かを変えたくて書き込むのだ▼社説が指摘するように「日本国憲法というウグイスの巣にホトトギスの卵が産みつけられる…。『何の変更もない』と国民を安心させ、9条に自衛隊を明記すると、やがて巣は乗っ取られ、平和主義の『卵』はすべて落とされ、壊れる」ようなことは許してはならない。(南)

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日高町、3000万人署名目標突破
113%に


 和歌山県日高郡日高町の「日高町平和を願う9条の会」は、「安倍9条改憲NO!3000万人署名」が、5月14日現在、全国3000万人に見合う同町人口(7908人)の25%の1977人に対し、113%の2235筆(人口の28.3%)に達したと発表しました。引き続き、自主目標の3000筆に向けて取り組みを進めています。
 署名行動では宣伝活動を重視し、チラシの新聞折込みを3回行い、町民に署名の意義を伝えてきました。宣伝カーは1月以降8回実施しました。
 署名活動は、具体的には、住宅地図によって地域担当を決め、訪問先を明確にして実施しました。地図にチェックを入れ、すべての家庭を訪問しました。1月以降に訪問した家の71%が署名をしてくれました。「9条の会」の会員のつながりなどを活かして実施しています。
 署名の呼びかけ人は現在158人です。会では、「町民の中には、『平和を守らなアカン』という声は非常に大きい。韓国の『ろうそく革命』は、南北首脳会談などに結実している。日本では、この3000万人署名が平和の力です。さらに署名を進めます」と話しています。(会の埋橋忠彦さんから)

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言葉 「9条の2」

 現行日本国憲法第2章「戦争の放棄」の条文は、9条だけです。この第2章に新たな条文を加えるのが「9条の2」です。これに対して、9条に新たな項を追加するのが「9条3項」です。
 自民党が自衛隊を明記する改憲案は、戦争の放棄、戦力の不保持・交戦権の否認を定めた9条をそのままにし、「9条の2」として、「前条の規定は、……必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、……内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。2 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」との条文案が検討されています。
 「9条3項」ではなく「9条の2」とするのは、「今の9条には一切手をつけていない。9条は何も変わらない」ということを国民に思わせたいためです。何も変わらないのなら、自衛隊を明記する必要は全くありません。何かを変えたいから明記しようとするのです。国民に「何も変わらないのならよいのでは」と誤解させ、問題点に気付かれない内に、どさくさでやってしまおうという魂胆です。合憲になる自衛隊は戦争法で大きく変質した自衛隊です。「自衛の措置」には集団的自衛権行使も含まれ、米軍と一緒に集団的自衛権全面行使が可能になり、「戦争をする国」に変質します。

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(2018年05月31日入力)
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