「九条の会・わかやま」 377号を発行(2019年07月04日付)

 377号が7月4日付で発行されました。1面は、第61回「ランチタイムデモ」実施、「和歌山障害者・患者九条の会」13周年の総会&記念講演会開催、憲法研究会草案を下敷きにしたGHQ草案(長峯信彦 氏 ②)、九条噺、2面は、『自民党憲法改正推進本部作成 改憲案(4項目)「Q&A」徹底批判』<その2>、お知らせ   です。
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第61回「ランチタイムデモ」実施



 7月1日、生憎の梅雨空の下、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が呼びかける第61回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、70人の市民が参加しました。
 出発前の挨拶で藤井幹雄弁護士は、「5年前の今日、集団的自衛権の行使を容認する憲法違反の閣議決定が強行された。7月1日のデモ出発に当り、戦争だけは絶対にダメだと訴え続けたい。トランプ米大統領は、日米安保条約では日本はアメリカを守らないのは不公平だと言ったが、トランプべったりの安倍首相は、唯々諾々として自衛隊員の命を差し出しかねない。決してそのような国にしてはならない」と訴えました。

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「和歌山障害者・患者九条の会」13周年の総会&記念講演会開催



 6月9日、「和歌山障害者・患者九条の会」は和歌山市ふれ愛センターで20名の参加で、総会を開催しました。
 当会は、視覚障害、聴覚障害、精神障害、知的障害、肢体不自由、難病など、様々な障害の方が集っています。お互いの生活の不便さは障害が違えば知らないことが多い状況です。今回の記念講演の講師は、当会の世話人でもある聴覚障害者の山東浩二氏です。「平和と人権、私たちの活動」というテーマで、聞こえないことの不便さについて話されました。
 聞こえないので、相手の言っていることが十分理解できず、仕事場で上司や同僚が声をかけても振り向かないからと物を投げられたり、昼休みのベルに気付かず仕事をしていて、周りの人は既に休憩していたりと人間関係もうまく作れず、仕事が長続きしないケースもあるそうです。受診時の医師とのやりとりも、専門用語が多く困るとのこと。昨年、聴覚障害者協会による有料老人ホーム「きのくにの手」がオープン、手話でコミュニケーションを図れる環境が整った老人ホームは全国でも約10カ所しかなく、和歌山県内では初めてだそうです。
 視覚障害である私(野尻)は音を頼りにしますが、聴覚障害の方は見る情報を頼りにしています。気付かなかったことが多く、貴重な機会となりました。
 最後に、広島の原爆を体験した方や武器を作る工場で働いた先輩方の話に触れ、「二度と戦争はしてほしくない」と、平和への思いを強くしました。
 会の終了後、JR和歌山駅前に移動して「安倍9条改憲NO!3000万署名」活動を行い、「戦争させない署名にご協力ください」などとマイクで訴えました。11人が参加して約45分で40筆を集めることができました。(事務局・野尻誠さんより)

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憲法研究会草案を下敷きにしたGHQ草案

 6月2日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第15回総会で愛知大学教授(憲法学)・長峯信彦氏が「安倍改憲のトリックを斬る~憲法制定過程の真実と平和憲法を守る歴史的責任~」と題して講演をされました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

長峯信彦 氏 ②



 憲法研究会は日本人7人の研究者団体だ。45年10月初旬に相談し、12月末には草案を発表した。GHQはこの草案に注目し、念入りに翻訳したラウエルがマッカーサーの側近に報告した。日本政府に憲法改正は出来ないのではないか、しかし、アメリカ人が勝手に作ってはいけないので、ゆくゆくはこれを切り札に使えるとGHQが研究をしていた。鈴木安蔵は以前から注目をされており、彼がいる研究会なら見てみようという経緯だったようだ。ラウエル文書は始めに憲法研究会草案が如何に優れているかが書かれ、後には欠けているところが列挙されている。欠けているところを我々が作れば憲法になるという発想だ。後に実際に彼らはこれを使った。ラウエルの列挙こそ、GHQ草案作成に当り憲法研究会草案を下敷きにした証左だ。中身を見るとよく似ている。憲法研究会の案がGHQ草案の下敷きになったことは客観的事実と言える。それは象徴天皇制に関して顕著であり、「日本国の統治権は日本国民より発する」というのが憲法研究会の草案だった。「国政の一切の最高責任者は内閣とする」「天皇は国民の委任により、専ら国家的儀礼を司る」としている。日本国憲法制定時の最大の争点は天皇だった。軍備の解体は大きな争点にはなっていない。当時の保守的な権力者たちの行動原理は如何に天皇を護るかだけだった。国民の人権を守るとかはどうでもよいという感覚で、国体の護持が最大の課題だった。憲法を日本が作らないでアメリカが作ったのがよくないと言う人は多い。アメリカ本国はGHQが勝手に天皇制を温存する憲法を作ることにはブレーキをかけるスタンスだった。ワシントンでは天皇を裁判にかける空気が強かった。日本にいたGHQは天皇の一言で武装解除が出来たことを驚異的に感じ、これを利用しない手はないと考えた。マッカーサーには日本統治を成功させて帰国したいという下心もあった。日本統治を成功させるためには天皇を利用した方がいい、天皇が権力を持たないようにして、利用出来る時には天皇に登場してもらうということを考えた。これらの総合結果が日本国憲法だった。日本国憲法は実はそういうGHQの思惑も受けて、日本政府が天皇を護れるなら取引に応じるという天皇を護る避雷針としてGHQ草案を選択したものだ。だから、天皇を護ってくれたのはGHQで、右翼はマッカーサーに感謝しなければならない。日本政府の草案は、「天皇は至尊にして侵すべからず」「日本国は万世一系の天皇が統治権を総攬」「日本国は君主国とし、万世一系の天皇を以て君主となす」というもので明治憲法から何も変わっていない。「万世一系」と言うが、少なくとも26代継体天皇で途切れていると言われるし、15代応神天皇はその前の天皇と血縁がないのではないかと言われ、10代崇神天皇に繋がっているかも分からない。「万世一系」はそもそも嘘だと多くの人が信じている。
 GHQ民生局のケーディス大佐、ラウエル中佐、ハッシー中佐は有名だが、ベアテ・シィロタは当時22歳で日本国憲法の14条と24条の原案を起草した。24条には個人の尊厳と両性の本質的平等が書かれているが、個人の尊厳はここ以外には書かれていない。非常に格調高いことを彼女が書いた。彼女のお陰で個人の尊厳と両性の本質的平等が憲法に刻まれた。民法の冒頭にもこの2つが書かれており、彼女の功績は非常に大きい。今で言えば彼女は大学4年生、憲法も法律も勉強したことがない全くの素人の若者だった。彼女は国会図書館で各国の憲法を読んで、各国の憲法のいいところを全部取り入れようとした。彼女は日本で育ったので日本の男女不平等をよく分かっていた。彼女の草案には非嫡出子と未婚の母には法的保護が与えられるべきであると書いている。ケーディスにこんなに書いたら憲法ではなく民法だと言われる。アメリカ憲法には性別による差別の禁止はなく、法による平等の保障だけだ。ケーディスは、これではアメリカ憲法以上になってしまう、敵だった日本にこんないい憲法をプレゼントしてもいいのかという思いになったのではないか。世界最高の憲法をGHQが作ったら流石にどうかということで、いろいろ切り取られて残ったのが14条と24条だった。14条は「全て国民は法の下に平等」と書かれているが、ベアテ草案は「全て人間は」と、国籍による差別のないユニバーサルな表現になっていた。
 憲法制定の国会審議では、非常に重要な修正が行われた。「国民主権の明記」「生存権の明記」「無償義務教育は中学校段階まで含む」の3つだ。「国民主権」は、日本政府案として国会に提出した時には、「日本国民の至高の総意に基づき」という言い方に変えて、「主権」の2文字を敢えてカットしたが、保守的な日本政府は国民主権をごまかせないと判断し、「国民主権」になった。「生存権」は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ということが憲法に書かれた非常に重要な条文だ。生活保護はお情けではない。貰う権利があり、貰っている人を絶対に馬鹿にしてはいけないのだ。これを明記したのは国会審議だ。憲法研究会の原案にはこの項目はあったが、GHQ草案では落とされていた。GHQの中心メンバーはアメリカ憲法が頭にある人たちで、権力を呼び寄せる社会権と、権力を排除する自由権は逆なもので、同時に憲法に書くと権力が余計なことをする。アメリカ憲法は自由権中心で社会権は書いていない。福祉は憲法上の権利ではなく政策としてやっているだけだ。社会権は憲法上ないものだから、福祉政策は予算がなくなれば削るというものだ。一旦確定したものを削る場合には手続き的なプロセスに違反してはいけないという形で、権利という言い方もされるが、日本の25条のような条文はない。(つづく)

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【九条噺】

 アジサイ(紫陽花)が美しく咲いている。アジサイの花弁に見えるのは萼(がく)で、花期も長い。花序の周辺に装飾花を持つ日本原産のガクアジサイが原種になっており、花序が球形で全て装飾花となったアジサイは、「手まり咲き」と呼ばれる▼日本、欧米などで観賞用に広く栽培され、白、青、紫、赤など多くの品種が作り出されているが、ヨーロッパで品種改良されたものはセイヨウアジサイとかハイドランジアとか呼ばれる▼アジサイは土壌のph(酸性度)で花の色が変わり、「酸性ならば青、アルカリ性ならば赤」になるという。土壌が酸性だとアルミニウムが土中に溶け出し、アジサイに吸収され、花の色素アントシアニンと結合し青色を呈するのだそうだ▼ところで、アジサイの学名で面白い話がある。この学名は無効になっているが、1832年頃、シーボルトはアジサイの学名を「Hydrangea otaksa」と命名した。牧野富太郎は「otaksa」はシーボルトの日本人妻・楠本滝の名前を潜ませて、「お滝さん→otaksa」としたと非難した▼「otaksa」の名はシーボルトとお滝さんのロマンスをイメージさせて、恋の舞台の長崎市では、市の花をアジサイと定め、今は品種の隔てなく、全てのアジサイを「おたくさ」「お滝さん花」と呼んで親しんでいるという。開催される「長崎紫陽花まつり」の正式名称は「ながさき おたくさ まつり」というそうだ▼政治でもphを変えて政治の色・方向を変えられないものか。やっぱり無理だね。(南)

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【改憲問題対策法律家6団体連絡会作成】より <その2>

【Q4】憲法9条について、どのように考えているのですか?
【A】憲法9条が掲げる徹底した平和主義に替えて、日米安保条約などによる軍事的対応の強化・拡大を考えています。「自民党Q&A」は、憲法9条の徹底した平和主義は、「国連の集団安全保障体制の下で日本の平和が守れることを想定して」いたものであるが、「国連安保理が期待どおりに機能を果たさなくなっ」たため、自衛隊を作り、安保条約によって、日本に対する武力攻撃には日米両国が共同で対処することになったとし、これを「現実を踏まえた対応」と位置付けています。しかし、日米安保条約は、変則的ではあるものの軍事同盟条約の一種であり、国連の集団安全保障体制とは別物の、「同盟による平和」の時代の遺物です。自民党の9条改憲案は、この日米の軍事同盟体制をより一層強固にして、自衛隊の海外での武力行使をさらに拡大することを狙うものであり、「武力によらない平和」を希求する憲法9条の精神に反するものです。

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お知らせ

前名護市長・オール沖縄共同代表・稲嶺進氏の講演「沖縄はあきらめない!~沖縄県民はなぜ辺野古新基地建設に抗うのか~」の要旨の3回目は378号に掲載します。

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(2019年07月04日入力)
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