「九条の会・わかやま」 379号を発行(2019年08月08日付)

 379号が8月8日付で発行されました。1面は、「戦争展わかやま2019」開催、第62回「ランチタイムデモ」実施、改憲勢力 2/3割れ、九条噺、2面は、自民党 マンガ本『自衛隊明記ってなぁに?』を作成、『改憲案(4項目)「Q&A」徹底批判』<その3>   です。
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「戦争展わかやま2019」開催

 「平和のための戦争展わかやま2019」が7月27日~28日、プラザホープ(和歌山市)で開催されました。


 (2Fギャラリー)

 2Fギャラリーでは、テーマごとに写真パネルや絵日記や戦時中の実物展示など充実した内容で、特に実物の収集に力を注いだことが感じられました。今年はビキニ水爆実験に焦点を当てたので、伊藤宏氏収集のゴジラのフィギュア群が壮観で、また戦時中のポスターや奉公袋なども生々しく感じられました。


 (ゴジラのフィギュア群)

 展示テーマは、①ビキニ水爆実験で誕生したゴジラ、②和歌山大空襲、③演劇と戦争、④語り継ぐ高校生(広島高校生の原爆の絵)、⑤和歌山の本土決戦遺跡、⑥戦争に総動員された国民生活、⑦第五福竜丸と和歌山、⑧対外戦争への準備着々24万人自衛隊の装備、⑨和歌山大空襲体験絵巻、⑩友ヶ島の戦跡、⑪沖縄戦新聞(現在の視点で)でした。


(演劇と戦争)

訪れた人はそれぞれ展示に見入ったり、写真を撮ったりしていました。


(自衛隊の装備)

 午後は4階ホールでオープニング・講演・パネルディスカッションが行われました。オープニングは、TOYBOXの2人が「サライ」「ヒロシマの有る国で」「世界が一つになるまで」など平和への願いを込めて歌いあげました。


(TOYBOX)

 続いて、「高知平和資料館・草の家」副館長の岡村啓佐氏が「『ビキニ事件』と日本の戦後~消されたマグロ漁船員たち~」と題して講演をされました。
 岡村氏は、①「ビキニ事件」は、ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下と、その後の米ソの核開発競争上の事件、②「ビキニ事件」による核被災船は、第五福竜丸だけでなく延べ1000隻にも及び、今も未解決事件である、③日本政府が「ビキニ事件」を利用し、「戦犯の解放と仮釈放」を求め、200万ドルで手打ちして政治決着した、④「ビキニ事件」後の反米感情を相殺するために「原子力の平和利用」が持ち込まれてきた、⑤731部隊の戦犯免責→原爆投下実験後の調査→「ビキニ事件」→福島原発事故は、根っこでつながっている、ことなどを話されました。(岡村氏の講演要旨は次号に掲載)


(岡村啓佐氏講演)


(第五福竜丸)

 続いてパネルディスカッションが行われ、伊藤宏氏(和歌山信愛女子短期大学教授)、岡村啓佐氏、仲江孝丸氏(紀州語り部の会)の3人が発言されました。伊藤宏氏は、ゴジラに込められた水爆実験への警告を思い、核兵器禁止条約を批准する日本へと訴えられ、仲江孝丸氏は、第五福竜丸が1947年和歌山県古座町でカツオ漁船第七事代丸として進水する前の事情からビキニ被爆から現在までを丁寧に語られ、岡村啓佐氏は、第五福竜丸以外の被害漁船乗組員への国家賠償裁判と労災認定申請の状況を語られました。


(パネルディスカッション)

 質疑応答では、「原爆・ビキニ・福島がつながる話は初めてで驚いた。若者に興味を持ってもらうには」「科学者なのになぜ悪いことに加担するのか」「廃棄させられたマグロの補償は支払われたのか」など活発な質問にパネリストが丁寧な回答をされていました。2019年の現時点で、平和を守る運動にとってインパクトのある切り口を示してくれた講演・パネルディスカッション、そして展示でした。
 

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第62回「ランチタイムデモ」実施

 8月6日、炎天下の広島原爆の日、憲法9条を守る和歌山弁護士の会が呼びかける第62回「憲法の破壊を許さないランチタイムデモ」が行われ、70人の市民が参加しました。
 先の参院選の野党統一候補だった藤井幹雄弁護士は、和歌山市役所前での出発挨拶で、選挙支援への感謝を述べ、これからも力を合わせて安倍改憲を葬り去り、核と戦争のない世界を実現するためのたたかいを続けていこうと呼びかけました。
 参加者は和歌山市役所から京橋プロムナードまで、「安倍9条改憲反対」を訴えて行進しました。



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改憲勢力、2/3割れ

 参院選挙の結果、自民、公明、維新などの「改憲勢力」の獲得議席は81議席で、非改選と合わせて160議席。国会発議に必要な164議席を得られず、改憲派の3分の2体制が崩れました。
 安倍首相は、改憲派議席が3分の2を割ったにも拘らず会見で「国民からの力強い信任を得た」「少なくとも改憲議論は行うべきだ」と発言しています。また「改憲案策定に、強いリーダーシップを発揮していく決意だ」と述べ、「任期中の改憲」に強い執念を見せています。
 しかし、改憲勢力が3分の2を割ったのは「性急な改憲を望まない」という民意が示されたということです。改憲策動を許してはなりません。

党派別議席数



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【九条噺】

 「はやぶさ2」が7月11日、「リュウグウ」への再着陸に成功したと発表された。「リュウグウ」は今、地球から約2.4億キロ離れ、電波が届くのに片道13分半かかり、地球から着陸を管制出来ないので自らの判断で降下し、予定通り着陸したという▼「はやぶさ2」は、5月に投下したターゲットマーカーを目印に高度30mから完全に自律的に目標の地点に着陸し、サンプラーホーンから発射された弾丸によって舞い上がったサンプルを採取し、数秒間で離陸した。2月の着陸では地表の砂や石の採取に成功したが、今回は4月に作った人工クレーターから地下の物質の採取に成功した模様という▼正確に着陸出来たのは、10万回の着陸シミュレーションを行い、すべて成功させていたからだという。日本の科学者が達成したこの偉業に大きな拍手を送りたい▼この成功の背景には、「はやぶさ1」が途中行方不明という大きな困難を乗り越えて帰還し、地上にサンプルを届けた経験とそれを支えた「1」の運用チームの「執念」が引き継がれていることがあると思う▼ミッションの最終目的はサンプルリターンだからまだ完全成功とは言えないが、それにも成功し、その成果が世界の科学者にも提供され、科学の大きな進歩につながることを期待したい▼安倍政権もステルス戦闘機F35を147機も購入、維持費も含め6.2兆円などというバカげたことに金を使うのではなく、夢と平和と科学と福祉のために使うべきではないのか。(南)

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自民党、マンガ本『自衛隊明記ってなぁに?』を作成



 自民党は、『マンガでよくわかる~憲法のおはなし~自衛隊明記ってなぁに?』というマンガを20万部も発行しています。改憲への若者の関心を高めるのが狙い。参院選候補者らの演説会場で配布したほか、ホームページにも掲載しています。
 マンガは、「今の憲法はGHQの草案をもとに作られた」「GHQはたった『8日間』で作った」「私たちの国の憲法を他の国の人が考えた。私たちの家のルールをご近所さんが考えるようなもの」と、典型的な押し付け憲法論を展開します。
 「自衛隊を明記したら何か変わるか」と聞くと「何も変わらない」。「急に戦争なんてないよね」と聞くと「戦争放棄を定めた憲法の平和主義は絶対に変えない。自衛隊明記は自衛権行使の範囲を変えるものではなく、専守防衛は今までと同じ」「1項、2項をそのまま残し、9条の解釈は変えないことを明確にしている」と説明しますが、変えないなら書く必要はないし、集団的自衛権に基づく自衛隊の海外派兵には言及しません。「ウソばっかり」と言わなければならない論理展開が続きます。
  マンガはここから → http://constitution.jimin.jp/document/force/

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【改憲問題対策法律家6団体連絡会作成】より <その3>

【Q5】自衛隊を憲法に明記する必要はあるのですか?
【A】 自衛隊が今まで以上に海外で軍事活動を拡大するためには、憲法に明記することが必要です。「自民党Q&A」は、自衛隊明記の必要性として以下の理由をあげています。自衛隊が「多くの国民の支持を得ているにもかかわらず、①合憲と言う憲法学者が少なく、②中学校の大半の教科書(7社中6社)が違憲論に触れており、③国会に議席を持つ政党の中には自衛隊を違憲と主張するものもあるので、「自衛隊違憲論」を解消するために憲法の改正が必要である。
 しかし、こうした状況は、憲法9条の歪曲が、朝鮮戦争の勃発などによるアジアでの対立の激化、米軍の日本駐留の継続、警察予備隊から保安隊を経て自衛隊の創設に至るなかで始まり、そして日米の軍事同盟体制が、今日の新「防衛計画の大綱」のように自衛隊の大軍拡を引き起こすところまで進んできたことを端的に示すものです。自民党は、現在の学界や教育界での状況や、他党の自衛隊違憲論などを苦々しく思っているかもしれませんが、そうした状況は、何ら不自然でも不正なことでもありません。こうした状況があったからこそ、これまで9条改憲は阻止されてきたのです。「自衛隊違憲論」に対する敵視は、自らの日米軍事同盟の強化のための9条改憲という企みへの注目をはぐらかし、改憲を容易にすることを狙ったものです。また、「自民党Q&A」は、「条文イメージは、9条1項・2項を一字一句変えずにそのまま維持するとともに、自衛権行使の範囲を含め、9条の下で構築されてきたこれまでの憲法解釈についても全く変えることなく、国民に信頼されている等身大の自衛隊をそのまま憲法に位置づけるものです」などと述べていますが、これはまったくのウソでしょう。そもそも、自衛隊と自衛権行使の範囲を「全く変えない」のであれば何のための憲法改正でしょう。2015年の安保法制(戦争法)でも、従来は「違憲」としてきた集団的自衛権の行使に、一定の限定を付けながらも踏み切りました。法律でさえできることを憲法の改正で「しない」などという言い訳はとても信じることができません。安保法制をこえる集団的自衛権の行使の解禁がねらわれていると見るべきでしょう。

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(2019年08月08日入力)
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