「九条の会・わかやま」 362号を発行(2018年11月20日付)

 362号が11月20日付で発行されました。1面は、「第15回憲法フェスタ」開催 守ろう9条 紀の川 市民の会、第53回「ランチタイムデモ」実施、九条噺、2面は、 「改憲の争点は戦争法」 木村草太氏講演、言葉・「国民投票法」のCM規制   です。
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「第15回憲法フェスタ」開催
守ろう9条 紀の川 市民の会


 11月11日、守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第15回憲法フェスタ」が和歌山市・河北コミュニティセンターで開催され、約100人が参加しました。

(展示の部屋)

 午前10時から「展示の部屋」では、会員の人形・押し絵・絵画・着物リフォーム・絵手紙・陶芸など、数多くの趣味の作品が賑やかに展示され、コーヒーや抹茶を飲みながら会員同士の会話が弾みました。

(リサイクルひろば)

 同じく数年前からやっている「リサイクルひろば」も開かれました。いらなくなった物をみんなが持ち寄り、気に入った物があれば「タダで」持って帰ってもらうというもので、好評を博しています。
 多目的ホールでは、これも恒例になりましたが、「ヒロシマ・ナガサキ 原爆と人間」の写真展示が原水協・白井春樹さんの解説付きで行われ、また、例年小さな部屋で行っていたDVDの上映が今年は多目的ホールで行われました。例年と同様の沖縄映像で、ドキュメンタリー映画『いのちの海 辺野古 大浦湾』(謝名元慶福監督)を大きな画面で見ることができました。
 午後2時からは多目的ホールでのメインプログラムです。

(原通範代表)

 最初に原通範代表から開会の挨拶があり、まず、長年「展示の部屋」を切り盛りされていて、今年9月に亡くなった網本和代さんにこの憲法フェスタを捧げたいとの話がありました。そして、戦前のビルマでのインパール作戦を取り上げ、決してこのような悲惨なことにならないように、私たちは頑張って改憲を阻止していかねばならないと挨拶されました。

(クロウフィールド)

 続いてファミリーバンド・クロウフィールドが、第13回憲法フェスタに次いで2度目の出演となりました。和気あいあいとした雰囲気の中、素晴らしい演奏が繰り広げられました。演奏された曲は、「イマジン」「サウンド・オブ・サイレンス」「未来へ」「この島~憲法9条のうた」「レット・イット・ビー」「ウージの唄」「島人(しまんちゅ)ぬ宝」でした。演奏の最後は参加者が立ち上がり、「カチャーシー」風(?…)に踊りました。

(飯島滋明氏)

 最後は、名古屋学院大学教授・飯島滋明氏の講演「自民党改憲案にどう向き合うか~私たちの具体的な対抗策は~」が行われました。
 冒頭、飯島氏は自民党の「憲法改正誓いの儀式」の映像を映し、その中で元法務大臣・長勢甚遠氏が「自民党改憲草案は、国民主権、基本的人権、平和主義を堅持すると言っている。この3つをなくさなければ本当の自主憲法にならない」と主張し、総理大臣補佐官・衛藤晟一氏は「今奪われている領土、北方領土、竹島を取り戻そう。さらに尖閣は軍事利用しよう」と発言していることを紹介されました。
 「改憲が発議されても、国民投票で否決」という考え方は、与党の宣伝力(金)と世論操作で簡単ではないと説明され、過去には独裁者が自分の権力固めに人気投票の「国民投票(プレビシット)」を利用した歴史からドイツでは国民投票をしないとのこと。本当の国民投票(レファレンダム)かどうかが問題だと指摘されました。
 今の憲法に自衛隊を書き込むということは、安保法制下の自衛隊
を憲法的に認めることだ。「自衛隊が海外で戦っている時に、国内で自由に歌を歌っていていいのか」といったことになる。また、今、大学では軍事研究はしないと言えるが、自衛隊が憲法に書き込まれると、それも出来なくなる。9条改憲は学問の世界にも大きな影響がある。
 旧憲法下では女性は下位に置かれたが、現憲法で男女平等が謳われている。改憲でこの逆戻りは許されないが、自民党が言う「男女総活躍時代」で、逆に改憲によって女性も戦場に駆りだされ、戦闘部隊に配備される危険がある。戦闘相手に拘束されたら大変な目に遭うことになる。
 緊急事態条項は9条改憲よりもっと重要ではないか。改憲勢力は来年の参院選で3分の2を取れないかもしれない。そうなると発議が出来ない可能性があるので、5、6月に何としてもやってしまおうということなり兼ねないと指摘されました。
 国民投票に持ち込ませないことが重要で、学習会・デモ・集会が必要。もし、国民投票になっても「否決」に追い込む状況を作るため、特に、改憲の是非について意見がない市民への働きかけを強調されました。
 飯島滋明氏の講演要旨は3回に分けて、次号以降に掲載する予定です。



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第53回「ランチタイムデモ」実施



 好天に恵まれた11月12日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける53回目の「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われました。
 安倍首相は、自衛隊観閲式や臨時国会での施政方針演説で「憲法尊重擁護義務」に背いて「内閣総理大臣」として自衛隊明記の9条改憲に意欲を燃やしています。「安倍9条改憲」を絶対許すなという決意も新たに、70人の市民が参加し、参加者は「憲法守れ」「民意を無視する政府を変えよう」などと訴え、和歌山市役所から京橋プロムナードまで行進しました。
 今後の日程は、12月10日(月)、1月16日(水)、2月13日(水)です。



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【九条噺】

 「守ろう9条 紀の川 市民の会」の憲法フェスタで飯島滋明先生の講演「自民党改憲案にどう向き合うか」を聞いた。詳しくは置いて印象に残った点を記す▼冒頭の動画、自民党の改憲決起集会で「必ず改憲しましょう」のみならず、「北方領土を取り返しましょう」「尖閣を使いましょう」等と訴える異様な雰囲気に驚く。続いて、与党は来夏の参院選で3分の2を割ることを憂慮し、世論を見て勝てる時に改憲発議を仕掛ける構えとの指摘に、間近い緊迫を感じた▼「国民投票で否決」は、与党の宣伝力と世論操作で簡単ではないと納得。独裁者が権力固めに利用した歴史からドイツでは国民投票をしないとの指摘は新鮮だった▼講演内容の多くは、改憲で社会がどう変わるかだった。まず、旧憲法で女性は下位に置かれたが、現憲法で男女平等が謳われた。改憲で逆戻りは許されない。与党の言う「男女総活躍時代」は、改憲で女性も戦場への危険を含む。安上がり労働力の側面は知っていたが戦場に送る意図に寒気がした▼現行憲法の精神「基本的人権」「国民主権」「平和主義」を敵視する改憲論者の発言から、縛りを外して国家優先の戦争できる国へのねらいが分かった。また、改憲の柱の一つ「教育無償化」は国民精神動員をねらうと分かった▼自民党改憲案に立ち向かうには、学習会・デモ・署名・対話を地道に、若い人はマスコミやネットの影響大だが身近な人の意見を聞く傾向も、に勇気づけられた。(柏)

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「改憲の争点は戦争法」 木村草太氏講演



 11月6日、和歌山県民文化会館小ホールで、和歌山弁護士会主催の憲法改正問題に取り組む全国アクションプログラム「憲法9条をめぐる議論を理解するために」が開催されました。
 講演した首都大学東京教授・木村草太氏は、憲法とは近代国家が成立してから立憲主義に基づき、①軍事と戦争のコントロール、②人権の保障、③権力を分立して独裁を許さないためのものと説明し、「武力行使は、基本的に国際法違反で、憲法9条の中核的なものは現在の国際社会のグローバルスタンダードだ」と強調されました。戦争法によって集団的自衛権の行使が出来るようになったと指摘。戦争法を肯定するためには集団的自衛権を憲法に明記しなければならないが、その争点を隠すために憲法への自衛隊明記が持ち出されたもので、安倍9条改憲問題の「本当の争点は安保法制(戦争法)だ」と告発されました。
 また、質疑応答での「国会議員が改憲を主張するのは憲法尊重擁護義務に違反するのではないか」との質問には、「改憲発議は国会議員がするので、改憲を主張することも出来るが、憲法の根本を変えるような主張は、憲法擁護義務に反する」と説明されました。

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言葉・「国民投票法」のCM規制

 「国民投票法」は改憲手続きを定めたもので、07年に成立しましたが、問題山積みで18本もの付帯決議がつきました。(14年に投票年齢を「18歳以上」に引き上げ)
 改憲案への賛成・反対を呼びかけることを「国民投票運動」と言い、この法律は国民の活発な議論と自由な意見表明を促すために、規制は最小限となっています。通常の選挙では禁じられている戸別訪問や署名運動もでき、チラシ配付や集会、街宣カーでの運動も行え、ネットもフル活用できます。裁判官や警察官など一部を除き公務員も投票勧誘や賛否の表明が認められます。活字の広告への規制も一切ありません。
 但し、テレビ・ラジオのCMだけは、投票日14日前から禁じられますが、それは改憲案への賛成・反対を勧誘する「国民投票運動」のCMのみで、意見表明だけのCMは該当しません。つまり、「この改憲案に賛成しましょう」というCMはダメだが、「私はこの改憲案に賛成です」と言うのはOKだというのです。「国民投票運動」には、選挙と違って費用の制限はなく、CM広告料は東京圏のゴールデンタイムは1本数百万円と言われます。資金力に恵まれた陣営は終始優位に立つことになります。
 資金力のある側が大量のCMを流せば投票の公平性を保てないのは当然です。自民党の船田元衆院議員ですら「金に糸目をつけずCMが横行すれば国民に影響が出てしまう。きちんとした公平なルールを確立することが重要だ」とルールの検討をあらためて主張しています。

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(2018年11月20日入力)
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