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憲法とは政治家らの公務員に
権力を濫用させないために縛る法律
1月19日、和歌山県民文化会館大ホールで「危ないぞ!みんなで止めよう安倍壊憲 1・19和歌山県民のつどい」が開催され、慶応大学名誉教授・小林節氏が「安倍壊憲をなぜ阻止しなければならないのか」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。
小林 節 氏 ②
安倍首相は憲法とは国の理想を書くものだと言っているが、ふざけないでほしい。最高の権力者を縛るから普通の法律の上の最高法だ。安倍首相は、最初は憲法を改正して憲法から自由になろうと悪巧みをしていたが、国民が独裁的な権力を許してしまったので、調子に乗って憲法を無視しようと、特定秘密保護法を作って主権者国民の目と耳と口を塞いでしまった。そして戦争法を作ってこの憲法の下で、海外で戦争が出来る国にしてしまった。人は心の中で何を考えようが、行動しない限り自由だ。人間の心には安全弁があるので、まともな国の刑法は人間の行動しか対象にしない。ところが共謀罪は打ち合わせ段階で対処するという法制になっており、それを立件するために、盗聴、盗撮、内通、内偵などが捜査手法としてセットになって、プライバシーのない状態になっている。
労働法制の改悪では、日本国憲法は、25条で健康で文化的な最低限度の生活を営む権利という生存権を総論として認め、28条で労働者が団結し、交渉し、サボタージュしても契約違反とはならないという免責条項がある。労働者という弱い者がまとまって生活を守っている。それを政府が労働者の働き方改革と言いながら、実は働かせ方改革で、明らかに労働環境は悪くなっている。アベノミクスなどと言い、金持ちが儲けると上から富が降ってくると言うが何も降ってこない。政府の巧みに工夫した統計ですら景気は後退したままで、我々の可処分所得は減っている。そういう経済的な締め付けの中で労働条件はどんどん悪くなっている。
LGBT問題も、科学の発展で、あれは本人が好んで選んでいるものではないことが分かってきた。これは本人の性格ではなく、悪趣味などと言ってはいけないのだ。それぞれの人は先天的に個々に自分である。例えば、今この会場にいる人は全部違った顔かたち、違った構えだが、国によっては集会の目的によって同じ服装で、同じ髪型で、同じ瞬間に腕がちぎれるほど拍手して、同じ場所で満面の笑みを浮かべてなど、全部同じようにしなければならないと、これは全体主義だが、我々の本性に反していると思う。何々でなければいけないとか、趣味が悪いとか、いちいち公的に言われたら気分が悪い。LGBT問題も偏見を前提にその人である本質を否定する空気が漂っていたが、それがいけないと分かった今に至っても、自民党は平然と批判している。そういう意味で今の政権は不寛容だ。極め付きは「美しい日本の憲法をつくる国民の会」共同代表の櫻井よしこ氏だが、美しいかそうでないかは各人が決めることだ。「美人コンテスト」などはアウトだ。櫻井氏らは「私が美しいと思うものをあなたたちも一緒に美しいと思いなさい。思わないと非国民です」と言っている。彼らの憲法草案には、日本の国旗は日の丸、国歌は君が代、そして国旗・国歌には敬意を払えと書いている。私は、オリンピックで日の丸が揚がるとうれしいと思うし、何かの記念式典で日の丸の前で「天皇陛下万歳」などと言うと気持が悪い。日の丸に対してもどんな態度をとってもよいと思う。国旗に対して敬礼などと最高法が命令するのは趣味が悪過ぎる。裁判所も今や官僚機構の一環として政府に逆らえない感じがする。
モリ・カケ問題は、要するに権力者と近いか近くないかだけで、近いと行政処理がすぐ済むし、国からお金も入ってくるし、不正をしても逮捕されないし、江戸時代のお代官と越後屋の世界だ。これは法治主義ではなく「俺の胸三寸」の世界だ。
沖縄問題も、日本のために沖縄の人たちは日本国民ではない扱いを受けている。これは地方自治に対する冒涜だ。一人一人の国民は私という個性とともに地域という個性を背負っているのだから、人が幸せを感じる人生を与えるのが国の仕事だ。
このように安倍政権のやり方はめちゃくちゃだ。でも、憲法をそのままにしておいて、法律や行政執行でやっているだけだから、政権交代をすればよいだけの話だ。変な法律は廃止するか修正し、行政は心のある人を要職につければ、どんどん働いてくれてよくなる。つまるところは政権交代だ。(つづく)
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「和歌山障害者・患者九条の会」憲法学習会を開催
2月11日、「和歌山障害者・患者九条の会」は「和歌山市ふれ愛センター」で、金原徹雄弁護士をお迎えして「改憲4項目の危険性を知り改憲阻止の闘いを展望する」というテーマで学習会を開催し、22名が集いました。
講演の中で金原弁護士は、自民党「改憲4項目」とは、「自衛隊の明記」、「緊急事態対応」、「合区解消」、「教育の充実」の4項目であるが、もちろん本命は9条だ。緊急事態条項は自然災害に限定されていない。世界中の憲法にあるというけれど、それは戦争をするためのもの。
もし、改憲が発議されたら、国民投票運動は誰でもできる。広告は金さえあれば何でもできる。公職選挙法は適用されない。そして改憲派は「もしも改正案が否決されたら自衛隊が無くなってしまう。それでもいいのか?」と国民を脅しにかかるかもしれない。我々も否決した後の自衛隊イメージをしっかりと持つ必要がある。
改憲案は内容において関連する事項ごとに賛成か反対かが問われる。とにかく「反対」が1票でも上回れば阻止できる。世論喚起のために、今まで話しかけたことのない層への働きかけが重要となる。などを強調されました。
マスコミは様々なことを言いますが、本当のことはあまり言いません。いかにだまされないかが問われます。そのためには今日のような学習会が非常に重要となります。要するに安倍改憲は「日本を戦争する国にするのか、しないのか」の選択で、そのことをしっかり広めていかなければならないと感じた一日になりました。(会の事務局・野尻誠さんより)
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【九条噺】
9月にラグビーワールドカップ日本大会が始まる▼18年、高校は大阪桐蔭高校が優勝し、大学は優勝こそ逃したが天理大が健闘した。トップリーグは神戸製鋼が15年ぶりに優勝し、2月からスーパーラグビーが始まった。サンウルブズの健闘を期待したい▼ラグビーのルールは少し難しい印象がある。筆者の大阪府立高校は1クラス男30人、女15人だった。体操の時間は2クラス合併で男60人、ラグビー4チームだ。晴天の体操はラグビーばかりでルールはいつしか覚えてしまった▼ラグビーは番狂わせが少なく、強い方が勝つという印象がある。15年ワールドカップ英国大会での日本と南アフリカの試合を思い出す。南アは2度の優勝を誇るトップ3の強豪で、日本の勝利は絶対ないと思っていた。ところが結果は34対32で日本チームが勝利。「史上最大の番狂わせ」と大騒ぎになった▼ラグビーは常に接触がある。力量や体格の差が結果に如実に反映する。日本はそこを分析し、スピードで対抗した。スクラム、ラインアウトの球出しを速めてボールを着実に獲得し、五郎丸選手のキックで着実に加点するなどの戦術が全員に徹底していた▼安倍首相は憲法に自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つと言う。彼らが今後どのようなやり方をしてくるのかをラグビーのように徹底分析し、たたかう戦略・戦術を明確にし、粉砕しなければならない。その上で、心置きなくワールドカップ日本大会で日本チームを応援したいと思う。(南)
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自民党が自治体へ「圧力」
自衛官募集協力状況調査を指示
自民党は所属議員に選挙区内の自治体の自衛官募集協力状況の確認を指示しました。狙いは9割近くの自治体が協力をしているのに、解釈を狭めて「6割以上が拒否」と強調し、自衛隊の憲法明記を進めるためです。
安倍首相は住民台帳閲覧は協力ではないと言いますが、これも「立派な」協力です。防衛省の昨年度の集計では、全1741市区町村の内、紙・電子媒体・宛名シールによる名簿提供は36.3%、台帳閲覧は53.5%、計89.8%が「協力」をしています。名簿提出にも、閲覧にも応じていないのは、5自治体に過ぎません。
防衛省が自治体の「協力」の根拠にする自衛隊法の規定に罰則はなく、自治体に協力義務はありません。国と対等な関係にある自治体に、この規定で対応を強制するのは法的に無理です。
安倍首相のこの発言は、改憲右翼団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が、「災害救助を要請する自治体が、なぜか自衛隊員募集には非協力」「自治体が円滑に業務を遂行するため、自衛隊の憲法明記を」と言い出したものを、おうむ返しにしたものです。自衛官募集のために、自治体に若者の名簿提出を強制し、若者を戦場に強制動員する徴兵制にもつながる動きを許すことは出来ません。
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書籍紹介 『9条の挑戦』非軍事中立のリアリズム
軍事に頼らず守ることは“お花畑”なのか。
この本が提示するのは日米安保や自衛隊によらない「非軍事中立戦略」。軍事力に頼らず、どこの国とも軍事同盟を結ばない、日本社会の現実を直視した防衛戦略への転換を考えてみよう、というものです。
著者の一人伊藤真弁護士は「『非軍事中立』と言うと誤解されることがありますが、これは単なる倫理的、あるいは宗教的な話ではないのです。私自身、『殺すより殺されたほうがいい』なんてまったく思っていません。『非軍事中立』を唱えるのは、むしろそれが『現実的な選択』だから。貧困などさまざまな問題が山積する中で、現実的な問題として、軍隊にお金をつぎ込むことが国民を幸せにすることになるとは思えません」と指摘しています。
【内容】
第1章:憲法9条の防衛戦略(伊藤 真)
第2章:憲法学は何を主張してきたか(神原 元)
第3章:日米同盟と「専守防衛」のひずみ(布施 祐仁)
第4章:等身大の安全保障論(伊藤 真・神原 元・布施 祐仁)
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発行:(株)大月書店
TEL:03-3813-4651 FAX:03-3813-4656
著者:伊藤 真、神原 元、布施 祐仁
判型:四六判、256ページ
出版:2018年11月15日 定価:1,600円+税
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統計不正問題についての世論調査結果
(朝日新聞2月19日付より)
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