「九条の会・わかやま」 364号を発行(2018年12月16日付)

 364号が12月16日付で発行されました。1面は、自衛隊明記は世界中で戦う自衛隊を憲法的に認めること(飯島 滋明 さん ②)、【予告】「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」、九条噺、2面は、月山桂先生を偲ぶ 「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓、第54回「ランチタイムデモ」実施  です。
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自衛隊明記は世界中で戦う自衛隊を憲法的に認めること

 11月11日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の「第15回憲法フェスタ」が開催され、名古屋学院大学教授(憲法学)・飯島滋明さんが「自民党改憲案にどう向き合うか~私たちの具体的な対抗策は~」と題して講演されました。要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

飯島 滋明 さん ②



 自衛隊が海外で戦うようになると、自衛隊員に死傷者が出て、自衛隊に入る人が減ってくる。そうなると徴兵制にならないと言えるだろうかと野中広務さんや加藤紘一さんらは言っている。安倍首相たちは徴兵制を議論されることを非常に嫌がって、デマだとか言っている。今の戦争はハイテク化しており徴兵制はあり得ないのだとも言っている。2年前の聞き取り調査で自衛隊関係者は、むしろハイテク化しているから女性でも子どもでも可能だと言っている。今年7月、自衛隊の準機関紙「朝雲」は徴兵制の議論をして、女性自衛官を9%まで増やそうと言っている。民間人も間違いなく戦場に行かされる。看護師は朝鮮戦争時、九州だけで千人、全国から数千人が米軍の博多キャンプの野戦病院に連れてこられた。米軍の看護師の下で韓国にも送られている。湾岸戦争ではアメリカの要請で50人の中東医療派遣団を派遣している。12年1月には医療関係者だけでなく、看護学生も長崎空港の実働訓練に参加させられている。昨年4月には稲田防衛大臣が普通科中隊(歩兵)、戦車中隊の実戦部隊に女性を配備すると言った。今までも女性はいたが、実戦部隊には配備しなかった。もし、戦闘で拘束されたら大変なことになる。安倍政権の「女性活躍」の実態は女性を戦場に送ることと言える。
 憲法改正の動きはどうなっているか。昨年5月3日、安倍首相は自衛隊を憲法に書き込むと言い、その後何度も改憲を言っている。変えるのは「緊急事態条項」「合区解消」「高等教育の無償化」「自衛隊を憲法に明記」だが、改憲に向けた体制づくりとして、野党とも協調する細田博之氏から強行論者の下村博文氏に憲法改正推進本部長を代えた。衆議院憲法審査会の筆頭幹事を、野党と協力しようとした中谷元氏から新藤義孝氏に代えた。これはいざとなれば強行突破するというメッセージだろう。来年の5~6月に憲法改正の国民投票に自民党は踏み切るのではないかと今の国会議員たちは述べている。それを踏まえた私たちの行動が求められている。下村氏は289ある衆議院の小選挙区の支部に「憲法改正推進本部」を設置し、改憲を草の根で広げようとしている。改憲への自民党の策は着実に動き出している。
 自衛隊明記の問題点は、安倍首相は昨年5月3日に「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれというのは、あまりにも無責任です」と言っている。この言葉だけを聞けばそうだと思う国民が多いと思う。安倍首相は自衛隊を憲法に書き込んでも現状を認めるだけだと言うがそうではない。15年9月15日、安保法制が制定された。世界中で自衛隊が戦ってもよいことを認めるのが安保法制だが、まだ憲法的に認められた訳ではない。しかし、国民投票によって自衛隊が書き込まれたら、憲法的に安保法制を認めることになる。その結果として、世界中で自衛隊が戦うことになる。今年3月に自民党は改憲のたたき台素案を作っている。9条の2に「国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず」とある。国及び国民の安全を保つためなら世界中で何をやってもいいと解釈される可能性が出てくる。法は後に出来た法が優先されるので、これが憲法的に認められてしまう可能性がある。そうすると、「戦争放棄」の9条1項、「交戦権否認」の2項はないのと同じ結果になってしまう。
 世界中で自衛隊が戦うようになると何が起るか。2年前の7月、南スーダンのジュバで政府軍と反政府軍の戦闘で自衛隊宿営地の上を砲弾が飛び交う事態になっており、安倍首相や稲田防衛大臣は戦闘ではないと言っていたが、実際には遺書を書いている自衛隊員もいた。自衛隊員から「南スーダンを守ることが自衛権の範囲なのか」「積極的にほかの国のために血を流す必要があるのか」という声が出ている。安保法制や憲法改正には賛成しないというのが現場の自衛隊員の立場だ。15年7月、岸田外務大臣は「自衛隊員は紛争当事国の軍隊の構成員、戦闘員ではありませんので、ジュネーブ条約上の捕虜となることはありません」と答弁している。ジュネーブ条約上の捕虜なら裁かれないが、捕虜にならないのなら、自衛官はテロの一員と同じ扱いを受け、即裁判にかけられたり、拷問を受けたり、虐殺される可能性がある。安倍首相はこれを知っておりながら、海外で戦ってこいという法律を作り、実際に行かせている。これでは自衛隊を大切にしていることにはならない。自衛官と話すと、戦争に行かない幹部自衛官は憲法改正、安保法制に肯定的な発言をするが、実際に戦場に行く自衛官はそうではない。現場に行かされる人と行かされない人の違いは憲法の場面でも大きく出てくる。(つづく)

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【予告】「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲
 1・19和歌山県民のつどい」


みなさんの周りの方にもお知らせいただき、お誘いあわせの上ご来場ください



多くの団体や個人のみなさんから賛同の声が届いています。当日は講演だけでなく、落語や、この日のために結成された「Wakayama Peace Band」の演奏や、大人も子どもも楽しめるロビー企画もあります。楽しく、そして力強く「安倍9条改憲NO!」の声をあげましょう。

2019年1月19日(土) 開場12:30 開会13:30
和歌山県民文化会館 大ホール

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【九条噺】

 NHK番組「生まれ変わるスーパーカミオカンデ」を観た。飛騨神岡鉱山地下1千mにある高さ40m×直径40mの巨大水槽に5万トンの水を満たし、1万3千本の光センサーを持つ装置だ▼この装置はニュートリノを観測し、遠い宇宙で起った超新星爆発を捉え、私たちの起源、宇宙の成立ちに迫ることができるとか。ニュートリノは宇宙で最も多い素粒子の一つで、身の回りを光速で飛び交っており、私たちの体を1秒間に数百兆個も突き抜け、地球をも通り抜けるそうだ。ニュートリノは大量に降り注いでいるため、巨大水槽でニュートリノを捉えられるという▼01年11月12日、光センサー6千本が破損する事故が起きた。12年ぶりに水が抜かれ大改修が行われた。研究に携わる物理学者全員が作業衣・ヘルメットで作業に参加。タオルで水槽の汚れを落としていた研究者の「ぼくは楽しいですよ。だって今これを取った分が後で楽になって返ってきますからね」という言葉が新鮮だ▼スーパーカミオカンデと前のカミオカンデは、02年小柴昌俊さん、15年梶田隆章さんと、2人のノーベル物理学賞受賞者を出した世界に誇る装置だ▼今年も本庶佑さんがノーベル医学生理学賞を受賞したが、18年の『科学技術白書』は日本の「研究力に関する国際的地位の低下が伺える」と指摘する。国立大学への運営公付金は04年から1400億円も減らされた。日本は軍事費ではなく、夢ある科学への金を増やす方が遥かに世界への貢献だ。(南)

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月山桂先生を偲ぶ
「九条の会・わかやま」事務局・柏原 卓




 「九条の会・わかやま」呼びかけ人で弁護士の月山桂先生が、今年(2018年)11月1日に逝去されました。1923(大正12)年生れ95歳でした。2005年9月の当会発足以来、長い間一貫して会の柱としてお元気で活躍してこられた先生を失ったことは、ほんとうに残念です。先生は、講演・対談・集会など数多くの場で憲法9条を守る思いを語られ、弁護士さんの会の街頭署名活動や「ぶんだら踊り九条連」にも顔を出されるなど、多くの方に知られ、運動の精神的な支えでした。その主な足跡は会紙「九条の会・わかやま」でたどることができます。連載「戦争とはかくも虚しきもの」(06年12月30日)、和歌山弁護士会「憲法施行60周年記念市民集会」(07年5月11日)、朝日新聞和歌山版インタビュー(07年7月7日)、白浜9条の会講演(07年10月14日)、守ろう9条 紀の川 市民の会講演(08年2月2日)、和歌山県9条の会交流集会冒頭スピーチ(08年7月5日)、和歌山放送特別番組「憲法を考える」(09年5月3日)、『法曹界に生きて平和を思う』出版記念講演会(09年12月10日)、附属中学平和学習(10年7月7日)、出版『平和なくして人権なく 人権なくして平和なし』(11年12月10日)、月山弁護士に「わかやま平和賞」(13年3月14日)などが掲載されています。ホームページでは「会発足時のよびかけ人のメッセージ」「澤地久枝氏講演会の開会挨拶(06年5月13日)」でも語られています。著書『法曹界に生きて平和を思う』の「はじめに」に、「私は、『九条の会・わかやま』の呼びかけ人の一人として、前大戦当時の軍隊時代の思い出を語り、在野法曹として憲法九条改正の動きに反対し、微力ながら何としてもこれを阻止したい」と書かれた覚悟を最後まで貫かれました。個人的には、スピーチや原稿のお願いに事務所に伺った折々の厳しく優しい御顔が目に浮かびます。語り尽せませんが、ご冥福をお祈り致します。

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第54回「ランチタイムデモ」実施



 急に寒さが増した12月10日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第54回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、60人の市民が参加しました。
 出発前の挨拶で、藤井幹雄弁護士は、臨時国会における出入国管理法「改正」などに表れた安倍政権の傍若無人ぶりを「人権を全く考えていない」と厳しく批判しました。
 参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまで行進し、「憲法9条を守れ」「憲法を壊す政府を変えよう」などと訴えました。
 次回以降の予定は、1月16日(水)、2月13日(水)です。

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(2018年12月16日入力)
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