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総選挙で壊れた市民と野党の共闘は再建された
5月19日、プラザホープ(和歌山市)で「We Love 憲法~5月の風に~」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治氏が「かつてない市民と野党の共同で安倍改憲にNOを!」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は3回目。
渡辺治さん ③
16年の参院選では初めて野党統一候補が32の1人区で実現し、11選挙区で勝つという事態が起った。これが安倍改憲にとって大きな壁になった。変わったことの1つは、野党第一党の民主党が憲法改正に反対となったことだ。民主党は1996年に出来て以来一度も憲法改正反対と言ったことがない政党だった。議会制民主主義の中で、与党が政権を運営する時は、野党第一党と協議しなければ、議会運営、日取り、質問日程などが決められない。民主党が憲法改正反対になり、改憲を国会の中で発議する時にことごとく民主党が反対することになり、非常に難しくなった。さらに深刻なのは、参院選に引き続き衆院選でも選挙協力が出来てしまったら、289の小選挙区で野党統一候補が立つ。先の総選挙でも希望の党が出来なかったら野党統一候補が実現したかもしれない。そういう共闘が全国で出来たら自民党は過半数も危なく、安倍政権も危なくなる。
そこで安倍首相は衆参両院で3分の2がある今、選挙をやらず突破するしかないと考えた。そのためには公明党と維新の会を引き込む必要があった。公明党は9条改正だけは消極的だ。維新の会はよく分からない。それで、9条2項を削除したいのは山々だが、安倍首相は公明党が言う9条1項、2項を残し、3項に自衛隊保持の規程を入れる加憲案をそっくり取り込んだ。教育の無償化は維新の会が憲法改正の公約の中心に掲げているものだ。これらを入れることで、3党が共同して改憲を突破する。つまり安倍首相は、公明と維新を引き込むために、9条1項、2項を残して3項に自衛隊を明記するという案を提案した。昨年5月、これで衆参の3分の2で突破しようと思っていたところが、大きなつまずきが起った。森友に続いて加計問題が起った。そして都議会議員選挙では自民党は59議席が23議席となるという大敗北をした。都議選の争点は、築地市場移転などの都の問題ではなく、安倍政権の信任だった。都民ファーストの会が圧勝し、安倍首相は強行突破は無理と考えたが、市民と野党の共闘が崩れる可能性が生まれた。都議選で自民党以上に負けたところがある。それは民進党で、15議席になり、さらに民進党議員は脱党して都民ファーストの会に入り、都議会では民進党は5議席になってしまった。そして、市民と野党の共闘を見直すという前原氏が代表になった。安倍首相は、衆院選は出来ないと思っていたが、解散総選挙になれば必ず民進党は壊れると考え、解散総選挙を早くして、市民と野党の共闘を壊して改憲を実行する政策に変えた。9月15日、解散総選挙に打って出た。
結果は、半分は成功し、半分は失敗した。解散総選挙に打って出た途端に民進党がとんでもない事態になった。9月25日に小池百合子氏が希望の党を立ち上げた。市民連合は総がかりと同じ手段で、安倍改憲反対、戦争法反対などの7項目の要求を作り、民進党を始めとする野党を説得して回った。各党がOKした26日の夜、民進党・前原代表と小池百合子氏と連合・神津会長が会い、民進党は全員希望の党に合流するとし、翌日の議員総会でそれをOKするという事態になった。全国で野党統一候補を作る計画も一気に壊れてしまった。希望の党は憲法改正賛成、安保法制賛成で、その結果、自民党は284議席、公明党と合わせて313議席、希望の党と維新を合わせると衆院の8割が改憲勢力という勝利になってしまった。
しかし、一旦は希望の党に行くと決めたが、小池氏が安保法制反対、憲法改正反対の人は入れないと言った。もし、市民と野党の共闘の3年間の経験がなければ枝野氏は無所属で立っていただろう。枝野氏は選挙の1週間前に立憲民主党を立ち上げた。共闘がなければこんなことは絶対に出来ない。立憲民主党は躍進をして55議席、無所属議員10数人が当選した。立憲民主党は野党第一党になり、市民と野党の共闘が再建されてしまった。そこで、安倍首相は9条1項、2項を残してやっていくという方式を取らざるを得ず、時間がないことは変わらないという状況が生まれた。何故なら、市民と野党の共闘が壊れたら、衆院選は勝ったから、4年間はゆっくりと改憲が出来るはずだったが、市民と野党の共闘が再建されたために、2019年の参院選で負けてしまったら、結局は安倍政権の時代に改憲は出来ないということになる。来年5月には天皇の代替わりがあり、4月に統一地方選挙がある。となると、安倍首相は2018年中に改憲をしなければならないと春に臨んだ。ところがその春にとんでもない事態が起り現在に至っている。安倍首相は依然として市民と野党の共闘に直面している。(つづく)
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安倍9条改憲の狙いは
弁護士・尾崎彰俊氏の論考より要約(憲法運動6月号より)
湾岸戦争から25年以上、日本政府は、解釈を変遷させ実質的な9条改悪を繰り返してきたが、それも限界が訪れた。
南スーダンPKOは撤退せざるを得ず、戦争法は、廃止を求める国民的運動が粘り強く続けられている。この反対運動の要が憲法9条である。そこで、安倍首相は、自衛隊を海外でさらに活動できるようにするために、憲法9条自体を変えようとしている。従って、自民党改憲素案のように9条を変更すれば、14年に解釈改憲で認めた「限定的な集団的自衛権の行使」を「無限定」に変更させることにつながり、自衛隊が米軍と一体となり、世界中どこへでも行くことが可能となってしまう。
安倍改憲の狙いは、自衛隊を世界中どこへでも派兵できるようにするだけではない。高い攻撃能力を持つ自衛隊を憲法上容認することに重要な目的がある。安倍首相は、「災害対策をやっている自衛隊が、憲法に書かれていないのは、かわいそうだ」と発言しているが、自衛隊は、現在進行形で敵地攻撃能力増強をし続けている。例えば、エアクッション型揚陸艦AAV7を保有し、敵地に上陸し侵略が可能である。またオスプレイMV22を保有し、上陸訓練をアメリカと共同で行っている。
従来日本政府は、「ICBM」「攻撃型空母」「爆撃機」は保持しないという防衛方針を持っていたが、安倍政権は、平成30年度防衛予算には巡航ミサイルの研究費用を盛り込み、「いずも」を改造して攻撃型空母化しようとしている。また、ステルス戦闘機F35Aを保有し、F35Bの導入を検討している。
また、日本は、他国との軍事的つながりを強めている。日米ACSA(日米物品役務相互提供協定)は、自衛隊と米軍が物品・役務を相互に提供する枠組みを定めるものだが、17年の締結では、戦争法で定められた「存立危機事態」等複数の事態まで範囲が拡大され、自衛隊と米軍の一体化が一層強固なものになった。17年には、日豪・日英ACSAが締結され、この実態は軍事同盟で、自衛隊が世界の国々と軍事的つながりを強めている実態が広がっている。
このように、安倍政権は、「戦力不保持」を謳った憲法9条2項の死文化の実践を現在進行形で行っている。「必要最小限度」を取り去り、高い戦闘能力を持つ自衛隊を憲法に書き込み、9条2項の「戦力不保持」を完全に無きものにする自民党政権の「本音」の達成が、安倍9条改憲の最大の目的である。
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【九条噺】
近ごろ自転車のチェーンが空回りし始めたので、対策を調べてみた。歯車のすり減りやチェーンのゆるみを予測したが、「チェーンがしなやかに歯車とかみあうよう、チェーンに注油する」という方法を知り、試したところ解決した。「歯車がかみ合う」実感だった。折しも、歯車が急にかみ合い始めた事件があった▼紆余曲折と急展開を経て、6月12日に初めての米朝首脳会談がシンガポールで行われ、「米国は北朝鮮の安全を保証し、北朝鮮は核兵器廃棄を目指す」等の共同声明に両首脳が署名した▼最近まで互いに兵力を誇示し、威嚇と挑発的言辞で緊張を高めてきた両国が、首脳どうしの対話に至ったこと、平和構築に向けた大枠で合意したことは画期的である。合意が実践されていけば、東アジアの平和と安定に大きく貢献する。とは言え、具体化には時間がかかることが予想されているが、両国には実現に向けた粘り強い努力を期待したい▼この動きに連動して日本政府も動いた。対北朝鮮の圧力一本やりで際立っていたのが、「拉致問題は日朝間の問題であり、直接立ち向かうべき」として、包括的な対話を始める動きを見せている。米朝首脳会談でトランプ大統領が拉致問題と日本の立場を提起し、金委員長が解決済みと言わず、日本とも対話する意思を表明したのが契機となった▼米国の動き任せが気になるが、平和に向けた対話が始まるなら歓迎すべきだ。米朝も日朝も歯車がかみ合うことを願う。(柏)
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言葉「イージス・アショア」
昨年12月、安倍首相は、トランプ大統領に要求され、「北朝鮮の核・ミサイルを重大かつ差し迫った新たな段階の脅威」と認定し、「イージス・アショア」の導入を閣議決定しました。
「イージス」の語源は、ギリシア神話のゼウスがアテナに与えた無敵の盾だとか。「イージス艦」の写真を見られたことはあるでしょう。艦橋に張り付いている4つの8角形の物体を「フェイズドアレイレーダー」と言い、レーダーと言いながら首を振る必要もなく、高度な情報処理を組み合わせ、多数の目標を同時に探知・識別し、艦対空ミサイルを発射・誘導できると言います。多数の空からの脅威を防ぐ、「目」と「槍」の機能を1隻にまとめた艦船です。「アショア」とは「陸上の」という意味で、イージス艦のシステムを地上に固定的に設置するもので、2基2千億円。さらなる追加費用も予想されます。設置の候補地は、秋田県新屋(あらや)演習場と山口県むつみ演習場とされ、既に防衛省から県知事・市長に説明が始まっていますが、現地の反発が大きく広がっています。
そもそも、ミサイル防衛に対応できる日本のイージス艦は4隻で、「イージス・アショア」を加えても、飽和攻撃という同時多発攻撃やロフテッド軌道という高高度攻撃では「百発百中で迎撃するのは技術的に不可能」と指摘されています。
さらに問題は、人々が生活する地上に置かれ、人体に影響がある強力な電磁波を出します。イージス艦では、乗組員は甲板に出ることも許されません。強力な電磁波を出す京丹後市の米軍経ケ岬Xバンドレーダー通信所では、航空機の計器類を狂わせる恐れがあり、飛行制限空域を設定し、ドクターヘリの飛行にも支障が生じています。
米朝首脳会談が行われ、核・ミサイルの廃棄もその対象として対話が始まっているときに、なぜイージス・アショアを配備しなければならないのか。住民の命と暮らしを守るため、配備を撤回すべきです。
パンフレット紹介『自民党改憲案の問題点と危険性』
今の情勢は安倍改憲の企てを断念させるチャンスです。このチャンスを必ず実現するために、自民党大会でまとめられた改憲案がいかに危険なものか認識を深め、自信を持って「安倍改憲NO!」「自民党改憲案NO!」の声を広げることができるよう、この小冊子をつくりました。(「はじめに」より)
●9条改憲・「自衛隊明記」
●「教育の充実」について
●緊急事態条項
●合区解消と地方自治
●「安倍改憲」と改憲手続法
販売価格:1部100円(10部以上は送料なし)
●「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」発行
http://kaikenno.com/?p=721
●A5版 ●44頁 ●2018年5月発行
申込みは:【F A X】03-3303-4739 【E-mail】fukuda@haskap.net
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