「九条の会・わかやま」 350号を発行(2018年06月14日付)

 350号が6月14日付で発行されました。1面は、安倍首相の前に立ち塞がる壁 市民と野党の共闘(渡辺治さん ②)、第48回「ランチタイムデモ」実施、和歌山障害者・患者九条の会が「12周年の集い」を開催、九条噺、2面は、「改憲反対」署名 1350万筆国会に提出へ  です。
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安倍首相の前に立ち塞がる壁、市民と野党の共闘

 5月19日、プラザホープ(和歌山市)で「We Love 憲法~5月の風に~」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治氏が「かつてない市民と野党の共同で安倍改憲にNOを!」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

渡辺治さん ②



 9条2項の下で、自衛隊が軍隊ではないことを証明するために、政府は次々と国民に約束せざるを得なくなった。一番大きな約束は、自衛隊は海外派兵はしない。個別的自衛権はあるが、集団的自衛権は行使しない。だから軍隊ではないと説明した。この解釈では、日本政府はアメリカから「ともに血を流せ」と要求されてもそれは出来ない。こんな訳の分からない解釈をするのは9条2項があるからだとの声が90年代に入り自民党内に高まってきた。今ひとつは、アメリカは日本国民が9条を守るために大きな声を上げていることを知っていた。改憲を日本国民に提起すれば、革命が起るかもしれないと思っていた。日本に「ともに血を流せ」とは言ったが、「おそらく血は流せないだろう。集団的自衛権は無理だろう」と思い、日本政府に90年代以降の、イラク、アフガニスタンの戦争で要求したことは、「汗を流せ」ということだ。人殺しは出来ないから、米軍の輸送、傷病兵への医療提供、武器・弾薬の輸送などの後方支援を要求してきた。日本政府は、国民の自衛隊海外派兵反対の声の中で出来ないと言わざるを得なかった。自衛隊が米軍と一緒になって行動することは海外での武力行使に他ならないということになった。90年代以降の政権はいろんな苦労をして自衛隊を海外に出動させる努力をした。小泉政権は、憲法は動かせない、憲法解釈も動かせないことをすり抜けて自衛隊を海外に出そうとした。派兵は禁止されているが、派遣は禁止されていないと自衛隊をイラクに人道復興支援を名目に「派遣」した。しかし、アメリカや日本政府にも非常に大きな不満が残った。やはり、憲法をそのままにして派遣してもダメだと、2回目の明文改憲の動きが起った。この中心にいたのが第一次安倍政権の安倍首相だ。これに対して大きな反対運動が起った。2004年に「九条の会」が出来、全国津々浦々に7500の会が出来て、世論が変わっていき、改憲反対が賛成を上回り、安倍首相を引き摺り下ろした。安倍首相としてはリベンジとして、憎き9条2項を何とかするというのが今回提言を出してきた理由だ。
 安倍首相は9条2項をなくして自衛隊を正々堂々と軍隊として持てるという改憲案を出さないで、9条1項、2項を残して自衛隊を明記するという、今までなかった改憲案を何故出してきたのか。5月3日の提言には新しいところが3つあり、1つ目は、2020年末までに憲法改正を実行する。2つ目は、9条は1項、2項を残し、自衛隊を明文で書き込む。3つ目は、毒薬だけでなく甘い飴としての「知る権利」「環境権」や、今まで言ったこともない「教育の無償化」も言った。安倍改憲の前に大きく立ち塞がる壁があり、これを突破しないと改憲はできないと思っている。立ち塞がる壁とは、私たちが戦争法反対の中で作り上げてきた市民と野党との共闘だ。これが安倍改憲にどうしようもない大きな壁として立ちはだかっている。市民と野党の共闘は1960年の安保闘争以来55年ぶりに出来た共同だ。60年安保で何故数十万の人が立ち上がったかというと、二度と戦争をしたくないという若い人が立ち上がったこともあるが、同時にそれまで、憲法改悪反対、安保反対と言いながら絶対に一緒にやらなかった社会党と共産党が、初めて手をつないで共同の取り組みをやった。労働組合のナショナルセンターである総評が間に入って、とにかく同じテーブルに付けることをやり、60年安保を闘った。いろんな市民が安保共闘に参加し、焦った岸信介が強行採決をする中で、平和を求め、民主主義の蹂躙に反対する声が合同して数十万の人が立ち上がった。だから、共同すれば大きな力が出るのは分かっていたが、安保改定が強行された直後に安保共闘は崩壊し、それ以後55年間、どんなに努力しても社共が一緒になることは出来なかった。その内、社会党はなくなり、社民党と民主党に別れ、民主党は結党以来一度も共産党と手を組もうとしたことはない。社民党と共産党も一緒になったことはない。戦争法でこれが出来なければどうしようもないということで、努力に努力を重ねて55年ぶりに「総がかり行動実行委員会」という形で初めて野党の共同、労働組合と政党の共同が実現した。総がかり行動実行委員会には、戦争をさせない1000人委員会、憲法共同センター、解釈で憲法壊すな実行委員会の3つが初めて手を組み、政党間の話し合いがない中、政党に声をかけ、政党も参加して15年5月3日に3万人の集会を実現した。民主党が戦争法に反対したのも、民主党と共産党が一緒に並んだのもこの時が初めてだった。今やそれが当り前のようだが、3年前はそうではなかった。それが5月15日に安倍政権が戦争法案を提出して以降、毎週木曜日に総がかり行動実行委員会は国会前で集会を開き、各野党もそれに参加するようになった。国会の外で連帯の挨拶をするだけでなく、国会内でも安倍政権を追い詰めるために共同で戦争法案を追及するようになった。質問も互いに調整し、質問時間も分け合って行った。事態は大きく変わり、戦争法が強行採決された時も、壊れることなく戦争法廃止の共同になった。(つづく)

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第48回「ランチタイムデモ」実施



 6月13日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、75人が参加しました。和歌山市役所から京橋プロムナードまで、「戦争する国絶対反対」と訴えて行進しました。
 4年前の14年6月23日、集団的自衛権行使反対をアピールする第1回のランチタイムデモが行われてから丸4年が経過し、5年目に入りました。主催者は、「1人でも2人でも、新たな参加者をお誘い下さい」と呼び掛けています。
 次回は7月9日(月)です。

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和歌山障害者・患者九条の会が「12周年の集い」を開催



 6月10日、雨が予想されるあいにくの天候となりましたが、「和歌山障害者・患者九条の会」は、和歌山市ふれ愛センターで「第12回総会と記念講演会」を開催し、23名が集いました。
 総会に続く記念講演は「沖縄に心を寄せ合って~創作活動から見えてきたもの」というテーマで、「和歌山うたごえ九条の会」事務局長の中北幸次さんと「うたごえオールスターズ」のみなさんをお迎えしました。沖縄の現状を実際に中北さんが辺野古の座り込みをした体験、沖縄の戦争を生き延びた体験談を交え、そこから生まれた中北さんの作詩歌、オールスターズの演奏と歌声は聴衆を揺さぶり圧巻でした。
 沖縄戦の当時、県民の9割が収容所に送られ、6400人がマラリアや飢餓で命を落としたそうです。収容所から戻ってくると、自分の土地は米軍基地に取られていました。土地も家もありません。基地で働くならお金をくれる。それが戦後の出発点となりました。
 北部地域には「護郷隊」という少年ゲリラ兵(中学生の年頃)が組織されていました。3カ月間の訓練で、やんばるの森でアメリカ軍と戦ったそうです。あまり知られていませんが、家族にも言えなかった70年を経た証言から明らかになってきたことです。
 最後に「この国の色は」という歌をみんなで歌いました。1853年の黒船の来航から日本は列強の仲間入りをめざし軍事国家の道を歩み始めました。まさに「闇の色」の国。戦後、日本国憲法に9条が作られ、戦争を放棄した平和国家の道を70年間歩んできました。それは「光色」。今、この国の色を変える訳にはいきません。絶対に9条を変えさせてはならないと、みんなで認識を新たにした一日となりました。
(事務局の野尻誠さんより)

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【九条噺】

 毎日新聞によれば、公明党に毎週5000件近い意見が寄せられ、その半数以上は支持者でなく、5月末の週で最も多かったテーマは日大アメフト部の事件だったそうだ▼スポーツ問題なのに政党に向うのは、この問題が今の安倍政治と同じに見えるからだ。大半が「指導者たちのウソや無理強いがまかり通る光景は、国会と同じではないか。社会のモラル崩壊は、政界からスポーツ界まで底流でつながっている」と語るという▼立民・枝野代表が、日大アメフト事件を「直接結びつけるのは如何かとも思うが、いろんなところで『安倍化』が進んでいる」と発言したそうだが、田中理事長や中途半端な辞任をした内田常務理事(前監督)らの日大経営陣がやってきたことは、「安倍化」が進んでいることの実証だと思う▼国民の「モリ・カケ問題」へのうんざり感について、毎日新聞は、「安倍首相と麻生副総理兼財務相の、場にそぐわないニヤニヤ顔が発する『負のオーラ』も無視できない」「不自然な薄笑いは見ている側を居心地悪くさせる。その呪力は侮れない。不可解な笑顔を見ながら、論理のすり替えや強弁を繰り返し聞かされていると、うんざりを通り越し、もう見たくない、聞きたくないという嫌気に浸されてくる」と指摘する▼だがちょっと待て。この「不可解な笑顔」は安倍首相の作戦かもしれない。その作戦に乗せられ、嫌気に侵されて、「モリ・カケ」や「安倍9条改憲」追及の手を緩めさせられるようなことがあってはならない。(南)

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「改憲反対」署名、1350万筆国会に提出へ



 安倍晋三政権下での憲法9条改正に反対する署名を昨秋から集めている市民団体が7日、東京都内で集会を開き、5月末までに集めた約1350万筆を野党の国会議員らに手渡した。議員らを通じて国会に提出するとともに、3千万筆を目標に活動を続けるという。  署名を呼びかけているのは「安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会」。共同代表の高田健さんは署名の一部が入った段ボール箱約260個を前にあいさつ。「多くの市民が対話をしながら津々浦々で集めた大事な成果だ。公文書が改ざんされる政権下で9条の改憲は許されない」と訴えた。集会の最後には野党議員らと一緒に「9条守ろう」「憲法生かそう」と声をあげた。
(朝日新聞デジタル6月8日)
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 なお、署名は、3000万達成か、「安倍9条改憲」が断念されるまで続けるとのことです。提出署名数は、5・3憲法集会での発表の1350万筆と同じ数ですが、5・3以降、憲法共同センターには110万、市民アクションには50万が届いており、合わせて160万増えているとのことです。ただ、他団体が集約し切れていないことなどから、1350万筆と発表されたようです。提出集会のまとめ発言で、福山真劫氏が「1500万近くに到達」と発言されています。(「憲法会議」からのメールによる)

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(2018年06月14日入力、17日修正)
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