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戦争の心配の元の対立がなければ、戦争の心配もない
7月28~29日、プラザホープ(和歌山市)で「戦争展わかやま2018」が開催され、28日に国際地政学研究所・元内閣官房副長官補・柳澤協二氏が「戦争危機の時に考える平和への道筋」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。
柳澤協二さん ①
今は戦争危機と言えばそうなのだが、客観的状況がそうだということと、日本国内での受け止め方が戦争危機という2つの側面がある。日本国内で起きていることから考えると、安倍首相は今年の通常国会の施政方針演説で、昨年自衛隊が米艦・米機の防護を初めて行い、これにより日米同盟は強固になっていると言った。これが何故危ないかというと、情勢が緊迫していて、米艦・米機が襲われる可能性があり、自衛隊が守る役割を与えられる訳だが、しかし、これは「存立危機事態」のような事態認定が要らない平時の任務なので国会の承認も要らない。米軍が襲われるような状態で出て行くのだから相手も米軍を攻撃しないとは限らない。その時自衛隊が米軍防護の任務についておれば、米軍を攻撃する相手をやっつけなければならない。相手は第三国の軍隊だから、それを攻撃するということは正に戦争を始めることに他ならない。国会の承認もなくやれる条文が安保法制の中に入っている。もうひとつは、「イージス・アショア」「長距離巡航ミサイル」を導入すると述べた上で、専守防衛を前提としながら、従来の延長線上にないあるべき防衛力の姿を考えていくと述べた。長距離巡航ミサイルは正に敵基地攻撃能力を持つことになり、「イージス・アショア」は、性能のよいミサイル防衛システムによって、相手の攻撃を無力化出来るとすれば、トータルとしてこちらの攻撃能力を高める意味があり、これも相手には脅威となる。自衛隊が米軍と一体となることによって相手に脅威を与えるような兵器システムを持つようになったのは、過去の政権ではやったことがないことだ。米軍と一体になることと敵基地攻撃能力を持つことで、二重の意味で専守防衛を逸脱している。その発想は相手が力を持っており、それに力で対抗しようという力の論理で、核兵器すら持つという力の論理の帰結だ。力の論理を押し進めるところに戦争危機に繋がるひとつの背景が出来上がりつつある。それを国民が仕方ないと思う社会的な雰囲気がある。昨年のJアラートと避難訓練で国民から「北朝鮮をやっつけろ」との声も出たが、「やっつける」ということは戦争をするということだ。「戦争が怖いから戦争をする」という話だ。自然災害から身を守るために早めに備えるのは大切だが、ミサイルは地震でも台風でもない。ミサイル問題は誰かが目的を持って戦争をするということで、その目的を止めるということを考えなければいけない問題だ。また、「やっつければ終る」という問題ではない。「やっつけた」ら、やられた方は「次は負けない」と思って、もっと恐ろしい敵になってくる。これが戦争に勝つことに続くシナリオだ。相手を「やっつける」ことは問題を解決することとは違うということをしっかりと考える必要がある。
戦争は、主体は国家で、目的は自分の意志を相手に押し付けることで、手段は暴力を使うことだ。平和とは、「相手が暴力を使おうとした時に、こちらも暴力を使い反撃するから暴力を使うな」という抑止力があれば相手は手を出さない、だから戦争にならない、だから平和だという論理がひとつある。しかし、相手もこちらよりもっと強くなろうとする。そうすれば、こちらも、もっと強くならなければならないという力比べの状況が続いていく。そして、前よりもっと危ない状況になっていくことになりかねない。「安保法制」には、「平和安全法」と「戦争法」という2つの言い方があるが、同じものごとをどちらのサイドから見るかという見方の違いだ。
もうひとつの平和の定義は、意志を押し付けるのは国家間に対立があるからで、国家同士の対立をなくせば、意志を強制する暴力が出てくる心配もない。つまり戦争の心配の元になる対立がなければ、戦争の心配をする必要もないことになる。戦争の恐怖から解放された状態が本当の意味で平和と呼ぶのではないか。どちらがよいかは国民の選択の問題だ。効果は同じく戦争を防ぐかもしれないが、得るものは戦争の恐怖から解放されることだが、それもただではできない。何か失うものがある。戦争をして失うものの典型は命だ。国家間の対立をなくすのは、相手の言い分を聞くことだが、それで失うものは国家の権益とか名誉・威信といったものだ。この問いは究極的にどこに行くかは、国家の威信のために命を失う覚悟はあるのかということになる。主権者国民が何を失って、何を守るのかの選択を自分ではっきり定めておかなければならない。
何故戦争が起きるかその要因は、古代では富と名誉を追求すること、恐怖から解放されることと言っているが、現代では富のために戦争するのは、経済的依存関係の中で出来ないだろう。経済的利益のために相手を破壊することは、自分の生産ラインや預金口座を破壊するのと同じだ。一方でグローバル化の負の側面があり、自分なりのやり方が出来なくなって、競争万能のルールの中でとにかく効率を上げ、生産性を上げて競争に勝つという価値観で動くようになり、グローバル化故に自分の居場所が反って見えなくなる。そのような時に、自分のアイデンティティをどこに求めるのかというと、「俺はあいつとは違う」、つまり他者の粗(アラ)を探して自分の居場所を求めようとする流れが今蔓延している。社会全体がそういうことになるとナショナリズムということになるし、宗派や部族というまとまりで出てくる可能性もある。そうして、他者を排除することが自分の居場所探しに繋がるグローバリゼーションが生んだ負の側面から「暴力を使ってもよい」となると、やはり戦争になっていくのではないか。格差の拡大は、自分が不当に扱われている、自分の存在が無視されているとの思いが心の中に根深く沈殿し、何かのきっかけで爆発するような流れになる。今がそのような世の中だと見ていくと、トランプが「アメリカ・ファースト」と言っている。つまり「富を取り返す」と富の話をしている。気に入らない相手には武力行使も辞さない、恐怖を与えると言っている。戦争要因の富と名誉と恐怖を、みんなでうまく分け合えば戦争にならずに済むものを、独り占めしようとしているので、トランプ哲学が平和をもたらすことはあり得ない。(つづく)
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第50回「ランチタイムデモ」実施
73回目の広島「原爆の日」の8月6日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第50回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が厳しい暑さの中で行われ、70人が参加しました。
デモ出発に当り和歌山市役所前で、藤井幹雄弁護士は「73年前の今日、広島に原爆が落された。二度と繰り返してはならない。核兵器は廃絶しなければならない」と訴え、安倍首相が同日の広島での式典で核兵器禁止条約に触れず、空虚な言葉を並べたことを批判しました。
参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまで、「9条を守ろう」と訴えて行進しました。
このデモは、安倍政権の集団的自衛権行使容認の閣議決定の危機が迫る2014年6月23日に始まり(その1週間後に閣議決定)、以来、休むことなく毎月実施され(15年2月のみ、同コースで実施された和歌山弁護士会のデモに合流)、50回に到達したものです。
次回以降の予定は、9月12日(水)、10月10日(水)、11月12日(月)、12月10日(月)です。
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戦争をさせない1000人委員会
B5判・8ページのパンフレット
「憲法、変える必要ありますか?」
1冊10円(送料無料) 申込みFAX(03-3526-2921)
┌ここをクリックすると内容が見られます
http://www.anti-war.info/anti-war3/wp-content/uploads/2018/06/kaeruhitsuyou.pdf
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【九条噺】
朝日新聞は、政治や社会の出来事を知る際、何を参考にするかの世論調査結果を伝えた▼一番参考にするメディアは、「テレビ」が44%と一番高く、「インターネットのニュースサイト」が26%、「新聞」は24%、ツイッターやフェイスブックなどの「SNS」は4%だったが、18~29歳では「ネット」が38%、「テレビ」が35%、「SNS」が16%、「新聞」が8%の順だった▼内閣支持率は、「SNS」が48%(不支持率22%)、「ネット」が42%(同38%)、「テレビ」が38%(同41%)、「新聞」が32%(同54%)で、「SNS」や「ネット」に頼る層では内閣支持率が非常に高いのが分かる▼麻生太郎財務相が、自民支持が高いのは10代~30代で、「一番新聞を読まない世代だ。新聞を読まない人は、全部自民党だ」と発言したのに符合する▼ジャーナリスト・津田大介氏は、「スマホ、ツイッターの利用者が急増する中で、SNSの予測以上にネガティブな側面が目立つ。人を排除してはばからない極端な人だけがネット社会で大きな顔をして、意見の多様性が抑圧され、信じ難い嘘が事実に勝る『ポスト真実』の時代を迎えている」ツイッターは、信憑性はともかく、強く短い言葉で『こうだ』と言い切る単純明快な情報がウケている」と言う。「SNS」の情報には事実の裏づけがあるのか。「単純明快さ」だけに飛びつくのなら「ダボハゼ」だろう▼やはり事実をしっかり把握し、自分の頭で考えなければならない。それを今の若い層に期待したい。(南)
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73年前の7月9日の「和歌山大空襲」を学び合う
「戦争イヤ!憲法9条を守る和歌山市南の会」
(和歌山大空襲)
「戦争イヤ!憲法9条を守る和歌山市南の会」は7月22日、「戦争はイヤ!私が見た『73年前の7月9日』和歌山大空襲」を南コミュニティセンター(和歌山市)で開きました。
開会あいさつした西畑昌治医師は、「安倍政権によって戦争前夜のようだ」と述べ、「安倍9条改憲NO!3000万人署名」の成功を訴えました。
集会では故井田敬之助さんが旧制中学2年のときに市堀川沿いでの空襲体験を記録した「和歌山大空襲体験絵巻」(和歌山市立博物館所蔵)を朗読・スライド上映。空襲体験を語った川口修平さん(78)は、同市十三番丁ではほとんどの人が亡くなったことや、たくさんの遺体がトラックで運ばれたものの、どこに運ばれたのか分からなかったことなどを伝え、同市鷹匠町にいた中島悦子さん(91)は空襲翌日に見た光景を「焼け野原だった。泥人形のような人をいっぱい見てここは地獄だと思った」と語りました。参加者から「医師ですが、父の死後、体全体のレントゲン写真を見ると100個も砲弾破片があった」ことなどが報告され、藤本清二郎元和歌山大学副学長は閉会あいさつで「憲法を変えようとしている。あの戦争をまたしようというのか」と怒りました。
(憲法しんぶん速報版《憲法会議》8月3日付880号より)
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