「九条の会・わかやま」 360号を発行(2018年10月25日付)

 360号が10月25日付で発行されました。1面は、秋の交流ハイキングを開催 和歌山障害者・患者九条の会、なぜ安倍首相は9条1項2項を存置して自衛隊を明記する改憲案を出したのか?(渡辺 治 さん ②)、九条噺、2面は、言葉「MFO」、安倍9条改憲NO!を求めて 「九条の会」発足時アピールを追求しよう「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓、世論調査結果、書籍紹介『手塚マンガで憲法九条を読む』  です。
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[本文から]

秋の交流ハイキングを開催
和歌山障害者・患者九条の会




 和歌山障害者・患者九条の会は10月7日(日)「紀伊風土記の丘」(和歌山市岩橋)で、秋の交流ハイキングを開催し、35名が集いました。台風による天候悪化が心配されましたが、参加者の願いがかなって朝から暑いくらいの秋晴れに恵まれました。
 「和歌山県立紀伊風土記の丘」は、特別史跡「岩橋千塚古墳群」の保存と活用を目的として、1971(昭和46)年に設立された考古・民俗系の博物館施設です。資料館では文化財のいくつかに直接さわらせていただき、視覚障害のある参加者にとっては「百聞は一触に如かず」、とても有意義な体験となりました。
 その後は弁当を囲んでの交流会です。自己紹介、ギター演奏に合わせて平和の歌を大合唱、豪華景品付きのクイズ大会、陣地取りじゃんけんゲームのトーナメント大会と続きます。みんなで大いに盛り上がり、平和な秋のひとときを満喫することができました。今回は初参加の方も多く、新たな広がりに希望を感じる一日となりました。
 JR和歌山駅に戻った後、「安倍9条改憲NO!3000万署名」の活動を10名で行いました。連休の合間ということもあり通行の人が少なかったのですが、できることを継続することが大切だと思います。(事務局の野尻誠さんより)



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なぜ、安倍首相は9条1項、2項を存置して自衛隊を
明記する改憲案を出したのか?
渡辺 治 さん ②




 2番目は、それよりも深刻な困難で、選挙ができなくなったことです。市民と野党の共闘が存続し、参議院選挙の際1人区で成立した共闘が衆議院の289の小選挙区でも成立して野党統一候補で闘えば、与党は、3分の2はおろか、過半数だって危ないという状況が作られたことです。
 この2つの困難を突破して、どうやって国会で発議を実現し国民投票で勝利して、改憲を実行するのかという時に、安倍首相が考えた手立て、それが5・3提言でした。
 5・3提言という手立ては、当時の衆議院と参議院で与党が3分の2を占めていた議席のうちに改憲を強行する、衆院選をやる前に改憲を強行するというものでした。衆議院の任期は昨年の段階では2018年の12月まででしたから、2018年12月までに改憲発議を行い国民投票を実行して改憲を実現した上で、選挙に突入するというスケジュールを組んだのです。
 その場合には、当時の野党4党は、社民党、共産党はもちろんのこと、民進党も生活の党も向こうに行ってしまう。それを前提にして改憲3分の2の勢力を確保して、衆参両院で強行突破する。そして国民投票で勝つということを想定すれば、これは公明党と維新の会をがっちりと仲間に引き入れてスクラムを組まなければできない。これが安倍が5・3改憲提言で考えた戦略だったと思います。
 そのため、9条改憲で1項、2項を残す加憲案で公明党を抱き込む。この公明党は発議の際の3分の2に必要な議席だけでなく、国民投票運動においても大きな力を発揮するだろうと、期待されています。
 また、9条加憲案は、より戦略的に、あの戦争法反対運動で作られた、自衛隊合憲派と自衛隊違憲派の共同、市民と野党の共同に分断を図る。民主党の一部などに動揺をさそって分断を図ることも狙っていました。これが日本会議の伊藤論文(日本政策研究センター「明日への選択」2016年9月号)が提起したことですが、そういうより戦略的な狙いもありました。
 つまり戦術的には公明党や維新の会を抱き込む、戦略的には大きく護憲派を分断する。こういうもくろみにもとづいて9条加憲、5・3改憲提言が打ち出されたと思います。
(おわり)(月刊『憲法運動』18年9月・通巻474号より)

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【九条噺】

 安倍「在庫整理内閣」の新閣僚から早速問題発言が飛び出した。柴山昌彦文科相が記者会見で教育勅語について「現代風の解釈、アレンジした形で使える部分は十分にあり、普遍性を持っている部分が見て取れる」「基本的な内容を現代的にアレンジして教えていこうという動きも検討に値する」と述べた▼教育勅語には「父母に孝行、兄弟仲良く、夫婦仲睦まじく、…」などとあるが、その本質は天皇が「危急の時には、正義心から勇気を持って公に奉仕し、永遠に続く皇室の運命を助けよ」と国民に命じ、絶対主義的天皇制、軍国主義を支えるものだ。よって、教育勅語は戦後の憲法体制にはそぐわないので、衆参両院で無効確認・失効の決議が行われたというのが、従来の文科省の考え方だった▼ところが14年から大きく変わった。当時の初等中等教育局長の前川喜平氏は、「教育勅語を学校教育で扱うことについては慎重でなければならない」という趣旨の答弁案を「当時の下村博文文科相に書き換えさせられた」と明かす(共同通信47NEWS)それは根幹部分で、「教育勅語の普遍的な内容に着目して学校教育で扱うことは差し支えない」という文言に変わった。教材としての活用を否定する「慎重でなければならない」から全面肯定の「差し支えない」へと▼前川氏は抵抗したが、「差し支えない」が前例になった。だから、これは柴山氏個人の問題だけでなく、安倍内閣の国民主権軽視と国民を戦争へ向わせようとする動きでもある。(南)

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言葉「MFO」

 MFOとはあまり聞き慣れない言葉ですが、「Multinational Force and Observers」で、「多国籍監視軍」のことです。中東和平問題でエジプトとイスラエルの合意に基づき、両国軍の兵力引き離しを監視するため1981年にシナイ半島に配備され、米・英・仏など12カ国が軍を派遣しています。PKOのようですが、国連がまとめ役のPKOではなく、国連に直接関係のない「多国籍軍」です。駆けつけ警護の新任務を与えられた南スーダンPKOの自衛隊の状況は危険でした。安倍首相らは戦闘行為はなかったと強弁していますが、隊員は「戦争だった。部隊が全滅すると思った」と証言しています。そして撤退せざるを得なくなりました。MFOは武装組織の攻撃を受ける可能性が高く、PKOよりさらに危険です。
 安倍内閣は、そのMFOに陸上自衛官2人を派遣することを検討しています。国連決議に基づかないこんな海外派遣は、以前は簡単には出来ませんでした。それを可能にしたのが、3年前に成立した安保法制の11の法律の中の改正PKO協力法が「国際連携平和安全活動」の項目で、国連が統括していなくても自衛隊を派遣出来ることを初めて認めたからです。2人だけ派遣するという今回のやり方は実績作りを狙ったものです。実績は前例になり、次の段階で陸上自衛隊の部隊を派遣することになってきます。今回の派遣は、自衛隊の海外活動を何としても増やしたい安倍政権の悪質な「お試し派遣」に違いありません。

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安倍9条改憲NO!を求めて
「九条の会」発足時アピールを追求しよう
「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓


 自衛隊を憲法9条に加えて合憲にするとの安倍首相の改憲案は、自民党改憲草案と同じでなく、党内のとりまとめさえ経ていない安倍改憲案である。それなのに、来年の参議院選挙前にも国会での改憲発議から国民投票へ進もうと目論んでいる。国会議員の数の力と国民投票の宣伝力を思えば、9条改憲のかつてない危機である。
 9条の危機と言えば、2015年の安保法制の強行成立によって、集団的自衛権行使のため自衛隊を海外に派遣して諸外国の軍隊の戦闘を支援できると定め、従来の専守防衛のための最低限の実力という解釈を変更したことは、9条の戦力不保持・戦争放棄を空文化した重大事であった。
 しかし、この9条無効化だけでは飽き足らず、自衛隊を合憲化し普通の軍隊にすることを執拗にねらっている。そして一体として、自民党改憲案の基調をなす「基本的人権の敵視、国家優先」「国家主義」の日本像がある。強い軍隊をもち国民が一丸となる国家を目指している。
 こうした危機に臨んで、「安倍9条改憲NO!」署名運動が広がっている。安倍改憲の国会発議を断念させるほどに世論を盛り上げる原動力として重要である。「九条の会」もこの署名運動に参加し、アピールを発表してきた。署名を一回り広げ、与党の支持基盤や中間層の人々にまで「安倍9条改憲NO!」を訴えるとき、2004年「九条の会」発足時のアピールが現時点でも参考になると考えたので、抜粋して引用する。
 「九条を中心に日本国憲法を『改正』しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って『戦争をする国』に変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを『戦争をする国』を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません」「この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です」。

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世論調査結果

●安倍内閣が取り組むべき課題(2項目選択)
 (共同通信9月20日~21日)
 年金・医療・介護  : 41.1% 景気・雇用・経済政策:39.9%
 子育て・少子化対策: 26.2% 憲法改正     : 7.2%
●改憲案の臨時国会提出は?



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書籍紹介『手塚マンガで憲法九条を読む』



『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』で知られ、「漫画の神様」とも称される漫画家・手塚治虫さん(1928年~1989年)はどんな憲法観を抱いていたのか…。生前の多彩な作品群から憲法九条への思いが強くにじんだ短編7編を選んだ。
1章 戦争の本質を描く
 「紙の砦」「ザ・クレーター 墜落機」「やり残しの家」
2章 九条の下で生きる
  「ベトナムの天使」「消え去った音」「荒野の七ひき」「1985への出発」
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発行:子どもの未来社(TEL:03-3830-0027)
著者:手塚治虫(マンガ)、小森陽一(解説)
判型:A5判、244ページ
出版:2018年6月4日  定価:1,500円+税

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(2018年10月25日入力)
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